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第3章 異世界就職
猫の毛づくろい亭②
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「ニアン様おかえりなさいませ!
ってあれれ? ご予定が変わられたのですか?
あ、でもいつでもお食事もお風呂も大丈夫です!
まずはお部屋へ戻られますか?
お? おおお⁉ 女の子⁉
お、おかーさーん‼
ニアン様が!
ニアン様が年若い麗しきバケツ付きの女の子をお部屋に連れ込もうとされています!
こ、これは⁉
双方の合意があればもちろんそういったことは問題ないかと思いますが、もしかしたら!
もしかするとぉおお⁉
衛兵案件ですかぁああああ‼」
礼儀正しく受付業務をこなそうとしていた、可愛らしく賑やかな猫耳少女。
だが予想外の事態が重なって混乱したのか、途中から物騒なことを言い始めた。
さすが宿屋の娘である。
8歳にして、その手の事情には通じているようだ。
「こらフォルテ! ニアン様申し訳ございません!」
娘の叫びを聞いて、食堂の方から慌てて駆け付けた母らしき女性が、猫耳少女を受付から引っぺがしてニアンに詫びた。
その女性は、猫耳少女をそのまま大人にしたような、たおやかな猫耳女性だった。
ニアンは苦笑しつつ、2人に説明する。
「いや、構わないさ。
それよりフォルテを叱らないでやってくれ、マロンさん。
客の事情を把握して、立派に受け付け業務を果たしてくれている証拠……と言えなくもない……んじゃないか?
はははっ、まあ楽しいものを見せてもらえたんだ。
むしろおひねりが必要だな。
で、俺も予想外だったんだが、思ったより早く用事が終わったんだ。
この子は……訳あって俺が保護することになった、ナナだ。
一緒に部屋に泊まることになるが問題ないか?
もちろん料金は追加しておいてくれ」
「い、いえ、おひねりなんて……はぁ、承知いたしました、ニアン様」
猫耳女性――マロンは、硬貨を取り出そうとするニアンに遠慮しようとしたものの、ここはニアンの意向に沿うことにしたようだ。
ナナの件も含めて了承してくれた。
「あと、ナナは遠い国の出身だから、色々と作法がわからないことがあるかもしれない。
バケツをかぶっているのも故郷の風習らしい。
それとなくフォローしてくれると助かる」
そう言ってニアンは、取り出した硬貨をフォルテと呼ばれた猫耳少女に差し出す。
「ううぅ~ニアン様ぁ~ すみません~」
フォルテは瞳をウルウルとさせてニアンに謝りつつ、しかし、しっかりと腕を伸ばし、本当に手渡されたおひねりを受け取った。
8歳にしてたくましい商魂である。
ちなみにその身体は、母親の細い腕で小脇に抱えられている。
母のマロンも獣人だからなのか、たおやかに見えてなかなか力強いようだ。
「もう、この子は……申し訳ございません、ニアン様、ありがとうございます。
ナナ様も、ぜひ、ごゆっくりとおくつろぎください。
何かございましたら、何でもお気軽に私やこの子、あと主人のスターフにお申し付けくださいね」
マロンはそう言い終えると、苦笑しながら娘を解放し、その頭をぽふぽふした。
フォルテは目を細め、喜んでいる。
どこからどう見ても、娘が可愛くて仕方ない母なのであろう。
先程フォルテを叱りつけたのも、娘を守る為の行動だったのだということがわかる。
元気を取り戻したフォルテが、早速ニアンとナナに話しかける。
「大変失礼いたしました!
では気を取り直して、ニアン様、ナナ様、お部屋にご案内いたしますね!」
そう言って、エプロンの前で手を合わせ、ニコッと小首をかしげるフォルテ。
「か、かわ、かわいいいい‼」
それに反応したのは、少し前までニアンの姉(妄想)の和服コーデを楽しんでいたナナだった。
ナナもフォルテの叫びを聞き、さすがに現実に帰ってきていたのだ。
ちなみに【伝心】によって和服が似合う碧眼美女を見たアイマーも、異世界の装いとピラステアの美の融合に賛辞を述べたりしていた。
能力を無駄なことに使うコンビである。
そして今、ナナの両手は、いまにもフォルテを抱き締めんとばかりにワキワキしていた。
「い、イイかな、イイよね?」
「は、はい。……はい?」
ナナの意味不明な問いかけに、うっかり了承するフォルテ。
ってあれれ? ご予定が変わられたのですか?
あ、でもいつでもお食事もお風呂も大丈夫です!
まずはお部屋へ戻られますか?
お? おおお⁉ 女の子⁉
お、おかーさーん‼
ニアン様が!
ニアン様が年若い麗しきバケツ付きの女の子をお部屋に連れ込もうとされています!
こ、これは⁉
双方の合意があればもちろんそういったことは問題ないかと思いますが、もしかしたら!
もしかするとぉおお⁉
衛兵案件ですかぁああああ‼」
礼儀正しく受付業務をこなそうとしていた、可愛らしく賑やかな猫耳少女。
だが予想外の事態が重なって混乱したのか、途中から物騒なことを言い始めた。
さすが宿屋の娘である。
8歳にして、その手の事情には通じているようだ。
「こらフォルテ! ニアン様申し訳ございません!」
娘の叫びを聞いて、食堂の方から慌てて駆け付けた母らしき女性が、猫耳少女を受付から引っぺがしてニアンに詫びた。
その女性は、猫耳少女をそのまま大人にしたような、たおやかな猫耳女性だった。
ニアンは苦笑しつつ、2人に説明する。
「いや、構わないさ。
それよりフォルテを叱らないでやってくれ、マロンさん。
客の事情を把握して、立派に受け付け業務を果たしてくれている証拠……と言えなくもない……んじゃないか?
はははっ、まあ楽しいものを見せてもらえたんだ。
むしろおひねりが必要だな。
で、俺も予想外だったんだが、思ったより早く用事が終わったんだ。
この子は……訳あって俺が保護することになった、ナナだ。
一緒に部屋に泊まることになるが問題ないか?
もちろん料金は追加しておいてくれ」
「い、いえ、おひねりなんて……はぁ、承知いたしました、ニアン様」
猫耳女性――マロンは、硬貨を取り出そうとするニアンに遠慮しようとしたものの、ここはニアンの意向に沿うことにしたようだ。
ナナの件も含めて了承してくれた。
「あと、ナナは遠い国の出身だから、色々と作法がわからないことがあるかもしれない。
バケツをかぶっているのも故郷の風習らしい。
それとなくフォローしてくれると助かる」
そう言ってニアンは、取り出した硬貨をフォルテと呼ばれた猫耳少女に差し出す。
「ううぅ~ニアン様ぁ~ すみません~」
フォルテは瞳をウルウルとさせてニアンに謝りつつ、しかし、しっかりと腕を伸ばし、本当に手渡されたおひねりを受け取った。
8歳にしてたくましい商魂である。
ちなみにその身体は、母親の細い腕で小脇に抱えられている。
母のマロンも獣人だからなのか、たおやかに見えてなかなか力強いようだ。
「もう、この子は……申し訳ございません、ニアン様、ありがとうございます。
ナナ様も、ぜひ、ごゆっくりとおくつろぎください。
何かございましたら、何でもお気軽に私やこの子、あと主人のスターフにお申し付けくださいね」
マロンはそう言い終えると、苦笑しながら娘を解放し、その頭をぽふぽふした。
フォルテは目を細め、喜んでいる。
どこからどう見ても、娘が可愛くて仕方ない母なのであろう。
先程フォルテを叱りつけたのも、娘を守る為の行動だったのだということがわかる。
元気を取り戻したフォルテが、早速ニアンとナナに話しかける。
「大変失礼いたしました!
では気を取り直して、ニアン様、ナナ様、お部屋にご案内いたしますね!」
そう言って、エプロンの前で手を合わせ、ニコッと小首をかしげるフォルテ。
「か、かわ、かわいいいい‼」
それに反応したのは、少し前までニアンの姉(妄想)の和服コーデを楽しんでいたナナだった。
ナナもフォルテの叫びを聞き、さすがに現実に帰ってきていたのだ。
ちなみに【伝心】によって和服が似合う碧眼美女を見たアイマーも、異世界の装いとピラステアの美の融合に賛辞を述べたりしていた。
能力を無駄なことに使うコンビである。
そして今、ナナの両手は、いまにもフォルテを抱き締めんとばかりにワキワキしていた。
「い、イイかな、イイよね?」
「は、はい。……はい?」
ナナの意味不明な問いかけに、うっかり了承するフォルテ。
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