要望通り、悪女を逆ハーレムルートにしました

ラブリス

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転生ヒロインは悪女に立場を奪われていた

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 私は目を覚ますと、そこは見慣れた部屋だった。いや、見慣れたはずの部屋。ベッドの天蓋、豪華な調度品。でも、私の記憶では、これはスマホ向け乙女ゲーム『光の姫と闇の王子たち』のヒロイン、フィーナの部屋だ。え? 私、転生しちゃったの?

「フィーナ様、お目覚めですか? 」

 メイドの声が聞こえてくる。慌てて鏡を見ると、そこには金色の髪と青い瞳の少女が映っていた。まさにフィーナその人。憧れの乙女ゲームの世界! みんなが優しくしてくれるはずの、攻略キャラたちに囲まれる甘い生活! わくわくしながら、学園へ向かった。

 学園に着くと、みんなの視線が冷たい。気のせいだよね。無視される。え? なんで? フィーナは珍しい光魔法が使える特待生で、平民出身だけど男爵に見込まれて貴族令嬢になって、みんなに慕われるはずなのに。

「ふん、平民の分際で生意気ね。」

 声の主は、悪役令嬢のエレノア。ゲームでは、ヒロインをいじめる悪女。でも、彼女の周りには攻略キャラたちが群がっている。え? これって、ヒロインの立場を乗っ取ってるんじゃないの?

 物語の開始時点で、フィーナは貴族の養子になるはず。でも、私の身分はまだ平民のまま。ってことは、誓約魔法がかかってない? 誓約魔法は、ヒロインが貴族の養子になってからかかるもの。貴族の養子になった平民の末路は、政略結婚の駒にさせられるか、養子先で愛人になるしかない。
 嫌だ。絶対に誓約魔法はかけられたくない。恐らく、エレノアはこの事について知らない。
 バレないように、前世の知識とこの世界の情報を集めよう。

 家に帰ると、引き出しの中に紙があった。そこにはエレノアが悪口を言っていて、誰に話しかけても無視をされる事だ。先生も平民出身の人が多く、助けてくれない。一度あった貴族の養子縁組の話もいつの間にかなくなっていた。消えてしまいたいという書き残したメモだった。

 あの女のせいでフィーナは苦しんでいたんだ。許せない。

 まずは、戦闘システムを活用。この乙女ゲームには、恋愛パートと関係なくバトルパートもあった。物語に出てくるのではなく、遊び程度のものだった。レベルを上げるために、森へ向かった。モンスターを倒す。最初は弱いスライムから。

「はあはあ、きつい……でも、レベルアップ!」

 ステータスを確認。光魔法が使えるのは本当。ステータス画面には、女神の加護がついている。こんなのバレたら面倒な事になる。ゲームでは聖女の加護だったのに、転生したからおかしくなったのかもしれない。そもそもゲームには女神の加護なんてなかったし。鑑定されてもバレないように、フェイク魔法を覚える。これもゲームに無かったけれど、ステータス隠しなる魔法だ。ゲームの隠しコマンドみたいに、呪文を唱える。

「フェイク・ヴェール!」

 これで、私のステータスが偽装される。レベル上げをしつつ攻略キャラたちに挨拶だけはする事にした。まずは、王太子のレオン。

「こんにちは、レオン殿下。今日もお元気そうですね」

 レオンは少し驚いた顔をした。私から話しかけるのは珍しいのだろう。ゲームの時は、はぁ♡と吐息を吐きながら、挨拶をし返してくれたのにね。

「ああ、フィーナか。君も学園生活を楽しんでいるかい?」

(楽しいわけないだろう。お前の幼馴染のエレノアのせいでな)

 そこそこ仲良くなれるように、軽い会話だけ。他の攻略キャラと一緒に行動していたエレノアを視界の端で見つけると、私は笑顔で別れを告げた。エレノアはイライラしてるみたい。彼女の姿を見て、内心で笑う。ヒロインの立場を乗っ取っておきながら、図々しいわね。

 でも、私の目的は違う。エレノアを出し抜いて、逆ハーレムを奪う事じゃない。
 私はゲームのように話しかけた。美少女で清楚なフィーナが行動すると、男達は花に群がる蝶のように羽が舞う。いや、こいつらは蛾だな。
 私に近づくとエレノアと話すチャンスが増えるのだ。何を話しているのか聞かれるし、エレノアが自分に嫉妬しているのかと胸をくすぐるらしい。ようするに当て馬扱いされている状況だ。

 とある昼下がり。私はエレノアに群がる攻略キャラたちと一緒にいた。

「みんな、エレノア様に対して一線を超えないようにしてるみたいだけど、それって誰かが出し抜いてる可能性もあるんじゃない?」

 皆、顔を見合わせた。そうそう、そうこなくっちゃ。レオンが眉をひそめる。

「どういう意味だ、フィーナ?」

「例えば、誰かがエレノア様を独占しようとして、他の人を遠ざけてるかもよ。疑心暗鬼になっちゃうよね。」

 そんな言葉をさりげなく落とす。すると、攻略キャラたちの間に微妙な空気が流れる。騎士のアルフレッドが言う。

「確かに……レオン殿下、エレノア様に一番近いのはあなたですが、何か隠してるんじゃないですか?」

 レオンが慌てる。

「何を言うんだ、アル! 俺はそんなことないぞ!」

 魔法使いのシオンが加わる。

「ふむ、面白い指摘だな。フィーナ、君は鋭いね」

「恋愛って先に行動した人が結果を出すと思うの。皆の事が大好きなエレノア様は自分で選べないのかもしれない。だから、貴方たちから行動してみたらどうかしら?」

 こうして、みんながエレノアにアプローチし始める。エレノアの義兄、貴族のエドガーがいるので、彼に話しかける。

「エドガー様、エレノア様の義兄として、みんなより優位ですよね。みんなが群がってるけど、あなたが一番チャンスあるんじゃない?」

 エドガーが勘違いして、にやりとした。気持ち悪くて、鳥肌になった。

「そうだな、フィーナ。君の言う通りだ。妹を幸せにするのは俺だよ」

「早く、血が繋がっていないことを話してはどうでしょうか。きっと、彼女も聞きたくて仕方がないと思うんです。一線を画すかも……ごめんなさい、つい」

 背後にさっきを感じていた。恐らく、誰かが聞いているのだろう。その為にエドガーに近づいたのだから。
 すると、次の日からエレノアの周りに男たちが群がる。エレノアは困惑顔をした。

「みんな、どうしたの? 急に熱心になって……」

 レオンが言う。「エレノア、君を独占しようとする奴がいるかもしれないんだ。俺が守るよ!」

 アルフレッドも。「いや、俺が!」

 シオンが。「魔法で守るのは俺の役目だ。」

 エドガーが。「義兄として、俺が一番だ!」

「ちょ、ちょっと待って」

 私は腕を組んで遠くからほくそ笑んだ。

「私も皆の事、大好きよ」

 彼女から大好きと言われて、興奮して喜んでいる攻略キャラたち。尻尾をぶんぶん振る犬みたいだ。でも犬だっておあずけをされていたら、主人の手を噛み千切るのにね。
 連日、エレノアは嬉しそうだけど、ちょっと疲れ顔をしている。頻繁に疲労回復のドリンクを飲んでいるみたいだ。

 一方、私はひとりで敵を倒す。ゲームで攻略キャラと倒すボス級モンスターを、単独で。準備はしてきた。だから大丈夫だと思いたい。

 森の奥、巨大なオークが現れる。

「ぐおおお!」

「光の矢、発射!」

 死ぬかと思うくらいしんどい。体中が痛い。魔力だって切れそうだ。でも、何とか勝ってレベルアップ。ステータスがぐんぐん上がる。その度に技を覚えるので、料理スキルや生活魔法のレベルも同時に上げた。人目を気にしていたら、ここまで出来なかったと思う。攻略キャラと一緒にいたら、こんなの覚えなくてもいいと言われて言う通りにしていただろう。

 一方エレノアはレベル上げができなかった。彼女が攻略キャラと一緒に森に行きたいと言っても、貴族令嬢だ。冒険者に任せろと否定されるに決まっている。彼女を溺愛している父親ならと思ったけれど、エドガーがいる。それに屋敷から抜け出しても誰かが監視してる。きっと、彼女の取り巻きが過保護なんだろう。

 私はまた攻略キャラひとりひとりに接近した。

「レオン殿下、レベル上げを手伝いましょうか?」

 レオンが驚く。彼はレベル上げをしたくても、ヒロインがいないと出来ない状況に苦しんでいた。転生して知ったのは、レベルの上限というものが、この世界にあって彼はとっくの昔に達している。レベルの上限を上げるには、アイテムが必要だ。私には知識がある。

「フィーナ、君が? でも、危ないよ」

「大丈夫、私の光魔法でサポートするわ。これで、エレノア様がもっと殿下を好きになりますね♡」

 レオンが照れながら。

「ありがとう、フィーナ。君は優しいな。」

 アルフレッドにも声をかけた。

「アルフレッドさん、一緒にモンスター狩りしませんか?」

「フィーナ、君みたいな華奢な子が? いや、助かるよ!」

 シオンにも。

「シオンさん、魔法の練習相手になってあげる。これでエレノア様に褒められるわよ♡」

「ふむ、興味深い。君の光魔法、見せてくれ。」

 エドガーに。

「エドガー様、義兄として強い方がいいわよね。一緒にレベル上げしましょう。」

「そうだな、フィーナ。君のおかげで妹を幸せにできるよ。」

 私を嫌ってる攻略キャラもいる。例えば、冷徹な公爵子息のロイ。エレノアと一緒に悪に堕ちて、禁固書の魔導書を使って化け物になるキャラだ。

「ロイさん、こんにちは」

 彼は冷たかった。

「何の用だ、フィーナ。」

「レオンのレベルはもう50超えてるって聞いたわ。あなたのレベル低いと聞きました。エレノア様と結婚しても逃げられちゃうかもね」

 ロイが目を細める。

「あの女の事はどうでもいい」

「でも幼馴染じゃない。みんなレベル高くなってるわ。あなたもがんばらないと」

「お前、それでいいのか? 」

 ロイが悔しそうにした。

「くそ……じゃあ、手伝ってくれ。レベル上げだ。」

 こうして、みんなのレベルが高くなった。

 そして、クライマックス。ラスボスが現れた。国が混乱した。モンスターの群れが街を襲う。国王が神殿で祈りを捧げている。

「神よ、この国をお守りください……」

 攻略キャラたちに言う。

「みんな、あのラスボスを倒したら、エレノア様と結婚できるわよ! 国王陛下も神に祈りを捧げているわ。助けたら夢を叶えてくれる!」

 レオンが目を輝かせる。「本当か? エレノアのために戦うぞ!」

 アルフレッドが。「俺も!」

 シオンが。「魔法で粉砕だ。」

 エドガーが。「妹のためなら!」

 みんながラスボスに挑んだ。激しい戦いだった。

「光の剣!」
「炎の嵐!」
「剣撃!」

 なんとかモンスターを倒す事に成功した。その姿に多くの人達が感動していた。予想通り、叙任式が行われる事になった。国王が言う。

「君たちのおかげで国が救われた。褒美は何が良い?」

 ここで謎の光が国王陛下に当たっていた。その神々しい光は、まるで女神様の祝福のようだった。

「先ほど神託が下った。王都で男たちが助かるように祈っていたエレノア。男達よ。エレノア嬢と結婚を許す。特別に、全員とだ!」

 攻略キャラたちが喜んでいる。

「やった!」
「エレノア、愛してる!」

 エレノアは青ざめていた。周りにいる女性たちから、祈っていたのは男だけかよと言われているのに気がつかない。

「え? 全員と? そんな……」

 私はエレノアに近づき、

「おめでとう、エレノア様。逆ハーレムのくせにエロはないとか有り得ないわよね。でも、精々今までの償いをしながら、一生攻略キャラに愛される日々を過ごしなさい。ざまぁ」

 エレノアが苦虫を噛み潰した顔で、私を睨む。

「フィーナ、あなたのせいね……」
「え、何の事かしら。ヒロインになりたかったんでしょう? 成功しているじゃない」

 ふふ、これで終わり。私の目的は達成されたわ。
 エレノアは攻略キャラたちに囲まれ、望んだ「ヒロイン」の座を手に入れたけど、彼女の顔はまるで苦い薬を飲まされたみたい。

 たまに声をかけると、彼女ではなく近くにいる男が全部答えてくれる。執着心丸出しの男達から逃げるなんて出来ないだろう。レベルも高くしちゃったし。

 ざまぁ、なんて心の中でほくそ笑みながら、私はそっとその場を離れた。さて、ここからが私の本当の物語の始まりよ。エレノアにヒロインの座を押し付けて、彼女を攻略キャラたちの争いの中心に置いたことで、私は自由を手に入れた。もう誰も私を「平民の分際」とか「ヒロインの当て馬」とか見てこない。だって、みんなエレノアに夢中なんだから!

 でも、私の目的はまだ終わっていない。この世界で生き残るためには、もっと強く、賢くならなきゃいけない。前世の知識とゲームのシステムをフル活用して、貴族の養子にならず、誓約魔法を回避しつつ、自分の居場所を築く。それが私の目標だ。エレノアが逆ハーレムで忙しくしてる間に、私は自分の力を磨き、誰にも縛られない人生を掴むんだから!
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