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第2章 異変の兆候
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周囲に敵が残っていないことを確認し、ニアンはナナに再び話しかける。
「ナナ、ありがとう。助かった」
「私の方こそ、ニアンがかばってくれなかったら……もう、ここに生きて立てていなかった。
ニアン、本当にありがとう。でも肩の傷は大丈夫?」
ナナは心配そうにニアンの左肩に目を向ける。
手長猿に突き刺された左肩部分の服は血にまみれ、布地に大きな穴が空いている。
だがその下に覗いている肌は、血が付着しているものの傷は無いように見える。
「……傷はもう大丈夫だ。貫通して骨も砕かれたと思ったが、この通り、完全に治ってる」
そう言いながらニアンは腕をぐるぐると回し、肩の傷が癒えていることを証明する。
「そっか、そっかぁ。よかったぁ! 本当によかったよぉ!
私のせいでニアンに何かあったらって思うと……」
「いや、攻撃を受けてしまったのは俺のミスだ。
それどころか、ナナのおかげで窮地を救われたんだぞ?」
「ううん、私を助けるためにニアンは傷付いたんだもん。
……私もっと強くなるね。ニアンを守れるぐらいに!」
ナナは安堵に目を潤ませつつも、今のまま守られるだけではいけないと、決意を込めた表情でニアンに宣言した。
「それは……まあ気にするな。
それにな、そんなに早く俺が守られる側になるのも、格好つかないもんだぞ?」
「え? そっか、そうだね。
……ニアンはカッコいいもんね、えへへ」
肩をすくめ、優しい表情で苦笑するニアン。
その言葉を受けたナナは落ち着きを取り戻し、素直に称賛と微笑みを返した。
飾らない真っ直ぐな笑顔を向けられたニアンはたじろぐ。
「お、おう」
唐突な賛辞に顔を赤くしたニアンだったが、ニコニコしているナナの様子に『もう大丈夫か』と安心した。
そしてそろそろ頃合いかと、気になっていたことを口に出す。
「そ、それよりもだな……ナナ?
その……野宿にはちょうどいいとは思うんだが、それ、いつまで光ってるんだ?」
「え? ええっ? えええぇえええええっっっ⁉」
そう、ニアンの傷をいやすためにアイマーが魔法を行使した時、ナナが魔法を使ったように見せるための演出としてナナを光らせたのだが……戦闘終了してしばらくたった今でも、まだ光っていたのである。
ナナは自分で気づいていなかったらしく、自分の身体のあちこちを確認しながら慌てる。
素肌が露出している部分だけでなく、ナナが装着している服も靴も光っている。
もちろん、頭上のバケツも煌々と輝いており、その存在を存分にアピールしている。
『ちょっと魔王、まおー‼ これ、どうするのよ! まだ光ってるんだけど!
いつ消えるの? 消してー‼』
『ふむ。久々に……かれこれ千年ぶりぐらいに使った発光魔法であったから、少々魔力を込めすぎたやもしれん。
なに。最初に込めた魔力が尽きれば自然と消えるであろう』
『自然とって、それどれぐらいかかるのー!』
『徐々に光量は下がっておるから、この感じだと……
まあ、夜が明ける頃には光も弱くなって、昼のうちには消えるのではないか?』
『まぶしくて眠れないじゃない!』
早速、スキル【伝心】でアイマーに問い合わせるナナ。
だがアイマーによると、慣れない魔法のため魔力を込めすぎたらしく、翌朝まではピカピカし続けるとのことだ。
瞼を閉じても自分が発光しているため、その黒い瞳の奥までキラキラと眩しい。
ナナは力なく肩を落とし、ニアンに告げる。
「ううー、魔力のコントロールを失敗したみたいで、明日の朝ぐらいまで光っていそう……ふぇ~」
「そうか。ま、まあ明日には消えるならいいじゃないか。明るくて助かるし。
……ところで、まだまだ聞きたいことが盛りだくさんなんだ。
一つずつ確認させてもらってもいいか?」
「うん! 私にわかることならなんでも!」
ニアンの確認に、ナナはピカピカと頷く。
「じゃあまずは……さっき使った魔法は何だ?
ギルドの治癒師でも、あれだけの傷を一瞬で癒やす術を持つ者は限られる。
ナナは治癒魔法のスキルを持っているのか?」
「うっ⁉」
ぴかっとその動きを止めるナナ。
真っ暗闇に光る黄色…黄金色のナナは、その挙動が遠くからでもよく目立つ。
『……魔王⁉ どうしよう、どう説明すれば違和感ないかな』
『うむ……。我のことのみ隠して、あとは本当のことを言うしかあるまい。
ここで下手に嘘をついたところで、どうしても違和感は残るのではないか?』
『そっか、そうだよね。うん、嘘はつかないように頑張る!』
アイマーとしては、ニアンなら多少違和感があっても好意的に受け入れるだろうという打算があった。
ナナはできるだけ正直に、でもどうしても言えない部分だけ隠す、というアイマーの案に大賛成する。
「……それが、頭の中で声がして、魔法の効果を教えてくれたの。
私も魔法なんて使ったことが無いから、どうやって発動したのかもわからなくて。
あのタイミングで魔法があって、本当に良かったとしか言えなくて……」
嘘は言っていない。
声の主も魔法を行使したのもアイマーであることを言っていないだけである。
「ということは……もう一度使うことはできないのか?」
「うん……使おうと思っても、今まで魔法を使える人がいない場所にいたから、そもそも魔法って聞いたことはあったけど、どういうものかもよくわかってないの。ごめんね、役に立てなくて」
そう言ってしゅんとなるナナ。
気のせいか、若干光量も落ちたような気がする。
その姿に失敗を悟ったニアンは、慌ててフォローする。
「いや、いいんだ。俺の方こそすまない。負担をかけるような言い方をしてしまった。
もし普段からあの強力な治癒を使えるんだったら、それを前提に戦闘を組み立てるのもいいかと思っただけなんだ、気にしないでくれ。
それに一度使えたんだ。魔法の基礎を学べば、またいずれ使えるようになるさ。
すごいな、ナナはいろんな才能がある!」
「うん、ありがと。
でも、またこういうことが起きた時のために、私、早くちゃんと魔法を使えるようになりたい。
……ニアン、もしよかったら、教えてもらうことって、できる?」
「ああ、そうだな、簡単な基礎なら俺でも教えられる。まずは魔力を認識するところから始めるか」
「やったあ! ありがとニアン!」
顔を上げて、笑顔になるナナ。気のせいか、若干光量も上がったような気がする。
……いったいどういう仕組みなのだろうか。
その様子を見て(たぶん安堵して)目を細めたニアンは、もう一つ気になっていたことを確認する。
「……だが、その前にもう一つ、聞いておきたいことがあるんだ」
「うん、何でも聞いて!」
「戦闘中、あの手長猿がナナに上空から攻撃した時、俺にはナナが何人かに増えたように見えた。
隠密や格闘系の達人なら、極めて短い間だけ分身を作り出すことができると聞いたことはある。
だがナナのアレは、ずっと分身していたように見えたんだ。
いったいどうやったんだ?」
「う~ん、あれはね、魔王城から出てくるときにいっぱい魔物がいて、その中をかいくぐってきたときに使い方を覚えた【気配操作】っていうスキルだよ。
自分の気配を消したり、増やしたり、遠くに嘘の気配を作ったりできるの。
それで手長猿を騙してたんだけど……最後、急に眩暈がして消えちゃったんだよね。
今まではそんなことなかったから理由はわからないんだけど、集中力が切れちゃったのかなあ」
ひらひらと身振り手振りを交え、当たり前のように話すナナ。
その瞳がニアンの左肩を捉え、申し訳なさそうに身体の光量を落とす。
ニアンに怪我をさせてしまったことを思い出したのだろう。
ちなみに2人の話には関係ないが、ナナが身体を動かすたびに光源が動き、ニアンの影が様々な方向に伸びたり縮んだりしている。
「それに魔王城に魔王以外の魔物なんかいたか……?
いやそれよりも、【気配操作】なら俺も持っているが、そんなことできないぞ?
というか近接系統の冒険者ならけっこう持っているスキルだが、そんな使い方ができるやつは見たことがない。
せいぜい、気配を薄くして隠れやすくするとか、敵の攻撃を集めるために目立つとか、その程度だ」
「……あれ? そうなの?」
ナナの説明内容にニアンは驚いた。
ナナのきょとんとした表情からは嘘をついている様子は無いが、その説明内容は彼が持つ知識から大きくかけ離れていたのだ。
「ナナ、ありがとう。助かった」
「私の方こそ、ニアンがかばってくれなかったら……もう、ここに生きて立てていなかった。
ニアン、本当にありがとう。でも肩の傷は大丈夫?」
ナナは心配そうにニアンの左肩に目を向ける。
手長猿に突き刺された左肩部分の服は血にまみれ、布地に大きな穴が空いている。
だがその下に覗いている肌は、血が付着しているものの傷は無いように見える。
「……傷はもう大丈夫だ。貫通して骨も砕かれたと思ったが、この通り、完全に治ってる」
そう言いながらニアンは腕をぐるぐると回し、肩の傷が癒えていることを証明する。
「そっか、そっかぁ。よかったぁ! 本当によかったよぉ!
私のせいでニアンに何かあったらって思うと……」
「いや、攻撃を受けてしまったのは俺のミスだ。
それどころか、ナナのおかげで窮地を救われたんだぞ?」
「ううん、私を助けるためにニアンは傷付いたんだもん。
……私もっと強くなるね。ニアンを守れるぐらいに!」
ナナは安堵に目を潤ませつつも、今のまま守られるだけではいけないと、決意を込めた表情でニアンに宣言した。
「それは……まあ気にするな。
それにな、そんなに早く俺が守られる側になるのも、格好つかないもんだぞ?」
「え? そっか、そうだね。
……ニアンはカッコいいもんね、えへへ」
肩をすくめ、優しい表情で苦笑するニアン。
その言葉を受けたナナは落ち着きを取り戻し、素直に称賛と微笑みを返した。
飾らない真っ直ぐな笑顔を向けられたニアンはたじろぐ。
「お、おう」
唐突な賛辞に顔を赤くしたニアンだったが、ニコニコしているナナの様子に『もう大丈夫か』と安心した。
そしてそろそろ頃合いかと、気になっていたことを口に出す。
「そ、それよりもだな……ナナ?
その……野宿にはちょうどいいとは思うんだが、それ、いつまで光ってるんだ?」
「え? ええっ? えええぇえええええっっっ⁉」
そう、ニアンの傷をいやすためにアイマーが魔法を行使した時、ナナが魔法を使ったように見せるための演出としてナナを光らせたのだが……戦闘終了してしばらくたった今でも、まだ光っていたのである。
ナナは自分で気づいていなかったらしく、自分の身体のあちこちを確認しながら慌てる。
素肌が露出している部分だけでなく、ナナが装着している服も靴も光っている。
もちろん、頭上のバケツも煌々と輝いており、その存在を存分にアピールしている。
『ちょっと魔王、まおー‼ これ、どうするのよ! まだ光ってるんだけど!
いつ消えるの? 消してー‼』
『ふむ。久々に……かれこれ千年ぶりぐらいに使った発光魔法であったから、少々魔力を込めすぎたやもしれん。
なに。最初に込めた魔力が尽きれば自然と消えるであろう』
『自然とって、それどれぐらいかかるのー!』
『徐々に光量は下がっておるから、この感じだと……
まあ、夜が明ける頃には光も弱くなって、昼のうちには消えるのではないか?』
『まぶしくて眠れないじゃない!』
早速、スキル【伝心】でアイマーに問い合わせるナナ。
だがアイマーによると、慣れない魔法のため魔力を込めすぎたらしく、翌朝まではピカピカし続けるとのことだ。
瞼を閉じても自分が発光しているため、その黒い瞳の奥までキラキラと眩しい。
ナナは力なく肩を落とし、ニアンに告げる。
「ううー、魔力のコントロールを失敗したみたいで、明日の朝ぐらいまで光っていそう……ふぇ~」
「そうか。ま、まあ明日には消えるならいいじゃないか。明るくて助かるし。
……ところで、まだまだ聞きたいことが盛りだくさんなんだ。
一つずつ確認させてもらってもいいか?」
「うん! 私にわかることならなんでも!」
ニアンの確認に、ナナはピカピカと頷く。
「じゃあまずは……さっき使った魔法は何だ?
ギルドの治癒師でも、あれだけの傷を一瞬で癒やす術を持つ者は限られる。
ナナは治癒魔法のスキルを持っているのか?」
「うっ⁉」
ぴかっとその動きを止めるナナ。
真っ暗闇に光る黄色…黄金色のナナは、その挙動が遠くからでもよく目立つ。
『……魔王⁉ どうしよう、どう説明すれば違和感ないかな』
『うむ……。我のことのみ隠して、あとは本当のことを言うしかあるまい。
ここで下手に嘘をついたところで、どうしても違和感は残るのではないか?』
『そっか、そうだよね。うん、嘘はつかないように頑張る!』
アイマーとしては、ニアンなら多少違和感があっても好意的に受け入れるだろうという打算があった。
ナナはできるだけ正直に、でもどうしても言えない部分だけ隠す、というアイマーの案に大賛成する。
「……それが、頭の中で声がして、魔法の効果を教えてくれたの。
私も魔法なんて使ったことが無いから、どうやって発動したのかもわからなくて。
あのタイミングで魔法があって、本当に良かったとしか言えなくて……」
嘘は言っていない。
声の主も魔法を行使したのもアイマーであることを言っていないだけである。
「ということは……もう一度使うことはできないのか?」
「うん……使おうと思っても、今まで魔法を使える人がいない場所にいたから、そもそも魔法って聞いたことはあったけど、どういうものかもよくわかってないの。ごめんね、役に立てなくて」
そう言ってしゅんとなるナナ。
気のせいか、若干光量も落ちたような気がする。
その姿に失敗を悟ったニアンは、慌ててフォローする。
「いや、いいんだ。俺の方こそすまない。負担をかけるような言い方をしてしまった。
もし普段からあの強力な治癒を使えるんだったら、それを前提に戦闘を組み立てるのもいいかと思っただけなんだ、気にしないでくれ。
それに一度使えたんだ。魔法の基礎を学べば、またいずれ使えるようになるさ。
すごいな、ナナはいろんな才能がある!」
「うん、ありがと。
でも、またこういうことが起きた時のために、私、早くちゃんと魔法を使えるようになりたい。
……ニアン、もしよかったら、教えてもらうことって、できる?」
「ああ、そうだな、簡単な基礎なら俺でも教えられる。まずは魔力を認識するところから始めるか」
「やったあ! ありがとニアン!」
顔を上げて、笑顔になるナナ。気のせいか、若干光量も上がったような気がする。
……いったいどういう仕組みなのだろうか。
その様子を見て(たぶん安堵して)目を細めたニアンは、もう一つ気になっていたことを確認する。
「……だが、その前にもう一つ、聞いておきたいことがあるんだ」
「うん、何でも聞いて!」
「戦闘中、あの手長猿がナナに上空から攻撃した時、俺にはナナが何人かに増えたように見えた。
隠密や格闘系の達人なら、極めて短い間だけ分身を作り出すことができると聞いたことはある。
だがナナのアレは、ずっと分身していたように見えたんだ。
いったいどうやったんだ?」
「う~ん、あれはね、魔王城から出てくるときにいっぱい魔物がいて、その中をかいくぐってきたときに使い方を覚えた【気配操作】っていうスキルだよ。
自分の気配を消したり、増やしたり、遠くに嘘の気配を作ったりできるの。
それで手長猿を騙してたんだけど……最後、急に眩暈がして消えちゃったんだよね。
今まではそんなことなかったから理由はわからないんだけど、集中力が切れちゃったのかなあ」
ひらひらと身振り手振りを交え、当たり前のように話すナナ。
その瞳がニアンの左肩を捉え、申し訳なさそうに身体の光量を落とす。
ニアンに怪我をさせてしまったことを思い出したのだろう。
ちなみに2人の話には関係ないが、ナナが身体を動かすたびに光源が動き、ニアンの影が様々な方向に伸びたり縮んだりしている。
「それに魔王城に魔王以外の魔物なんかいたか……?
いやそれよりも、【気配操作】なら俺も持っているが、そんなことできないぞ?
というか近接系統の冒険者ならけっこう持っているスキルだが、そんな使い方ができるやつは見たことがない。
せいぜい、気配を薄くして隠れやすくするとか、敵の攻撃を集めるために目立つとか、その程度だ」
「……あれ? そうなの?」
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