Valkyrie of Moonlight~月明りの剣と魔法の杖~

剣世炸

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Episode7 三日月同盟

第7話 本部に隠されたもの

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「…という訳で…入ってくれ!」

 シューが宿の入り口に向かって声を掛けると、商人姿の男が中に入ってきた。

「どうもこんにちは。私は………って…その黄色い髪の毛と銀色の鎧……まさか…アルモなのか!?」

「その声は……同盟本部のザイール!?」

 アルモとザイールが互いに顔を見合わせて驚いている中、シューとサリットは『やっぱり』といった表情を見せ、ウンウンと頷いていた。

「シュー…この人がアルモの知り合いだって、分かっていたのか?」

「いいや。全く」

「この人と、ちょっとしたやりとりをしている中で、ベルトのバックルに三日月同盟の紋章が描かれていることに気付いたものだから…」

「そうだったのか…」

「それにしても、アルモ…よく無事でいてくれた」

「…あなたも、あの混乱の中、よく無事で…」

「本部で何があったのか、知っているのか…」

「その質問に答える前に、私の…いや、私たちの仲間を紹介させて欲しいの」

「…これは失礼した。私はザイール。とある組織の一員で…」

「ザイール。ここにいる3人は、全員同盟のことを知っているわ」

「…なるほど…では、話は別の場所でした方がいいな…」

「それじゃ、俺とアルモの部屋で話をしよう」

「それがいい」

“コツコツコツ…”

 俺とアルモの部屋に、全員が移動する。

「さて…改めて自己紹介をしよう。私はザイール。三日月同盟本部の総帥代理を務める者だ」

「総帥…同盟の中で、一番偉い人の代理ってこと?」

「まぁ、肩書上はそういうことになるのだが、元来三日月同盟に階級は存在しなくてね…同盟の創始者で、アルモの先祖である光の騎士クレスが、そのように同盟の理念を定め設立した組織だからね」

「それで、アルモもザイールのことを『総帥』とは呼ばなかった、という訳か」

「同盟設立の理念とかは、初耳だったけどね…」

「話していなかったか?」

「ええ。ただ、これまでそういう話題にはならなかったし、私も特に疑問に思ったことはなかったから…」

「そうだな…」

「それより、フォーレスタ村の通信鏡で、本部が襲われているところを見たの」

「本部は、一体どうなっている?」

「その…ザイールさんが総帥代理ということは、総帥本人もいるわけですよね?その人は…」

「…総帥を始め、予言の巫女や兵士団長…私以外の本部の人間は、全て教団の将軍ヴァジュラによって殺害された…」

「…」

「ヴァジュラは、同盟本部に創設時から受け継がれている『光の盾』を強奪しに来たのだ」

「光の…盾?」

「ああ。光の騎士クレスと、教団の始祖ワイギヤが使っていたという、神から賜りし武器や防具…つまり聖遺物(アーティファクト)の1つを、同盟本部が受け継いできたという訳さ」

「その、聖遺物の1つを狙って、教団が本部を襲ったという訳だな」

「…それで、その光の盾は無事なの?」

「光の盾の所在、代々同盟の総帥となった者にのみ伝えられている。つまり、私にはその所在が分からないのだよ…」

「光の盾は、特殊な結界によって守られていると聞く。つまり、本部を襲った教団の兵が、光の盾を見つけることは困難という訳だ」

「それなら、とりあえずは一安心ということだな」

「ああ」

「でも、特殊な結界に守られているとは言え、本部にあるという光の盾をそのままにしておく訳にはいかないわよね…」

「確かにその通りだ。ザイール殿…どうにかならないのだろうか?」

「…クレスの力が覚醒し始めた今のアルモなら、その所在を掴むことができるかも知れない」

「それは本当!?」

「ああ。アルモが今持っている『月明かりの剣』も、元々は本部に伝わる聖遺物の1つだったんだ」

「アルモの育ての父ソレイユが、予言の巫女のお告げでアルモを探し出し、本部に連れて来た際、それまではただの鈍(なまくら)だったその剣が、急に光を帯び始めたんだ。恐らく、クレスの子孫であるアルモに反応したんだろう」

「だが、その時光の盾の封印は解除されなかった。恐らく、光の盾の結界はクレスの子孫であるアルモが力をつけないと、解除されないようになっているのだろう」

「…本部を襲った教団の軍隊は、今どうなっているんだ?」

「私は本部から命からがら逃げた後、遠くから本部を偵察していたが、2・3日前に本部から撤収したのを確認済だ」

「…なら、今日はとりあえずこの宿で休むとして、明日、本部に向けて出発しましょう。アコード、それでいいわよね?」

「…」

「アコード!?」

「えっ!?……あっ………ああ。それで構わない」

「???」

「…アコードも疲れているようだし、私とシューは部屋に戻るわ。ザイールさんも、この宿に泊まるの?」

「いや、私は遠慮しておくよ。この街に、私は複数個所身を潜められる場所を持っているからね」

「わかった。それじゃ、明日の朝、北門前集合でどうかしら」

「了解した」

「アコード…大丈夫か?ゆっくり休めよ!」

「シュー!俺は大丈夫だ。ありがとう」

「それじゃ、また明日ね~」

“タッタッタッ…”

“ギィ……バタン”

 俺とアルモ以外の3人が、部屋から出て行く。

「…アコード……本当に大丈夫?途中から、上の空だったんじゃない?」

「アルモ……いや、何でもないよ」

「何かお腹の中に入れれば、少しは元気になるかも…私、食堂から軽食を貰ってくるわね!」

「…ありがとうアルモ!」

“ギィ……バタン”

「(……この展開、確かどこかで……)」

 その後、俺は奥歯に物が挟まったような感覚を払拭できず、翌朝を迎えていた。

 そして、ザイールを加えた俺たちは、滅ぼされた三日月同盟本部に向かって歩を進めることとなった。
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