最凶聖女の地獄指導で覚醒した冴えない社畜、勇者パーティーに放り込まれダンジョン無双し魔王軍に挑む

ワスレナ

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本編

第41話 四天王マリリスと白き竜

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 ――第八階層を突破した先には、魔王に直結する最後の階層が待つ。

 ここを越えなければ、魔王には辿り着けない。

 上に続く階段を発見し、駆け上がっていった。


 瘴気が濃くなる通路に足を踏み入れた瞬間、闇が割れた。

 現れたのは十や二十ではきかない数――数十の上級デーモン。

 黒鉄くろがねの外殻をまとい、巨剣を構えた軍勢が通路を埋め尽くす。

「数が多いな……だが、問題ない!」

 イグノールが聖剣アルノールを掲げ、バルドスが重盾を構える。


 刹那、轟音と共に激突した。

 バルドスの盾が列を切り裂く。

 イグノールの剣閃が閃光のように連なり、デーモンたちを次々と倒していく。

 鋼の巨体であろうと、彼らの前進を止めることはできない。


 一方、左右の壁から舞い降りるようにサキュバスの群れが現れた。

 艶やかな声が波のように押し寄せ、幻惑で意識を絡め取ろうとする。

「こいつらは私に任せて!」

 クローディアが魔剣ノクス=エクリプスを抜くと、目の前の五体のサキュバスををぎ払う。

 サキュバスたちは胴体を斬られ、黒炎で灰燼かいじんに帰す。

「――散れ!『ライトニングスピア』」

 上空からメリエラの雷槍が降り注ぎ、残ったサキュバスの群れを一瞬で焼き払った。


 やがて、通路を埋め尽くしていた魔の軍勢は光と炎に呑まれ、崩れ落ちた。

 残されたのは焦げた匂いと、勇者たちの足音だけ。

「……数十の上級デーモンとサキュバスが一度に……。さすがは第九階層といったところか」

 イグノールが剣を収め、前方の巨大な黒鉄の扉を見据える。

 今いる通路の奥から、灼熱と極寒がにじみ出し、肌を刺した。

「気を引き締めてかからないとな」

 イグノールが異常な瘴気しょうきに対して、みんなに周知する。

「ああ、だがどんな奴が出てきても叩きのめしてやるぜ」

 バルドスが拳を叩いて気合をつける。

 みんながそれに同意し、うなずく。


 やがて前方に、両開きの巨扉が立ちはだかる。

 黒鉄に炎と氷の紋章が刻まれ、禍々まがまがしい光を脈動させている。

「……ここが第九階層、大広間か」

 イグノールが剣を握り直し、私は無言で防御結界と火・氷の耐性を強める。

 バルドスとクローディアが重い扉に手を掛け、メリエラが身構えた。

 黒鉄の扉を押し開けた瞬間、世界が反転した。

 凍りつく冷気と焼き尽くす熱気が同時に吹きつけ、視界が一瞬で白と赤に染まる。


 そこは氷獄と炎獄がねじれ合う異形の広間。

 天井から伸びる氷柱は、床を割って溢れ出す溶岩に炙られ、ひび割れたまま不気味に輝いている。

 蒸気が轟音と共に立ち昇り、岩壁には古の魔紋が赤と青の光を交互に脈動させていた。


 蒸気のかやを裂き、二つの巨影が姿を現す。

 一つは、白銀の鱗を黄ばませた壮齢のホワイトドラゴン。

 山を思わせる巨体から冷気を吹き出し、双眸は鋼のように鋭く映る。


 その傍らに立つのは、炎を纏った六本腕のの蛇女――四天王マリリス。

 六本の腕には剣が握られ、艶やかな笑みを浮かべる。

 白銀のプレートアーマー以外は蛇の鱗が露出し、下半身はとぐろを巻いている。

 背には炎の翼の幻影が揺らめいている。

「やっと来たわね、人間共……よくぞここまで」

 マリリスの声はつややかで、しかし火傷のように胸を圧した。

 私たちを舐めるように目をギラつかせ、悦に入る。

 剣の一本を口元に寄せ、刃先をぺろりと舐める。

「いいねぇ――存分に楽しませてもらうよ!」

 マリリスは自らの剣に赤、黄、オレンジ、青、黒、白の炎を纏わせる。

『フィナーン、先ほどは激しかったな』

「ええ。こいつらを倒したらまた存分に愉しみましょう」

 どうやら、激しい愛を交わしていたようだ。

 誰も来ない上層ゆえの、退屈しのぎをしていたのかもしれない。

 私たちは彼らの情事に臆することなく、少しずつ間合いを詰める。


 ホワイトドラゴンが咆哮ほうこうとどろかせ、氷嵐が広間をぎ払う。

 同時にマリリスの炎がぜ、灼熱の旋風が迫った。

「来るぞ!」

 イグノールが聖剣アルノールを構え、バルドスが盾を前に出す。

 クローディアが魔剣ノクス=エクリプスを背から抜刀する。

 メリエラが詠唱を始め、私は全員をおおう結界を展開する。


 灼熱と極寒が激突し、大広間は轟音に包まれた。

 ――第九階層、魔王へ向かう最後の死闘が始まった。


 咆哮と共に氷嵐が広間を薙ぎ払う。
 竜の吐息は瞬時に床を凍てつかせ、岩盤すら白く閉ざした。


 そこへ重なるように、マリリスの炎翼が爆ぜた。

 灼熱の旋風が凍りついた床を割り、赤熱した破片を四散させる。

 冷気と炎気が拮抗せず、互いを増幅させて荒れ狂う――この空間そのものが殺意の渦だった。

「全員、結界内に!」

 私の声に応じてみんなが散開する。

 結界を押し広げながら、イグノールとバルドスは竜の爪と牙を受け止める。

 クローディアとメリエラは炎の奔流を切り裂き、撃ち返した。

「やるじゃない! でも――まだまだ足りない!」

 マリリスが狂喜に染まった笑みを浮かべ、竜の首元へ駆け上がる。

 その瞬間、竜と魔将の動きは重なり、まるで一つの肉体のように連携した攻撃が勇者たちを襲った。


 氷の咆哮と炎の剣戟けんげき

 極寒の巨翼の一撃と灼熱の六連続攻撃。

 吹雪嵐と業火が一斉に広間をおおい尽くす。

「くっ……! 持ちこたえろ!」

 盾を押し立てるバルドスの背に、聖剣アルノールの光がほふる。

 イグノールが最前列でえ、クローディアとメリエラが反撃の刃と魔法を重ねる。


 その後方で私は次々と結界を張り替える。

 イグノールたちに有利になる為のフィールドを創り出す。

 徐々に削られる体力に対し、回復の光を散らして仲間を守った。


 ――第九階層、守護者たちとの死闘は、最初から極限だった。
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