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第4章 炎が呼び覚ます記憶
救援①
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「おにいちゃん! ななおねえちゃん!」
幼女の声を聞いた瞬間、黒髪の少女は割れるような頭痛に襲われ、思わず地面に膝をつく。
チカチカと視界が明滅し、視点が定まらない。
何が起こったのか分からず少女は狼狽えたが、少しでも状況を確認するため、必死になって前を向く。
だが、それが少女をさらなる混乱に陥れる。
目の前の光景と、脳裏から呼び起こされる記憶映像が、交互に重なるように脳内で再生される。
それはほんの数日前、少女が見た光景。
忘れることなどできないはずの、悪夢のような記憶――
◇
時は少し遡り、ナナ達がハンナ村を脱出した直後の、村の集会場にて。
見張り役だったリッドは、たっぷりの毛布にくるまれて眠るレニの幼い寝顔を眺めながら独り言ちる。
「俺も余裕が無かったとは言え、こんな幼子に気を回すこともできていなかったなんてな」
レニの寝息だけが聞こえる静かな部屋の中で、リッドはここ数日の自らの慌てぶりを思い返す。
正直なところ、今でも落ち着いているとは言い難いが、ナナ達のおかげで少しだけ光が見えたせいか、少しはまともな思考ができるようになっていた。
「ん…ううん、あれ? りっどさん?」
そんなことを考えていると、レニの声が聞こえた。
どうやら目が覚めてしまったようだ。
「大丈夫だ。レニ、お前はまだ眠っているといい」
リッドはそうレニにやさしく声をかけて、再び眠りにいざなおうとした。
「ななおねえちゃんはどこ? みいあおねえちゃんは⁉」
だが、レニは少女達がいないことに気付いて焦ったのか、眠気も吹き飛んだ様子であたりを見回している。
「しーっ! 静かに。村の連中に気付かれてはまずい。
あの子達なら、グランと俺の妻を助けに行ってくれた。きっと無事に帰ってくるさ」
落ち着かない様子のレニをなだめるべく、リッドはナナ達がレニの兄であるグランを助けに向かったことを伝える。
だが、レニの反応はリッドが予想していたものと異なっていた。
「だめ! おにいちゃんは、れにがいないとだめなの!
れにじゃないと、おにいちゃんをたすけることはできないの!」
思わぬ剣幕にリッドは驚くが、大人な対応で返す。
「お前がグランを助けたいのは分かってるさ。俺だって、同じ気持ちだ。
だがな、俺やお前が向かったところで盗賊に勝つことはできん。
それどころか、あの勇敢な4人の足を引っ張ることになる」
「ちがう! そんなのわかってるもん! そうじゃないの、おにいちゃんはびょうきなの!
よるになると、くろいもやもやがおにいちゃんをくるしめるの。れにがとってあげなきゃいけないの!
そうじゃないと、おにいちゃんがくろいもやもやにたべられちゃうの!」
「グランが病気、だと? 聞いたことがないが。黒いもや? お前は何を……」
「ほんとうだよ! ほかのひとにはないしょにしてるし、おにいちゃんもねてるからしらないことだけど、れにはまいにち、ねてるおにいちゃんからでてくる、くろいもやもやをとってるもん!
おとうさんとおかあさんがしんじゃったひから、おにいちゃんはずっとびょうきなんだよ!」
レニの真剣な様子と、彼女の両親が亡くなった事件以降、グランが病に侵されているという思っても見なかった情報に、リッドは何か引っかかるものを感じた。
「……それは、本当のことなのか? それに、なぜお前はグランを治せるんだ?」
「ほんとうだよ! でも、れにはおにいちゃんのびょうきをなおせないの。
だから、だんだんくろいもやもやもおおくなってるの…。
でもでも、れにはびょうきがわるくなるのをおそくすることはできるの。
おかあさんとおなじちからをもってるって、おかあさんがしんじゃうまえにおしえてくれたの。
だから、れにだけはおにいちゃんのびょうきをとめられるの!」
「おかあさんというと、土地神様の巫女だったドミーナさんだよな。
……あれからもう半年か。レニ、お前はすごいな。巫女の力を引き継いでいたんだな。
……となるとグランの病気っていうのも本当か……」
「おねがいりっどさん! れにをおにいちゃんのところにつれていって!
もうなんにちもおにいちゃんのびょうきがすすんじゃってる! じかんがないの!」
リッドはレニの懇願を受け、目頭を揉むようにして考える。
そしてしばしの後、レニに同意して、2人で出発準備を始めた。
◇
「あれ、だよね。盗賊っぽい人たちがたむろしてる」
「そのようですわね。情報通りの場所にあるなんて、全く隠す気もなかったということかしら」
森の中に身を潜めたまま、ナナとミイアが互いの認識を合わせる。
ハンナ村を出たナナ達は、村に流れ込んでいる川の上流に向かった。
盗賊のアジトの場所については、会議のあとで村人たちから情報を入手していた。
それによると、盗賊達の会話の中に、彼らのアジトが川の上流であり、徒歩で数時間の距離であることを示す内容が含まれていたらしい。
それに、盗賊達は拉致した村人を連れて、川の上流に去って行ったそうだ。
経路の偽装も疑ったが、途中の川沿いのルートには大人数の足跡が残っており、全く隠す気のないずさんな拉致計画のようだった。
そして案の定、数時間歩いた先であっさりと盗賊のアジトらしき建物を発見した。
アジト周囲では、盗賊らしき男達が思い思いの姿勢でだらけている。
『【気配探知】! ……外に20人、あの建物…アジトの中に10人か。
拉致された村人はアジトの中かな。魔王、お願い』
『うむ、わかっておる。お主の気配探知と我の魔力探知で、敵の情報をつまびらかにしてくれようぞ!
【魔力探知】!』
そして、魔王が探知したアジト屋内の様子が、スキル【伝心】経由でナナに共有される。
『縛られて転がされているのが拉致された者達のようだ。
だが6人。聞いていた数より少ない上に、男だけだ。リッドとやらの妻もここにはおらんようだな』
『そうみたいだね。でもまずはこの6人を助けよう。
残りの4人、酒を飲んでる奴らが盗賊達だよね、全員【解析】しておくよ……⁉
この人達! 薬草採取中に襲ってきた人たちだよ! 間違いない! この盗賊団の人だったんだ!』
アイマーによって共有された屋内の様子に映る盗賊達を、ナナがさらにバケツの装備スキル【解析】によって調べようとして、対象が見知った顔であることに気付いた。
一昨日の薬草採取中に襲ってきた悪漢達は、どうやらこの盗賊の一味であったらしい。
『む……そのようであるな。
あの時は魔力探知が効かなかったが、どうやら魔道具の類いは今は使っておらんようだ。
使い捨てだったのかもしれん。ふん、どちらにせよ、我が娘を傷つけた罪、万死に値する!
こ奴らはここで殲滅しておかねばなるまい!』
「ちょ、ちょっと待ってね魔王。まずは村の人たちを助けてからだよ!」
はやるアイマーを阻止しつつ、ナナは落ち着いて【解析】で敵の情報を調べる。
そしてその結果をミイア達3人にも共有すべく、ひそひそ声で伝える。
「みんな聞いて。えっとね、アジトの外に20人、中に10人いる。
中にいる10人のうち6人が村人、縛られて床に転がされてる。
残りの4人が盗賊。そこに1人だけ、レベル25で斧術スキルを持ってる強い人がいる。
毛皮鎧の大男。
あと、麻痺毒の針を腰にぶら下げた人も1人いる。みんな気を付けてね。
他の盗賊はレベル10から15ぐらい。
平均レベルは私達より高いけど、攻撃系や魔法系のスキルを持っている人はほとんどいない」
ナナの声に、ミイアとアレン、リアムが、ナナと出会ってからの短い間において、すでに何度目かわからない唖然とした表情になる。
「……あ、相変わらずすさまじいですわね。
その索敵能力、障害物の向こうの相手の場所どころか、レベルや装備までわかるなんて……。
ナナ、あなたの能力、知られると厄介な干渉を受けるかもしれませんので、できるだけ秘匿するのですよ」
「うん、ありがと。大丈夫! 信用している人以外には言わないようにするから!」
「……そ、それがいいですわ」
異次元とも言える能力を平然と駆使するナナの様子に、ミイアは危機感を抱いて忠告する。
それに対してナナは元気にサムズアップしながら首肯した……が。
(ダメですわ。全然大丈夫じゃありませんわ。
ナナ様はホイホイ人を信じてしまいますから、これはわたくし達が守って差し上げなければ!)
などと、ミイアが余計に危機感を募らせる結果となってしまった。
「それはそうと、ナナの情報では、中にいる敵は4人。では計画通りアジトに火を放って盗賊達を外におびき出してから、ミイア様とアレンと僕が敵を引き付ける。その隙に、ナナが姿を消してアジトに潜入し、村人たちをこっそり逃がすという流れでいいですか?」
「ええ。それと、もし盗賊が村人たちを連れて出てきても、わたくし達が陽動している間にナナがこっそり解放する。それでいいわね」
脇道にそれていた話をリアムが強引に元に戻す。
そしてここまでの道中に立てた村人奪還計画の流れを再確認し、それをミイアが補足した。
なお、スキル【気配操作】によってナナが姿を消せることも、すでにこの3人には共有されている。
「うん、大丈夫。でもみんな、あんな人数相手に大丈夫?」
「ええ、もう攻撃一辺倒で魔力切れなんて失敗、二度といたしませんわ。ちゃんと仲間を信頼していますもの。わたくしは最初に派手な火魔法を使った後は、前衛2人の強化に注力いたしますわ。この2人、ちゃんと強いですから」
「ミイア様の強化魔法があれば百人力っす! 俺も、手当たり次第に殴るんじゃなくて、確実に1人ずつ、かつ素早く多人数を倒して、あいつらの数を減らしてやるっすよ!」
「僕も、ミイア様の支援があれば、あの程度の盗賊の攻撃など、防ぎきって見せます!」
ミイア、アレン、リアムがそれぞれ覚悟を口にする。
その表情は落ち着いており、怯えや過度な気負いは感じられない。
「ただ……そうですわね、あの人数を倒しきるのは難しいでしょうから、村人を解放したナナが、早めに援軍に来てくれるのを期待していますわ」
「うん、わかってる。まお……魔法でどっかんどっかんやっつけちゃうよ!」
冷静に戦力を分析し、ナナの早めの加勢を乞うミイアに対し、ナナは了承を返す。
うっかり頭頂部から生えた首だけ魔王であるアイマーの存在をばらしそうになったりもしているが、ご愛敬である。
現時点でナナはヒトを傷つけられない問題を抱えている。
原因は不明だが、そのため盗賊との戦闘ではナナは主に防御、攪乱に徹し、魔王による弱めの魔法攻撃で敵を無力化する想定だ。
「じゃあ、私は姿を消して、アジトの近くまで行くね。
しばらくしたら、ミイアの火魔法でアジトに火をつけて、それを合図に行動開始しよう!」
「ええ!」「おうっす!」「はい!」
◇
幼女の声を聞いた瞬間、黒髪の少女は割れるような頭痛に襲われ、思わず地面に膝をつく。
チカチカと視界が明滅し、視点が定まらない。
何が起こったのか分からず少女は狼狽えたが、少しでも状況を確認するため、必死になって前を向く。
だが、それが少女をさらなる混乱に陥れる。
目の前の光景と、脳裏から呼び起こされる記憶映像が、交互に重なるように脳内で再生される。
それはほんの数日前、少女が見た光景。
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時は少し遡り、ナナ達がハンナ村を脱出した直後の、村の集会場にて。
見張り役だったリッドは、たっぷりの毛布にくるまれて眠るレニの幼い寝顔を眺めながら独り言ちる。
「俺も余裕が無かったとは言え、こんな幼子に気を回すこともできていなかったなんてな」
レニの寝息だけが聞こえる静かな部屋の中で、リッドはここ数日の自らの慌てぶりを思い返す。
正直なところ、今でも落ち着いているとは言い難いが、ナナ達のおかげで少しだけ光が見えたせいか、少しはまともな思考ができるようになっていた。
「ん…ううん、あれ? りっどさん?」
そんなことを考えていると、レニの声が聞こえた。
どうやら目が覚めてしまったようだ。
「大丈夫だ。レニ、お前はまだ眠っているといい」
リッドはそうレニにやさしく声をかけて、再び眠りにいざなおうとした。
「ななおねえちゃんはどこ? みいあおねえちゃんは⁉」
だが、レニは少女達がいないことに気付いて焦ったのか、眠気も吹き飛んだ様子であたりを見回している。
「しーっ! 静かに。村の連中に気付かれてはまずい。
あの子達なら、グランと俺の妻を助けに行ってくれた。きっと無事に帰ってくるさ」
落ち着かない様子のレニをなだめるべく、リッドはナナ達がレニの兄であるグランを助けに向かったことを伝える。
だが、レニの反応はリッドが予想していたものと異なっていた。
「だめ! おにいちゃんは、れにがいないとだめなの!
れにじゃないと、おにいちゃんをたすけることはできないの!」
思わぬ剣幕にリッドは驚くが、大人な対応で返す。
「お前がグランを助けたいのは分かってるさ。俺だって、同じ気持ちだ。
だがな、俺やお前が向かったところで盗賊に勝つことはできん。
それどころか、あの勇敢な4人の足を引っ張ることになる」
「ちがう! そんなのわかってるもん! そうじゃないの、おにいちゃんはびょうきなの!
よるになると、くろいもやもやがおにいちゃんをくるしめるの。れにがとってあげなきゃいけないの!
そうじゃないと、おにいちゃんがくろいもやもやにたべられちゃうの!」
「グランが病気、だと? 聞いたことがないが。黒いもや? お前は何を……」
「ほんとうだよ! ほかのひとにはないしょにしてるし、おにいちゃんもねてるからしらないことだけど、れにはまいにち、ねてるおにいちゃんからでてくる、くろいもやもやをとってるもん!
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レニの真剣な様子と、彼女の両親が亡くなった事件以降、グランが病に侵されているという思っても見なかった情報に、リッドは何か引っかかるものを感じた。
「……それは、本当のことなのか? それに、なぜお前はグランを治せるんだ?」
「ほんとうだよ! でも、れにはおにいちゃんのびょうきをなおせないの。
だから、だんだんくろいもやもやもおおくなってるの…。
でもでも、れにはびょうきがわるくなるのをおそくすることはできるの。
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……となるとグランの病気っていうのも本当か……」
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リッドはレニの懇願を受け、目頭を揉むようにして考える。
そしてしばしの後、レニに同意して、2人で出発準備を始めた。
◇
「あれ、だよね。盗賊っぽい人たちがたむろしてる」
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森の中に身を潜めたまま、ナナとミイアが互いの認識を合わせる。
ハンナ村を出たナナ達は、村に流れ込んでいる川の上流に向かった。
盗賊のアジトの場所については、会議のあとで村人たちから情報を入手していた。
それによると、盗賊達の会話の中に、彼らのアジトが川の上流であり、徒歩で数時間の距離であることを示す内容が含まれていたらしい。
それに、盗賊達は拉致した村人を連れて、川の上流に去って行ったそうだ。
経路の偽装も疑ったが、途中の川沿いのルートには大人数の足跡が残っており、全く隠す気のないずさんな拉致計画のようだった。
そして案の定、数時間歩いた先であっさりと盗賊のアジトらしき建物を発見した。
アジト周囲では、盗賊らしき男達が思い思いの姿勢でだらけている。
『【気配探知】! ……外に20人、あの建物…アジトの中に10人か。
拉致された村人はアジトの中かな。魔王、お願い』
『うむ、わかっておる。お主の気配探知と我の魔力探知で、敵の情報をつまびらかにしてくれようぞ!
【魔力探知】!』
そして、魔王が探知したアジト屋内の様子が、スキル【伝心】経由でナナに共有される。
『縛られて転がされているのが拉致された者達のようだ。
だが6人。聞いていた数より少ない上に、男だけだ。リッドとやらの妻もここにはおらんようだな』
『そうみたいだね。でもまずはこの6人を助けよう。
残りの4人、酒を飲んでる奴らが盗賊達だよね、全員【解析】しておくよ……⁉
この人達! 薬草採取中に襲ってきた人たちだよ! 間違いない! この盗賊団の人だったんだ!』
アイマーによって共有された屋内の様子に映る盗賊達を、ナナがさらにバケツの装備スキル【解析】によって調べようとして、対象が見知った顔であることに気付いた。
一昨日の薬草採取中に襲ってきた悪漢達は、どうやらこの盗賊の一味であったらしい。
『む……そのようであるな。
あの時は魔力探知が効かなかったが、どうやら魔道具の類いは今は使っておらんようだ。
使い捨てだったのかもしれん。ふん、どちらにせよ、我が娘を傷つけた罪、万死に値する!
こ奴らはここで殲滅しておかねばなるまい!』
「ちょ、ちょっと待ってね魔王。まずは村の人たちを助けてからだよ!」
はやるアイマーを阻止しつつ、ナナは落ち着いて【解析】で敵の情報を調べる。
そしてその結果をミイア達3人にも共有すべく、ひそひそ声で伝える。
「みんな聞いて。えっとね、アジトの外に20人、中に10人いる。
中にいる10人のうち6人が村人、縛られて床に転がされてる。
残りの4人が盗賊。そこに1人だけ、レベル25で斧術スキルを持ってる強い人がいる。
毛皮鎧の大男。
あと、麻痺毒の針を腰にぶら下げた人も1人いる。みんな気を付けてね。
他の盗賊はレベル10から15ぐらい。
平均レベルは私達より高いけど、攻撃系や魔法系のスキルを持っている人はほとんどいない」
ナナの声に、ミイアとアレン、リアムが、ナナと出会ってからの短い間において、すでに何度目かわからない唖然とした表情になる。
「……あ、相変わらずすさまじいですわね。
その索敵能力、障害物の向こうの相手の場所どころか、レベルや装備までわかるなんて……。
ナナ、あなたの能力、知られると厄介な干渉を受けるかもしれませんので、できるだけ秘匿するのですよ」
「うん、ありがと。大丈夫! 信用している人以外には言わないようにするから!」
「……そ、それがいいですわ」
異次元とも言える能力を平然と駆使するナナの様子に、ミイアは危機感を抱いて忠告する。
それに対してナナは元気にサムズアップしながら首肯した……が。
(ダメですわ。全然大丈夫じゃありませんわ。
ナナ様はホイホイ人を信じてしまいますから、これはわたくし達が守って差し上げなければ!)
などと、ミイアが余計に危機感を募らせる結果となってしまった。
「それはそうと、ナナの情報では、中にいる敵は4人。では計画通りアジトに火を放って盗賊達を外におびき出してから、ミイア様とアレンと僕が敵を引き付ける。その隙に、ナナが姿を消してアジトに潜入し、村人たちをこっそり逃がすという流れでいいですか?」
「ええ。それと、もし盗賊が村人たちを連れて出てきても、わたくし達が陽動している間にナナがこっそり解放する。それでいいわね」
脇道にそれていた話をリアムが強引に元に戻す。
そしてここまでの道中に立てた村人奪還計画の流れを再確認し、それをミイアが補足した。
なお、スキル【気配操作】によってナナが姿を消せることも、すでにこの3人には共有されている。
「うん、大丈夫。でもみんな、あんな人数相手に大丈夫?」
「ええ、もう攻撃一辺倒で魔力切れなんて失敗、二度といたしませんわ。ちゃんと仲間を信頼していますもの。わたくしは最初に派手な火魔法を使った後は、前衛2人の強化に注力いたしますわ。この2人、ちゃんと強いですから」
「ミイア様の強化魔法があれば百人力っす! 俺も、手当たり次第に殴るんじゃなくて、確実に1人ずつ、かつ素早く多人数を倒して、あいつらの数を減らしてやるっすよ!」
「僕も、ミイア様の支援があれば、あの程度の盗賊の攻撃など、防ぎきって見せます!」
ミイア、アレン、リアムがそれぞれ覚悟を口にする。
その表情は落ち着いており、怯えや過度な気負いは感じられない。
「ただ……そうですわね、あの人数を倒しきるのは難しいでしょうから、村人を解放したナナが、早めに援軍に来てくれるのを期待していますわ」
「うん、わかってる。まお……魔法でどっかんどっかんやっつけちゃうよ!」
冷静に戦力を分析し、ナナの早めの加勢を乞うミイアに対し、ナナは了承を返す。
うっかり頭頂部から生えた首だけ魔王であるアイマーの存在をばらしそうになったりもしているが、ご愛敬である。
現時点でナナはヒトを傷つけられない問題を抱えている。
原因は不明だが、そのため盗賊との戦闘ではナナは主に防御、攪乱に徹し、魔王による弱めの魔法攻撃で敵を無力化する想定だ。
「じゃあ、私は姿を消して、アジトの近くまで行くね。
しばらくしたら、ミイアの火魔法でアジトに火をつけて、それを合図に行動開始しよう!」
「ええ!」「おうっす!」「はい!」
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