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44. 小さな志願者 3
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それから、テイトは拠点内の施設の説明をしつつ、すれ違った仲間にルゥのことを紹介した。
彼の幼い見た目からか皆が一様に驚いた表情を浮かべ、どこか悲痛そうな顔でルゥを歓迎した時には居たたまれない気持ちになった。
おそらく戦争孤児とでも想像したのだろう。
騙すようで忍びないだが、ルゥが貴族であることは伏せなければいけないので、特に訂正せずにその場を通り過ぎた。
仕立屋、浴場、食堂と案内して、全て支援された物で運営しているため無料で使えることを説明すると、ルゥはまるで一つの街のような拠点に目を丸くして驚いていた。
そして、ルゥの部屋に案内しようと中枢館に向かいながら、テイトは一つ確かめたくなった。
「――ルゥはさ、貴族の人のことって大体把握してるの?」
「え? 分かると思うけど、でも流石に全員は無理かな」
「そう、だよね。……貴族に竜の子がいるとかは、聞いたことはない?」
「どうだろう、聞いたことはないけど。どうして?」
ルゥに不思議そうに見上げられ、テイトは曖昧に笑って誤魔化した。
教団にレンリを連れて行った時のアニールの反応を見て、彼女が教団にいたのではないかというリゲルの予測は外れたのだと確信した。
残すところは貴族か、研究所の関係者かというところだ。
シンの予測は今のところ全て当たっていると言っても過言ではない。
そして、そのシンの予測の中には、レンリは研究所の関係者で、研究所が関わっている《アノニマス》とも繋がっている可能性がある、と言うものがある。
その真偽はまだ何も分からないが、ルゥがもしレンリが貴族の者であると認めれば、シンも彼女を信じてあげることができるのではないかと思ったのだ。
「……会ってほしい人がいるんだけど、いいかな?」
「? 勿論構わないよ」
含みを持たせた言い方にルゥは疑問を持ったようであったが、すんなりと了承してくれた。
その返事を聞き、テイトは同じ建物内にあるレンリの部屋の方向へと進路を変えた。
アスバルドの中心にある一際大きな建物。
そこをテイト達は中枢館と呼んでいた。
それは、アニールに初めてここに案内された時に、ここが街の中枢としての役割を果たしていたと聞いたからだ。
今ではそこの一階は主に会議をするためなどに使用し、二階は隊長格の者の部屋として活用していた。
無論、アスバルド内の建物は全て開放しているので、一軒家を希望する者がいれば判断に応じて自由に与えていた。
そのため、隊長達の全員が全員中枢館にいるわけではないのだが、テイトやシンは例に漏れずそこの二階の部屋を使用していた。
そして、最上階である三階はフロア丸ごとレンリとナナだけに与えられていた。
話せば長くなるが、端的に言えばアニールの発言の影響によってそう決定が下った。
どうやら彼は《竜の子》とその他の者が同格の部屋を使うことが気に入らないらしく、三階は他の階に比べて部屋が広いからそこにしろ、としつこく部屋割りに干渉してきたのだ。
部屋は余るほどにあったため断る理由もなく、テイトは素直に三階の部屋を明け渡した。
今やその三階だけ、アニールの貢ぎ物の所為か日に日に豪華になっていくのをナナだけは大層喜んでいるようであった。
「――テイトです。レンリさん、今大丈夫ですか?」
「はい、どうされましたか?」
数瞬後、返事と共に扉を開いたレンリはテイトの姿を見留めて微かに首を傾げた。
「新しい仲間を紹介しようと思いまして……」
テイトが体をずらして背後に立っていたルゥを紹介すると、レンリは僅かに目を見開き、それから優しげな微笑みを浮かべた。
ルゥは完全に息を呑んで固まっているようであったが、レンリは気にせずに体を屈めてルゥと視線を合わした。
「はじめまして、レンリと申します。よろしくお願いします」
「え、あ、よろしくお願いします、ルゥです」
ルゥは顔を赤く染めながら小さな声でそれだけ言ったかと思うと、突然首を思いっきり振って再度レンリと目を合わせた。
「すみません、レディ。やり直させてください。余りの美しさに女神でも舞い降りたのかと動揺し、情けない姿を晒しました。僕はルゥと申します、不相応な身ではありますが、どうぞよろしくお願いします」
頬に赤みを残しながら胸に手を当てて綺麗なお辞儀をして見せたルゥに、テイトは思わず言葉を失った。
レンリも目をぱちくりさせていたが、やがて、ふふ、と口に手を当てて楽しそうに笑った。
「丁寧なご挨拶ありがとうございます。紳士様」
レンリは両手でスカートの裾を軽く持ち上げ、小さく膝を曲げた。
その洗練された自然な動作に、テイトは僅かに目を瞠った。
「どうか、ルゥと呼んでください。貴女のことを名前で呼ぶ許可を頂いても?」
「ふふ、勿論です」
「ありがとうございます」
ルゥは嬉しそうに微笑むと、再度姿勢を正して腰を折り曲げた。
目的とした挨拶も済んだため、テイトはレンリにお礼を述べてルゥを連れて二階へと降りた。
ルゥはどこか惚けたような表情で階段を降りていたが、不意にバッとテイトに目を向けた。
「っテイト、彼女は一体!?」
「レンリさんだよ、自己紹介されたでしょ」
「そういうことじゃなくて!」
テイトは苦笑した。
その狼狽っぷりは正直想像の範囲内であったが、テイトからしてみればルゥの言動の方が衝撃的だった。
「僕は、ルゥが突然あんなことを言い出す方が驚いたけど」
「女性を敬うのは当然のことだよ。でも、僕もあんなに自然に言葉が出てきたのは初めて」
ルゥは再び頬を赤らめた。
「あんなに美しい女性、初めて見た」
「……貴族にいそう?」
「高位の貴族みたいに綺麗なカーテシーだったけど、レンリさんが貴族なら絶対周囲が放っておかないと思う」
ルゥのその返答はやんわりとだがレンリが貴族である可能性を否定しており、テイトは顔を顰めた。
テイトはそのままルゥを二階の空き部屋へと案内した。
その道中で自分の部屋の位置もきちんと教えた。
「――ルゥはこの部屋を使って。隣はさっき言った通りシンさんの部屋だから、いつでも頼ったらいいよ」
「うん、ありがとう」
ニコニコとお礼を言いながら部屋に入り込むルゥを見送って、テイトは息を吐き出した。
「――……貴族、か」
レンリのことは結局分からなかったが、ルゥと話してまた一つ試したいことは増えた。
次の会議で他の者の意見も聞いてみよう、とテイトは自分の考えをまとめるために自室へと戻った。
彼の幼い見た目からか皆が一様に驚いた表情を浮かべ、どこか悲痛そうな顔でルゥを歓迎した時には居たたまれない気持ちになった。
おそらく戦争孤児とでも想像したのだろう。
騙すようで忍びないだが、ルゥが貴族であることは伏せなければいけないので、特に訂正せずにその場を通り過ぎた。
仕立屋、浴場、食堂と案内して、全て支援された物で運営しているため無料で使えることを説明すると、ルゥはまるで一つの街のような拠点に目を丸くして驚いていた。
そして、ルゥの部屋に案内しようと中枢館に向かいながら、テイトは一つ確かめたくなった。
「――ルゥはさ、貴族の人のことって大体把握してるの?」
「え? 分かると思うけど、でも流石に全員は無理かな」
「そう、だよね。……貴族に竜の子がいるとかは、聞いたことはない?」
「どうだろう、聞いたことはないけど。どうして?」
ルゥに不思議そうに見上げられ、テイトは曖昧に笑って誤魔化した。
教団にレンリを連れて行った時のアニールの反応を見て、彼女が教団にいたのではないかというリゲルの予測は外れたのだと確信した。
残すところは貴族か、研究所の関係者かというところだ。
シンの予測は今のところ全て当たっていると言っても過言ではない。
そして、そのシンの予測の中には、レンリは研究所の関係者で、研究所が関わっている《アノニマス》とも繋がっている可能性がある、と言うものがある。
その真偽はまだ何も分からないが、ルゥがもしレンリが貴族の者であると認めれば、シンも彼女を信じてあげることができるのではないかと思ったのだ。
「……会ってほしい人がいるんだけど、いいかな?」
「? 勿論構わないよ」
含みを持たせた言い方にルゥは疑問を持ったようであったが、すんなりと了承してくれた。
その返事を聞き、テイトは同じ建物内にあるレンリの部屋の方向へと進路を変えた。
アスバルドの中心にある一際大きな建物。
そこをテイト達は中枢館と呼んでいた。
それは、アニールに初めてここに案内された時に、ここが街の中枢としての役割を果たしていたと聞いたからだ。
今ではそこの一階は主に会議をするためなどに使用し、二階は隊長格の者の部屋として活用していた。
無論、アスバルド内の建物は全て開放しているので、一軒家を希望する者がいれば判断に応じて自由に与えていた。
そのため、隊長達の全員が全員中枢館にいるわけではないのだが、テイトやシンは例に漏れずそこの二階の部屋を使用していた。
そして、最上階である三階はフロア丸ごとレンリとナナだけに与えられていた。
話せば長くなるが、端的に言えばアニールの発言の影響によってそう決定が下った。
どうやら彼は《竜の子》とその他の者が同格の部屋を使うことが気に入らないらしく、三階は他の階に比べて部屋が広いからそこにしろ、としつこく部屋割りに干渉してきたのだ。
部屋は余るほどにあったため断る理由もなく、テイトは素直に三階の部屋を明け渡した。
今やその三階だけ、アニールの貢ぎ物の所為か日に日に豪華になっていくのをナナだけは大層喜んでいるようであった。
「――テイトです。レンリさん、今大丈夫ですか?」
「はい、どうされましたか?」
数瞬後、返事と共に扉を開いたレンリはテイトの姿を見留めて微かに首を傾げた。
「新しい仲間を紹介しようと思いまして……」
テイトが体をずらして背後に立っていたルゥを紹介すると、レンリは僅かに目を見開き、それから優しげな微笑みを浮かべた。
ルゥは完全に息を呑んで固まっているようであったが、レンリは気にせずに体を屈めてルゥと視線を合わした。
「はじめまして、レンリと申します。よろしくお願いします」
「え、あ、よろしくお願いします、ルゥです」
ルゥは顔を赤く染めながら小さな声でそれだけ言ったかと思うと、突然首を思いっきり振って再度レンリと目を合わせた。
「すみません、レディ。やり直させてください。余りの美しさに女神でも舞い降りたのかと動揺し、情けない姿を晒しました。僕はルゥと申します、不相応な身ではありますが、どうぞよろしくお願いします」
頬に赤みを残しながら胸に手を当てて綺麗なお辞儀をして見せたルゥに、テイトは思わず言葉を失った。
レンリも目をぱちくりさせていたが、やがて、ふふ、と口に手を当てて楽しそうに笑った。
「丁寧なご挨拶ありがとうございます。紳士様」
レンリは両手でスカートの裾を軽く持ち上げ、小さく膝を曲げた。
その洗練された自然な動作に、テイトは僅かに目を瞠った。
「どうか、ルゥと呼んでください。貴女のことを名前で呼ぶ許可を頂いても?」
「ふふ、勿論です」
「ありがとうございます」
ルゥは嬉しそうに微笑むと、再度姿勢を正して腰を折り曲げた。
目的とした挨拶も済んだため、テイトはレンリにお礼を述べてルゥを連れて二階へと降りた。
ルゥはどこか惚けたような表情で階段を降りていたが、不意にバッとテイトに目を向けた。
「っテイト、彼女は一体!?」
「レンリさんだよ、自己紹介されたでしょ」
「そういうことじゃなくて!」
テイトは苦笑した。
その狼狽っぷりは正直想像の範囲内であったが、テイトからしてみればルゥの言動の方が衝撃的だった。
「僕は、ルゥが突然あんなことを言い出す方が驚いたけど」
「女性を敬うのは当然のことだよ。でも、僕もあんなに自然に言葉が出てきたのは初めて」
ルゥは再び頬を赤らめた。
「あんなに美しい女性、初めて見た」
「……貴族にいそう?」
「高位の貴族みたいに綺麗なカーテシーだったけど、レンリさんが貴族なら絶対周囲が放っておかないと思う」
ルゥのその返答はやんわりとだがレンリが貴族である可能性を否定しており、テイトは顔を顰めた。
テイトはそのままルゥを二階の空き部屋へと案内した。
その道中で自分の部屋の位置もきちんと教えた。
「――ルゥはこの部屋を使って。隣はさっき言った通りシンさんの部屋だから、いつでも頼ったらいいよ」
「うん、ありがとう」
ニコニコとお礼を言いながら部屋に入り込むルゥを見送って、テイトは息を吐き出した。
「――……貴族、か」
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次の会議で他の者の意見も聞いてみよう、とテイトは自分の考えをまとめるために自室へと戻った。
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