琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

夢現

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目の前に赤い視界が広がって、ノエルが倒れていく。
俺は手を差し伸べることもできなくて、だんだんと光を失っていくノエルの瞳をずっと見ていた。
ばたりと倒れこんだノエルは、もう動かなくて、駆け寄りたいのに俺の足は鉛のように重たい。
声を出してノエルを呼びたいのに、口を開いても音は出なくてハクハクと空気を押し出す音だけが耳に残る。
次第にノエルが倒れた場所からドロリと赤い血が流れていき、俺の足元まで来る。
その血が異様に暖かくて、おぞましくて、後ろに下がりたくなるのに、やっぱり足は動かない。

なんで、どうして、動いて、助けなきゃ

そう思うのに、俺の体は一向に俺の思い通りに動いてはくれない。
すると頭にぽんと手が置かれる。
その手は次第に俺の頭をなでるように左右に動き出す。

後ろを振り返りたいけど、もちろんそれもできるわけがない。

耳元で声が聞こえる。

「神であれば成せるはずです」

神?何のことだ

「貴方様のお力をもってすれば、この者を助けることができるはずです」

俺の、力?

「貴方様の御力、癒しの力でこの者を助けましょう」

癒しの力なんて知らない

「貴方様が助けれなければ、この者はどんどん赤く染まりましょう」

それはいやだ。

「貴方様は使い方をわかっておられる」

知らない、そんなの知らない

「大丈夫です。貴方様の中に眠る、本来の御力があの者を助けることでしょう」

お、俺は……。

「神よ、どうかお導きください」

導く…

「神よ、どうか我々をお救いください」

救う…

俺の力。癒しの力。ノエルを助けられる力。
胸元が熱くなる。いつも身に着けていた琥珀の首飾りがそこにはある。
首飾りが熱を発する。
俺は、これの使い方を、知っている。
意識を首飾りに集中させ、そして、ノエルを助けたいと願う。
すると、それに応えるように琥珀から光が放出され、そしてノエルの傷口を治していく。
これが、俺の、力。

「さすがでございます。やはり貴方様は我々を救う神でございます」

頭を撫でていた手が離れていく。
次第に眠気が襲ってきて今まで動かなかった体が後ろに傾く。
地面に倒れると思ったら、ぼふんと暖かい何かに埋まった。
これはなんだ。

これは、布団?

レオヴィクが準備してくれたのかな。
レオヴィクは今何してるのかな。
レオヴィク、俺、すごい力が使えるかもしれない。
もしかしたらレオヴィクの役に立てるのかもしれない。

「レオ…」

呟いた言葉は、静かな空間に吸い込まれ誰にも拾われることなく消えていく。




「眠りましたか?」

「あぁ。神はまだ迷っておられるようだ」

ひと際大きな祭壇の中心に、白くて丸い布団が敷かれ、その布団の真ん中には体を丸めて眠る一人の少年。
その少年を見つめる二人の大人。
祭壇のある場所は、自然が豊かな森のようだが、天井があり、空を見ることはできない。
しかし、空間自体の空気は澄んでいるような感じがして、それが逆に異質な雰囲気を醸し出している。

祭壇を見守る二人の大人。アモン神官とゼリウスは、祭壇の中心で眠るリオを見ている。

「まさか、神が本当に顕現していらっしゃるとは」

ゼリウスがリオを見る表情は、恍惚としている。

「ゼリウスよ、あまり神をそういった目で見るのではないぞ」

「も、申し訳ございません」

アモン神官に言われ、ゼリウスは視線を逸らし俯く。

「と、ところで、神は何に迷っておられるのですか?」

ゼリウスの問に、アモン神官は「うむ」と口髭を触る。

「おそらく、ここに保護するまでに共に過ごしていたやつらの事だろう」

「やはり、あの騎士団長。早めに排除しなければいけませんね」

「そうだな。しかし、その前にやつらに見せつけてやらねばなるまい。どれほどまでに尊いお方を隠し立てしていたのかを」

そう言うと、アモン神官は祭壇の中央に手を伸ばす。
リオの頭を数度撫で、もぞりと動くリオを見て満足げに笑う。

「招待状を。式典を執り行う」

「我らは光の御許に」

ゼリウスはそう言うと、アモン神官の前に跪き首を垂れる。
そして、アモン神官は自身の首飾りを額にかざした後に、その首飾りをゼリウスの頭へとかざす。

「我らの神を守るため」

二人は、祭壇を後にし扉をばたりと閉める。


「ノエル、…レオ…ヴィク……」

リオから小さな声が漏れる。
夢の中で何度も友とレオヴィクの名前を呼ぶ。
しかしそれは今、誰にも届くことがない声だった。

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