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第一章 転生したら王子様
10 商人って大変だね
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「カリン兄上は、いきなり五人もの奥さん持ちなんだなぁ」
カリンが十五歳になり、独立して離宮を出て行くことになり、サリームの時より盛大なお祝いが催された。ショウは弟として宴会の末席に並ばされたが、奥さんの多さに唖然とする。
「まぁ、サリーム兄上は後ろ盾が弱いから、カリン兄上が本命だと思う人が多いって事じゃないかな」
ナッシュはカリンの従姉妹を許嫁にしているので、ショウも一緒の陣営に引き込もうとしていた。
五人も奥さんいたら、大変じゃないのかなぁと、ショウの関心は後継者では無く、五人の奥さんとどうやってエッチするのかという、おませな好奇心に走る。
「ねぇ、五人も奥さんがいたら、初夜も五日するのかなぁ。でも、そうしたら一日目の奥さんは六日目まで放置するの? 新婚ラブラブというより、疲れそうなんだけど……痛い!」
主役のカリンが招待客に酒をついで回っている途中で、ショウの下世話な好奇心を耳に入れて拳骨を落とす。
「馬鹿だなぁ、後で教えてやるよ。今は五人の奥さんの親達がいるんだから口を閉じとけよ」
「そうだよね~、自分の娘が何番目かとか話されたくないよね」
反省したショウは、それからは大人しく宴会の料理を食べるのに専念する。
「余り食べ過ぎるなよ。ご馳走を食べ慣れて無いように見えるぞ」
上席からハッサンがショウがパクパク食べているのを見つけて注意する。
「実際、こんなご馳走食べ慣れてないもの」
小声で文句は言ったが、ショウは王子家業も楽じゃないと箸を置く。
「東南諸島連合王国の宴会は、長いのが欠点だなぁ」
次々と運ばれてくる料理に、ショウは少しずつ箸を付けていたが、流石に満腹になってくる。
「未だ、終わらないのかなぁ」
隣のラジック兄上に小声で聞いても返事が無いと思ったら、クッションにもたれて寝ている。
「一般席なら勝手に動き回れるのになぁ」
末席とはいえ王子として雛壇に上げられているので、ラジックのように寛いでいる振りで寝るという技術の無いショウは退屈する。余りに暇なのでショウは人間観察でもしようかと思う。
アスラン王の周りには人が集まっていた。
「凄く不機嫌そうなんだけど、親としてどうなのって突っ込む人はいないだろうなぁ。サリーム兄上は優しくて好きなんだけど、押しが弱いよね。父上の傲慢さの欠片でも貰えば良いのになぁ。傲慢さはカリン兄上には充分遺伝している……」
ぼんやり宴会の人を観察していたが、うとうとする。
「こら、宴席で寝る奴がいるか」
アスランにポカンと頭を殴られて、ショウは寝ていたのに気づく。
「寝ていたのですか……すみません」
ポヤっとしているショウの手を持つと乱暴に引き起こして、アスランは付いて来いと命令する。アスランはご機嫌取りの連中に囲まれてウンザリしていた時、末席のショウがコックリコックリ船を漕いでいるのに気づいた。
「末っ子が眠ってしまったようだ。あれは未だ宴会に出る年ではないな」
子供を思いやる風を装って、アスランは退屈な宴会から逃げ出す魂胆だ。庭に出ると、後は好きにしろとアスランはスタコラと逃亡してしまった。
「息子の結婚式なのに、父親が逃げて良いの?」
「アスラン王は退屈な宴会がお嫌いですからね」
庭に呆然と立ち尽くすショウに、にこやかにラシンドが話しかけてきた。
「ラシンド様も招待されていたのですね」
「ええ、娘がカリン様に嫁ぐもので」
ショウはビックリしてしまった。
「ラシンド様のお嬢様がカリン兄上に嫁がれるのですか?」
ナッシュの従姉妹のサリーは今日は嫁がないが、いずれは結婚する約束になっていると聞いていた。何人、カリン兄上は奥さんを何人養わなければいけないんだろうと驚く。
ラシンドはショウが目をパチクリしているので、思わず吹き出してしまう。
「これは、失礼。でも、ショウ王子、その様に考えを顔に出されてはいけませんよ。何人、奥さんを養わないといけないのかと考えられていたでしょう」
くすくす笑われたが、図星なので文句も言えない。
「僕は養う自信ないなぁ。第一、十五歳で結婚だなんて早すぎるよ。普通の人は15歳で結婚はしないのでしょ。確か、お金を貯めて結婚すると聞きましたけど、ラシンド様はお金持ちだから15歳で結婚されたのですか?」
ラシンドは世慣れていない王子の言葉に苦笑する。
「私は親から小さな船は貰いましたが、結婚したのはお金を貯めてからだったので十八歳でした。普通の男は二十五歳ぐらい迄には奥さんを持ちたいと思うみたいですよ。ショウ王子は女の子が嫌いですか」
「いや、嫌いじゃないから、養えないのに困ると悩んでいるのです。こんな末っ子にも許嫁にと話はあるみたいですが、そういう女の子はお金持ちの生活に慣れているでしょ。僕は生活のレベルを維持してあげる自信ないなぁ」
ラシンドはショウの王子らしく無い発言に爆笑する。
「アスラン王の息子らしくない意見ですね。でも、貴方は紛れもないアスラン王の王子なのですから、許嫁は断れないでしょう。奥さんを飢えさせない為には、お金を儲けなくてはいけませんよ」
ショウは深い溜め息をつく。
「僕は軍人になって海賊討伐で荒稼ぎはできそうにありませんから、商人を目指すしか養う方法は無さそうですね。母上の産まれたマリオ島でノンビリ魚でも取って暮らしたかったのになぁ」
ラシンドはショウがいつマリオ島に行ったのかと不思議に思う。
「あそこはレイテから船で三、四日かかるでしょ。わざわざ行かれたのですか?」
「へぇ~船だとそんなに掛かるのですね。サンズとひとっ飛びでしたよ。初めて海の上を飛んだから、何回か島に降りながら行ったから五時間掛かりましたけどね」
ラシンドはショウが竜騎士の素質があると聞いてはいたが、八歳になるかどうかの子供が独りでマリオ島に飛行したと聞いて驚いた。
「どうやってマリオ島の位置を知ったのですか」
「ああ、カリン兄上にしごかれて、海図の読み方と位置の測定は自信がありますからね。島に降りては調整してたどり着きましたよ。サンズは僕より方向感覚が優れているから、一度行ったら覚えるので二度目は簡単だと言ってました。母上も故郷に里帰りしたいなら、お連れしますよ。日帰りできますからね。でも、のんびりした島で1ヶ月ぐらい過ごしたいなぁ」
ラシンドはアスラン王が神出鬼没なのは竜騎士だからだと改めて気づいた。船で一週間掛かるかも知れない離島を日帰りで行き来できる竜の能力を見直したし、八歳で海図の読み方をマスターしているショウの賢さに舌を巻く。
それと同時に、離島でノンビリしたいと言うショウは商人に向いてないのではと懸念する。
「そうか! スピードを生かした商売を始めれば良いんだ」
目の付けどころは良いとラシンドは関心を持つ。
「でも、手紙とかは鳥で間に合いますよ」
ショウと話していると面白いと、ラシンドは珍しく商売抜きで興味を持った。
「新鮮な魚ったって、周りは海だしなぁ。う~ん、少し考えてみます。それと、今は王宮の家畜を食べさせてくれているけど、独立したら餌代が大変そうだよね。奥さんの前にサンズが飢えそうだよ。一回で牛一頭食べるからなぁ。魚が好きみたいだから、それだけでも大丈夫かな? 今度試してみようかな」
「竜騎士は王宮の家畜を貰える筈ですよ。何人か軍人の竜騎士がいらっしゃいますけど、俸給では竜は養えないでしょう。竜は国の財産扱いですから、それは大丈夫ですよ」
「ええ~! やったぁ! 僕も飢えたく無いですが、サンズを飢えさせるのだけはしたくないと悩んでいたのです。これで奥さんを断れたら、呑気に竜の宅配便でもして暮らすのにね~」
「竜の宅配便?」
ラシンドは聞き慣れない言葉に興味を持った。
「今、思いついたのです。急ぎの荷物を竜なら、その日のうちに運べるでしょ。例えばお袋さんの煮込みがどうしても食べたいと思ったら、手紙で作って貰っておけば竜なら離島の実家でもひとっ飛びです。まぁ、縁起の悪い話ですが、危篤の手紙が来ても船だと間に合わないけど、親の死に目にも会えるかもしれませんしね」
「利便性は買いますが、大儲けになりそうにありませんね」
大商人のラシンドに笑われて、ショウは商人は大変だと溜め息をつく。ラシンドはショウに興味を持ち、又ゆっくり話したいと思った。
「マルシュやマリリンに会いに来て下さい」
はいと、返事したもののショウはなかなかラシンドの屋敷を訪ねる事が出来なかった。ハッサン兄上の天下になった離宮では、外戚のアリのライバルであるラシンドは禁句になっていたからだ。
カリンが十五歳になり、独立して離宮を出て行くことになり、サリームの時より盛大なお祝いが催された。ショウは弟として宴会の末席に並ばされたが、奥さんの多さに唖然とする。
「まぁ、サリーム兄上は後ろ盾が弱いから、カリン兄上が本命だと思う人が多いって事じゃないかな」
ナッシュはカリンの従姉妹を許嫁にしているので、ショウも一緒の陣営に引き込もうとしていた。
五人も奥さんいたら、大変じゃないのかなぁと、ショウの関心は後継者では無く、五人の奥さんとどうやってエッチするのかという、おませな好奇心に走る。
「ねぇ、五人も奥さんがいたら、初夜も五日するのかなぁ。でも、そうしたら一日目の奥さんは六日目まで放置するの? 新婚ラブラブというより、疲れそうなんだけど……痛い!」
主役のカリンが招待客に酒をついで回っている途中で、ショウの下世話な好奇心を耳に入れて拳骨を落とす。
「馬鹿だなぁ、後で教えてやるよ。今は五人の奥さんの親達がいるんだから口を閉じとけよ」
「そうだよね~、自分の娘が何番目かとか話されたくないよね」
反省したショウは、それからは大人しく宴会の料理を食べるのに専念する。
「余り食べ過ぎるなよ。ご馳走を食べ慣れて無いように見えるぞ」
上席からハッサンがショウがパクパク食べているのを見つけて注意する。
「実際、こんなご馳走食べ慣れてないもの」
小声で文句は言ったが、ショウは王子家業も楽じゃないと箸を置く。
「東南諸島連合王国の宴会は、長いのが欠点だなぁ」
次々と運ばれてくる料理に、ショウは少しずつ箸を付けていたが、流石に満腹になってくる。
「未だ、終わらないのかなぁ」
隣のラジック兄上に小声で聞いても返事が無いと思ったら、クッションにもたれて寝ている。
「一般席なら勝手に動き回れるのになぁ」
末席とはいえ王子として雛壇に上げられているので、ラジックのように寛いでいる振りで寝るという技術の無いショウは退屈する。余りに暇なのでショウは人間観察でもしようかと思う。
アスラン王の周りには人が集まっていた。
「凄く不機嫌そうなんだけど、親としてどうなのって突っ込む人はいないだろうなぁ。サリーム兄上は優しくて好きなんだけど、押しが弱いよね。父上の傲慢さの欠片でも貰えば良いのになぁ。傲慢さはカリン兄上には充分遺伝している……」
ぼんやり宴会の人を観察していたが、うとうとする。
「こら、宴席で寝る奴がいるか」
アスランにポカンと頭を殴られて、ショウは寝ていたのに気づく。
「寝ていたのですか……すみません」
ポヤっとしているショウの手を持つと乱暴に引き起こして、アスランは付いて来いと命令する。アスランはご機嫌取りの連中に囲まれてウンザリしていた時、末席のショウがコックリコックリ船を漕いでいるのに気づいた。
「末っ子が眠ってしまったようだ。あれは未だ宴会に出る年ではないな」
子供を思いやる風を装って、アスランは退屈な宴会から逃げ出す魂胆だ。庭に出ると、後は好きにしろとアスランはスタコラと逃亡してしまった。
「息子の結婚式なのに、父親が逃げて良いの?」
「アスラン王は退屈な宴会がお嫌いですからね」
庭に呆然と立ち尽くすショウに、にこやかにラシンドが話しかけてきた。
「ラシンド様も招待されていたのですね」
「ええ、娘がカリン様に嫁ぐもので」
ショウはビックリしてしまった。
「ラシンド様のお嬢様がカリン兄上に嫁がれるのですか?」
ナッシュの従姉妹のサリーは今日は嫁がないが、いずれは結婚する約束になっていると聞いていた。何人、カリン兄上は奥さんを何人養わなければいけないんだろうと驚く。
ラシンドはショウが目をパチクリしているので、思わず吹き出してしまう。
「これは、失礼。でも、ショウ王子、その様に考えを顔に出されてはいけませんよ。何人、奥さんを養わないといけないのかと考えられていたでしょう」
くすくす笑われたが、図星なので文句も言えない。
「僕は養う自信ないなぁ。第一、十五歳で結婚だなんて早すぎるよ。普通の人は15歳で結婚はしないのでしょ。確か、お金を貯めて結婚すると聞きましたけど、ラシンド様はお金持ちだから15歳で結婚されたのですか?」
ラシンドは世慣れていない王子の言葉に苦笑する。
「私は親から小さな船は貰いましたが、結婚したのはお金を貯めてからだったので十八歳でした。普通の男は二十五歳ぐらい迄には奥さんを持ちたいと思うみたいですよ。ショウ王子は女の子が嫌いですか」
「いや、嫌いじゃないから、養えないのに困ると悩んでいるのです。こんな末っ子にも許嫁にと話はあるみたいですが、そういう女の子はお金持ちの生活に慣れているでしょ。僕は生活のレベルを維持してあげる自信ないなぁ」
ラシンドはショウの王子らしく無い発言に爆笑する。
「アスラン王の息子らしくない意見ですね。でも、貴方は紛れもないアスラン王の王子なのですから、許嫁は断れないでしょう。奥さんを飢えさせない為には、お金を儲けなくてはいけませんよ」
ショウは深い溜め息をつく。
「僕は軍人になって海賊討伐で荒稼ぎはできそうにありませんから、商人を目指すしか養う方法は無さそうですね。母上の産まれたマリオ島でノンビリ魚でも取って暮らしたかったのになぁ」
ラシンドはショウがいつマリオ島に行ったのかと不思議に思う。
「あそこはレイテから船で三、四日かかるでしょ。わざわざ行かれたのですか?」
「へぇ~船だとそんなに掛かるのですね。サンズとひとっ飛びでしたよ。初めて海の上を飛んだから、何回か島に降りながら行ったから五時間掛かりましたけどね」
ラシンドはショウが竜騎士の素質があると聞いてはいたが、八歳になるかどうかの子供が独りでマリオ島に飛行したと聞いて驚いた。
「どうやってマリオ島の位置を知ったのですか」
「ああ、カリン兄上にしごかれて、海図の読み方と位置の測定は自信がありますからね。島に降りては調整してたどり着きましたよ。サンズは僕より方向感覚が優れているから、一度行ったら覚えるので二度目は簡単だと言ってました。母上も故郷に里帰りしたいなら、お連れしますよ。日帰りできますからね。でも、のんびりした島で1ヶ月ぐらい過ごしたいなぁ」
ラシンドはアスラン王が神出鬼没なのは竜騎士だからだと改めて気づいた。船で一週間掛かるかも知れない離島を日帰りで行き来できる竜の能力を見直したし、八歳で海図の読み方をマスターしているショウの賢さに舌を巻く。
それと同時に、離島でノンビリしたいと言うショウは商人に向いてないのではと懸念する。
「そうか! スピードを生かした商売を始めれば良いんだ」
目の付けどころは良いとラシンドは関心を持つ。
「でも、手紙とかは鳥で間に合いますよ」
ショウと話していると面白いと、ラシンドは珍しく商売抜きで興味を持った。
「新鮮な魚ったって、周りは海だしなぁ。う~ん、少し考えてみます。それと、今は王宮の家畜を食べさせてくれているけど、独立したら餌代が大変そうだよね。奥さんの前にサンズが飢えそうだよ。一回で牛一頭食べるからなぁ。魚が好きみたいだから、それだけでも大丈夫かな? 今度試してみようかな」
「竜騎士は王宮の家畜を貰える筈ですよ。何人か軍人の竜騎士がいらっしゃいますけど、俸給では竜は養えないでしょう。竜は国の財産扱いですから、それは大丈夫ですよ」
「ええ~! やったぁ! 僕も飢えたく無いですが、サンズを飢えさせるのだけはしたくないと悩んでいたのです。これで奥さんを断れたら、呑気に竜の宅配便でもして暮らすのにね~」
「竜の宅配便?」
ラシンドは聞き慣れない言葉に興味を持った。
「今、思いついたのです。急ぎの荷物を竜なら、その日のうちに運べるでしょ。例えばお袋さんの煮込みがどうしても食べたいと思ったら、手紙で作って貰っておけば竜なら離島の実家でもひとっ飛びです。まぁ、縁起の悪い話ですが、危篤の手紙が来ても船だと間に合わないけど、親の死に目にも会えるかもしれませんしね」
「利便性は買いますが、大儲けになりそうにありませんね」
大商人のラシンドに笑われて、ショウは商人は大変だと溜め息をつく。ラシンドはショウに興味を持ち、又ゆっくり話したいと思った。
「マルシュやマリリンに会いに来て下さい」
はいと、返事したもののショウはなかなかラシンドの屋敷を訪ねる事が出来なかった。ハッサン兄上の天下になった離宮では、外戚のアリのライバルであるラシンドは禁句になっていたからだ。
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