73 / 368
第三章 新航路発見
11 この島は誰の物?
しおりを挟む
『サンズのお陰だね!』
バサッバサッと島の海岸に舞い降りながら、ショウはサンズが見つけてくれたのに感謝した。砂浜と言うより有孔虫が砕けた星の形の砂を、ララなら見たがるだろうなぁと、一すくいして下にサラサラとこぼした。
海岸から少し入るとジャングルになっていて、ショウは蛇が苦手なので足を踏み入れる気持ちにはならない。
『ゴルチェ大陸も、ジャングルには蛇がいたんだよ~。昆虫は大丈夫だけど、蛇は駄目だ!』
『脅かさない限り、蛇は悪いことしないよ』
サンズの意見には耳を貸すショウだが、この件は駄目だと身震いする。
『あっ、良いもの見つけた』
砂浜から取れる所に椰子の実が見えたので、サンズに乗って一、二個取った。
『サンズ、島の上をグルッと一周してくれ』
ショウに褒められて、上機嫌なサンズは島の上を丁寧に一周する。
島の真ん中には山があり、ゴツゴツした山肌から火山かもしれないとショウは思った。空から一周してみて、結構大きな島だとショウは喜ぶ。
『しまった! この島の位置を計測する道具を持って来てないよ。サンズ~、カドフェル号に帰っても、又この島に来られる?』
『来られるさ~』
『サンズ、すごいね! じゃあ、カドフェル号へ帰ろう!』
ショウは今度からは計測する道具は必ず携帯しようと反省しながら、サンズ任せでカドフェル号へ帰艦した。
カドフェル号ではレッサ艦長が何時もならかなり前に見回りから帰って来ている筈なのにと、ショウを心配していた。
「九時の方向に竜が見えます~」
見張りが示す方向を、レッサ艦長は望遠鏡で覗き、小さな竜の影を見てホッとする。ぐんぐん小さな竜は大きくなり、バッサバッサと甲板に舞い降りる。
「レッサ艦長、島を見つけました。ほら、椰子の実ですよ」
ショウはサンズから飛び降りると、レッサ艦長に取ってきた椰子の実を投げる。乗組員達は島があると聞いて、歓声をあげた。
「ページ甲板長、乗組員達を静かにさせろ!」
士官の命令で、甲板長のページが静かにしろと背中をどやしつけて歩いた。
「ショウ王子、その島の位置は? 島に水は有りますか?」
レッサ艦長の当然の質問に一つも答えられず、恥ずかしさに赤面する。
「え~、位置ははっきりはわかりませんが、北に7パーン位かな……結構大きな島で、ペナン島の二倍はあったけど、水は調査して無いんだ……ジャングルには、蛇がいそうで……」
大手柄なのに、申し訳無さそうなショウ王子を呆れて眺めたレッサ艦長は、気を取り直して北へ舵を取らせる。
「ペナン島の二倍の大きさで、ジャングルなら、水もある筈だ! もし、無人島なら……」
上機嫌なレッサ艦長にサンズが見つけてくれたと報告しているショウを、ワンダーは乗組員達に命令を下しながら呑気だなぁと呆れる。
「無人島なら、発見者の物になるんだろ。ショウ王子の物になるのかな?」
「いや、この新航路発見の航海はアスラン王の命令だぞ」
「カドフェル号にも恩賞がでるかなぁ」
士官すらも浮き足立っているのだから、乗組員達に落ち着けと甲板長が怒鳴りつけても効果は薄い。
「僕は島に帰って、位置を計測して来るよ」
カドフェル号が島にたどり着けなかったら、皆の期待が大きいだけに失望してしまうだろうと、ショウはサンズと島の位置を計測して来る。
艦長室で海図に島の位置に×を書き込むと、レッサ艦長はペナン島とゴルチェ大陸の中間点よりは東だと確認して、士官に島へ向かえと命令した。
「島が見えたぞ~」
見張りの言葉で、全員が甲板で目を凝らす。士官達は望遠鏡で、見張りの示した方向を見た。
「島だ!」
未知の大海原を航海して不安を持っていた乗組員達は、飛び上がって喜んだ。
レッサ艦長は正式な調査隊を島へ送った。
「上からなら、島全体を見れますよ」
ショウが蛇嫌いなのはゴルチェ大陸西海岸の測量した時から知っていたが、こんなに重大な件なのにと溜め息をつく。乗組員達がジャングルを切り開くのを待てなくて、水の存在の確認と、住民がいるのかを調査したいとレッサ艦長はショウと竜で上空から島を何度も周回する。
「ショウ王子、あそこに小さいけど水がありますね。降りられますか?」
丁寧に島の上を飛ぶと、ジャングルの木々の間に水が反射しているのに気づいた。
「レッサ艦長~、ジャングルですよ~」
渋るショウに、レッサ艦長は私だけでも降りますと強固に言い張る。
『サンズ、なるべく開けた所に降りてくれ』
『無理だよ~! 水の周りには植物がはえるものだろ』
『あっ、あそこの岩場! ねぇ、サンズは器用だから、狭い所も降りれるよね』
ショウに褒められると、サンズは嬉しくてジャングルの間をぬって岩の上に見事に降り立った。
「そこまで蛇が嫌いですか……」
レッサ艦長は呆れたが、竜から飛び降りると岩の上から下の湖を見た。
「飲めるかな?」
ショウも渋々レッサ艦長に付いて湖の辺まで歩いて行く。
「湧き水ですね。火山活動で島が出来たのかな? 温泉もあると嬉しいな~」
何処までも呑気なショウに、大物なのか? 馬鹿なのか? と不遜な疑問を持ったレッサ艦長だが、湧き水を飲もうとしたのは止めた。
「水質を調査しないと駄目です。士官達に水質調査の道具を持って来させて下さい」
「レッサ艦長をここに残してですか? もし、蛇でも……いえ、敵対的な住民がいたら大変です」
蛇は平気なレッサだが、艦長として一人で未知の島に残るのは何かあったら指揮官不在になるので拙いと思い直す。
「浜の調査隊の所へ送って下さい」
王子をこき使うのは如何かとも思ったが、さっさと調査してゴルチェ大陸へ向かわなくてはいけないのだと自分に言い訳する。
ショウはカドフェル号の士官達に水質調査の道具を持たせて、湖へと帰った。
「湧き水は飲めますね。湖には葉っぱや枝が堆積しているし、ボウフラがいます。少し濁ってますから洗濯や身体を洗うのは大丈夫でしょうが、飲まない方が良いでしょう。でも、整備したら水場として使えますし、もう少し海の近くに井戸も掘れるかもしれませんね」
水の確保は航海では重要なので、島の水が飲めると知ってレッサ艦長は喜んだ。浜に上陸した調査隊はジャングルを湖まで切り開き、海への小川を発見した。乗組員達は新鮮な水を汲んだり、椰子の実や、自生している芋を焼いたりする。
島の裏側にも調査隊を派遣したが、人影は見つけられなかったし、大海原の孤島に人が住んでいた様子は無かった。
「無人島なら、誰の所有になるんだろう」
カドフェル号の全員が議論していたが、ショウは一人で砂浜にしゃがんで星砂をハンカチに包む。ワンダーはショウが立ち上がると、ハンカチを大事そうに胸にしまったのを不審に思って、何をしているのかと尋ねた。
「ほら、この砂は珊瑚礁が波で砕けた物なんだ。星みたいだろ、ララにお土産にしようかなと思って……砂なんて喜ばないかな?」
ワンダーは未知の無人島を発見したのに、許嫁が星砂を喜ぶかを心配しているショウを怒鳴りつけたくなったが、大きく深呼吸して我慢する。
「それより、この島の名前を付けませんと」
砂をもう少しハンカチに包んでいたショウは、ワンダーを見上げて名前? と聞き返した。
「発見したのはショウ様なのですから、当然でしょう」
「え~、発見したのはサンズだよ。では、サンズに名前を考えさせよう」
竜に名前を付けさせようとするショウを、ワンダーは慌てて止めた。
「貴方はサンズの絆の竜騎士なのですから、ショウ様が名前をつけた方が良いです」
竜が発見者だなんて、航海日誌に記入出来ないとワンダーは言い切る。
「レッサ艦長に聞いてみるよ。艦長はカドフェル号の上では、総ての権限を持っているんだからさ」
ワンダーは、それは普通の士官達や、乗組員達に関してで、王子である上に新航路の発見をアスラン王に命令されているショウには及ばないと考えた。レッサ艦長も同意見で、ショウが命名するべきだと言った。
「名前ですか……ララ島? 蛇がいそうな島に、ララの名前を付けたく無いなぁ。父上の名前でも付けるか? アスラン島?」
「王様の名前を呼び捨てするのは、如何なものでしょう」
そんな名前を付けたなんてアスラン王に報告したら、睨み付けられるとレッサ艦長は止める。
「う~ん? サンズ島は? 本当はサンズが島を発見したんだもの」
レッサ艦長は竜好きなアスラン王なら、サンズ島でも怒らないだろうと頷く。
「サンズ島! それにしましょう」
脇で聞いていたワンダーは、そんないい加減な決め方で良いのかと思ったが、ショウとレッサ艦長が決定した事に文句は付けられない。
『あの島を、サンズ島という名前にしたよ。サンズが見つけたんだからね』
『え、私の名前を付けてくれたの! 凄く嬉しいよ~』
サンズが巨大な身体を身悶えさせて喜ぶので、ショウは蛇がいそうだからララの名前を付けなかった事は秘密にしようと思った。
「サンズ島の本格的な調査は、カリン兄上がされるんだろうな。カリン兄上は蛇がいても平気かな?」
ワンダーは従兄のカリンは蛇など恐れないと断言する。
「やっぱり、カリン兄上が後継者になれば良いのに……」
ワンダーはカリンを士官として尊敬していたが、ショウほどの企画力と強運を持って無いと溜め息をついた。
サンズ島へ寄り道する為に7パーン北上したカドフェル号は、逆流していた海流からも逃れられた。乗務員達もサンズ島を発見して、海の果てに向かって無謀な航海をしているのではという不安も払拭されたし、ゴルチェ大陸を目指して東に向う。
バサッバサッと島の海岸に舞い降りながら、ショウはサンズが見つけてくれたのに感謝した。砂浜と言うより有孔虫が砕けた星の形の砂を、ララなら見たがるだろうなぁと、一すくいして下にサラサラとこぼした。
海岸から少し入るとジャングルになっていて、ショウは蛇が苦手なので足を踏み入れる気持ちにはならない。
『ゴルチェ大陸も、ジャングルには蛇がいたんだよ~。昆虫は大丈夫だけど、蛇は駄目だ!』
『脅かさない限り、蛇は悪いことしないよ』
サンズの意見には耳を貸すショウだが、この件は駄目だと身震いする。
『あっ、良いもの見つけた』
砂浜から取れる所に椰子の実が見えたので、サンズに乗って一、二個取った。
『サンズ、島の上をグルッと一周してくれ』
ショウに褒められて、上機嫌なサンズは島の上を丁寧に一周する。
島の真ん中には山があり、ゴツゴツした山肌から火山かもしれないとショウは思った。空から一周してみて、結構大きな島だとショウは喜ぶ。
『しまった! この島の位置を計測する道具を持って来てないよ。サンズ~、カドフェル号に帰っても、又この島に来られる?』
『来られるさ~』
『サンズ、すごいね! じゃあ、カドフェル号へ帰ろう!』
ショウは今度からは計測する道具は必ず携帯しようと反省しながら、サンズ任せでカドフェル号へ帰艦した。
カドフェル号ではレッサ艦長が何時もならかなり前に見回りから帰って来ている筈なのにと、ショウを心配していた。
「九時の方向に竜が見えます~」
見張りが示す方向を、レッサ艦長は望遠鏡で覗き、小さな竜の影を見てホッとする。ぐんぐん小さな竜は大きくなり、バッサバッサと甲板に舞い降りる。
「レッサ艦長、島を見つけました。ほら、椰子の実ですよ」
ショウはサンズから飛び降りると、レッサ艦長に取ってきた椰子の実を投げる。乗組員達は島があると聞いて、歓声をあげた。
「ページ甲板長、乗組員達を静かにさせろ!」
士官の命令で、甲板長のページが静かにしろと背中をどやしつけて歩いた。
「ショウ王子、その島の位置は? 島に水は有りますか?」
レッサ艦長の当然の質問に一つも答えられず、恥ずかしさに赤面する。
「え~、位置ははっきりはわかりませんが、北に7パーン位かな……結構大きな島で、ペナン島の二倍はあったけど、水は調査して無いんだ……ジャングルには、蛇がいそうで……」
大手柄なのに、申し訳無さそうなショウ王子を呆れて眺めたレッサ艦長は、気を取り直して北へ舵を取らせる。
「ペナン島の二倍の大きさで、ジャングルなら、水もある筈だ! もし、無人島なら……」
上機嫌なレッサ艦長にサンズが見つけてくれたと報告しているショウを、ワンダーは乗組員達に命令を下しながら呑気だなぁと呆れる。
「無人島なら、発見者の物になるんだろ。ショウ王子の物になるのかな?」
「いや、この新航路発見の航海はアスラン王の命令だぞ」
「カドフェル号にも恩賞がでるかなぁ」
士官すらも浮き足立っているのだから、乗組員達に落ち着けと甲板長が怒鳴りつけても効果は薄い。
「僕は島に帰って、位置を計測して来るよ」
カドフェル号が島にたどり着けなかったら、皆の期待が大きいだけに失望してしまうだろうと、ショウはサンズと島の位置を計測して来る。
艦長室で海図に島の位置に×を書き込むと、レッサ艦長はペナン島とゴルチェ大陸の中間点よりは東だと確認して、士官に島へ向かえと命令した。
「島が見えたぞ~」
見張りの言葉で、全員が甲板で目を凝らす。士官達は望遠鏡で、見張りの示した方向を見た。
「島だ!」
未知の大海原を航海して不安を持っていた乗組員達は、飛び上がって喜んだ。
レッサ艦長は正式な調査隊を島へ送った。
「上からなら、島全体を見れますよ」
ショウが蛇嫌いなのはゴルチェ大陸西海岸の測量した時から知っていたが、こんなに重大な件なのにと溜め息をつく。乗組員達がジャングルを切り開くのを待てなくて、水の存在の確認と、住民がいるのかを調査したいとレッサ艦長はショウと竜で上空から島を何度も周回する。
「ショウ王子、あそこに小さいけど水がありますね。降りられますか?」
丁寧に島の上を飛ぶと、ジャングルの木々の間に水が反射しているのに気づいた。
「レッサ艦長~、ジャングルですよ~」
渋るショウに、レッサ艦長は私だけでも降りますと強固に言い張る。
『サンズ、なるべく開けた所に降りてくれ』
『無理だよ~! 水の周りには植物がはえるものだろ』
『あっ、あそこの岩場! ねぇ、サンズは器用だから、狭い所も降りれるよね』
ショウに褒められると、サンズは嬉しくてジャングルの間をぬって岩の上に見事に降り立った。
「そこまで蛇が嫌いですか……」
レッサ艦長は呆れたが、竜から飛び降りると岩の上から下の湖を見た。
「飲めるかな?」
ショウも渋々レッサ艦長に付いて湖の辺まで歩いて行く。
「湧き水ですね。火山活動で島が出来たのかな? 温泉もあると嬉しいな~」
何処までも呑気なショウに、大物なのか? 馬鹿なのか? と不遜な疑問を持ったレッサ艦長だが、湧き水を飲もうとしたのは止めた。
「水質を調査しないと駄目です。士官達に水質調査の道具を持って来させて下さい」
「レッサ艦長をここに残してですか? もし、蛇でも……いえ、敵対的な住民がいたら大変です」
蛇は平気なレッサだが、艦長として一人で未知の島に残るのは何かあったら指揮官不在になるので拙いと思い直す。
「浜の調査隊の所へ送って下さい」
王子をこき使うのは如何かとも思ったが、さっさと調査してゴルチェ大陸へ向かわなくてはいけないのだと自分に言い訳する。
ショウはカドフェル号の士官達に水質調査の道具を持たせて、湖へと帰った。
「湧き水は飲めますね。湖には葉っぱや枝が堆積しているし、ボウフラがいます。少し濁ってますから洗濯や身体を洗うのは大丈夫でしょうが、飲まない方が良いでしょう。でも、整備したら水場として使えますし、もう少し海の近くに井戸も掘れるかもしれませんね」
水の確保は航海では重要なので、島の水が飲めると知ってレッサ艦長は喜んだ。浜に上陸した調査隊はジャングルを湖まで切り開き、海への小川を発見した。乗組員達は新鮮な水を汲んだり、椰子の実や、自生している芋を焼いたりする。
島の裏側にも調査隊を派遣したが、人影は見つけられなかったし、大海原の孤島に人が住んでいた様子は無かった。
「無人島なら、誰の所有になるんだろう」
カドフェル号の全員が議論していたが、ショウは一人で砂浜にしゃがんで星砂をハンカチに包む。ワンダーはショウが立ち上がると、ハンカチを大事そうに胸にしまったのを不審に思って、何をしているのかと尋ねた。
「ほら、この砂は珊瑚礁が波で砕けた物なんだ。星みたいだろ、ララにお土産にしようかなと思って……砂なんて喜ばないかな?」
ワンダーは未知の無人島を発見したのに、許嫁が星砂を喜ぶかを心配しているショウを怒鳴りつけたくなったが、大きく深呼吸して我慢する。
「それより、この島の名前を付けませんと」
砂をもう少しハンカチに包んでいたショウは、ワンダーを見上げて名前? と聞き返した。
「発見したのはショウ様なのですから、当然でしょう」
「え~、発見したのはサンズだよ。では、サンズに名前を考えさせよう」
竜に名前を付けさせようとするショウを、ワンダーは慌てて止めた。
「貴方はサンズの絆の竜騎士なのですから、ショウ様が名前をつけた方が良いです」
竜が発見者だなんて、航海日誌に記入出来ないとワンダーは言い切る。
「レッサ艦長に聞いてみるよ。艦長はカドフェル号の上では、総ての権限を持っているんだからさ」
ワンダーは、それは普通の士官達や、乗組員達に関してで、王子である上に新航路の発見をアスラン王に命令されているショウには及ばないと考えた。レッサ艦長も同意見で、ショウが命名するべきだと言った。
「名前ですか……ララ島? 蛇がいそうな島に、ララの名前を付けたく無いなぁ。父上の名前でも付けるか? アスラン島?」
「王様の名前を呼び捨てするのは、如何なものでしょう」
そんな名前を付けたなんてアスラン王に報告したら、睨み付けられるとレッサ艦長は止める。
「う~ん? サンズ島は? 本当はサンズが島を発見したんだもの」
レッサ艦長は竜好きなアスラン王なら、サンズ島でも怒らないだろうと頷く。
「サンズ島! それにしましょう」
脇で聞いていたワンダーは、そんないい加減な決め方で良いのかと思ったが、ショウとレッサ艦長が決定した事に文句は付けられない。
『あの島を、サンズ島という名前にしたよ。サンズが見つけたんだからね』
『え、私の名前を付けてくれたの! 凄く嬉しいよ~』
サンズが巨大な身体を身悶えさせて喜ぶので、ショウは蛇がいそうだからララの名前を付けなかった事は秘密にしようと思った。
「サンズ島の本格的な調査は、カリン兄上がされるんだろうな。カリン兄上は蛇がいても平気かな?」
ワンダーは従兄のカリンは蛇など恐れないと断言する。
「やっぱり、カリン兄上が後継者になれば良いのに……」
ワンダーはカリンを士官として尊敬していたが、ショウほどの企画力と強運を持って無いと溜め息をついた。
サンズ島へ寄り道する為に7パーン北上したカドフェル号は、逆流していた海流からも逃れられた。乗務員達もサンズ島を発見して、海の果てに向かって無謀な航海をしているのではという不安も払拭されたし、ゴルチェ大陸を目指して東に向う。
1
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる