リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~

灰色キャット

文字の大きさ
94 / 415
第五節 分かたれた人と魔人編

第93幕 新しい力を得る日々

しおりを挟む
 どうにも微妙な終わり方をしてしまった最初の魔方陣講座だったが、結局の所、俺の杞憂。

 つまりは取り越し苦労だったっていうわけだ。受け入れてくれるかどうか不安だったり、否定されたらどうしようかなどと考えていたのが多少馬鹿らしく思えてきたもんだ。
 今では大分、肩の荷が下りたような気さえする。

 それからの魔方陣講座は滞りなく進んだ。
 少しルーシーが俺を見定めるような視線を投げかけてくるのが多少気にはなったが、それ以上の行動をするわけでもないし、むしろ気になったことは率先して質問を投げかけてくる。

 生徒としては非常に教え甲斐がある方なのだが……素質がなぁ……。
 少し話は変わるが、詠唱魔法っていうのは大体消費する魔力が少ない。

 なんで少ないのかは……さすがの俺もわからない。本当に魔素が存在してるのか? とも思うけど、見えないものに何を考えても仕方ないだろう。
 詠唱魔法は消費する魔力が少ない。それだけで十分だろう。

 逆に魔方陣は魔力の消費多い。詠唱と起動式マジックコード……それぞれ違う形で形式化されてるとは言っても、後者の方は扱う者によって威力に差異が出る。

 魔力を注げば注ぐだけ威力が上がる魔方陣は、詠唱魔法で消費する程度の魔力じゃ大して効果がないからな。

 だから必要なのは生まれ持っての魔力量。それに加えて魔方陣を扱える素養というわけだ。

 ルーシーとくずははその魔力量が低い。
 使える魔方陣は身体強化くらいしかないだろう。後は目眩まし系を含めた幾つかの細かいものか……。

 これは俺の仮説だが、恐らく勇者としての能力――【英雄召喚】で喚び出された際に与えられた能力が原因なんじゃないかと思う。

 もちろん外れているかも知れない。
 だが少なくとも今の二人の魔力量が少なく、魔方陣を扱う奴に対抗するには勇者としての能力を自在に駆使できるようになるしかないというのが現状だ。

 逆に魔力量が一番多い――つまり魔方陣を扱う事に最も長けているのは多分エセルカだろう。
 以前、遠くの森で魔方陣の訓練をした時……真っ先に教えたのが『気配遮断』と『姿隠蔽』……ようは姿を消す魔方陣だ。

 なにかに触れれば解除できるし、周囲に危険があるわけでもない。
 魔力の消費量も他の魔方陣の中でも相当大きいし、尽きた時や自身の魔力が少なくなっている時の漠然とした感覚も掴みやすくなる……ということで実践させていた。

 その時に一番回数が多かったのがエセルカだった。
 次にシエラ、セイルの順で、発動すら出来なかったのがくずはとルーシー、といったところだ。

 あの時のシエラは本当におかしかった。

「わ、私が……魔人である私が人の、エセルカよりも魔力量が劣っていた……?」
「あ、え、えと……なんだかごめんね?」

 なんて落ち込んでるシエラをエセルカが気を使って妙に慰めてる、なんて事もあったりしたくらいだ。
 この魔方陣を使えないことで落ち込んでいたルーシーは、こんな事も言っていた。

「こんな恐ろしい魔方陣が存在するなんて……この魔方陣があれば秘密なんてあってないようなものですわね」
「ところが、そうは行かない。これに対抗した魔方陣はもちろんあるし、その範囲内であれば探知することが出来る」

 最もそれは常時設置型……つまり発動させるためにはそこに設置させる必要がある。
 だからこういう開けた場所よりも狭い――部屋なんかに使うことに適した魔方陣だな。

 隠密系と索敵系の魔方陣の宿命のようなもので、片方が発展すれば、もう片方がそれに追いすがっていくような形で起動式マジックコードの改良が行われてきた。

 後は消音と併用する場合は、その分見つかりやすくなってしまう。
 そういう風に変更しないと魔力が幾つあっても足りないからな。
 ああ、でも……今の俺ならそれでも大丈夫なのかも知れない。

 転生する前よりずっと魔力量が多くなってる気がする。
 イギランスであれだけ色んな魔方陣を使ったはずなのに全然減った様子がなかったからな。

「なるほど……ですが対抗できるものがなければ、この世の中隠し通せるものが無くなってしまいますものね。
 それだと都合が悪くなる方も多くなるでしょうし、自然と発展した形でしょうね……。
 それで、探知の魔方陣はわたくしたちにも使えますの?」
「やってみないとわからないな。だが、こういう姿を消すタイプの魔方陣よりはずっと可能性がある」

 俺の返答にしみじみとした様子で呟いたルーシーは、今度はその探知の魔方陣を使えないか聞いてきた。
 その後は彼女のお望み通り、そっちの方面も教えることになったのだが、こっちは全員が覚えることが出来た。

 それから暫くの間一ヶ月程度だが、最低限こなせるようには教えることが出来た。
 時には暗殺者のような集団が襲いかかってきたりもしたが、大体蹴散らせる程度の実力の持ち主だったし、大方問題はなかったがな。

 ――そんな風に魔方陣を教えながら過ごす日々は、本当に楽しかった。
 この日々が、少しでも長く続けば、と思うようにさえ。

 辛い日々ほど長く……楽しい日々ほど短いもんだ。
 だいたい世界ってのは――人の心ってのはそういう風に感じるようにできてるものだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...