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第三章 新航路発見
6 後継者?
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王宮へ帰ったショウは、父上と話し合わなければと焦っていたが、いざとなるとどう切り出せば良いのか戸惑う。フラナガン宰相は、ショウの困り切った表情に同情したが、アスラン王に追い払われる。
「なんだ? ララに押し倒されでもしたのか? 言っておくが、許嫁に押し倒されても、強姦罪で姪のララを逮捕しないぞ」
一瞬、ララとの少しエッチな想像に頬を染めたショウだが、今はそれどころではないと頭を振って妄想をかき消す。
アスランは、チビ助をからかうと面白いなと笑ったが、やっと気付いたのかと鈍さに呆れた。
「父上、新造艦のカドフェル号の艦長は、レッサ艦長だと聞きました。もしかして、新航路の発見航海にカドフェル号を差し向けるお考えですか」
アスランは遠まわしの質問にウンザリして、先を続けろと手で合図する。
「では、父上が新航路の発見航海をされるのですか?」
どうしてそう考えるのか? 馬鹿ではないか? と、アスランはショウが賢いのか馬鹿なのか、頭が痛くなってきた。
「馬鹿か、何故、私が新航路を発見などしなくては、いけないんだ。お前が思いついた事だろうが!」
「僕は……新航路を発見すれば、サリーム兄上が儲ける事ができるかなと思ったのです。メーリングとの交易では、大商人ほどは儲けられませんから……でも……」
ぐずぐず言い出したショウに、うんざりしたアスランは、結論を言えと怒る。
「父上、後継者はサリーム兄上か、カリン兄上なのでしょう?」
「何故そんな事を聞くのだ? 後継者問題に口を出すとは、チビ助のくせに偉くなったものだな」
アスラン王には長所もあったが、気長とか、素直とかは、爪の先程も無かったし、ショウの覇気の無さに機嫌が段々悪くなっていた。
「いえ、新航路の発見をサリーム兄上か、カリン兄上にして頂こうかなと思って……そうすれば、後継者として名前が……」
ギロリと父上に睨まれて、ショウは言葉を口に出せなくなる。
「言っておくが、後継者問題はお前が口を出して良い事ではない。王である私が、決める事だ。お前は自分が考え出した新航路の発見に、兄達に命を賭けろと言いたいのか? そんなに自信が無いのか」
「いえ、新航路の考えは間違ってません。ペナン島からゴルチェ大陸に航海する方が絶対に早いのです。でも、ゴルチェ大陸の西海岸は未開で、貿易拠点を作らなくてはいけないし……僕の手には余るのです。だから、サリーム兄上に任せれば……」
手近のクッションを投げつけられて、ショウは黙った。
「未開の地に貿易拠点をサリームが作れるとは、お前も考えてないだろう。ああいう事は、ハッサンに任せろ。ラジックをこき使いながら、商人達から金を巻き上げて貿易拠点を作り上げるぞ。サリームには、お前のもう一つのプランの責任者が最適だ」
自分でもサリームには向いてないと思っていたので、父上の言葉に頷く。
「そうですね、レイテ湾の埋め立て埠頭の建設は、真面目なサリーム兄上にピッタリですね。シーガルはパロマ大学で教授と埋め立て埠頭についてプランを練り直したみたいですので、サリーム兄上を手助けするでしょう」
「新航路は、カドフェル号でお前が最短距離で航海してみろ。商船の補給出来る拠点や、海流の調査はカリンにやらせば良い。あれは根っからの、軍艦乗りだからな。ナッシュは彼奴にくっついているが、本音では軍を嫌っている。この際、引き離してサリームの手助けをさせたら良い」
ナッシュが商人気質なのをショウも気づいていた。一歳年上のハッサンとはあまり仲が良くないが、温厚なサリームのことは好きだから、協力を惜しまないだろうと頷く。父上が見ていないようで、兄上達の性格を把握しているのにショウは驚いた。
「では、私はカドフェル号で新航路を発見したら、後はカリン兄上に任せれば良いのですね」
後は、カインズ船長と航海をして、ララとの結婚資金を貯めれば良いのだと気楽な事を考える。
「本当にお前は鈍いな! そんな事では、東南諸島連合王国を纏めていけないぞ! お前が兄達を纏めて、二大プロジェクトを進めるのだ」
アスランは、目を真ん丸にして、口をパクパクさせているショウに、サイドテーブルの砂糖菓子を投げ入れる。
「ゴホン、ゴホン、父上……何を言われるのですか……ゴホン……」
砂糖菓子が気管に入って、涙目で咳き込みながら抗議するショウに、面倒くさげに話は終わったと手で退室を促すアスランだった。
「父上、そんなの無茶です」
突然、後継者だと言われて納得していないショウが退室しないので、うんざりしたアスランは、こんな時の為の宰相だと、部屋から追い出していたフラナガンを呼び戻す。
「フラナガン、このボンクラ王太子にこれからの事を説明しろ」
そう言い捨てて逃げ出してしまったアスラン王に、フラナガン宰相は無責任だと文句を後ろ姿に投げつけたが、茫然自失となっているショウを放置出来ないと説明を始める。
「なんだ? ララに押し倒されでもしたのか? 言っておくが、許嫁に押し倒されても、強姦罪で姪のララを逮捕しないぞ」
一瞬、ララとの少しエッチな想像に頬を染めたショウだが、今はそれどころではないと頭を振って妄想をかき消す。
アスランは、チビ助をからかうと面白いなと笑ったが、やっと気付いたのかと鈍さに呆れた。
「父上、新造艦のカドフェル号の艦長は、レッサ艦長だと聞きました。もしかして、新航路の発見航海にカドフェル号を差し向けるお考えですか」
アスランは遠まわしの質問にウンザリして、先を続けろと手で合図する。
「では、父上が新航路の発見航海をされるのですか?」
どうしてそう考えるのか? 馬鹿ではないか? と、アスランはショウが賢いのか馬鹿なのか、頭が痛くなってきた。
「馬鹿か、何故、私が新航路を発見などしなくては、いけないんだ。お前が思いついた事だろうが!」
「僕は……新航路を発見すれば、サリーム兄上が儲ける事ができるかなと思ったのです。メーリングとの交易では、大商人ほどは儲けられませんから……でも……」
ぐずぐず言い出したショウに、うんざりしたアスランは、結論を言えと怒る。
「父上、後継者はサリーム兄上か、カリン兄上なのでしょう?」
「何故そんな事を聞くのだ? 後継者問題に口を出すとは、チビ助のくせに偉くなったものだな」
アスラン王には長所もあったが、気長とか、素直とかは、爪の先程も無かったし、ショウの覇気の無さに機嫌が段々悪くなっていた。
「いえ、新航路の発見をサリーム兄上か、カリン兄上にして頂こうかなと思って……そうすれば、後継者として名前が……」
ギロリと父上に睨まれて、ショウは言葉を口に出せなくなる。
「言っておくが、後継者問題はお前が口を出して良い事ではない。王である私が、決める事だ。お前は自分が考え出した新航路の発見に、兄達に命を賭けろと言いたいのか? そんなに自信が無いのか」
「いえ、新航路の考えは間違ってません。ペナン島からゴルチェ大陸に航海する方が絶対に早いのです。でも、ゴルチェ大陸の西海岸は未開で、貿易拠点を作らなくてはいけないし……僕の手には余るのです。だから、サリーム兄上に任せれば……」
手近のクッションを投げつけられて、ショウは黙った。
「未開の地に貿易拠点をサリームが作れるとは、お前も考えてないだろう。ああいう事は、ハッサンに任せろ。ラジックをこき使いながら、商人達から金を巻き上げて貿易拠点を作り上げるぞ。サリームには、お前のもう一つのプランの責任者が最適だ」
自分でもサリームには向いてないと思っていたので、父上の言葉に頷く。
「そうですね、レイテ湾の埋め立て埠頭の建設は、真面目なサリーム兄上にピッタリですね。シーガルはパロマ大学で教授と埋め立て埠頭についてプランを練り直したみたいですので、サリーム兄上を手助けするでしょう」
「新航路は、カドフェル号でお前が最短距離で航海してみろ。商船の補給出来る拠点や、海流の調査はカリンにやらせば良い。あれは根っからの、軍艦乗りだからな。ナッシュは彼奴にくっついているが、本音では軍を嫌っている。この際、引き離してサリームの手助けをさせたら良い」
ナッシュが商人気質なのをショウも気づいていた。一歳年上のハッサンとはあまり仲が良くないが、温厚なサリームのことは好きだから、協力を惜しまないだろうと頷く。父上が見ていないようで、兄上達の性格を把握しているのにショウは驚いた。
「では、私はカドフェル号で新航路を発見したら、後はカリン兄上に任せれば良いのですね」
後は、カインズ船長と航海をして、ララとの結婚資金を貯めれば良いのだと気楽な事を考える。
「本当にお前は鈍いな! そんな事では、東南諸島連合王国を纏めていけないぞ! お前が兄達を纏めて、二大プロジェクトを進めるのだ」
アスランは、目を真ん丸にして、口をパクパクさせているショウに、サイドテーブルの砂糖菓子を投げ入れる。
「ゴホン、ゴホン、父上……何を言われるのですか……ゴホン……」
砂糖菓子が気管に入って、涙目で咳き込みながら抗議するショウに、面倒くさげに話は終わったと手で退室を促すアスランだった。
「父上、そんなの無茶です」
突然、後継者だと言われて納得していないショウが退室しないので、うんざりしたアスランは、こんな時の為の宰相だと、部屋から追い出していたフラナガンを呼び戻す。
「フラナガン、このボンクラ王太子にこれからの事を説明しろ」
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