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第6章・悪夢の王の奸計
146・小竜の活躍
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――フレイアール視点――
母様が北の国に来てからしばらくが経った。
同盟を結ぶって言って、内容を詰めてるとは言ってたけど、詳しいことのわからないぼくのほうは邪魔になるからって適当に外で遊んでるように言われてしまった。
母様はぼくのこと、どう思ってるんだろう?
ちっちゃい役立たずだって思ってるのかな? まさか……まさかね。
あぁー、もう。早く大きくなろうと思えばなれるんだけど……それじゃあぼくが目指す姿とは違うんだよね。
だって、母様の近くにいてわかったことがある。
母様はまだ完全じゃないんだ。母様と姉様は気付いてないかもしれないけど、ぼくにははっきりと分かるんだ。
母様の本当の力は……多分、今よりもずっと、ずーっと強い。その奥底に秘めた魔力の切れ端を糧にしてるぼくは、母様の秘めた想いが、感情が伝わってくるようだった。
このままだと、母様はまた孤独になってしまう。誰にも理解されないまま、生きて行くことになってしまう。
そんなの嫌だ! ぼくは……ぼくは母様には誰よりも幸せになってほしい。
だって、初めて触れた強大で暖かくて寂しくて――優しい光だったから。
だからぼくは……まだ大きくなることは出来ない。母様を一人っきりにしないために。
そうじゃなきゃあまりにも悲しすぎる。ぼくの大切な魔王様は、誰よりも優しくて、誰よりも強くて……誰よりも孤独な人だから。
――
ぼくは母様の魔力を吸収しながら適当に散歩していた。
最近じゃ魔力の波長も味も、完璧に覚えているし、母様は魔力を制御する気がまるでない。
常に圧倒的な存在感を醸し出していて、他のどの魔王よりもはっきりわかるんだよね。
だからぼくの方も少し離れたくらいだったら余裕で魔力を吸収できるってわけだ。
未だ喋れず、念話しか出来ないぼくは姉様と母様以外だったら……ワイバーンみたいにぼくら飛竜と近い種としか話すことが出来ないから、本当に退屈なんだよね。
だからかな、ぼくが適当にふよふよ浮いてたどり着いたところは、ワイバーンの停泊所だった。
せっかくだからワイバーンたちと話すのもアリかなって考えていたら、なんだか不審な影が見えたような気がしてそっち側に行くと……。
「――で、いいんだな」
「ああ、――なら――は――め出来る」
うーん、よく聞こえない……。もうちょっと近くに寄らない、と……。
なんて思いながらそろりそろりと近寄ってみると、知らない魔人族の男二人がなにかを……!
「キャウ! クルル……キャウッ!(お前ら! ワイバーンに何してるんだ!)」
おお、我ながらなんだか小動物みたいな声が出ちゃった……。というかぼくってこんな声してたんだ……。
普段は念話しかしないから声をだすことなんてなかったもんなぁ……。
ばばっと慌てた様子で二人共振り向いてくると、途端に小馬鹿にしたような顔でぼくの方を見てきた。
これは完全にぼくの事を甘く見ている証拠だよね。
だったらこっちもそれに便乗してやる!
「クルルルルッ……」
「なんだ、まだガキじゃねぇか」
「おい、あれ、あの女王が連れ回してるワイバーンの子どもだぞ」
「キャウッ! キャウキャウッ!(誰がワイバーンだ! 馬鹿にするなよ!)」
失礼な男たちだ。ぼくをつかまえてワイバーンと間違えるなんて……許さないぞ!
なんて憤慨しながらだけど、よくよく見たらワイバーンが泡を吹いて倒れてる様に見えた。
苦しげな声を上げているみたいだし……多分、毒かなにかを盛ったんだな!
「キャウ!」
「はっ、こんなもん連れてきてるなんて馬鹿な魔王だぜ。
……おい、こいつが余計なことする前に殺すぞ」
「……ああ、こんな小せえ竜一匹、今の状態でも容易いもんだ」
ぼくを殺すだって? やれるものならやってみろ!
男がナイフみたいなのを取り出してぼくの方に突進してくるんだけど、こんな単調な動きでぼくを捉えられると本気で思ってるのかな? 動きも遅いし、姿勢も全然なってない。
ちょっと男の頭上を飛んでやる。ついでにぼくの魔法? 魔導? ……母様は魔導って言ってたっけ。
お見舞いしてあげるよ!
「キャウゥゥゥゥゥ……キャウッ!(『ガイストート』!)」
母様の魔導を発動……させたんだけど、全然出ない。あれ? 間違ってたっけ?
「ちっ、ちょこまかとうるさいやつだ! おらぁ!」
相変わらずぶんぶん振り回してるけど、すいすいっと避けて何が悪かったのか思考を巡らせる。
うーん……こんなことだったら違いを聞いとくべきだったかなぁ……。
だったら――!
「キャウ! クァァァァァァ……ガァ!」
「な!? ぐぁぁぁぁぁぁ!?」
口内で魔力を凝縮させながら威力を出来るだけ絞って、矢のような熱線をお見舞いしてやった。
それを肩・腕・ふともも・足にと立て続けに撃ち抜いて、完全に身動きがとれないようにしてあげる。
無様に転がりながら悲鳴を上げてる男を尻目にもう一人の男を見ると、さっきのようにぼくを小馬鹿にした目は完全に消え失せてしまっていた。
「ちっ、腐っても上位魔王のペットかよ」
ナイフ……よりちょっと分厚い、いかにも戦闘用の獲物を構えてぼくの隙きを伺ってる。
でも、警戒するのが遅すぎるんじゃないかな? ぼくは地面に対し魔力で干渉する。
「キャウ!(『アースバインド』!)」
母様の魔導が使えないなら他のものを使えばいい。魔法によって作られた土の鎖が男を締め上げ、動きを束縛する。
「なんだと……! こんなチビが……」
さっきの熱線とは違ってぎっちぎちに締め上げるくらい魔力を込めたんだ。
ぼくと同等以上の力を持っていない限り、まず抜け出すことなんてできない。
……なんだろう。戦ってみたのはいいんだけど、想像以上にあっけなかった。
とりあえず、ぼくのことを散々非難してるあの男を気絶するまでぶちのめしておこうっと。
「キャウキャウ!」
「が、ぶふっ、ちょ、ば、や……」
尻尾で思いっきりべちべち叩き回して上げると、どんどん顔が膨れ上がってきて……やっと気を失ったようだった。
全く、手間を掛けさせてくれる。弱いくせに出しゃばるからそうなるんだ。
そのままワイバーンの方に駆け寄って、声をかけてみることにした。
「キャウゥゥゥ……(ねぇ、大丈夫?)」
動けなくなった魔人族(のように見える男たち)は全員動けなくしたし、毒を盛られた様子のワイバーンに呼びかけてみるんだけど……全然返事がない。
ど、どうしよう……このままじゃ絶対まずい。ひとまず母様に知らせないと……!
決断したらすぐ行動。ぼくは一目散に母様がいるであろう場所まで向かうのだった――。
――
結構探し回って時間がかかっちゃったけど、ようやく母様を見つけることが出来て、ぼくは再びワイバーンの停泊所までやってきた。
(母様、早く、早くー!)
「ちょ、ちょっと、わかったからそんなに引っ張らないでちょうだい」
わけがわからないというような顔をしてるけど、ぼくが説明するのも惜しくって急かすように駆り立てたのが原因だ。
ちなみに姉様は珍しく他の所に行っていたようで、とりあえず母様だけ連れてきた形。
姉様は……まあ今いなくてもいいかも。戦いってなったら話は別だろうけどね。
母様は戸惑っていたようだけど、転がってる魔人族とワイバーンの現状を見て理解したような顔をしてくれていた。
「大体の状況は察することは出来たけど、ひとまずは……」
ワイバーンの方に歩み寄った母様は、周囲に人の気配がないことを確認した後、警戒しながら以前ぼくに見せてくれた魔導『リ・バース』を掛けてくれてるみたいだけど……意識を取り戻しただけで、さっきより苦しそうに見える。
(母様ー……効いてないみたいだよー……)
「……どうやら、毒だけじゃないようね。なら……」
もう一度『リ・バース』を使ったようだけど、一度効かなかった魔導が――あれ? なんで効いてるんだろう?
さっきは効かなかったのになんでなんだろう? まぁいいや、なんにせよワイバーンが元気に鳴いてるのを見て一安心しちゃった。
……そんな風に緊張を和らげていたのもつかの間、どたどたと人がなだれ込むような気配を感じる。
母様もそれに気付いたようで、ぼくの方を鋭く睨むと、冷静に指示を飛ばしてきてくれた。
「フレイアール、貴方は後ろでワイバーンを守ってちょうだい。傷つけさせてはだめよ?」
(うん! 母様!)
こうなったら姉様も連れてきたほうが良かったかな……なんて思ってしまったけど、もうこうなってしまっては仕方がないよね。
ぼくは母様に言われたようにワイバーンの守るように位置につくと、魔人族の他にもドワーフ・リザードマン族……複数の種族がどこか虚ろな目でゆらゆらと不安定に揺れ動くようにこっちに向かってきてる。
中にはしっかりとした足取りでこっちを見てにやにやしてるのもいて……すごく不愉快だ。
「『隷属の腕輪』……。予想はつくけど、どこの所属の者かしらね」
「予想はつくんだろう? だったらその通りってわけだ。お前ら! やれ!」
あんまりにも酷い言い方をした男が号令とともに一斉に襲いかかる集団だったけど……。
まあ、あれだよね。母様の敵にすらならないよね。
ぼくが二人の男を倒した時に掛かった手間以上に簡単に片付けられていく集団を見てさすが母様だと、改めてその強さを確認した結果になったね。
それを驚愕の表情で見ている理性がありそうな男たちだけど、なにを思っているのかさっきぼくに立ち向かってきた男たちと同じように母様に向かってきてる。
本当に馬鹿だよねぇ。だって、母様に勝てるわけがないんだもん。
結局あっという間に制圧されて、全員地面に寝っ転がるハメになってしまった。
っていうか母様は『ガイストート』って言ってたらきちんと発動してたようなんだけど……一体何が違うんだろう?
魔導というのは奥が深く、実に難しいのかもしれない。
母様が北の国に来てからしばらくが経った。
同盟を結ぶって言って、内容を詰めてるとは言ってたけど、詳しいことのわからないぼくのほうは邪魔になるからって適当に外で遊んでるように言われてしまった。
母様はぼくのこと、どう思ってるんだろう?
ちっちゃい役立たずだって思ってるのかな? まさか……まさかね。
あぁー、もう。早く大きくなろうと思えばなれるんだけど……それじゃあぼくが目指す姿とは違うんだよね。
だって、母様の近くにいてわかったことがある。
母様はまだ完全じゃないんだ。母様と姉様は気付いてないかもしれないけど、ぼくにははっきりと分かるんだ。
母様の本当の力は……多分、今よりもずっと、ずーっと強い。その奥底に秘めた魔力の切れ端を糧にしてるぼくは、母様の秘めた想いが、感情が伝わってくるようだった。
このままだと、母様はまた孤独になってしまう。誰にも理解されないまま、生きて行くことになってしまう。
そんなの嫌だ! ぼくは……ぼくは母様には誰よりも幸せになってほしい。
だって、初めて触れた強大で暖かくて寂しくて――優しい光だったから。
だからぼくは……まだ大きくなることは出来ない。母様を一人っきりにしないために。
そうじゃなきゃあまりにも悲しすぎる。ぼくの大切な魔王様は、誰よりも優しくて、誰よりも強くて……誰よりも孤独な人だから。
――
ぼくは母様の魔力を吸収しながら適当に散歩していた。
最近じゃ魔力の波長も味も、完璧に覚えているし、母様は魔力を制御する気がまるでない。
常に圧倒的な存在感を醸し出していて、他のどの魔王よりもはっきりわかるんだよね。
だからぼくの方も少し離れたくらいだったら余裕で魔力を吸収できるってわけだ。
未だ喋れず、念話しか出来ないぼくは姉様と母様以外だったら……ワイバーンみたいにぼくら飛竜と近い種としか話すことが出来ないから、本当に退屈なんだよね。
だからかな、ぼくが適当にふよふよ浮いてたどり着いたところは、ワイバーンの停泊所だった。
せっかくだからワイバーンたちと話すのもアリかなって考えていたら、なんだか不審な影が見えたような気がしてそっち側に行くと……。
「――で、いいんだな」
「ああ、――なら――は――め出来る」
うーん、よく聞こえない……。もうちょっと近くに寄らない、と……。
なんて思いながらそろりそろりと近寄ってみると、知らない魔人族の男二人がなにかを……!
「キャウ! クルル……キャウッ!(お前ら! ワイバーンに何してるんだ!)」
おお、我ながらなんだか小動物みたいな声が出ちゃった……。というかぼくってこんな声してたんだ……。
普段は念話しかしないから声をだすことなんてなかったもんなぁ……。
ばばっと慌てた様子で二人共振り向いてくると、途端に小馬鹿にしたような顔でぼくの方を見てきた。
これは完全にぼくの事を甘く見ている証拠だよね。
だったらこっちもそれに便乗してやる!
「クルルルルッ……」
「なんだ、まだガキじゃねぇか」
「おい、あれ、あの女王が連れ回してるワイバーンの子どもだぞ」
「キャウッ! キャウキャウッ!(誰がワイバーンだ! 馬鹿にするなよ!)」
失礼な男たちだ。ぼくをつかまえてワイバーンと間違えるなんて……許さないぞ!
なんて憤慨しながらだけど、よくよく見たらワイバーンが泡を吹いて倒れてる様に見えた。
苦しげな声を上げているみたいだし……多分、毒かなにかを盛ったんだな!
「キャウ!」
「はっ、こんなもん連れてきてるなんて馬鹿な魔王だぜ。
……おい、こいつが余計なことする前に殺すぞ」
「……ああ、こんな小せえ竜一匹、今の状態でも容易いもんだ」
ぼくを殺すだって? やれるものならやってみろ!
男がナイフみたいなのを取り出してぼくの方に突進してくるんだけど、こんな単調な動きでぼくを捉えられると本気で思ってるのかな? 動きも遅いし、姿勢も全然なってない。
ちょっと男の頭上を飛んでやる。ついでにぼくの魔法? 魔導? ……母様は魔導って言ってたっけ。
お見舞いしてあげるよ!
「キャウゥゥゥゥゥ……キャウッ!(『ガイストート』!)」
母様の魔導を発動……させたんだけど、全然出ない。あれ? 間違ってたっけ?
「ちっ、ちょこまかとうるさいやつだ! おらぁ!」
相変わらずぶんぶん振り回してるけど、すいすいっと避けて何が悪かったのか思考を巡らせる。
うーん……こんなことだったら違いを聞いとくべきだったかなぁ……。
だったら――!
「キャウ! クァァァァァァ……ガァ!」
「な!? ぐぁぁぁぁぁぁ!?」
口内で魔力を凝縮させながら威力を出来るだけ絞って、矢のような熱線をお見舞いしてやった。
それを肩・腕・ふともも・足にと立て続けに撃ち抜いて、完全に身動きがとれないようにしてあげる。
無様に転がりながら悲鳴を上げてる男を尻目にもう一人の男を見ると、さっきのようにぼくを小馬鹿にした目は完全に消え失せてしまっていた。
「ちっ、腐っても上位魔王のペットかよ」
ナイフ……よりちょっと分厚い、いかにも戦闘用の獲物を構えてぼくの隙きを伺ってる。
でも、警戒するのが遅すぎるんじゃないかな? ぼくは地面に対し魔力で干渉する。
「キャウ!(『アースバインド』!)」
母様の魔導が使えないなら他のものを使えばいい。魔法によって作られた土の鎖が男を締め上げ、動きを束縛する。
「なんだと……! こんなチビが……」
さっきの熱線とは違ってぎっちぎちに締め上げるくらい魔力を込めたんだ。
ぼくと同等以上の力を持っていない限り、まず抜け出すことなんてできない。
……なんだろう。戦ってみたのはいいんだけど、想像以上にあっけなかった。
とりあえず、ぼくのことを散々非難してるあの男を気絶するまでぶちのめしておこうっと。
「キャウキャウ!」
「が、ぶふっ、ちょ、ば、や……」
尻尾で思いっきりべちべち叩き回して上げると、どんどん顔が膨れ上がってきて……やっと気を失ったようだった。
全く、手間を掛けさせてくれる。弱いくせに出しゃばるからそうなるんだ。
そのままワイバーンの方に駆け寄って、声をかけてみることにした。
「キャウゥゥゥ……(ねぇ、大丈夫?)」
動けなくなった魔人族(のように見える男たち)は全員動けなくしたし、毒を盛られた様子のワイバーンに呼びかけてみるんだけど……全然返事がない。
ど、どうしよう……このままじゃ絶対まずい。ひとまず母様に知らせないと……!
決断したらすぐ行動。ぼくは一目散に母様がいるであろう場所まで向かうのだった――。
――
結構探し回って時間がかかっちゃったけど、ようやく母様を見つけることが出来て、ぼくは再びワイバーンの停泊所までやってきた。
(母様、早く、早くー!)
「ちょ、ちょっと、わかったからそんなに引っ張らないでちょうだい」
わけがわからないというような顔をしてるけど、ぼくが説明するのも惜しくって急かすように駆り立てたのが原因だ。
ちなみに姉様は珍しく他の所に行っていたようで、とりあえず母様だけ連れてきた形。
姉様は……まあ今いなくてもいいかも。戦いってなったら話は別だろうけどね。
母様は戸惑っていたようだけど、転がってる魔人族とワイバーンの現状を見て理解したような顔をしてくれていた。
「大体の状況は察することは出来たけど、ひとまずは……」
ワイバーンの方に歩み寄った母様は、周囲に人の気配がないことを確認した後、警戒しながら以前ぼくに見せてくれた魔導『リ・バース』を掛けてくれてるみたいだけど……意識を取り戻しただけで、さっきより苦しそうに見える。
(母様ー……効いてないみたいだよー……)
「……どうやら、毒だけじゃないようね。なら……」
もう一度『リ・バース』を使ったようだけど、一度効かなかった魔導が――あれ? なんで効いてるんだろう?
さっきは効かなかったのになんでなんだろう? まぁいいや、なんにせよワイバーンが元気に鳴いてるのを見て一安心しちゃった。
……そんな風に緊張を和らげていたのもつかの間、どたどたと人がなだれ込むような気配を感じる。
母様もそれに気付いたようで、ぼくの方を鋭く睨むと、冷静に指示を飛ばしてきてくれた。
「フレイアール、貴方は後ろでワイバーンを守ってちょうだい。傷つけさせてはだめよ?」
(うん! 母様!)
こうなったら姉様も連れてきたほうが良かったかな……なんて思ってしまったけど、もうこうなってしまっては仕方がないよね。
ぼくは母様に言われたようにワイバーンの守るように位置につくと、魔人族の他にもドワーフ・リザードマン族……複数の種族がどこか虚ろな目でゆらゆらと不安定に揺れ動くようにこっちに向かってきてる。
中にはしっかりとした足取りでこっちを見てにやにやしてるのもいて……すごく不愉快だ。
「『隷属の腕輪』……。予想はつくけど、どこの所属の者かしらね」
「予想はつくんだろう? だったらその通りってわけだ。お前ら! やれ!」
あんまりにも酷い言い方をした男が号令とともに一斉に襲いかかる集団だったけど……。
まあ、あれだよね。母様の敵にすらならないよね。
ぼくが二人の男を倒した時に掛かった手間以上に簡単に片付けられていく集団を見てさすが母様だと、改めてその強さを確認した結果になったね。
それを驚愕の表情で見ている理性がありそうな男たちだけど、なにを思っているのかさっきぼくに立ち向かってきた男たちと同じように母様に向かってきてる。
本当に馬鹿だよねぇ。だって、母様に勝てるわけがないんだもん。
結局あっという間に制圧されて、全員地面に寝っ転がるハメになってしまった。
っていうか母様は『ガイストート』って言ってたらきちんと発動してたようなんだけど……一体何が違うんだろう?
魔導というのは奥が深く、実に難しいのかもしれない。
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