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最終章「繋ぐ者、託される者」
決起。王の誕生
しおりを挟むお父さんはお母さんの肩を抱いて、お母さんはお父さんの体に自分の体をあずけ、寄り添う二人はとても素敵だった。
俺は二人の方に体を向ける。
二人は何も言わない。ただただ、俺に向けて静かにほほ笑んでいる。
「お父さん、お母さん。ありがとう。俺、いってくる」
俺はそれだけを言って、二人に背を向け走る。
振り返らない。
後ろでふわりと暖かい風が吹いた気がした。
その風は、まるで俺の背中を押すように駆け抜けていった。
風に乗って、ピンクやオレンジ、黄色の花びらが舞い上がる。
いってらっしゃい
そう言ってくれているような気がして、忘れていたはずの家族の暖かさを思い出す。
そして、その暖かさは琥珀の首飾りにも伝わり、次第に熱を持ち、そして小さな光がぽんと現れる。
「おかえり」
俺は、その小さな光に一言伝えると、嬉しそうにふわふわと俺の周りをとび、そして同じ速度でついてくる。
小さな光も「おかえり」と言ってくれているようだった。
「いこう」
走る先はわかっている。
俺がやるべきことはもうわかっている。
俺は今まで守られてきたんだ。
お父さんにもお母さんにも、ヨハンにもアレンにも。
そしてレオヴィクにも。
次は俺が、みんなを守る番だ。
走っている横を、今までの思い出がたくさん駆け抜けていく。
初めてレオヴィクと出会ったあの日も
ヨハンとの勉強時間も
アレンと行った市街地のお買い物も
ノエルとのお話の時間も
全てが俺の宝ものになっていた。
そして、俺をスラムでずっと守ってくれていたテーラーも。
俺はテーラーを見つけて必ず助けなければいけない。
どうしてだろう。テーラーは絶対に生きている。
なぜだか、そんな確信を持っていた。
目の前に、レオヴィクの屋敷で俺が寝ていた、丸まった布団が見えてきた。
俺は手を伸ばす。
その手を、暖かい手が掴む。
「リオ!!!」
目を開ける。そこには心配そうな、今にも泣きそうな顔のアレンと、ヨハンとノエル。
そして俺の手を掴み、眉間にすごい力が入っているであろうレオヴィクがいた。
「リオ!」
「リオ君!」
「リオ様!」
「リオぉ…」
ノエルに至っては既に泣いていたようだ。
俺はそんなノエルを見て「ふふ」っと笑う。
「笑い事じゃないぞ、リオ…お前は、またーー」
「レオヴィク、王家の人間に向かってなんて口の利き方だ」
俺はわざとらしくレオヴィクに言う。
「リ、リオ?」
眉間の皺がなくなり、一気に困惑の表情に変わった。
「ごめんごめん」
謝りながらも、笑いが堪えられず、肩を揺らす。
いったいどういう事なんだと、
全員が俺の方を向く。
俺は「ふぅ」と息を整え、部屋の隅にある布団から上体を起こし、そして言う。
「俺が、アンブラリア王国、四代目国王となる、リオセル・アンブラリアだ」
そう告げれば、さっきまで泣いていたノエルですら泣き止み、全員がぽかんとする。
その表情に、整えたはずの息が再び乱れ、思いっきり笑ってしまう。
「ふっふははは!こんなに心から面白いと思ったのは久しぶりだ!」
俺が思いっきり笑う姿を見て、みんながそれぞれに視線を合わせ、そして俺を見て口をあんぐりと開けている。
「ごめんね。俺、いろいろと思い出したんだ」
全員の顔を順番に見ながら伝える。
するとレオヴィクが口を開いた。
「お、俺が早急に事を進めてしまった、から……その、俺はまたお前の気持ちを蔑ろにーー」
「違うよレオヴィク。レオヴィクはよくやってくれてた。ずっと俺を守ってくれてありがとう」
俺はレオヴィクにそう伝えると、レオヴィクは再び口を閉じる。
ふと下に視線を向ければ、レオヴィクの膝の上で拳がぎゅっと握られていて、少し痛そうだ。
「アレンも、レオヴィクと一緒に国を守ってくれてありがとう」
「ヨハン、いろいろ教えてくれてありがとう」
「ノエル、俺と友達になってくれてありがとう」
俺は、顔を見てひとりひとりにお礼をいう。
「まだ、俺は頼りないと思うから、もう少しだけ、俺の事を支えて……助けてもらってもいいかな?」
その言葉を聞いて、全員が無言でこちらを見て、そして静かにうなずく。
「もちろんですとも、リオ様。ヨハンはこの命続くまで、必ずリオ様をお助けいたしますよ」
「俺だって、リオく…。リオ様のことはちゃーんと助けて、そして守りますから」
「ぼ!ぼくも!リオとずっと友達でいるよ!」
3人が順番に伝えてくれる言葉に暖かい気持ちになりながら、最後にレオヴィクを見る。
「リオ、でもお前…」
「うん。俺、逃げたままじゃだめだって気づいたんだ。俺はたくさんの人に守られていたんだ。だから次は俺がみんなを守る番」
「……」
レオヴィクが口を閉じる。
そして何かを決意して、正座の状態だった姿勢から、片膝だけをたたせ、そして、俺の手を取る。
俺の手の甲をレオヴィク自身の顔の近くまで引かれる。その後、手の甲に柔らかい感触があり、それがレオヴィクの唇だと気づいた。
「ちょ!レオっーー」
俺は思わず手を引こうとしたが、レオヴィクの手の力は強く、全く離してくれない。
「一度誓ったが、あの時はきっと届いていなかった。だからもう一度誓わせてくれ。俺は……私、レオヴィク・カストルはアンブラリア王家をお守りし、そしてリオセル・アンブラリア様を生涯守り抜くと誓います」
再び手を引っ張られると、次はレオヴィクの額に俺の手の甲が当たる。
騎士の誓い。
「レオヴィク。ありがとう。よろしくね。俺、まだスラムにいる前の記憶を思い出しただけの、ただの少年だから」
「これから、共に築いていきましょう」
レオヴィクは俺を見て、そして再び俺の手の甲にキスをする。
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