『バケツ姫と魔王の異世界伝説』 - これは 願いを込めた 罪滅ぼし -

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第3章 異世界就職

無限収納①

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ナナがひとしきりフォルテを堪能したあと、たっぷりといい香りを堪能した上に、追加のおひねりも頂いてご機嫌なフォルテに案内され、2階奥の部屋に通される。

ナナとフォルテはすっかり仲良くなり、あとで一緒に入浴する約束までキャーキャー言いながら交わしていた。
ナナ曰く、決して邪な欲求によるものではなく、この国の湯あみの作法がわからないため、年が近い同性のフォルテに教えてほしい、という理由である。

ちなみに、おひねりはなぜかナナも一緒に頂いた。
ニアンの判断基準も大概謎である。

案内された部屋は、リビング、寝室、脱衣所、浴室、トイレ、ウォークインクローゼットに分かれていた。
リビングと寝室は広く、ダブルサイズのベッドを4脚並べてもまだ余裕がありそうだ。
元々は寝室にのみベッドが2脚ある状態だったが、なんとマロンが一人でベッドを担いできて、さっとリビングに設置してしまった。
さすが獣人である。
この体力があるからこそ、たった3人で宿屋を切り盛りできているのだろう。

フォルテは部屋をナナに説明し、2人分のお茶を用意したあと、満面の笑顔で手を振りながら受付に戻っていった。

時刻はまだ正午を少し過ぎたぐらい。
昼食は道中に携帯食(喰人草の疑似餌)とナナのシャワーによるお湯で済ませてある。
今日は一日ゆっくり宿で過ごす予定だ。

ナナがフォルテと約束したお風呂の時間は夕食後のため、それまでは時間がある。
ニアンはしばらく荷物を整理するようで、ウォークインクローゼットに入っていった。
ニアンの持つリュックのような形状の鞄には、見た目以上の荷物が入っているようで、空きの多かったウォークインクローゼットが、見る間に荷物で埋まっていく。

(ニアンのおかげで拠点はなんとかなりそう。
衣食住の住はこれで大丈夫。
食もあの美味しい実がいっぱいあるって言ってたし。
あとは着るものと仕事と、日本に帰るための情報だよね。
そうだ、着るものと言えば……)

一息ついたナナは何を思ったのか、リビングに据え付けられた鏡を見ながら、濡らしたタオルで頭上のバケツを丁寧に磨き始めた。

その行動に疑問を持ったアイマーが、【伝心】でナナに問いかける。

『おい、お主は一体何をしておるのだ?』

『ん? バケツをきれいにしてるんだよ?』

当たり前のように答えるナナ。

『それはわかっておる。
なぜようやく部屋にたどり着いたのに、最初にやることがバケ……【深淵なる節食】を磨くことなのか、と問うておるのだ。
服を洗うなり、ゆっくり睡眠をとるなり、他に優先すべきことは様々に考えられるのではないか?』

思い出したようにバケツの正式名称を用いながら、真っ当なことを言うアイマー。

『え』

一瞬彼の正気を疑うナナ。

『いや【伝心】で伝わって来おったわ!
なぜ我の正気が疑われねばならんのだ!』

『あ、ごめんごめん、魔王なのにあまりに普通のことを言うからびっくりしちゃって。
これはね、この世界に来てから最初にもらった私専用の装備なんでしょ?
思い返せばこのバケツのおかげで色々と……ってあれ?
私、このバケツに何かお世話になったっけ?
むしろ、苦労していない?』

『もらったというか、アレはどちらかというと奪い取っ……』

『えー! えっと、うん!
魔王が改造してくれたおかげで、いい装備になったんだと思うんだよ、コレ。
元々の使い道がない産業廃棄ぶ……ゴホンゴホン、すごく限定された用途の置物から、とても便利な魔道具へ!
最初は魔王の説明が意味わからなかったんだけど、よくよく思い出して考えてみると、頑丈だから頭はしっかり守られるし、まだ試してないけど、何でも入るんだよね?
魔王は入らないけど。
すごく便利なんじゃないかな、魔王は入らないけど』

『どんだけ我を収納したいんじゃい‼
あと元の【深淵なる暴食】を酷評しすぎであろうて!
まったく。まあ結果的にかなり便利になったとは思うが。
試しに、その辺にあるものを収納してみてはどうだ?
使い方は【深淵なる節食】に触れて……これは既に頭部に触れておるから不要だな。
収納したいものを意識して、収納する、と念じればよい』

『うん! やってみたい!
でも、ここにある物は私の物じゃないから、うっかり収納したら窃盗になっちゃう。
何かニアンに借りてみるね』

『いやお主、そもそもそのバケツがほとんど窃盗……』

「ニアーン!」

アイマーのツッコミを無視して、ナナはニアンを呼びにいく。


    ◇
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