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第7章番外編「私の初めて」

第2話「2度目の8月31日」

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 2016/8/31

 ---「……」

 朝起きてすぐに違和感を感じていた。妙な魔力を感じたわけではない。ミシェーラの一件以来、結界を強化して外部からの魔法などの干渉も受けないようにしているから外の世界とは完全に隔離されている。この島に私の許可なく入ることや不可解な現象が起こることは絶対にありえない。

 これはただの勘だった。

 「…部屋には異常はないみたいね」

 私は起きてすぐにその違和感の正体を突き止めることにした。部屋には特に異常はなかった。

 ---「…ここでもないわね」

 そして、次に家の外に出て島中を調べまわることにした。魔力感知をしながら周囲を見渡してみるが、ここにも異常は感じられなかった。

 「ここでもないってことは、あとは…」

 島中でもないってことは、思い当たるところは1つしかない。

 「この違和感は、島の外ね」

 そう思った私は空間魔法を発動し島の外へと出て行った。

 ---向かった場所は梓の家だった。魔法具で時間を確認するとすでに10時を過ぎていた。魔法具も正常に動いているはず。だが私はまだにわかに信じきれていなかった。

 しかし、時間的には中学も高校も始まっている時間なはず。家には3人しか住んでいない。しかも3人とも学生。ならこの時間帯に3人とも家に居るわけがない。まあ私が言うのはおかしな話だけれど。

 「……」

 そう。居るはずがない。仮に居たとしても風邪を引いて辛そうな表情をしながら出てくるはず。そんなの一目見ればわかる。

 ピンポーン

 そんなことを脳裏によぎらせながら私は家のチャイムを押した。昨日は皆んな元気だった。昨日今日で一気に体調を崩すのはまぎれもないバカだ。だから居るわけがない。

 「はーい!?」

 「ッ!?」

 家の中からする声を聞いて私は嫌な予感がした。

 この時間帯に居るわけがない。そう信じていた。

 ガチャッ

 そう信じていた私の思いとは裏腹に家のドアがおもむろに開いていく。あの子が居るわけがないのに。

 「イーリスちゃん、いらっしゃい! さっ、中入って入って!!」

 そして、ドアが開くと、そこには明るい表情を浮かべながら立っている梓の姿があった。辛そうな表情は一切していない。昨日と同じ表情だった。

 そして、全く同じセリフを言って私を迎え入れた。

 そこで私は確信してしまった。私の、いや世界の時間が戻ってしまった。
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