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第15章 次代の王
23 エリカの結婚式
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ミヤはショウの後宮にリリィを訪ねていた。
5歳のアイーシャ王女を筆頭に、4才のレイラ王女、3歳のカイト王子、2歳のユウト王子、ユリア王女、バイオレット王女、そして昨年ミミが産んだカレン王女、ミーシャが産んだオーロラ王女、8人の王子や王女を育てているリリィは、ショウ王太子の資産の管理もしているのだ。忙がしくて目が回りそうな日々を送っている。
「本当にショウも沢山の子持ちになりましたね。イズマル島にもリュウ、そしてスーラ王国のゼリア王女にはカシアが……まぁ10人も!」
ミヤもアスラン王の王子や王女達を育てていた頃は、何時眠っていたのかわからない程だったと、リリィを労う。
「エリカ王女の結婚式も間近ですし、パメラ王女も来年にはシーガルに嫁がれますわね。ミヤ様もお寂しくなられるのでは?」
後宮に一人残ったパメラは、スローンと絆を結び、竜騎士の学校で修業したり、レイテ大学で学んだりと、充実した日々を送っている。忙しいリリィを訪ねて来たのは、子育てを労う為だけではない。
「エリカの結婚式ですが……旧帝国三国では、花嫁は父親がエスコートするのです」
リリィはローラン王国のミーシャ姫とショウの結婚式に参列した時を思い出す。日蔭の身にしたミーシャ姫をルドルフ国王がエスコートして、花婿のショウに手渡したのだ。
「アスラン王は……まぁ、そんな事は嫌われそうですわね。東南諸島では、結婚式も簡単ですし」
ミヤが育てたエリカ王女のイルバニア王国での立場を心配しているのは、リリィにも他人事ではない。アイーシャ王女、レイラ王女、バイオレット王女は、いずれ外国に嫁いでいくのだ。しかし、ショウならちゃんと花嫁のエスコートをしてくれそうなので、そこのところは心配していない。逆に、政略結婚をさせるのをグズグズと悩みそうで、そこのフォローをしなくてはいけないと、リリィは覚悟している。
「私はアスラン様の首に縄を付けてでも結婚式に連れて行くつもりです。でも、その後の昼食会だとか、舞踏会までは、無理だと諦めています。そこで、ショウにも参列して貰いたいのです」
ミヤがリリィに頼みに来たのは、ショウのスケジュールが一杯だからだ。
「それは……良いですわ! ミヤ様の頼みをお断りなんて、できませんもの。ショウ様も妹君の結婚式に参列するぐらいは引き受けて下さいます」
三人の大臣が知ったら怒りそうな事を、リリィは微笑みながら引き受けた。アスラン王の留守に、ショウ王太子まで留守だと、本当に大変なのだ。フラナガン相談役の穴が結構大きい。そんな事はリリィも承知しているが、ミヤ様がわざわざ頼みに来られた心情を汲んだのだ。
「本来なら、宰相を任命するべきなのですが……アスラン様ときたら、何を考えておられるのやら! 相変わらず留守ばかりだし」
そう言いながらも、アスランがフラナガン以外の宰相を選びたくないのが理解できるミヤだった。
「それにしても、ショウは時々レイテ大学に泊まり込んでいるとか? 公務だけでも忙しいのに、何をしているのかしら?」
リリィは、くすくす笑いながら、風力発電をリヒテンシュタイン教授と作っていると説明した。
「まぁ、あの子は昔から変な事を言い出しては、私やアスラン様を驚かします。風で電気とやらを作ってどうするのかしら?」
「レイテの夜を昼間みたいに明るくすると仰ってましたよ。でも、夜も明るくなったら、何時眠るのでしょうね」
ミヤとリリィの朗らかな笑い声が後宮に響いた。
第一夫人が二人結託したら、アスラン王もショウ王太子も逆らえない。
ウィリアム王子とエリカ王女の結婚式で、アスラン王は見事に花嫁の父親役を果たした。参列していた各国の王族や外交官、イルバニア王国の貴族達は、若々しく傲慢なアスラン王の存在感に圧倒された。
「ちぇ! アスランはいつまでも格好良いな」グレゴリウス国王は、ユーリ王妃と結婚して30年近く経っても、昔のライバルに嫉妬してしまう。
「まぁ、それよりウィリーの幸せそうなこと!」男にしておくのが勿体ないほどの美貌のウィリアムなのだが、整い過ぎた顔が普段はムスッして見える。今日は美しい花嫁にデレデレだと、ユーリ王妃は喜ぶ。
真珠が散りばめられた豪華なウエディングドレスを着たエリカ王女は、とても美しく、美貌のウィリアム王子と並ぶと眩しいぐらいだった。
「エリカ……幸せになるのですよ」
ミヤは育てたエリカの花嫁姿に目を潤ませていたが、アスラン王が結婚式が終わった後の祝福の嵐のどさくさに紛れて逃げ出そうとしたのに気づき、素早く礼服の袖をつかむ。
「後はショウでも良いだろう」袖を振りきってアスランが逃げ出すのを、ミヤとショウは溜め息をつきながら見送った。外国で騒ぎたくなかったからだ。
「ショウ、後はお願いしますね」
「えっ! ミヤも出ないの?」
ショウは引き止めたが、本来第一夫人はこんな晴れがましい場所に出ないのだと昔気質のミヤは頑固に断る。
「アスラン様は第二夫人を決められませんでしたが、本来は第二夫人が表に出るべきなのですよ。時代は変わっていくものですから、リリィを表に出しても構いませんが、ショウもどうするのか考えておきなさい。その代わり、アスラン様をレイテに連れて帰りますから、ショウは久し振りにゼリア王女とカシアに会っていらっしゃい」
入り婿のショウを定期的にスーラ王国に行かせる機会だと、リリィと相談して決めたのだ。第一王女のカシアも手が離れた頃だし、もうすぐエスメラルダがリュウとレイテに引っ越してくる。ショウは、リリィがやたら鷹を連れて行くのを勧めたのは、予め決めていたからだと、肩を竦める。
ショウは、イルバニア王国に来たついでに、スーラ王国に行くことになった。
「全く、第一夫人に結託されたら敵わないな……でも、カシアに会えるのは嬉しい!」
ゼリアによく似たカシアは、小さな赤ちゃんなのに女王様だ。ショウは、思い出しただけで、可愛らしさに微笑みが浮かぶ。それに、カシアは、アルジェ女王やゼリア王女が厳しく育てるだろうから、ショウとしては純粋に甘やかして良い存在だ。
「ゼリア! 久し振りだね」
サリザンの大使館で航海の汚れを落として、ゼリアの後宮に向かった。
「ショウ様、リリィ様からお手紙を貰ってから、ずっとお待ちしていましたの」
二人が親密な時間を過ごしてから、乳母がカシアを抱いて連れてきた。ショウは久し振りの我が子を腕に抱いて、愛しそうに頬ずりする。
『ショウ、真白は?』
ロスに、真白は雛を育てるのに忙しそうだと告げる。
『でも、真白の姉が産んだ白斗を連れてきたよ。呼んでも良いかな?』
メルローが銀羽根とつがって産んだ白斗は、白にところどころ金褐色の羽根が混ざっている若い美鷹だ。
『ほら、白斗! こちらがロスだ。襲っては駄目だよ』
ロスも子ヘビではなくなっているので、未だ若い鷹に襲われたりはしないと不満に思うが、白斗が『わかった』と答えたのに満足する。しかし、真白ほど話せないのに、少しガッカリする。
『魔力を持った動物が少なくて寂しい』と愚痴るロスに、イルバニア王国で話せる狼に会ったと教えてやる。
『姉ヘビを殺した豹は嫌いだけど、狼ならタマをとらないかな?』と、ロスは興味を持つ。
『ユナはマキシウス王子の子守りをしているぐらい賢いから、言い聞かせたら、君を襲ったりしないよ。あっ、ローラン王国のニコライ王子の子守りをしているブラックも、話が少し出来ると聞いたよ』
律儀な狼のソリスは、自分の子狼ブラックをアリエナ皇太子妃の元へと行かせたのだ。ユナ程は話せないが、ニコライ王子の側から離れない大きな黒い狼は、ローラン王国では知らない者はいない。
『ゼリア、今度はイルバニア王国に行こうよ!』
外国での外交などアルジェ女王になるまでしたことがなかったスーラ王国だが、時代はどんどん変わっている。ゼリアは、ショウ様に色々と教えて欲しいと願った。
5歳のアイーシャ王女を筆頭に、4才のレイラ王女、3歳のカイト王子、2歳のユウト王子、ユリア王女、バイオレット王女、そして昨年ミミが産んだカレン王女、ミーシャが産んだオーロラ王女、8人の王子や王女を育てているリリィは、ショウ王太子の資産の管理もしているのだ。忙がしくて目が回りそうな日々を送っている。
「本当にショウも沢山の子持ちになりましたね。イズマル島にもリュウ、そしてスーラ王国のゼリア王女にはカシアが……まぁ10人も!」
ミヤもアスラン王の王子や王女達を育てていた頃は、何時眠っていたのかわからない程だったと、リリィを労う。
「エリカ王女の結婚式も間近ですし、パメラ王女も来年にはシーガルに嫁がれますわね。ミヤ様もお寂しくなられるのでは?」
後宮に一人残ったパメラは、スローンと絆を結び、竜騎士の学校で修業したり、レイテ大学で学んだりと、充実した日々を送っている。忙しいリリィを訪ねて来たのは、子育てを労う為だけではない。
「エリカの結婚式ですが……旧帝国三国では、花嫁は父親がエスコートするのです」
リリィはローラン王国のミーシャ姫とショウの結婚式に参列した時を思い出す。日蔭の身にしたミーシャ姫をルドルフ国王がエスコートして、花婿のショウに手渡したのだ。
「アスラン王は……まぁ、そんな事は嫌われそうですわね。東南諸島では、結婚式も簡単ですし」
ミヤが育てたエリカ王女のイルバニア王国での立場を心配しているのは、リリィにも他人事ではない。アイーシャ王女、レイラ王女、バイオレット王女は、いずれ外国に嫁いでいくのだ。しかし、ショウならちゃんと花嫁のエスコートをしてくれそうなので、そこのところは心配していない。逆に、政略結婚をさせるのをグズグズと悩みそうで、そこのフォローをしなくてはいけないと、リリィは覚悟している。
「私はアスラン様の首に縄を付けてでも結婚式に連れて行くつもりです。でも、その後の昼食会だとか、舞踏会までは、無理だと諦めています。そこで、ショウにも参列して貰いたいのです」
ミヤがリリィに頼みに来たのは、ショウのスケジュールが一杯だからだ。
「それは……良いですわ! ミヤ様の頼みをお断りなんて、できませんもの。ショウ様も妹君の結婚式に参列するぐらいは引き受けて下さいます」
三人の大臣が知ったら怒りそうな事を、リリィは微笑みながら引き受けた。アスラン王の留守に、ショウ王太子まで留守だと、本当に大変なのだ。フラナガン相談役の穴が結構大きい。そんな事はリリィも承知しているが、ミヤ様がわざわざ頼みに来られた心情を汲んだのだ。
「本来なら、宰相を任命するべきなのですが……アスラン様ときたら、何を考えておられるのやら! 相変わらず留守ばかりだし」
そう言いながらも、アスランがフラナガン以外の宰相を選びたくないのが理解できるミヤだった。
「それにしても、ショウは時々レイテ大学に泊まり込んでいるとか? 公務だけでも忙しいのに、何をしているのかしら?」
リリィは、くすくす笑いながら、風力発電をリヒテンシュタイン教授と作っていると説明した。
「まぁ、あの子は昔から変な事を言い出しては、私やアスラン様を驚かします。風で電気とやらを作ってどうするのかしら?」
「レイテの夜を昼間みたいに明るくすると仰ってましたよ。でも、夜も明るくなったら、何時眠るのでしょうね」
ミヤとリリィの朗らかな笑い声が後宮に響いた。
第一夫人が二人結託したら、アスラン王もショウ王太子も逆らえない。
ウィリアム王子とエリカ王女の結婚式で、アスラン王は見事に花嫁の父親役を果たした。参列していた各国の王族や外交官、イルバニア王国の貴族達は、若々しく傲慢なアスラン王の存在感に圧倒された。
「ちぇ! アスランはいつまでも格好良いな」グレゴリウス国王は、ユーリ王妃と結婚して30年近く経っても、昔のライバルに嫉妬してしまう。
「まぁ、それよりウィリーの幸せそうなこと!」男にしておくのが勿体ないほどの美貌のウィリアムなのだが、整い過ぎた顔が普段はムスッして見える。今日は美しい花嫁にデレデレだと、ユーリ王妃は喜ぶ。
真珠が散りばめられた豪華なウエディングドレスを着たエリカ王女は、とても美しく、美貌のウィリアム王子と並ぶと眩しいぐらいだった。
「エリカ……幸せになるのですよ」
ミヤは育てたエリカの花嫁姿に目を潤ませていたが、アスラン王が結婚式が終わった後の祝福の嵐のどさくさに紛れて逃げ出そうとしたのに気づき、素早く礼服の袖をつかむ。
「後はショウでも良いだろう」袖を振りきってアスランが逃げ出すのを、ミヤとショウは溜め息をつきながら見送った。外国で騒ぎたくなかったからだ。
「ショウ、後はお願いしますね」
「えっ! ミヤも出ないの?」
ショウは引き止めたが、本来第一夫人はこんな晴れがましい場所に出ないのだと昔気質のミヤは頑固に断る。
「アスラン様は第二夫人を決められませんでしたが、本来は第二夫人が表に出るべきなのですよ。時代は変わっていくものですから、リリィを表に出しても構いませんが、ショウもどうするのか考えておきなさい。その代わり、アスラン様をレイテに連れて帰りますから、ショウは久し振りにゼリア王女とカシアに会っていらっしゃい」
入り婿のショウを定期的にスーラ王国に行かせる機会だと、リリィと相談して決めたのだ。第一王女のカシアも手が離れた頃だし、もうすぐエスメラルダがリュウとレイテに引っ越してくる。ショウは、リリィがやたら鷹を連れて行くのを勧めたのは、予め決めていたからだと、肩を竦める。
ショウは、イルバニア王国に来たついでに、スーラ王国に行くことになった。
「全く、第一夫人に結託されたら敵わないな……でも、カシアに会えるのは嬉しい!」
ゼリアによく似たカシアは、小さな赤ちゃんなのに女王様だ。ショウは、思い出しただけで、可愛らしさに微笑みが浮かぶ。それに、カシアは、アルジェ女王やゼリア王女が厳しく育てるだろうから、ショウとしては純粋に甘やかして良い存在だ。
「ゼリア! 久し振りだね」
サリザンの大使館で航海の汚れを落として、ゼリアの後宮に向かった。
「ショウ様、リリィ様からお手紙を貰ってから、ずっとお待ちしていましたの」
二人が親密な時間を過ごしてから、乳母がカシアを抱いて連れてきた。ショウは久し振りの我が子を腕に抱いて、愛しそうに頬ずりする。
『ショウ、真白は?』
ロスに、真白は雛を育てるのに忙しそうだと告げる。
『でも、真白の姉が産んだ白斗を連れてきたよ。呼んでも良いかな?』
メルローが銀羽根とつがって産んだ白斗は、白にところどころ金褐色の羽根が混ざっている若い美鷹だ。
『ほら、白斗! こちらがロスだ。襲っては駄目だよ』
ロスも子ヘビではなくなっているので、未だ若い鷹に襲われたりはしないと不満に思うが、白斗が『わかった』と答えたのに満足する。しかし、真白ほど話せないのに、少しガッカリする。
『魔力を持った動物が少なくて寂しい』と愚痴るロスに、イルバニア王国で話せる狼に会ったと教えてやる。
『姉ヘビを殺した豹は嫌いだけど、狼ならタマをとらないかな?』と、ロスは興味を持つ。
『ユナはマキシウス王子の子守りをしているぐらい賢いから、言い聞かせたら、君を襲ったりしないよ。あっ、ローラン王国のニコライ王子の子守りをしているブラックも、話が少し出来ると聞いたよ』
律儀な狼のソリスは、自分の子狼ブラックをアリエナ皇太子妃の元へと行かせたのだ。ユナ程は話せないが、ニコライ王子の側から離れない大きな黒い狼は、ローラン王国では知らない者はいない。
『ゼリア、今度はイルバニア王国に行こうよ!』
外国での外交などアルジェ女王になるまでしたことがなかったスーラ王国だが、時代はどんどん変わっている。ゼリアは、ショウ様に色々と教えて欲しいと願った。
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