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Episode8 聖遺物を求めて
第31話 月明りの鎧
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”フウァァァァァァ………”
アルモが伸ばした両手に反応し、クレスの銅像に鎧われていた月明りの鎧の輝きが、一気に直視できない程になる。
”ピカッ!!”
そして、周囲が神々しい光に包まれて白一色になったかと思うと、光と鎧は一瞬にして消え、次の瞬間にはアルモの体に月明りの鎧が鎧われていた。
「………どのような原理が働いたかは知らぬが………さすが英雄の子孫。よく似合っておいでだ」
月明りの鎧を身に着けたアルモを見て、セレスタ王が感嘆の声を上げる。
「陛下…ありがとうございます」
「陛下のおっしゃる通り、よく似合っているよ、アルモ!」
「まったくだ」
「アコード、それにレイスまで…でも、ありがとう」
「さて、これで目的の一つを成した訳だが………確か君たちの仲間が、エプールマウンテンで修行をしているのだったな…」
「はい」
「そして、当初の予定では、君たちは我が王都で情報を収集し、合流する予定であった」
「………アルモ!!」
「アコード、それに陛下。それについては、私の精神感応(テレパシー)の魔法を使えば解決することができます」
「…エプールマウンテンは、ここから馬を走らせて7日はくだらない場所にある。それでも大丈夫というのかね?」
「はい!」
「アルモ…精神感応(テレパシー)の魔法は、ごく近い範囲にしか効果が及ばないのでは?」
「初めて使ったあの時はそうだったわ。でも、今は私の魔力もあの時と比べて格段に上がっているから、この大陸の端と端くらいの距離まで、効果を広げられるわ」
「………その代わり、膨大に魔力を消費する…」
「アコード、その通りよ………でも、今は敵が目の前にいるわけではないし、いたとしても、君が護ってくれるでしょ?」
アルモが不器用にウィンクを飛ばす。
「であるならば、早く仲間に連絡を取るが良い。ここの安全は余が保証できる故、その魔法を使った後も、しっかり休養を取ることができよう」
「陛下、ありがとうございます。それでは、早速エプールマウンテンにいる仲間に、コンタクトを取りたいと存じます」
そう言うとアルモは、精神感応(テレパシー)を発動するための詠唱に入った。
***
俺の目の前に、溶岩地帯から天空へと、勢いよく立ち昇る火柱が立ちはだかっている。
「さぁシュー様。印を結んで術を放ってみてくださいまし!」
対岸にいるリーサに促され、俺は『陣(じん)』と唱えると同時に印を結び、術を放った。
”水丸裂空(すいがんれっくう)!!!”
術の名前を唱えると、両手で作った陣の印から人の顔位の大きさの水球が出現し、物凄いスピードで立ち昇る火柱に命中し、その勢いと命中してからも発生し続ける水の勢いに負け、火柱は消滅した。
「シュー様!やりましたわね!!」
「シュー!おめでとう!!」
対岸にいたサリットとリーサがこちら側に飛び移り、俺に賛辞を浴びせる。
「2人とも、ありがとう!」
「これで、ようやくお二人は忍術使い、即ち『忍者』としての一歩を踏み出しましたわ!」
「俺の基本忍術は『水法(すいほう)』、そしてサリットは『火法(かほう)』だったんだよな…」
「その通りですわ。忍術は、人それぞれに適性というものがありますの。それは、火・水・木・金・土に分類されていて、忍者は必ずこの5つのいずれかの基本忍術を持っていますわ」
「リーサは基本忍術が『金法(きんほう)』だから、バルデワの隠れ家を領事から隠したり、そこにないものを出現させたりするのが得意なのよね…」
「ええ。サリット様の『火法(かほう)』は、主に火に関する忍術が、シュー様の『水法(すいほう)』は、主に水に関する忍術が得意ということになりますわね」
「なんだか、リーサの金法(きんほう)が、一番オールマイティな気がするけどな…」
「確かに金法(きんほう)は、忍者の間でも何でもできそうな忍術が多いと思われがちですが、他の4つの基本忍術からの攻撃にはめっぽう弱いんですの。故に、私一人で他の基本忍術を持つ忍者と対決なんかしたら、私は必ず負けてしまいますわ」
「そう言えば、アコードも言ってな…『魔法も万能じゃない』って…」
「便利な魔法は、それだけ魔力の消費が激しくて、放ってすぐは動けなくなることもあったり、使用するのに条件があったりで…」
「魔法にしても忍術にしても、それぞれ一長一短があるってことですわ」
そんな話をしている最中だった。
『シュー、サリット、それにリーサ。私の声が聞こえる?』
ここにいる3人の頭の中に、直接話しかける声が響き渡った。
「シュー!それにリーサも…」
「ええ、確かに聞こえていますわ」
「ああ!間違いない。アルモの精神感応(テレパシー)の魔法だ」
『聞こえているみたいね!』
「アルモ!確かにこちらにいる3人に聞こえているわ」
「私、この魔法で遠くの方でお話するのは初めてですの………何だか、ちょっと感覚に慣れるまで大変ですわね…」
『ごめんなさいねリーサ。でも、重要なことを伝えたいから、少しだけ我慢して』
「重要なことって………セレスタの首都アーチスで、一体何があったんだ!?」
『驚かないでね………実は………クレスの鎧が手に入ったわ!!そして、私たちのすぐ近くには、セレスタ5世陛下がいらっしゃるわ!』
「何だって!?」
「えっ!?」
「おや、まあ!?」
アルモからの言葉を聞き、俺たち3人は絶句したのだった。
アルモが伸ばした両手に反応し、クレスの銅像に鎧われていた月明りの鎧の輝きが、一気に直視できない程になる。
”ピカッ!!”
そして、周囲が神々しい光に包まれて白一色になったかと思うと、光と鎧は一瞬にして消え、次の瞬間にはアルモの体に月明りの鎧が鎧われていた。
「………どのような原理が働いたかは知らぬが………さすが英雄の子孫。よく似合っておいでだ」
月明りの鎧を身に着けたアルモを見て、セレスタ王が感嘆の声を上げる。
「陛下…ありがとうございます」
「陛下のおっしゃる通り、よく似合っているよ、アルモ!」
「まったくだ」
「アコード、それにレイスまで…でも、ありがとう」
「さて、これで目的の一つを成した訳だが………確か君たちの仲間が、エプールマウンテンで修行をしているのだったな…」
「はい」
「そして、当初の予定では、君たちは我が王都で情報を収集し、合流する予定であった」
「………アルモ!!」
「アコード、それに陛下。それについては、私の精神感応(テレパシー)の魔法を使えば解決することができます」
「…エプールマウンテンは、ここから馬を走らせて7日はくだらない場所にある。それでも大丈夫というのかね?」
「はい!」
「アルモ…精神感応(テレパシー)の魔法は、ごく近い範囲にしか効果が及ばないのでは?」
「初めて使ったあの時はそうだったわ。でも、今は私の魔力もあの時と比べて格段に上がっているから、この大陸の端と端くらいの距離まで、効果を広げられるわ」
「………その代わり、膨大に魔力を消費する…」
「アコード、その通りよ………でも、今は敵が目の前にいるわけではないし、いたとしても、君が護ってくれるでしょ?」
アルモが不器用にウィンクを飛ばす。
「であるならば、早く仲間に連絡を取るが良い。ここの安全は余が保証できる故、その魔法を使った後も、しっかり休養を取ることができよう」
「陛下、ありがとうございます。それでは、早速エプールマウンテンにいる仲間に、コンタクトを取りたいと存じます」
そう言うとアルモは、精神感応(テレパシー)を発動するための詠唱に入った。
***
俺の目の前に、溶岩地帯から天空へと、勢いよく立ち昇る火柱が立ちはだかっている。
「さぁシュー様。印を結んで術を放ってみてくださいまし!」
対岸にいるリーサに促され、俺は『陣(じん)』と唱えると同時に印を結び、術を放った。
”水丸裂空(すいがんれっくう)!!!”
術の名前を唱えると、両手で作った陣の印から人の顔位の大きさの水球が出現し、物凄いスピードで立ち昇る火柱に命中し、その勢いと命中してからも発生し続ける水の勢いに負け、火柱は消滅した。
「シュー様!やりましたわね!!」
「シュー!おめでとう!!」
対岸にいたサリットとリーサがこちら側に飛び移り、俺に賛辞を浴びせる。
「2人とも、ありがとう!」
「これで、ようやくお二人は忍術使い、即ち『忍者』としての一歩を踏み出しましたわ!」
「俺の基本忍術は『水法(すいほう)』、そしてサリットは『火法(かほう)』だったんだよな…」
「その通りですわ。忍術は、人それぞれに適性というものがありますの。それは、火・水・木・金・土に分類されていて、忍者は必ずこの5つのいずれかの基本忍術を持っていますわ」
「リーサは基本忍術が『金法(きんほう)』だから、バルデワの隠れ家を領事から隠したり、そこにないものを出現させたりするのが得意なのよね…」
「ええ。サリット様の『火法(かほう)』は、主に火に関する忍術が、シュー様の『水法(すいほう)』は、主に水に関する忍術が得意ということになりますわね」
「なんだか、リーサの金法(きんほう)が、一番オールマイティな気がするけどな…」
「確かに金法(きんほう)は、忍者の間でも何でもできそうな忍術が多いと思われがちですが、他の4つの基本忍術からの攻撃にはめっぽう弱いんですの。故に、私一人で他の基本忍術を持つ忍者と対決なんかしたら、私は必ず負けてしまいますわ」
「そう言えば、アコードも言ってな…『魔法も万能じゃない』って…」
「便利な魔法は、それだけ魔力の消費が激しくて、放ってすぐは動けなくなることもあったり、使用するのに条件があったりで…」
「魔法にしても忍術にしても、それぞれ一長一短があるってことですわ」
そんな話をしている最中だった。
『シュー、サリット、それにリーサ。私の声が聞こえる?』
ここにいる3人の頭の中に、直接話しかける声が響き渡った。
「シュー!それにリーサも…」
「ええ、確かに聞こえていますわ」
「ああ!間違いない。アルモの精神感応(テレパシー)の魔法だ」
『聞こえているみたいね!』
「アルモ!確かにこちらにいる3人に聞こえているわ」
「私、この魔法で遠くの方でお話するのは初めてですの………何だか、ちょっと感覚に慣れるまで大変ですわね…」
『ごめんなさいねリーサ。でも、重要なことを伝えたいから、少しだけ我慢して』
「重要なことって………セレスタの首都アーチスで、一体何があったんだ!?」
『驚かないでね………実は………クレスの鎧が手に入ったわ!!そして、私たちのすぐ近くには、セレスタ5世陛下がいらっしゃるわ!』
「何だって!?」
「えっ!?」
「おや、まあ!?」
アルモからの言葉を聞き、俺たち3人は絶句したのだった。
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