琥珀の灯火を抱く少年と、誓いに囚われた騎士

大城トモ

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最終章「繋ぐ者、託される者」

追憶の妖精

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俺はテーラーを抱えたまま、民衆の中に走っていたノエルを目で追う。
しかし、小柄なノエルを捕らえることはできない。
それはゼリウスも同じようで、民衆を突き飛ばしながら、走ってノエルを追いかけていく。

「おのれ!返せ!私の琥珀をかえせ!」

最早、自我を失ってしまっているかのように見えるゼリウスに俺は恐怖する。
すると、抱き留めていたテーラーの方から小さな声が聞こえる。

「リ、リオ」

俺はすぐさまテーラーの口元に耳を持っていき、声を聞く。

「ね、がえ。リ、リオの、ねが、…いを、かなら、ず……っ、こはく、は、こたえて、くれ…る」

テーラーのとぎれとぎれの言葉をしっかりと聞き取り、俺は一度テーラーを地面に寝かせる。

「テーラーここで待っててくれる?」

俺の言葉をきいて、テーラーはコクリと頷き、そして上げるのすら辛いだろう手をあげ、拳を握り親指だけを立てる。
その姿を見て、泣きそうになるが、今はそんな弱気になっている場合じゃない。

俺は民衆の動きを見ながら、ゼリウスの居場所を探す。
民衆が悲鳴を上げながら逃げるなか、アレンや騎士団たちが民衆を保護しようと誘導している。
そして、民衆の逃げる方向と逆をみれば、ノエルを追いかけるゼリウスの姿が目に入った。
レオヴィクはノエルの元に先にたどり着こうとノエルの逃げる方向を予測しながら走っていた。
もうすぐノエルが二人に挟まれてしまう。
レオヴィクが先にノエルにたどり着ければ勝機だが、ゼリウスの足も決して遅くはない。
十四歳の男の子をおいかけるなど、大人からすればきっと造作もない事なのかもしれない。

俺はその様子をみながら、手を組む。
そして額に組んだ手をあて、祈る。

「追憶の妖精よ、我に答えよ」

本で読んだ琥珀の妖精の別名。
俺は無意識にその名前で妖精を呼ぶ。

「我を守護し、この国を守護する者よ。我の元に集え」

俺は必死で言葉を紡ぐ。
教えてもらったわけではない。
お母さんから語り継がれたわけではない。
ただ、ただ、言葉が勝手に、紡がれる。

そして、組んでいた手のひらが次第に熱を帯びる。
俺はその熱を知っている。
初めて琥珀の力を使ったとき、感じた熱だ。
暖かくもあり、熱いその熱に手を離しそうになるが、これは決して離してはいけない。

「ノエルー!」

レオヴィクの叫び声が聞こえた。
顔を上げ、そしてレオヴィクとノエルとゼリウスを見る。
ゼリウスがノエルの体を捕らえ、そしてそのまま地面にたたきつける瞬間だった。

俺は思わずその場を立ち上がる。
声を上げたい。
だが、だめだ。

ノエルは、思いっきり体を地面にたたきつけられ、ピクリとも動かない。
レオヴィクがゼリウスを掴み、そしてノエルから引き離すため、遠くに投げ飛ばす。
全身を地面に打ち付けながら転がるゼリウスだが、痛みなど感じていないのか、そのまま立ち上がり、またノエルの方へと走る。

「よこせ!!!!琥珀を、よこせーー!!!」

ゼリウスに自我はもうない。
俺はそう感じて、再び祈る。

「追憶の妖精に集いし者たちよ。悪しき黒い妖精を打ち破らん」

そう口にした瞬間。
ノエルが握っていた琥珀の首飾りが大きな光を放つ。
俺はその光景を見て、より祈りを込める。

「悪しき黒き妖精を、我らの元へ!」

灯火の眠る琥珀。
あの本の最後は、黒い妖精が正気を取り戻し、世界が平和になるという物語。
きっとあの本は、ただの物語ではなかったのだろう。

「なっなぜだ!」

ゼリウスが琥珀の光から放たれる光の前で足を止める。

「くっこの光は、琥珀の!わ、わたしも一族の人間だというのに!ど、どうして!」

見るに、光の中に入れないのだろう。
琥珀から拒まれている。そう感じた。

「馬鹿な!馬鹿な!馬鹿なぁ!私の力だー!!!」

ゼリウスは、一度は止めた足を再び動かし、拒絶されている光の中に踏み込んでいく。
しかし、踏み込んだ足先がジリと焼ける音がした。

「わた、しのちから、だ、私が、拒まれる、はずが…っない!」

俺は、少しづつ光に近づく。
ノエルは気絶しているが、琥珀の首飾りを胸にしっかり抱いたまま。
ゼリウスが止まるその光の中に俺は足を踏み入れ、そしてノエルの元にたどり着く。

「ノエル」

俺は、ノエルの名を呼ぶ。
ノエルの傷は既に治っている。
恐らく、この光が治してくれたのだろう。
「うぅ」と言いながら目を開けるノエルに俺は微笑み、そしてノエルが握りしめている琥珀の首飾りをを手に取る。

「ノエルありがとう。怖かっただろうに」

ノエルにそう言うと、ノエルは泣き出し、俺に抱き着く。
そして、ノエルの傍に膝をついていたレオヴィクにおれはノエルを預ける。

「リオ、お前…」

「大丈夫。必ず戻ってくるから」

俺はそう言うと、光の中にどうにか踏み込もうとしているゼリウスに近づく。
琥珀の首飾りをもって近づくことで、ゼリウスも意図せず光の中に入ってしまう。

「うっぐっああああああ!!」

ゼリウスの叫び声をききながら、俺はゼリウスを抱きしめる。

「一緒に行こう、ゼリウス」

俺はゼリウスの体を絶対に離すまいと、力を籠める。そして

「見せて、追憶の妖精」

そう伝えると、俺とゼリウスは闇の中に引きずり込まれた。

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