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第十章 結婚生活
5 結婚生活って……
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妊娠中のレティシィアを説得して、やっと離宮の後宮に入らせた。
「これは……誰の部屋を訪ねたのか丸わかりなのでは……」
離宮の後宮には小さな庭や噴水が設置してあり、お互いのプライバシーを保てるようにはしてあったが、他の屋敷に住んでいても妊娠を知ったのだ。ショウは兄上達の屋敷は後宮など無いのに、どうしているのかと疑問を持った。
「ショウ様、そんなに悩むぐらいなら、屋敷に帰っても宜しくてよ」
レティシィアに笑われて、ショウはお腹の子供の安全の為に後宮で産んで欲しいと、慌てて否定する。
確かにあの屋敷では王太子の赤ちゃんを護れるとは言い切れないと、レティシィアも諦めて後宮に来たのだ。
「ララ様は不安でしょうから、優先してあげて下さいね」
そう言われても、妊婦も精神的に安定する必要があるだろうとショウは悩む。
「気持ちがリラックスする音楽を聴いたりすると、お腹の赤ちゃんも気持ちが良いそうだよ」
確か胎教とかもあった筈だと、レティシィアとゆっくりと過ごす時間を持とうと思う。
「まぁ、どこでそんなことを耳にされたのかしら? でも、音楽は私も好きですわ」
レティシィアはレイテ一の芸妓と呼ばれていただけあって、楽器はどれでも弾きこなす。
ショウは王子としての嗜み程度なので、一緒にと楽器を渡されて躊躇うが、これで落ち着いてくれるならと合奏する。
「練習不足だなぁ~」
楽器を置いて、指が動かないやと愚痴っているショウをレティシィアは優しい人だと思う。でも、後宮の主になるには、優しいだけでは駄目だ。アスラン王のように厳しさを持たないと、後宮は女達の争いの場になってしまうと心配する。
レティシィアは自分のお腹の赤ちゃんが女の子でありますように……撫でながら祈りを込める。
レティシィアはいずれ誰かの第一夫人になり、子供を後宮に置いて出て行くのだ。
後ろ盾を持たない王子を、一人で後宮に置いて出て行くのは不安だ。王女なら後継者問題に関係ないので、ショウが蝶よ花よと甘やかして育ててくれるのが目に浮かぶし、安心だ。
ミヤのような第一夫人がいたら心強いのだけどと、レティシィアはショウ様の第一夫人を切望していたが、その反面で羨ましいような、大変そうなので可哀想なような、複雑な気持ちを持て余す。
「レティシィア、子供が産まれて少し手が離れたら、真珠の養殖を続けて欲しいなぁ」
「まぁ! 宜しいのですか!」
レティシィアの顔が嬉しさに輝く。
「貴女のことだから、途中でほり投げるのは嫌なんでしょう。妊娠中や赤ちゃんは警備の問題もあるので、後宮からは出れないけど、自分のやりたい仕事を続けたら良いと思うよ」
ショウは一夫多妻制にまだ心理的に負担を感じていたので、妻達には少しでも生きがいを持って暮らして欲しい。
「でも、他の方から……」
「東南諸島連合王国も変化するべきなんだ。一度に改革は受け入れられないけど、少しずつ臨機応変に対処していこう。他の妻達にも、それぞれ外交などを手伝って貰うつもりなんだ」
パロマ大学で経済を学んでいるメリッサに、商船隊の管理を任せても良いなぁとショウは笑う。
「もしかして、他の男に嫁いで欲しくないからですか?」
腕を抓られて、そんなことはない! と慌てて否定したものの、そうかもとうなだれる。
「レティシィアもメリッサも第一夫人には色っぽすぎるよ~。かなり年をとるまでは、相手の家庭の平和の為にも、第一夫人だなんて無理だもの。それまでは私の財産の管理をしてくれたら良いかなぁと思ったんだ」
まぁ! とレティシィアは笑ったが、少し真面目な顔をして忠告する。
「ショウ様が普通の御方なら、それでも良かったでしょう。でも、王太子の第一夫人はショウ様の財産の管理だけが仕事ではありません。後宮で争いが起こらないように目を配ったり、王子や王女の育成も大事な仕事ですわ。早く第一夫人を見つけて下さい」
そういえば兄上達も五歳になったら、後宮にいる母上の元から離宮に移ったのだと思い出す。
「そうかぁ、本当に第一夫人を見つけなきゃいけないな」
レティシィアの産む子が男の子なら、五年後には離宮で勉強を始めるのだ。兄上達の後継者争いで、ぎくしゃくした時期もあったけど、ミヤのお陰で楽しく過ごせたよなぁと、ショウは離宮へと集められて育った経験を思い出す。
腹違いの兄弟だけど、一緒に離宮で成長したから思い出も共有しているし、性格もよくわかる。でも、それは全てミヤが喧嘩が起こらないように気配りをしていたからなのだ。そんな第一夫人がいれば、楽になると溜め息をつく。
父上が王宮に居着かないのは、カリンと同じ帰宅拒否症なのかもと、まだ二人しか居ない後宮でも、レティシィアの部屋を出てララのご機嫌伺いに行くのに気をつかうショウは考えた。
アスラン王の後宮にはサリム、カリン、ハッサンの母上だけでなく、何人もの若い妻達がいるのだと思っただけで、胃が痛くなる。
レティシィアの部屋から直接ララの部屋に行くのを躊躇して、サンズに会いに行く。
「今度、死神に会ったら、ちゃんと記憶を消去して貰おう。それと、モテモテはいらないかな……」
サンズに寄りかかってショウは眠りに落ちる。
……あれっ? 此処は……
翔は家の近くの道をとぼとぼと歩いていた。夏の太陽がサンサンと輝いている。
……そうだ! 結花に振られたんだ!……
失恋の痛みが蘇ったが、ハッとして走り出す。家の近くの公園で、男の子が友達とボール遊びをしている。
相手が投げたボールが大きくバウンドして、公園から飛び出す。翔はボールをキャッチして、道に飛び出そうとしていた男の子に渡す。
「道に飛び出したら、危ないよ」
背中でトラックが通り過ぎる音を聞きながら、じゃあね! と家に向かう……
ハッと目覚めて、あの死んだ年と同じになったのだと冷や汗をかく。親不孝しちゃったんだなぁと、自分が親になる立場になって初めて、子どもを喪う悲しさに気づいた。
『ショウ、どうしたの?』
絆の竜騎士の動揺に気づいて、サンズは目を開く。
『変な夢を見たんだよ。サンズ、気分転換にケーレブ島までひとっ飛びしよう!』
ショウはレティシィアとララとロジーナとミヤと兄上達に、ケーレブ島のフレッシュチーズを買いに行った。ララの元には自分で持って行ったが、他の人には女官や側仕えに持って行かせる。
明日はロジーナの機嫌を取りに行かなきゃ! ララとフレッシュチーズを食べながら、イズマル島の会議をサッサと済ませようと予定を考えるショウだった。
ショウったら、仕事のことなら仕方ないけど、ロジーナのことを考えているわね! 他の妻のことは気にしないと決意したララだが、ロジーナだけは別だと思う。
「はい、あ~ん!」と、一番可愛く見える笑顔で、ショウにチーズを食べさせる。
うっ、可愛いけど、ロジーナのことを考えたのバレてる? 王家の女って、マジ怖いや! 明日のことは、明日考えようと、ショウは新婚のララといちゃいちゃしだした。
「これは……誰の部屋を訪ねたのか丸わかりなのでは……」
離宮の後宮には小さな庭や噴水が設置してあり、お互いのプライバシーを保てるようにはしてあったが、他の屋敷に住んでいても妊娠を知ったのだ。ショウは兄上達の屋敷は後宮など無いのに、どうしているのかと疑問を持った。
「ショウ様、そんなに悩むぐらいなら、屋敷に帰っても宜しくてよ」
レティシィアに笑われて、ショウはお腹の子供の安全の為に後宮で産んで欲しいと、慌てて否定する。
確かにあの屋敷では王太子の赤ちゃんを護れるとは言い切れないと、レティシィアも諦めて後宮に来たのだ。
「ララ様は不安でしょうから、優先してあげて下さいね」
そう言われても、妊婦も精神的に安定する必要があるだろうとショウは悩む。
「気持ちがリラックスする音楽を聴いたりすると、お腹の赤ちゃんも気持ちが良いそうだよ」
確か胎教とかもあった筈だと、レティシィアとゆっくりと過ごす時間を持とうと思う。
「まぁ、どこでそんなことを耳にされたのかしら? でも、音楽は私も好きですわ」
レティシィアはレイテ一の芸妓と呼ばれていただけあって、楽器はどれでも弾きこなす。
ショウは王子としての嗜み程度なので、一緒にと楽器を渡されて躊躇うが、これで落ち着いてくれるならと合奏する。
「練習不足だなぁ~」
楽器を置いて、指が動かないやと愚痴っているショウをレティシィアは優しい人だと思う。でも、後宮の主になるには、優しいだけでは駄目だ。アスラン王のように厳しさを持たないと、後宮は女達の争いの場になってしまうと心配する。
レティシィアは自分のお腹の赤ちゃんが女の子でありますように……撫でながら祈りを込める。
レティシィアはいずれ誰かの第一夫人になり、子供を後宮に置いて出て行くのだ。
後ろ盾を持たない王子を、一人で後宮に置いて出て行くのは不安だ。王女なら後継者問題に関係ないので、ショウが蝶よ花よと甘やかして育ててくれるのが目に浮かぶし、安心だ。
ミヤのような第一夫人がいたら心強いのだけどと、レティシィアはショウ様の第一夫人を切望していたが、その反面で羨ましいような、大変そうなので可哀想なような、複雑な気持ちを持て余す。
「レティシィア、子供が産まれて少し手が離れたら、真珠の養殖を続けて欲しいなぁ」
「まぁ! 宜しいのですか!」
レティシィアの顔が嬉しさに輝く。
「貴女のことだから、途中でほり投げるのは嫌なんでしょう。妊娠中や赤ちゃんは警備の問題もあるので、後宮からは出れないけど、自分のやりたい仕事を続けたら良いと思うよ」
ショウは一夫多妻制にまだ心理的に負担を感じていたので、妻達には少しでも生きがいを持って暮らして欲しい。
「でも、他の方から……」
「東南諸島連合王国も変化するべきなんだ。一度に改革は受け入れられないけど、少しずつ臨機応変に対処していこう。他の妻達にも、それぞれ外交などを手伝って貰うつもりなんだ」
パロマ大学で経済を学んでいるメリッサに、商船隊の管理を任せても良いなぁとショウは笑う。
「もしかして、他の男に嫁いで欲しくないからですか?」
腕を抓られて、そんなことはない! と慌てて否定したものの、そうかもとうなだれる。
「レティシィアもメリッサも第一夫人には色っぽすぎるよ~。かなり年をとるまでは、相手の家庭の平和の為にも、第一夫人だなんて無理だもの。それまでは私の財産の管理をしてくれたら良いかなぁと思ったんだ」
まぁ! とレティシィアは笑ったが、少し真面目な顔をして忠告する。
「ショウ様が普通の御方なら、それでも良かったでしょう。でも、王太子の第一夫人はショウ様の財産の管理だけが仕事ではありません。後宮で争いが起こらないように目を配ったり、王子や王女の育成も大事な仕事ですわ。早く第一夫人を見つけて下さい」
そういえば兄上達も五歳になったら、後宮にいる母上の元から離宮に移ったのだと思い出す。
「そうかぁ、本当に第一夫人を見つけなきゃいけないな」
レティシィアの産む子が男の子なら、五年後には離宮で勉強を始めるのだ。兄上達の後継者争いで、ぎくしゃくした時期もあったけど、ミヤのお陰で楽しく過ごせたよなぁと、ショウは離宮へと集められて育った経験を思い出す。
腹違いの兄弟だけど、一緒に離宮で成長したから思い出も共有しているし、性格もよくわかる。でも、それは全てミヤが喧嘩が起こらないように気配りをしていたからなのだ。そんな第一夫人がいれば、楽になると溜め息をつく。
父上が王宮に居着かないのは、カリンと同じ帰宅拒否症なのかもと、まだ二人しか居ない後宮でも、レティシィアの部屋を出てララのご機嫌伺いに行くのに気をつかうショウは考えた。
アスラン王の後宮にはサリム、カリン、ハッサンの母上だけでなく、何人もの若い妻達がいるのだと思っただけで、胃が痛くなる。
レティシィアの部屋から直接ララの部屋に行くのを躊躇して、サンズに会いに行く。
「今度、死神に会ったら、ちゃんと記憶を消去して貰おう。それと、モテモテはいらないかな……」
サンズに寄りかかってショウは眠りに落ちる。
……あれっ? 此処は……
翔は家の近くの道をとぼとぼと歩いていた。夏の太陽がサンサンと輝いている。
……そうだ! 結花に振られたんだ!……
失恋の痛みが蘇ったが、ハッとして走り出す。家の近くの公園で、男の子が友達とボール遊びをしている。
相手が投げたボールが大きくバウンドして、公園から飛び出す。翔はボールをキャッチして、道に飛び出そうとしていた男の子に渡す。
「道に飛び出したら、危ないよ」
背中でトラックが通り過ぎる音を聞きながら、じゃあね! と家に向かう……
ハッと目覚めて、あの死んだ年と同じになったのだと冷や汗をかく。親不孝しちゃったんだなぁと、自分が親になる立場になって初めて、子どもを喪う悲しさに気づいた。
『ショウ、どうしたの?』
絆の竜騎士の動揺に気づいて、サンズは目を開く。
『変な夢を見たんだよ。サンズ、気分転換にケーレブ島までひとっ飛びしよう!』
ショウはレティシィアとララとロジーナとミヤと兄上達に、ケーレブ島のフレッシュチーズを買いに行った。ララの元には自分で持って行ったが、他の人には女官や側仕えに持って行かせる。
明日はロジーナの機嫌を取りに行かなきゃ! ララとフレッシュチーズを食べながら、イズマル島の会議をサッサと済ませようと予定を考えるショウだった。
ショウったら、仕事のことなら仕方ないけど、ロジーナのことを考えているわね! 他の妻のことは気にしないと決意したララだが、ロジーナだけは別だと思う。
「はい、あ~ん!」と、一番可愛く見える笑顔で、ショウにチーズを食べさせる。
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