13 / 368
第一章 転生したら王子様
12 どうにか元手をかき集めなきゃ
しおりを挟む
ショウはサリームの悪口を聞いて腹を立てたが、今の自分では何の力にもならないと落ち込んだ。
「結局は、お金が必要なんだよね」
一番手っ取り早いのは母上が嫁いだ大商人のラシンドに元手の出資を頼む事だとはわかっていたが、それだけはしたくないと余り高くないプライドしか持たないショウだが却下する。
「ケーレブ島のチーズを買う元手があれば、少しずつお金を貯めれるのになぁ」
この前にハッサンのお使いをさせられたので、チーズの値段は知っている。
「チーズ一塊が、十マークって高いのかなぁ」
ショウは王宮育ちで、物価も知らない自分にガッカリする。
「ミヤに聞けば、わかるだろうけど……」
王子が、チーズ売りをしたり、かき氷屋をするのは拙いかもと、ショウはミヤに止められるのを恐れた。
「ハッサン兄上の祖父から船を貰うなんて嫌だから、コツコツ小銭を貯めるしか無いよ」
アスランとミヤが知ったら呆気にとられる計画を、ショウは立てた。ミヤはショウが独立する時の為の資金をきちんと用意していたし、自分が育てた王子が路頭に迷う事など許すつもりは無かった。ただミヤの考える船とショウが思う船とは、鯨と金魚ほどの違いがあったので、用意できるか軽率には口に出来なかったのだ。
王子が乗る船なのだから、荒波にも耐える立派な物をミヤは考えていて、その船を運航させるには熟練の船長と乗組員が必要で簡単には用意出来ない。船も高価だが、信頼できる船長は高給取りだし、プライドも高かったので、大商人が押さえてしまっている。遣り手のミヤといえども難しく感じるので、軽々しく口にしない。
ミヤはどうしても育てたショウを贔屓にしてしまうが、アスラン王の第一夫人として他の王子達と金銭面では公平に扱おうとして悩んでいた。既に独立したサリーム王子とカリン王子にも、王族に相応しい立派な屋敷を与えたが、彼等には程度の差はあれ後ろ盾が付いている。
「ショウには後ろ盾が無いから、屋敷とは別に船も用意してあげたいけど……」
他の王子達と不公平に優遇するのは、ミヤの第一夫人としての矜持に反する。
「ショウは覇気も野心も無いのに、変なプライドは高いのよねぇ」
兄上達に良いようにこき使われるのは平気みたいなのに、母親のルビィが嫁いだ大商人ラシンドに援助を求めようとはしないプライドの高さに溜め息を付きながらも、そういうショウを愛おしく感じるミヤだった。
「私の娘を、ショウの第一夫人にしたいぐらいだわ。あの娘なら、ショウをチャンと食べさせていってくれるでしょう」
ミヤは一度目の結婚で産んだ娘のラビータが自分の気性を引き継いでいるので、第一夫人に向いていると考えている。
「ショウとは年齢が離れ過ぎているかしら? 15歳年上の第一夫人がいない訳ではないけど、本当ならサリームとが年齢的には良いのよね……」
こればかりは親が口出すことではないと、ミヤは思案する。
しっかりしているラビータは、アスラン王の兄のカジムに嫁いでいた。二十歳近くも年上の王族に嫁いだのは、第一夫人狙いのラビータの意向を、元夫の第一夫人が汲んで選んだのだろうとミヤは考えた。
カジムの第一夫人のユーアンは出来の良さが評判だったのだ。持参金を増やしてくれるのも確かだし、第一夫人を目指しているラビータには勉強にもなるだろうと、バルディアが考慮して決めたのだとミヤは感謝していた。
「あの娘は、女の子を二人産んでいたわね。う~ん、ララとショウを結婚させても良いわね。ラビータの夫のカジム様は王様には向いて無かったけど、第一夫人のユーアン様のお陰か蓄財は長けていらっしゃるし、後ろ盾の無いショウにとって、伯父上の援助は有益だわ。ショウは髪の毛の綺麗な娘が好きだから、ララには念入りに手入れをさせなくては!」
ショウは自分の知らない所で許嫁が決まっているとは考えもせず、元手をコツコツ貯めようと、あろうことか侍従達や女官達の用を足して駄賃を貰っていた。
「王子様に、御用を頼むなんて」
最初は遠慮していた女官達も、王宮をそう自由に出入りできない不便さに負けて、気楽なショウの雰囲気に用事を頼むようになった。
「はい、頼まれた香料と紅」
ショウは、お使いのお陰で物の値段に詳しくなった。頼まれた品物とお釣りを渡すと、女官は十チームお駄賃に渡した。
「ありがとうございます。本当に十チームで良いのですか?」
王子様を使い走りにさせて、たったの十チームのお駄賃で良いのかと女官は気にしたが、ニッコリ営業スマイルで良いと言われると何となくそれでOKな気持ちになる。
「死神が言っていたモテモテって、こういう事なのかなぁ? それとも僕が未だ子供だからかなぁ?」
女官達にモテモテのショウは、大人になって女難と思う程のモテモテになるとは知らずに、駄賃を貯める為に竜のサンズと王宮を抜け出す毎日を送っていた。
「結局は、お金が必要なんだよね」
一番手っ取り早いのは母上が嫁いだ大商人のラシンドに元手の出資を頼む事だとはわかっていたが、それだけはしたくないと余り高くないプライドしか持たないショウだが却下する。
「ケーレブ島のチーズを買う元手があれば、少しずつお金を貯めれるのになぁ」
この前にハッサンのお使いをさせられたので、チーズの値段は知っている。
「チーズ一塊が、十マークって高いのかなぁ」
ショウは王宮育ちで、物価も知らない自分にガッカリする。
「ミヤに聞けば、わかるだろうけど……」
王子が、チーズ売りをしたり、かき氷屋をするのは拙いかもと、ショウはミヤに止められるのを恐れた。
「ハッサン兄上の祖父から船を貰うなんて嫌だから、コツコツ小銭を貯めるしか無いよ」
アスランとミヤが知ったら呆気にとられる計画を、ショウは立てた。ミヤはショウが独立する時の為の資金をきちんと用意していたし、自分が育てた王子が路頭に迷う事など許すつもりは無かった。ただミヤの考える船とショウが思う船とは、鯨と金魚ほどの違いがあったので、用意できるか軽率には口に出来なかったのだ。
王子が乗る船なのだから、荒波にも耐える立派な物をミヤは考えていて、その船を運航させるには熟練の船長と乗組員が必要で簡単には用意出来ない。船も高価だが、信頼できる船長は高給取りだし、プライドも高かったので、大商人が押さえてしまっている。遣り手のミヤといえども難しく感じるので、軽々しく口にしない。
ミヤはどうしても育てたショウを贔屓にしてしまうが、アスラン王の第一夫人として他の王子達と金銭面では公平に扱おうとして悩んでいた。既に独立したサリーム王子とカリン王子にも、王族に相応しい立派な屋敷を与えたが、彼等には程度の差はあれ後ろ盾が付いている。
「ショウには後ろ盾が無いから、屋敷とは別に船も用意してあげたいけど……」
他の王子達と不公平に優遇するのは、ミヤの第一夫人としての矜持に反する。
「ショウは覇気も野心も無いのに、変なプライドは高いのよねぇ」
兄上達に良いようにこき使われるのは平気みたいなのに、母親のルビィが嫁いだ大商人ラシンドに援助を求めようとはしないプライドの高さに溜め息を付きながらも、そういうショウを愛おしく感じるミヤだった。
「私の娘を、ショウの第一夫人にしたいぐらいだわ。あの娘なら、ショウをチャンと食べさせていってくれるでしょう」
ミヤは一度目の結婚で産んだ娘のラビータが自分の気性を引き継いでいるので、第一夫人に向いていると考えている。
「ショウとは年齢が離れ過ぎているかしら? 15歳年上の第一夫人がいない訳ではないけど、本当ならサリームとが年齢的には良いのよね……」
こればかりは親が口出すことではないと、ミヤは思案する。
しっかりしているラビータは、アスラン王の兄のカジムに嫁いでいた。二十歳近くも年上の王族に嫁いだのは、第一夫人狙いのラビータの意向を、元夫の第一夫人が汲んで選んだのだろうとミヤは考えた。
カジムの第一夫人のユーアンは出来の良さが評判だったのだ。持参金を増やしてくれるのも確かだし、第一夫人を目指しているラビータには勉強にもなるだろうと、バルディアが考慮して決めたのだとミヤは感謝していた。
「あの娘は、女の子を二人産んでいたわね。う~ん、ララとショウを結婚させても良いわね。ラビータの夫のカジム様は王様には向いて無かったけど、第一夫人のユーアン様のお陰か蓄財は長けていらっしゃるし、後ろ盾の無いショウにとって、伯父上の援助は有益だわ。ショウは髪の毛の綺麗な娘が好きだから、ララには念入りに手入れをさせなくては!」
ショウは自分の知らない所で許嫁が決まっているとは考えもせず、元手をコツコツ貯めようと、あろうことか侍従達や女官達の用を足して駄賃を貰っていた。
「王子様に、御用を頼むなんて」
最初は遠慮していた女官達も、王宮をそう自由に出入りできない不便さに負けて、気楽なショウの雰囲気に用事を頼むようになった。
「はい、頼まれた香料と紅」
ショウは、お使いのお陰で物の値段に詳しくなった。頼まれた品物とお釣りを渡すと、女官は十チームお駄賃に渡した。
「ありがとうございます。本当に十チームで良いのですか?」
王子様を使い走りにさせて、たったの十チームのお駄賃で良いのかと女官は気にしたが、ニッコリ営業スマイルで良いと言われると何となくそれでOKな気持ちになる。
「死神が言っていたモテモテって、こういう事なのかなぁ? それとも僕が未だ子供だからかなぁ?」
女官達にモテモテのショウは、大人になって女難と思う程のモテモテになるとは知らずに、駄賃を貯める為に竜のサンズと王宮を抜け出す毎日を送っていた。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる