ジャストフィット、粗チン!!!

一片澪

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12.――うん、良いかもしれない。だってもう結婚してるし!

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下半身の衣服をあれだけ躊躇いなく脱いだくせに何故か今更シャツを死守したがって身体を丸める翔太にアレグレンは小さく笑ってしまう。
娶りの儀に出る際に切り揃えたと言っていた黒髪から覗く耳が真っ赤で本当に愛らしい。

「翔太、どうした? これはお前が誘ってくれた俺達の『初夜』なんだろう?」
「いぎいっ?!」

可愛らしい耳に口づけながら囁くと初めて聞く不思議な単語が出た。
それがなんとも翔太らしくてアレグレンは自分でも驚くほど柔和に笑い、怖がらせないように優しく髪を指先だけで撫でる。

その実に優しい指使いに翔太の頭の中は混乱を極めていた。



――何故こうなった?
自分はただ、ただアレグレンのチンコを確認したかっただけだ。
この誰もが漏れなくバズーカをぶら下げている世界で、たった一人の仲間を見付けられるかもしれない! という希望から目視で確認させて貰いたかっただけなのだ。

翔太自身に経験は無かったが、翔太が愛するB&Lの世界では友人同士が性器を見せ合う場面は別に珍しくない。
中には好奇心から友人同士で一緒にAV観賞をしてその流れでノンケ同士が抜きっこして……的なモノだって別に普通にある。現実がどうかは知らないが、あるんだ!

だってさ?! 考えてくれよ!
平常時のチンコだけでチンコは語れない。そうだろ? 世の中には驚異の膨張率を誇る奴だっている!
だから、だから翔太はアレグレンのアレグレンをちょっと元気にしてもらって「ふんふんふん、オウケィオウケィ把握把握! サンキュー」と取り敢えず確認して今日は一緒に残りのサンドイッチとフルーツを食べながら久し振りにゆっくり話でもする気だった。
恐ろしいことに、本気でそう思っていた。


でも今更ながら――普通に考えてそれは有り得ないとようやく気付く。

嫌がる相手にチンコを見せろと相手が根負けするまで迫り、誰かに見られたら困るという理由があったにせよ寝室に連れ込んで何故か自ら率先してベッドに乗っかって下半身の衣服をサクッと脱いだ。
そして強引に見たチンコに正直な所感を伝え、その上で「もっと確認するから勃起させろよ!」なんて……有り得る? ソイツ馬鹿なんじゃないの? うん、自分自身(オレ)なんだけどね。

でもそれ以上に恐ろしいのが急にアレグレンが「圧倒的☆攻め様!」オーラを出したことだ。
話を聞く限り童貞のようだが、この男そう言えばさっき何て言っていた? 『ひたすら相手を先に満足させることに徹してなんとか逃げ延びていた』とか言ってたな。ということは、挿入前の経験は豊富ということか!!!

翔太の脳は高速回転していてアレグレンが静かに待ってくれていることには気付かない。
しかし「ああ、また考え事だな」と判断したアレグレンは上着を脱いで、翔太が気付かない内に自らのシャツのボタンを外していく。
アレグレンにとって恥ずかしいのは性器だけなのでそれ以外は誰に見られても何一つ恥ずかしく無いのだ。

そこに来てようやく翔太はちらっとアレグレンを見て叫んだ。

「なんで脱いでるのっ?!」

シャツを死守する為に尻を出して丸まっている翔太のその言葉にアレグレンは思わず吹き出した。
だって今まで生きて来て閨関係でこんなに心が穏やかだったことはない。

「俺は見せたぞ? だがお前のモノはまだ見せてもらっていない。『俺と比べて、どっちがデカいか確認しようぜ』と言ったのはお前だぞ?」
「そ、れは……そう、だけ……ど」

今までは低さだけが際立っていた国宝ボイスに明らかに甘さが増えたことに翔太はうっかり「キュン♡」としてしまう。
元々アレグレンのルックス&声帯は翔太にとって大優勝なのだ。
そして一緒にいて性格も普通に良いし、共にに過ごす上で大切な波長だってバッチリ合っていると翔太は思っている。

顔を見るのが恥ずかしくて視線を少し下げると男らしい喉仏と鍛えられた胸筋、そしてバッキバキに割れた腹筋が見えた。
本当に同性の目から見ても憧れる程の逞しい身体だ。
BLでもガチムチは攻めも受けもどちらもこよなく愛した翔太にとってはまさに理想的な生き物が目の前にいる。
体格差系も大好物だったけど心の中では妙に冷静な自分が「受けのケツは生涯を通して大丈夫なのか」とちらりと思うこともあった。

だから発想を少し変えると――アレグレンとはもう既に結婚していることをちょっと脇に置いて考えても翔太にとって本当に理想の相手なのかもしれない。
アレグレンは大優勝の顔と声と性格を持っているし、その他にも背が高くて物凄く逞しいこともあって物理的にも精神的にも安心感と包容力がものすごい。
でも、超絶大事なチンコは翔太の体格から見ても多分イけるかな? という希望を感じさせるサイズなのだ。


――うん、良いかもしれない。
最初だから恥ずかしいだけで俺たちもう結婚してるし!
離婚も出来ないみたいだし、だったら色々仲良く夫婦円満に生きていく為に善処した方がきっと人生楽しいかも!


翔太の持ち前の性格を活かす形で与えられた祝福【能天気】がとても良い仕事をした結果、翔太の心は自分でも驚くほど軽くなった。
確かに今はかなり恥ずかしいが、アレグレンは性格的に無理矢理突っ込むような外道では無いと断言出来ることも心に余裕を取り戻す要因として大きい。
だから翔太はとても! 本気で、それはもうとんでもなく恥ずかしかったが先ほど自分がアレグレンにした狼藉を思い出して静かに身体を動かして力なく両足をおずおずと開く。
それを間近で見ていたアレグレンが少しずつ動く足を静かに見つめながら穏やかな声で囁いた。

「見せてくれるのか?」
「お、おう……でもあの、俺小さいから――ああもう! 見ろよ、コレが日本(ジャペン)の平均だっ!!!」

クッションに寄り掛かった体勢で足を開いたは良いが恥ずかし過ぎる翔太はシャツの下側を引っ張って顔を隠しながら叫んだ。
するとすぐ傍で大きな身体が静かに動く気配がする。

「触れても良いか?」
「え?」

優しい声に視線を向けると自分のまだへにょんとしているチンコとアレグレンの大きな手が見えた。
乱暴にされる心配は一切無いと理解していても自分のチンコをすっぽりと軽々握り込んでしまいそうなその手にいくら翔太でも少し怯んでしまう。
するとアレグレンは直ぐにそれを察して手をさっと遠ざけた。

「怖いか?」

たったそれだけの言葉で翔太の身体から力が抜ける。
アレグレンは本当に大丈夫な相手なんだ。その証拠にまだ半分皮を被っている翔太のチンコを見ても笑いもしないし強引にことを進めるような真似もしない。
それに気付いてしまうと恥ずかしがるのも怯えるのもらしくないな、と素直に思えるいつもの翔太が戻って来た。

「全然! ちょっと待ってくれよ、剥くついでに勃たせるからな!」

翔太のその声の張りでいつもの調子が戻って来たのを察したアレグレンはにこやかに微笑んで「俺がやってもいいか?」とこれまた最高に良い声で言った。



***



てっきり手ですぐにチンコを触って勃起させてくれるもんだと思い込んでいた翔太だったがアレグレンは違った。
「いいぞ」と返事をした翔太をあっさりと抱き上げて自分の太ももに座らせて、腰が抜けるどころか全身の力が根こそぎ奪われるようなとんでもないキスから始めやがったのだ。

「――ぉまえ、……とんでもねぇテクニシャンだな」

唇が離れた際にお互いの唇を頼りなく繋いでいた唾液の橋が落ちるのを「おお、THE・性描写ァ!」と思う余裕も無い翔太がムードもへったくれもない言葉を言ったがアレグレンは気を悪くした素振りも無く自分に全体重を預けて来る翔太を大事そうに腕で支える。

「俺の人生には一切必要の無い技術だと思っていたが、お前にそう思って貰えるならあの苦行も報われるな」

ちゅ、と言葉の終わりに外人みたいなキスが来て翔太の心臓が跳ねる。
この世界の結婚前の性行為は全て将来結婚する特定のパートナーと一緒に奔放? 違うか、なんというか……そうだ! 二人だけで協力し合って快楽を追求し続ける情熱的なプレイを目指す為の下積み扱いだと教わったことを思い出す。

しかしそれで言うと翔太はまさに論外だ。
だって今までの人生で出来た彼女は一人で、しかもセックスしたのはたったの三回だけ……これはもう、実質童貞と変わらない。
アレグレンを骨抜きにするキスもそれ以上も翔太の力では出来ないのだ。

「アレグレン、ごめんな」
「どうした?」

不思議そうに尋ねて来る整った顔立ちの男に対して翔太は申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
この国ではただでさえ不貞は許されない。
しかも神経由で結婚してしまったのだからアレグレンの場合は離縁すら許されない。そうすると……必然的にアレグレンの相手は翔太しかいないのに、肝心の翔太は平たく言うとヘッタクソなのだから。

「俺、確実に何もかも下手だわ」

しょぼん、と明らかに落ち込んだ翔太のこめかみにまたキスを落としてアレグレンは機嫌良さそうに笑った。

「なんの問題も無いぞ? それを言えば俺だって童貞だしな。……そんなことより、こんな風に全てを曝け出して誰かと抱き合うことなんて一生無いと思っていた俺にとってお前の存在は紛れもなく神の祝福だよ」
「……え、何俺の旦那さん超カッコいい」

思わず漏れた翔太の声にアレグレンはとても幸せそうに微笑んで低く喉の奥で笑う。
今日のアレグレンはいつもよりもずっと笑顔が多くてとても良いな、と翔太は好みを真正面から抉って来る顔面を見詰めながら強く思った。

「はは、あー……本当に色々と考えていた予定が全て狂っているが――このまま『初夜』を進めても良いか? こればっかりは『妻』に了承を得ないと進めることが出来ない」

悪戯っぽく笑うアレグレンに翔太はつられるように明るく笑って自分からアレグレンの後頭部に腕を回して引き寄せ、勢いよくキスをしてみる。
さきほどアレグレンがくれた巧みなキスとは程遠いただ唇を重ねてハムハムしているだけの幼い口づけだが、それでもアレグレンは嬉しそうに翔太の気が済むまで好きにさせてくれた。

「俺のケツ……切れないよな?」
「当り前だろう。それに別に今日最後まで無理にする必要も無い、これからずっと一緒なんだからな」

穏やかにそう笑ったアレグレンの言葉が嬉しくて翔太はまたニカッと底抜けに明るく笑って、一番簡単な測定兼触れ合いを提案する。


「アレグレン、お前手デカいだろ? 二本まとめて握って擦ったり出来るか?」
「ああ、勿論。俺がするから翔太には『確認』をお願いしようか」


くすくすとお互い笑いながらもう一度キスをして、翔太は動き出した大きな手に身を委ねることを決めた。
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