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第二章「信じる者、欺く者」
苛立ちの正体ーレオヴィク視点ー
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ぽろぽろと涙を流すノエルをゆっくりとソファに座らせる。
ぱっと見たところ、身体的には特に問題はなさそうだが、カタカタと震える体を見るに、起きたでき事がただ事ではないことは明白だった。
ヨハンがコトリとコップを机に置く。その中には温められたミルクが入っていた。
恐らくヨハンも焦っているだろうに、まったくその様子が感じられなかった。
とはいえ、リオとノエルを探しているときのヨハンは、今まで見たことがないほどせわしなく動いていた。
「さて。ノエル、話はできそうですか?」
俺は努めて冷静に、静かに声をかけてみる。
しかし、ノエルは「ヒッ」と小さく声をあげ、自身の両手で体を抱きしめる。
「ノエル、大丈夫だよ。お前も知っているだろう、ここにいるレオヴィク様の事を」
ヨハンは、コップを置いた後、そのままノエルの隣に座っていた。
そしてノエルの頭をそっとなでると、ノエルはヨハンの方を向いて、さらに大粒の涙を流す。
普段敬語で話しているヨハンが、ノエルに話すときだけは、教育係などではなく、ただの、ノエルの祖父という感じだった。
「おじい、ちゃん」
「ノエル、まずはゆっくりホットミルクを飲んで」
ノエルはコクリと頷くと、自分を抱きしめていた腕をほどきコップに手を伸ばす。
両手でコップを掴むようにもち、口元に持っていくが、その手はまだカタカタと震えている。
「大丈夫。ゆっくりでいいから」
ヨハンは、頭を撫でていた手をそのまま背中に持っていき、上下に動かしながら背中をさする。
ノエルは、その行動にぼろぼろと流していた大粒の涙が次第に引いていき、そしてコップを傾けホットミルクを飲んだ。
「ありが、と」
「よく無事だったね」
ノエルはコップを机の上に戻すと、横にいたヨハンに抱き着く。
ヨハンの背中に回った手は、ヨハンのローブを力強く握っていた。
「僕、僕……」
ノエルが小さく声を出す。その声をヨハンと俺は耳を傾け、次の言葉を待つ。
「おかあさん、と、おとう…さん…」
その言葉を聞いた瞬間、ヨハンが「なんだって」とヨハンの呟いた言葉に反応する。
「かえって、くるかも、しれないって」
言葉の端々で涙を堪えていることが伝わってくる話し方だが、話の意図はつかめない。
きっと俺たちの想像する以上の何かが起きたという事はわかる。
ヨハンからノエルは14歳と聞いていた。まだまだ大人の仲間入りをするには早すぎる年齢。
結論から話せと団員たちにはよく伝えるが、子供にそれは酷な事だろうと頭では理解している。
しかし、どうにも要点を得ない話に、次第に苛立ちも募ってくる。
ただ、この苛立ちがノエルの話し方になのか、先の見えてこない話だからなのか。
それとも。
と、もう一つの可能性が自分の中で沸き上がってくるが、どうしてその感情が湧くのか。
リオは無事なのか、それがわからない。
俺はリオを利用して、王家を取り戻そうとしている。
だから、リオがいなければいけない。
ただ、リオでなくてもいいのだ。
あの首飾りさえあれば。
その首飾りが、今はノーバイデン教団の元にあるから、俺は苛立っているのだろうか。
「リオをつれてこいって、」
俺の思考をよそに話しは少しづつ進んでいるようで、ふと入ってきた言葉はリオの事だった。
その瞬間に、手のひらに痛みが走るほど拳を握りしめていたという事実に気付き、そっと拳を解放させ、一息つきノエルに問いかける。
「誰につれてこいと言われたんだ」
「ノーバイデン教団の、ひと」
ノエルは俺を見ることはなく、ヨハンに抱き着いたまま話をする。
こちらから声をかけると、びくりと体を震わせるものの、最初よりは落ち着きを取り戻しつつあるようだった。
「教会に、教会に行ったときに言われたん、です……」
「教会だって?」
次の言葉に反応したのはヨハンだった。
数日前に夕食を一緒に取っているとき、教会の話をしていたことを思い出し、その事かと口には出さずに結論づける。
「教会は、ノーバイデン教は関係のない場所で、司祭様も、全くそういったことは……」
「司祭様、じゃなくて、一緒に食事をとっていた人の中に、いたんだ」
ノエルは話を続けるが、続ければ続けるほど、先ほどの事が思い出されるのか、カタカタとまた体を震わせ始める。
「ノエル、ゆっくりでいいから、話してこらん全部。わしらは敵じゃない」
ヨハンの一人称が変わり、より祖父としての雰囲気が出てくる。
俺はここで口を出すことは悪手だと感じ、口をつむぐことにした。
しかし、ヨハンの”敵”という言葉に、明らかな悪意がリオとノエルを襲ったという事に、ひやりと冬の寒さとは違うものが体を走った。
だが、どうにも苛立ちが収まらない。
首飾りが……。いや、違う。
リオは無事なのか、リオはどうして連れていかれたのか、リオは何をしたのか。
リオは、今どこに
苛立ちの感情を追いかけていけば、リオの事ばかりであった。
そこまで密に接していたわけではない。
そう言うわけではないというのに、どうしてここまでやつの事が気になってしまうのか、今の俺ではまだ答えが出せそうにない。
ぱっと見たところ、身体的には特に問題はなさそうだが、カタカタと震える体を見るに、起きたでき事がただ事ではないことは明白だった。
ヨハンがコトリとコップを机に置く。その中には温められたミルクが入っていた。
恐らくヨハンも焦っているだろうに、まったくその様子が感じられなかった。
とはいえ、リオとノエルを探しているときのヨハンは、今まで見たことがないほどせわしなく動いていた。
「さて。ノエル、話はできそうですか?」
俺は努めて冷静に、静かに声をかけてみる。
しかし、ノエルは「ヒッ」と小さく声をあげ、自身の両手で体を抱きしめる。
「ノエル、大丈夫だよ。お前も知っているだろう、ここにいるレオヴィク様の事を」
ヨハンは、コップを置いた後、そのままノエルの隣に座っていた。
そしてノエルの頭をそっとなでると、ノエルはヨハンの方を向いて、さらに大粒の涙を流す。
普段敬語で話しているヨハンが、ノエルに話すときだけは、教育係などではなく、ただの、ノエルの祖父という感じだった。
「おじい、ちゃん」
「ノエル、まずはゆっくりホットミルクを飲んで」
ノエルはコクリと頷くと、自分を抱きしめていた腕をほどきコップに手を伸ばす。
両手でコップを掴むようにもち、口元に持っていくが、その手はまだカタカタと震えている。
「大丈夫。ゆっくりでいいから」
ヨハンは、頭を撫でていた手をそのまま背中に持っていき、上下に動かしながら背中をさする。
ノエルは、その行動にぼろぼろと流していた大粒の涙が次第に引いていき、そしてコップを傾けホットミルクを飲んだ。
「ありが、と」
「よく無事だったね」
ノエルはコップを机の上に戻すと、横にいたヨハンに抱き着く。
ヨハンの背中に回った手は、ヨハンのローブを力強く握っていた。
「僕、僕……」
ノエルが小さく声を出す。その声をヨハンと俺は耳を傾け、次の言葉を待つ。
「おかあさん、と、おとう…さん…」
その言葉を聞いた瞬間、ヨハンが「なんだって」とヨハンの呟いた言葉に反応する。
「かえって、くるかも、しれないって」
言葉の端々で涙を堪えていることが伝わってくる話し方だが、話の意図はつかめない。
きっと俺たちの想像する以上の何かが起きたという事はわかる。
ヨハンからノエルは14歳と聞いていた。まだまだ大人の仲間入りをするには早すぎる年齢。
結論から話せと団員たちにはよく伝えるが、子供にそれは酷な事だろうと頭では理解している。
しかし、どうにも要点を得ない話に、次第に苛立ちも募ってくる。
ただ、この苛立ちがノエルの話し方になのか、先の見えてこない話だからなのか。
それとも。
と、もう一つの可能性が自分の中で沸き上がってくるが、どうしてその感情が湧くのか。
リオは無事なのか、それがわからない。
俺はリオを利用して、王家を取り戻そうとしている。
だから、リオがいなければいけない。
ただ、リオでなくてもいいのだ。
あの首飾りさえあれば。
その首飾りが、今はノーバイデン教団の元にあるから、俺は苛立っているのだろうか。
「リオをつれてこいって、」
俺の思考をよそに話しは少しづつ進んでいるようで、ふと入ってきた言葉はリオの事だった。
その瞬間に、手のひらに痛みが走るほど拳を握りしめていたという事実に気付き、そっと拳を解放させ、一息つきノエルに問いかける。
「誰につれてこいと言われたんだ」
「ノーバイデン教団の、ひと」
ノエルは俺を見ることはなく、ヨハンに抱き着いたまま話をする。
こちらから声をかけると、びくりと体を震わせるものの、最初よりは落ち着きを取り戻しつつあるようだった。
「教会に、教会に行ったときに言われたん、です……」
「教会だって?」
次の言葉に反応したのはヨハンだった。
数日前に夕食を一緒に取っているとき、教会の話をしていたことを思い出し、その事かと口には出さずに結論づける。
「教会は、ノーバイデン教は関係のない場所で、司祭様も、全くそういったことは……」
「司祭様、じゃなくて、一緒に食事をとっていた人の中に、いたんだ」
ノエルは話を続けるが、続ければ続けるほど、先ほどの事が思い出されるのか、カタカタとまた体を震わせ始める。
「ノエル、ゆっくりでいいから、話してこらん全部。わしらは敵じゃない」
ヨハンの一人称が変わり、より祖父としての雰囲気が出てくる。
俺はここで口を出すことは悪手だと感じ、口をつむぐことにした。
しかし、ヨハンの”敵”という言葉に、明らかな悪意がリオとノエルを襲ったという事に、ひやりと冬の寒さとは違うものが体を走った。
だが、どうにも苛立ちが収まらない。
首飾りが……。いや、違う。
リオは無事なのか、リオはどうして連れていかれたのか、リオは何をしたのか。
リオは、今どこに
苛立ちの感情を追いかけていけば、リオの事ばかりであった。
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そう言うわけではないというのに、どうしてここまでやつの事が気になってしまうのか、今の俺ではまだ答えが出せそうにない。
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