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Episode8 聖遺物を求めて

第15話 将軍からの手紙

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 俺とアルモの放ったシャイニングネーベルは成功を収め、シューとサリットの攻撃で麻痺している酒場の客と従業員全員を包み込んだ。

 俺とアルモの頭上から降り注がれる光の矢は、その者らに当たるとそのまま体内に吸収されていく。

 そして、それぞれの体格に合わせた一定量の矢を受けた者の体内からは、黒い霧のようなものが放出され、茶褐色に染まっていた顔色はみるみると回復し、生気を取り戻していった。

「アコードとアルモが放った光の矢で、麻痺している客たちが浄化されているようね」

「ああ。この魔法は、邪な心を浄化する効果があるんだ。恐らく、あの黒い霧は、教団によって客たちにかけられた魔法の正体なのだろう。シャイニングネーベルが、教団によって邪な心に支配されてしまった客と従業員を浄化しているんだ」

 数分後、店内にいた全ての者は浄化された。

 浄化された者たちを、俺たち4人は手分けして各々の近くにあった椅子に腰かけさせ、意識が回復しそうな者を探した。

「うっ………うーん………」

 暫くして、この酒場のマスターと思しき人物の意識が回復した。

「………君たちは……」

「安心して下さい。私たちは敵ではありません。あなた方を救いに来たのです」

「…うぅ…頭が痛い……」

「…一体、この酒場で何があったんですか!?」

「………法衣を身に纏った数名が、この酒場に入ってきて……クソっ!そこまでは覚えているんだが……」

「そうですか……みんな、大体状況はつかめたし、この人以外の意識ももうじき回復するはずだから、私たちは店を出ましょう!」

「えっ!?」

「んん!?」

「……アルモ、俺たち3人は全く状況がわからないのだけど…」

「道すがらアコードたちには話をするわ。という訳でマスターさん、私たち、もう行きますね」

「あぁ………体が言うことを利くなら、お礼の一つでもしたいところだが…面目ない。他の奴らのことは、俺に任せてくれ。そして、また4人でぜひ来てくれ!その時は、鱈腹料理を出すことを約束しよう」

「マスター!ありがとう!必ず、そうさせてもらうよ」

“カランコロン…”

 俺たち4人は、ちらほらと意識を取り戻しつつある客の姿を後目に、スウィングドアを開くと酒場を後にした。

「法衣を纏った連中って言えば…」

「…ワイギヤ教団の司祭たちで、決まりだよな…アルモ」

 酒場を後にした俺たち4人は、道すがら説明すると言って店を後にさせたアルモに問う。

「その通りよ。でも、私たちにとっては悪の存在であるワイギヤ教も、一般人からすれば、心の拠り所になっていることも事実…」

「そうか!だから、私たちに早く酒場を出ようって言ったのね」

「そういうことか。考えが回らなくて、すまん」

「???サリット、一体どういうこと…」

「もぅ!相変わらず鈍いわね…もし、私たちがあの場で『犯人はワイギヤ教の司祭だ』なんて話を持ち出したとしたら、私たちが『助けに来た』って話の信憑性がなくなってしまうじゃないの!!」

「あぁ!そういうことか…」

「あの場で話を出せなくて、ゴメンね…」

「いいのよアルモ。シューが鈍いのがいけないんだからさ」

「ちょっ!」

「まぁまぁシュー。それにしても、結局酒場で得られた収穫と言えば、『俺たちの動きが教団に筒抜けになっている』ってことだけだったな…」

「!!」

 俺の言葉によって、アルモの顔に陰りが差す。

「アコード!ってことは…」

「………レイスが危ない!!」

「…もうすぐ日没の時刻だな」

「約束が守られれば、レイスは日没前には宿に戻って来るはず」

「レイスが心配だ。宿に戻って、レイスの帰りを待とう」

 俺たち4人は、急ぎ足で宿に戻ることにした。







「アルモさんに、アコードさんだね。この手紙を預かっているよ」

 俺たち4人が宿に戻ると、宿の店主から一通の封筒を受け取った。

「これは!!!」

 アルモがその封筒の封緘印を見て絶句する。

「……この印章は…ワイギヤ教軍の紋章ね…」

 ふと店主を見ると、俺たちのやり取りをじっと見つめている。

「とりあえず、俺とアルモの部屋に移動しないか?」

「そっ…それもそうね」

“スタスタスタスタ…”

“バタン”

「さて………印章の形から、ワイギヤ教軍の何者かからの手紙ということは分かった訳だが…」

「…開けて……みるわね」

 アルモが封を開け、中に入っていた便箋を取り出すと、そこに書かれた内容を読み始めた。



“前略 反逆者…おっといきなり失礼、そちらでは『英雄』であったな!の子孫アルモとその仲間たちに告ぐ。そちらの仲間の一人は、我々が預かった。

取り返したくば、今晩、月明りの丘まで来ることだ。もし今晩、お前たちが月明りの丘に現れなければ、我々が預かった仲間の命はないものと思え。

メルクーリュスのクビラ”



 手紙を読み終えたアルモを、俺を含めた他の3人が見つめる。

 そして、その場に居た4人が無言で同時に頷くと、俺たちは宿屋を飛び出したのだった。
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