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第七章 王太子への道 プロポーズ
7 プロポーズ大作戦?
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やっと婚約指輪を買ったショウは、マルシェとマリリンに捕まった。
「ショウ兄上、お土産ありがとう!」
お淑やかにしていたのは、最初の挨拶の時だけで、ショウは纏わりついてくるマリリンを愛しそうに抱き上げる。
「ローラン王国の入れ子細工人形は気にいったかい?」
マリリンは、木の人形の中に何個も少しずつ小さくなっていく人形が入っている入れ子細工人形が気に入ったと、頬にキスをする。
10歳になったマルシェは妹が抱き上げて貰っているのを少し羨ましく思ったが、ちょっと気恥ずかしい年齢に差しかかっていたので、御礼を述べるだけだ。
「兄上、僕にも木の箱をありがとうございます。剣の練習用の防具入れに丁度よさそうです」
「マルシェは、この前メーリングまで航海したんだって?」
未だ自分の船では無いが、父親の商船でメーリングに行ったのを、多忙なショウが知っていたのでマルシェは驚き喜んだ。
「ショウ兄上は、僕の年には船を持っていたのですよね」
羨ましそうなマルシェの頭をグリグリして、もっとゆっくり勉強すれば良かったよと溜め息をつく。
「あの頃は、本当に世の中の事がわかって無かったんだ。今から考えたら、もっと遊んだり、勉強して、のんびり過ごせば良かったと思う。マルシェも、ゆっくり大人になった方が良いよ」
マルシェは、憧れのショウの言葉が理解できなかった。レイテの街でもショウの噂を聞く度に、自分の兄上なんだと誇らしく感じていたのだ。
ルビィは王太子として、ショウが未だ14歳なのに重荷を背負っていくのを可哀想に感じる。
一緒に夕食をという誘いを振り切って、ピップスを連れて離宮に帰った。
「婚約指輪は手に入れたけど……」
ロジーナに言われて、婚約指輪とプロポーズがまだだったと気づいたショウだったが、2ヶ月放置していたララに帰国の挨拶もしていないしと、どちらから先にするかで悩む。
「許嫁が何人もいるのが、問題なんだよ。とは言っても、今更どうしようもないし……」
カザリア王国に留学中のメリッサと、イルバニア王国に滞在中のミミにも婚約指輪を贈るだけでなく、ちゃんとプロポーズしなくてはいけないと頭を抱える。
「今夜はララに帰国の挨拶に行って、明日はロジーナに婚約指輪を渡してプロポーズしよう!」
ララにプロポーズする雰囲気になるかどうかはわからないので、一応は服のポケットにアメジストの指輪が入った小箱を忍ばせてカジムの屋敷に向かう。
夕方だったが、カジムは息子がいないせいもあり、ショウを息子のように可愛がっていたので、心より歓待する。
「長旅、ご苦労様だったなぁ。疲れているのに、わざわざ帰国の挨拶にきてくれて……」
ララは久しぶりに会うショウが、ぐっと大人びて見えてドキドキする。カジムはショウと色々と話したいと思ったが、グッと我慢してララと庭を散策しに行かせる。娘が、ショウがローラン王国に許嫁の中からロジーナを同行したので、落ち込んでいるのを心配していたからだ。
二人で花盛りの庭を夕焼け空を眺めながら散策して、ショウはサンズ島とチェンナイ貿易拠点の視察だけで帰国するつもりだったのに、スーラ王国を訪問して、ローラン王国へ回った事を説明する。ララはスーラ王国は女王が統治する国で、次代も王女が跡取りだと知っていた。
「ショウ様はもしかして……」
ララの不安材料を増やしてしまったとショウは困ったが、いずれは耳に入るだろうと打ち明ける。
「ゼリア王女は、未だ幼い方だったよ。小さな蛇を可愛がっているんだけど、僕はちょっと苦手なので飛び退かないように苦労したんだ。スーラ王国は多夫多妻制だし、遠いから深刻に考えないで」
そう聞いても、ララは少し不安そうな顔をする。ショウは抱き寄せて、胸に顔を埋めて泣き出したララの髪を落ち着くまで撫でる。
「ごめんなさい。久しぶりに会えたのに、泣いたりして……」
涙を拭いて微笑むララが愛しくて、ショウはポケットから小箱を取り出した。
「遅くなったけど、ララ、僕と結婚してくれませんか? 多分、苦労をかけると思うけど、側にいて欲しいんだ」
ララは、小箱の中のアメジストの指輪を見て驚いた。ショウが自分を自ら望んで許嫁に選んだのでは無いのは承知していたので、婚約指輪やプロポーズの言葉を貰えるとは思って無かったのだ。
又、泣き出したララを抱き寄せて、アメジストの石に込められた精神的な安定がもたらされたら良いなぁと希望を込めて、『紫水晶』と唱えて活性化させる。輝きをグンとましたアメジストの指輪をララの左手の薬指に嵌めたが、サイズがどう見ても大き過ぎる。
「ごめん、大き過ぎたね、サイズをなおさせるよ」
ショウが慌てて引き抜こうとするのを、ララは止める。
「いいの、暫くはこのまま嵌めておくわ。ショウ様がプロポーズして下さったのが夢じゃないと落ち着くまでは、一瞬も手放したく無いの」
ララが嬉しそうに、少しサイズが大きいグルグル回る指輪を眺めているのを見て、ショウは婚約指輪あげて良かったとホッとする。
「ところで返事は?」
ララは勿論OKに決まっていると、抱きついてキスをする。
カジムは、娘の指に嵌まっている見たこともないほど輝いているアメジストの指輪と、嬉しそうな笑顔にホッとする。
その夜は、遅くまでショウの帰国のお祝いが続いた。
翌日は、やはりフラナガン宰相に朝から捕まって、サンズ島やチェンナイ貿易拠点の報告書の細かい点をチェックされる。
「サンズ島の温泉ですかぁ。私も引退したら、サンズ島で暮らしたくなりますなぁ」
ショウは永遠にフラナガン宰相は王宮の主として、文官達を叱りつけていると思っていたので、驚いてしまう。
「そんなぁ、引退だなんて……」
「私のような年寄りが、長々と宰相の席に居座っていますと、下の者がやる気を無くしますので。ですが、ショウ王子をもう少し鍛えるまでは、引退したりしませんよ」
そう言うと、スーラ王国の内情や、イルバニア王国の商船がアルジエ海で何隻も海賊に襲われた件を、詳しく報告させられる。ショウがやはり引退して欲しいかもと内心で愚痴っていた時に、フラナガン宰相は少し休憩にしましょうと、お茶を侍従に運ばせた。
「ショウ王子、ヘッジ王国駐在大使から、山羊をチェンナイのハッサン王子とラジック王子に贈ったと報告が来ていましたよ。ルートス国王とパフューム大使なら、冬中交渉しているかと思いましたのに、何かありましたか?」
ショウも、あの二人なら暇な冬中楽しく罵り合いながら、値引き合戦をしそうなのにと首を傾げる。
「おかしいですね……パフューム大使も、退屈な冬の暇つぶしができたと喜んでいたのに。あっ、顔を合わす度に、海賊達が捕まえて食べた山羊を弁償しろと言われるのに嫌気がさしたか、ケチなルートス国王の背中しか暖めないショボイ暖炉の火に凍えついたんじゃないですか?」
フラナガン宰相はお茶を啜って、そんなの十年前から同じでしょうと納得しない。
「何だか、嫌な予感がしますね。あの値引き交渉が三度の飯より好きなパフューム大使が、あっさりと交渉を止めたのですよ。でも、報告書をあげるほどの確信は持てなかったのでしょう。こうして、山羊を贈ったと報告してくる程度で、パフューム大使にも未だ何か変だとしか受け止められていない問題が発生しつつあるのかも……」
ショウは陰鬱なヘッジ王国を思い出して、肩を竦める。何か問題があるとしても、関わりたく無いとショウはこの問題をスルーした。
フラナガン宰相も気になった程度だったので、じゃあ問題が山積みのローラン王国の報告書をチェックしましょうと微笑む。
ショウは、フラナガン宰相が微笑むと恐い! と悪い予感がする。
案の定、夕方までびっしりローラン王国について話し合って、ショウはぐったりした。
「おや、お若いのに情けないですよ。埋め立て埠頭の工場現場は、視察に行かれましたか? シーガルは張り切っていますが、未だ目が行き届かないから港湾管理の役人が、商人達から賄賂を貰ってるみたいですよ。あの子は、まだまだ甘いですからなぁ」
昨日、帰国したばかりなのにと、ショウは溜め息をつく。
やっとフラナガン宰相から解放されたショウは、レイテ港の埋め立て埠頭の工場現場を視察しにいった。
そこは活気が溢れていて、ちょっとの間にシーガルはパロマ大学のフォード教授や研究員達と、石や岩を運ぶ作業員達に大声で指示を出す現場監督に変化していた。
「ここの区域の作業が遅れているぞ! この区域の責任者は誰だ!」
物腰の柔らかだったシーガルが、日焼けした現場監督と化したのにショウは驚いたが、こんなに忙しく指示を出していたら港湾管理人の賄賂までチェックできない筈だと思う。
「ショウ王子、帰国なさったのは聞いてましたが、こんな工場現場までいらっしゃるとは思ってもみませんでした」
ショウは忙しそうだねと、自分の案内はいらないと工場現場の視察をサッサと切り上げて、レイテ港の集会所へ向かった。そこも工場の請負業者と、サリーム兄上ナッシュ兄上が喧々囂々の折衝中だった。
「おお、ショウ! よく帰って来たなぁ! 業者達との交渉を手伝ってくれないか」
サリームに熱烈歓迎されて、これはかなり強欲な業者達にねじ込まれているなと溜め息をつきたくなる。
巨大プロジェクトには大勢の請負業者が関わっていて、発案者のショウ王子の登場にドド~とどよめく。我先に自分達が請け負った区域は、この予算では無理だと詰め寄ってきた。
「こら、お前ら! 今日はこれまでだ!」
優しい口調のサリームより、少しキツい口調のナッシュに怒鳴られて、業者達が一瞬怯んだ隙にとっとと集会所を後にする。
「毎日、こんな事ばかりしているんだ。シーガルは現場に付きっきりだし、人手が足りない」
サリームの屋敷で、ショウは確かに強欲な請負業者達との交渉は兄上達の手に余ると感じた。
「このプロジェクトに巨額な資金を商人達が出資したので、請負業者達は砂糖に群がる蟻のように理性を無くしているんだ」
ナッシュの言葉で、厳しい文官を派遣して貰いますとショウは言って屋敷を去ろうとする。
「おい、せっかく帰国したんだ。飲みに行こう」
引き止める二人の兄上を振り切って、明日にしてくれと頼んだ。
「今夜は、ロジーナにプロポーズしに行くんです」
何故、今夜は駄目なんだと詰問されて、渋々ショウは打ち明けたが、爆笑されてしまう。
「え~、今更プロポーズか?」
「来年には、結婚するんだろ?」
真っ赤になって膨れ面になった末弟に、まぁそういう事なら飲み会は明日にしようと解放してくれた。
「ショウ兄上、お土産ありがとう!」
お淑やかにしていたのは、最初の挨拶の時だけで、ショウは纏わりついてくるマリリンを愛しそうに抱き上げる。
「ローラン王国の入れ子細工人形は気にいったかい?」
マリリンは、木の人形の中に何個も少しずつ小さくなっていく人形が入っている入れ子細工人形が気に入ったと、頬にキスをする。
10歳になったマルシェは妹が抱き上げて貰っているのを少し羨ましく思ったが、ちょっと気恥ずかしい年齢に差しかかっていたので、御礼を述べるだけだ。
「兄上、僕にも木の箱をありがとうございます。剣の練習用の防具入れに丁度よさそうです」
「マルシェは、この前メーリングまで航海したんだって?」
未だ自分の船では無いが、父親の商船でメーリングに行ったのを、多忙なショウが知っていたのでマルシェは驚き喜んだ。
「ショウ兄上は、僕の年には船を持っていたのですよね」
羨ましそうなマルシェの頭をグリグリして、もっとゆっくり勉強すれば良かったよと溜め息をつく。
「あの頃は、本当に世の中の事がわかって無かったんだ。今から考えたら、もっと遊んだり、勉強して、のんびり過ごせば良かったと思う。マルシェも、ゆっくり大人になった方が良いよ」
マルシェは、憧れのショウの言葉が理解できなかった。レイテの街でもショウの噂を聞く度に、自分の兄上なんだと誇らしく感じていたのだ。
ルビィは王太子として、ショウが未だ14歳なのに重荷を背負っていくのを可哀想に感じる。
一緒に夕食をという誘いを振り切って、ピップスを連れて離宮に帰った。
「婚約指輪は手に入れたけど……」
ロジーナに言われて、婚約指輪とプロポーズがまだだったと気づいたショウだったが、2ヶ月放置していたララに帰国の挨拶もしていないしと、どちらから先にするかで悩む。
「許嫁が何人もいるのが、問題なんだよ。とは言っても、今更どうしようもないし……」
カザリア王国に留学中のメリッサと、イルバニア王国に滞在中のミミにも婚約指輪を贈るだけでなく、ちゃんとプロポーズしなくてはいけないと頭を抱える。
「今夜はララに帰国の挨拶に行って、明日はロジーナに婚約指輪を渡してプロポーズしよう!」
ララにプロポーズする雰囲気になるかどうかはわからないので、一応は服のポケットにアメジストの指輪が入った小箱を忍ばせてカジムの屋敷に向かう。
夕方だったが、カジムは息子がいないせいもあり、ショウを息子のように可愛がっていたので、心より歓待する。
「長旅、ご苦労様だったなぁ。疲れているのに、わざわざ帰国の挨拶にきてくれて……」
ララは久しぶりに会うショウが、ぐっと大人びて見えてドキドキする。カジムはショウと色々と話したいと思ったが、グッと我慢してララと庭を散策しに行かせる。娘が、ショウがローラン王国に許嫁の中からロジーナを同行したので、落ち込んでいるのを心配していたからだ。
二人で花盛りの庭を夕焼け空を眺めながら散策して、ショウはサンズ島とチェンナイ貿易拠点の視察だけで帰国するつもりだったのに、スーラ王国を訪問して、ローラン王国へ回った事を説明する。ララはスーラ王国は女王が統治する国で、次代も王女が跡取りだと知っていた。
「ショウ様はもしかして……」
ララの不安材料を増やしてしまったとショウは困ったが、いずれは耳に入るだろうと打ち明ける。
「ゼリア王女は、未だ幼い方だったよ。小さな蛇を可愛がっているんだけど、僕はちょっと苦手なので飛び退かないように苦労したんだ。スーラ王国は多夫多妻制だし、遠いから深刻に考えないで」
そう聞いても、ララは少し不安そうな顔をする。ショウは抱き寄せて、胸に顔を埋めて泣き出したララの髪を落ち着くまで撫でる。
「ごめんなさい。久しぶりに会えたのに、泣いたりして……」
涙を拭いて微笑むララが愛しくて、ショウはポケットから小箱を取り出した。
「遅くなったけど、ララ、僕と結婚してくれませんか? 多分、苦労をかけると思うけど、側にいて欲しいんだ」
ララは、小箱の中のアメジストの指輪を見て驚いた。ショウが自分を自ら望んで許嫁に選んだのでは無いのは承知していたので、婚約指輪やプロポーズの言葉を貰えるとは思って無かったのだ。
又、泣き出したララを抱き寄せて、アメジストの石に込められた精神的な安定がもたらされたら良いなぁと希望を込めて、『紫水晶』と唱えて活性化させる。輝きをグンとましたアメジストの指輪をララの左手の薬指に嵌めたが、サイズがどう見ても大き過ぎる。
「ごめん、大き過ぎたね、サイズをなおさせるよ」
ショウが慌てて引き抜こうとするのを、ララは止める。
「いいの、暫くはこのまま嵌めておくわ。ショウ様がプロポーズして下さったのが夢じゃないと落ち着くまでは、一瞬も手放したく無いの」
ララが嬉しそうに、少しサイズが大きいグルグル回る指輪を眺めているのを見て、ショウは婚約指輪あげて良かったとホッとする。
「ところで返事は?」
ララは勿論OKに決まっていると、抱きついてキスをする。
カジムは、娘の指に嵌まっている見たこともないほど輝いているアメジストの指輪と、嬉しそうな笑顔にホッとする。
その夜は、遅くまでショウの帰国のお祝いが続いた。
翌日は、やはりフラナガン宰相に朝から捕まって、サンズ島やチェンナイ貿易拠点の報告書の細かい点をチェックされる。
「サンズ島の温泉ですかぁ。私も引退したら、サンズ島で暮らしたくなりますなぁ」
ショウは永遠にフラナガン宰相は王宮の主として、文官達を叱りつけていると思っていたので、驚いてしまう。
「そんなぁ、引退だなんて……」
「私のような年寄りが、長々と宰相の席に居座っていますと、下の者がやる気を無くしますので。ですが、ショウ王子をもう少し鍛えるまでは、引退したりしませんよ」
そう言うと、スーラ王国の内情や、イルバニア王国の商船がアルジエ海で何隻も海賊に襲われた件を、詳しく報告させられる。ショウがやはり引退して欲しいかもと内心で愚痴っていた時に、フラナガン宰相は少し休憩にしましょうと、お茶を侍従に運ばせた。
「ショウ王子、ヘッジ王国駐在大使から、山羊をチェンナイのハッサン王子とラジック王子に贈ったと報告が来ていましたよ。ルートス国王とパフューム大使なら、冬中交渉しているかと思いましたのに、何かありましたか?」
ショウも、あの二人なら暇な冬中楽しく罵り合いながら、値引き合戦をしそうなのにと首を傾げる。
「おかしいですね……パフューム大使も、退屈な冬の暇つぶしができたと喜んでいたのに。あっ、顔を合わす度に、海賊達が捕まえて食べた山羊を弁償しろと言われるのに嫌気がさしたか、ケチなルートス国王の背中しか暖めないショボイ暖炉の火に凍えついたんじゃないですか?」
フラナガン宰相はお茶を啜って、そんなの十年前から同じでしょうと納得しない。
「何だか、嫌な予感がしますね。あの値引き交渉が三度の飯より好きなパフューム大使が、あっさりと交渉を止めたのですよ。でも、報告書をあげるほどの確信は持てなかったのでしょう。こうして、山羊を贈ったと報告してくる程度で、パフューム大使にも未だ何か変だとしか受け止められていない問題が発生しつつあるのかも……」
ショウは陰鬱なヘッジ王国を思い出して、肩を竦める。何か問題があるとしても、関わりたく無いとショウはこの問題をスルーした。
フラナガン宰相も気になった程度だったので、じゃあ問題が山積みのローラン王国の報告書をチェックしましょうと微笑む。
ショウは、フラナガン宰相が微笑むと恐い! と悪い予感がする。
案の定、夕方までびっしりローラン王国について話し合って、ショウはぐったりした。
「おや、お若いのに情けないですよ。埋め立て埠頭の工場現場は、視察に行かれましたか? シーガルは張り切っていますが、未だ目が行き届かないから港湾管理の役人が、商人達から賄賂を貰ってるみたいですよ。あの子は、まだまだ甘いですからなぁ」
昨日、帰国したばかりなのにと、ショウは溜め息をつく。
やっとフラナガン宰相から解放されたショウは、レイテ港の埋め立て埠頭の工場現場を視察しにいった。
そこは活気が溢れていて、ちょっとの間にシーガルはパロマ大学のフォード教授や研究員達と、石や岩を運ぶ作業員達に大声で指示を出す現場監督に変化していた。
「ここの区域の作業が遅れているぞ! この区域の責任者は誰だ!」
物腰の柔らかだったシーガルが、日焼けした現場監督と化したのにショウは驚いたが、こんなに忙しく指示を出していたら港湾管理人の賄賂までチェックできない筈だと思う。
「ショウ王子、帰国なさったのは聞いてましたが、こんな工場現場までいらっしゃるとは思ってもみませんでした」
ショウは忙しそうだねと、自分の案内はいらないと工場現場の視察をサッサと切り上げて、レイテ港の集会所へ向かった。そこも工場の請負業者と、サリーム兄上ナッシュ兄上が喧々囂々の折衝中だった。
「おお、ショウ! よく帰って来たなぁ! 業者達との交渉を手伝ってくれないか」
サリームに熱烈歓迎されて、これはかなり強欲な業者達にねじ込まれているなと溜め息をつきたくなる。
巨大プロジェクトには大勢の請負業者が関わっていて、発案者のショウ王子の登場にドド~とどよめく。我先に自分達が請け負った区域は、この予算では無理だと詰め寄ってきた。
「こら、お前ら! 今日はこれまでだ!」
優しい口調のサリームより、少しキツい口調のナッシュに怒鳴られて、業者達が一瞬怯んだ隙にとっとと集会所を後にする。
「毎日、こんな事ばかりしているんだ。シーガルは現場に付きっきりだし、人手が足りない」
サリームの屋敷で、ショウは確かに強欲な請負業者達との交渉は兄上達の手に余ると感じた。
「このプロジェクトに巨額な資金を商人達が出資したので、請負業者達は砂糖に群がる蟻のように理性を無くしているんだ」
ナッシュの言葉で、厳しい文官を派遣して貰いますとショウは言って屋敷を去ろうとする。
「おい、せっかく帰国したんだ。飲みに行こう」
引き止める二人の兄上を振り切って、明日にしてくれと頼んだ。
「今夜は、ロジーナにプロポーズしに行くんです」
何故、今夜は駄目なんだと詰問されて、渋々ショウは打ち明けたが、爆笑されてしまう。
「え~、今更プロポーズか?」
「来年には、結婚するんだろ?」
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