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第七節 動き出す物語 セイル編
第139幕 彼の行方を探せ
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ラグナスの話を聞いてから数日――ベッドの上で療養してから、ようやく体調も万全戻った。
それまでの間、退屈しのぎということでここにある本をラグナスがたくさん持ってきてくれていた。
退屈はせずに済んだけど、なんと言えば良いのか……やたらめったら俺のことを構ってくる。
しかもくずはとラグナスの両方が、だ。
ラグナスは同年代の子が周囲にあまりいないようで、俺やくずはと話すことに新鮮さを感じているようだった。
ここは人や魔人の領域の外……なんだとか。
位置的にはグランセストとシアロル・イギランスの近くの森の奥深くにある隠された秘境らしい。
それを魔方陣によって結界を張っているそうで、余計に見つからないようにしているそうだから、ラグナスを知っているのは大体この秘境に住んでいる民たちぐらい……というわけだ。
そしてくずはは……彼女はなんでか若干しおらしさを見せながら俺を介抱してくれていた。
なんというか、そんな姿を見ていると背筋が薄ら寒くなってしまって……そこを指摘するといつもの彼女に戻っていた。
そんな風に穏やかな時を過ごしていたのだけれど……やはり気になったのはエセルカの事だ。
今頃どうしているのか……。
危険な目に遭ってないだろうか? などと考えてしまう。
エセルカはある意味、グレリアの兄貴から託されたようなものだと思っている。
だから、守ることが出来なかったのがすごく悔しかったのだ。
本当なら、すぐにでも助けに行きたい。
だけど今の俺じゃ、アリッカルからエセルカを救うどころか、ヘルガや他の勇者が立ち塞がっただけでも救うことが出来ないだろう。
――だけど、兄貴なら……。
古の英雄と呼ばれたグレリア・エルデならエセルカの事を救い出してくれるかも知れない。
……いや、他力本願な事を言っている事はわかる。
悔しいけど、俺じゃどうしようもないこともまた事実なんだ。
彼女を救えるのは……兄貴を置いて他にはいないだろう。
そういう風に結論づけたのは良いんだけど、問題はどうやって兄貴に知らせるか……だ。
グランセストに行っている、ということ以上の何もわからないからだ。
「セイル、おはよう」
「やあ、いい朝だね!」
「ああ、二人共おはよう」
今日も今日とてくずはとラグナスの二人が俺のところにやってきて……そうだ。
何も俺一人で探す必要はない。
「そういえばラグナスは今のグランセストの事、知ってるよな?」
「情報は金にも匹敵するって言ったりもするしね。
僕たちもそれなりに色々と調べて入るよ」
少し自慢そうに笑顔を浮かべるラグナスだけど、やっぱりそれくらいはしてるか。
そうじゃないと俺たちがいたところに遭遇するわけがない。
まあ、流石に出会いは偶然だったのだろうけど、何かしらの情報を探っていたところ……そういうところだろう。
「だったらグレ……グレ……」
「?」
「グレ……なんとかって名前の魔人、知らないか?」
思わず『グレリア』の名前を出そうとして、俺は必死に飲み込んだ。
ここでその名前を出したとして、あれこれと色々聞かれることは目に見えている。
ラグナスには別に打ち明けてもいいんだけれど、彼の周囲にいる人物がまだあまり信用できない。
俺の不用意な言動のせいで、兄貴が何かの陰謀に巻き込まれる……なんてことになったら目も当てられない。
だからこそなにか他のことを言おうとしたんだけれど……咄嗟に出たのがさっきの『グレなんとか』だった。
ちらっとくずはの方を見てみると、ものすごく呆れたような視線を俺の方に向けてきていた。
それでも何も言わないのはきっと俺の意図を汲み取ってくれてるから……と思いたい。
「グレなんとか……ってまた随分曖昧だなぁ……」
「俺たちの仲間がグランセストにいるんだけど、名前を忘れてしまってなぁ」
しばらく何かを悩んでいた様子のラグナスだけど、こっちの心情を察してくれたのか、軽く頷いてくれた。
「……わかった。確かに『グレファ』って名前の魔人がファロルリアにあるリアラルト訓練学校で有名になりつつあるって聞いた者がいるらしい。
なんでも、放課後に色んな級の生徒たちを鍛えているらしいね。
最近入った生徒のはずなのに、相当強いって噂になってるよ」
それを聞いて思わず俺は安心した。
もしかしたら兄貴の方も隠れて行動してるんじゃないか? とも思っていたからだ。
万が一俺たちのように奇襲まがいのことをされていたら……とくずはの方も考えていたようで、思わず安堵のため息が漏れていた。
だけどこれでやることは決まったとも言えるだろう。
ヘルガたち勇者が気軽にグランセストに入り込めるとは思えないし、ここは一度兄貴と合流してエセルカの事を伝えないと……。
「ありがとう。多分その『グレファ』ってのが探してる仲間だと思う」
「いいや、困った時は……ってやつ、だろう? だけど会いに行くのはやめておいたほうが良い」
「……なんでだ?」
もしかして、そのリアラルト訓練学校って所でなにか不味い事が起こっているのか? それこそ、俺たちが知ったらいけないこととか……。
と考えていたけど、肝心のラグナスは俺があんまり真剣な表情で見ていたせいか……苦笑しながら頭を左右に振った。
「もうすぐ昇級試験が始まるからだよ。
そうなったら訓練学校から出て、外で指定された魔物を退治することになる。
その間の足取りは掴みにくいから、試験が終わるまでは学校にいないと考えたほうが良い」
「……そうなのか」
不味いな。
ついつい悪い方に考えすぎてしまっている。
なまじ、夢の中であの少年に言われたことが頭の中に残ってるからかも知れない。
だけどそれなら仕方がない。
兄貴と会えるその時まで、身体を鍛えながら自身の心を本格的に鍛え直すことにしよう……。
それこそが……真の強さを得ることなのだと信じて――。
それまでの間、退屈しのぎということでここにある本をラグナスがたくさん持ってきてくれていた。
退屈はせずに済んだけど、なんと言えば良いのか……やたらめったら俺のことを構ってくる。
しかもくずはとラグナスの両方が、だ。
ラグナスは同年代の子が周囲にあまりいないようで、俺やくずはと話すことに新鮮さを感じているようだった。
ここは人や魔人の領域の外……なんだとか。
位置的にはグランセストとシアロル・イギランスの近くの森の奥深くにある隠された秘境らしい。
それを魔方陣によって結界を張っているそうで、余計に見つからないようにしているそうだから、ラグナスを知っているのは大体この秘境に住んでいる民たちぐらい……というわけだ。
そしてくずはは……彼女はなんでか若干しおらしさを見せながら俺を介抱してくれていた。
なんというか、そんな姿を見ていると背筋が薄ら寒くなってしまって……そこを指摘するといつもの彼女に戻っていた。
そんな風に穏やかな時を過ごしていたのだけれど……やはり気になったのはエセルカの事だ。
今頃どうしているのか……。
危険な目に遭ってないだろうか? などと考えてしまう。
エセルカはある意味、グレリアの兄貴から託されたようなものだと思っている。
だから、守ることが出来なかったのがすごく悔しかったのだ。
本当なら、すぐにでも助けに行きたい。
だけど今の俺じゃ、アリッカルからエセルカを救うどころか、ヘルガや他の勇者が立ち塞がっただけでも救うことが出来ないだろう。
――だけど、兄貴なら……。
古の英雄と呼ばれたグレリア・エルデならエセルカの事を救い出してくれるかも知れない。
……いや、他力本願な事を言っている事はわかる。
悔しいけど、俺じゃどうしようもないこともまた事実なんだ。
彼女を救えるのは……兄貴を置いて他にはいないだろう。
そういう風に結論づけたのは良いんだけど、問題はどうやって兄貴に知らせるか……だ。
グランセストに行っている、ということ以上の何もわからないからだ。
「セイル、おはよう」
「やあ、いい朝だね!」
「ああ、二人共おはよう」
今日も今日とてくずはとラグナスの二人が俺のところにやってきて……そうだ。
何も俺一人で探す必要はない。
「そういえばラグナスは今のグランセストの事、知ってるよな?」
「情報は金にも匹敵するって言ったりもするしね。
僕たちもそれなりに色々と調べて入るよ」
少し自慢そうに笑顔を浮かべるラグナスだけど、やっぱりそれくらいはしてるか。
そうじゃないと俺たちがいたところに遭遇するわけがない。
まあ、流石に出会いは偶然だったのだろうけど、何かしらの情報を探っていたところ……そういうところだろう。
「だったらグレ……グレ……」
「?」
「グレ……なんとかって名前の魔人、知らないか?」
思わず『グレリア』の名前を出そうとして、俺は必死に飲み込んだ。
ここでその名前を出したとして、あれこれと色々聞かれることは目に見えている。
ラグナスには別に打ち明けてもいいんだけれど、彼の周囲にいる人物がまだあまり信用できない。
俺の不用意な言動のせいで、兄貴が何かの陰謀に巻き込まれる……なんてことになったら目も当てられない。
だからこそなにか他のことを言おうとしたんだけれど……咄嗟に出たのがさっきの『グレなんとか』だった。
ちらっとくずはの方を見てみると、ものすごく呆れたような視線を俺の方に向けてきていた。
それでも何も言わないのはきっと俺の意図を汲み取ってくれてるから……と思いたい。
「グレなんとか……ってまた随分曖昧だなぁ……」
「俺たちの仲間がグランセストにいるんだけど、名前を忘れてしまってなぁ」
しばらく何かを悩んでいた様子のラグナスだけど、こっちの心情を察してくれたのか、軽く頷いてくれた。
「……わかった。確かに『グレファ』って名前の魔人がファロルリアにあるリアラルト訓練学校で有名になりつつあるって聞いた者がいるらしい。
なんでも、放課後に色んな級の生徒たちを鍛えているらしいね。
最近入った生徒のはずなのに、相当強いって噂になってるよ」
それを聞いて思わず俺は安心した。
もしかしたら兄貴の方も隠れて行動してるんじゃないか? とも思っていたからだ。
万が一俺たちのように奇襲まがいのことをされていたら……とくずはの方も考えていたようで、思わず安堵のため息が漏れていた。
だけどこれでやることは決まったとも言えるだろう。
ヘルガたち勇者が気軽にグランセストに入り込めるとは思えないし、ここは一度兄貴と合流してエセルカの事を伝えないと……。
「ありがとう。多分その『グレファ』ってのが探してる仲間だと思う」
「いいや、困った時は……ってやつ、だろう? だけど会いに行くのはやめておいたほうが良い」
「……なんでだ?」
もしかして、そのリアラルト訓練学校って所でなにか不味い事が起こっているのか? それこそ、俺たちが知ったらいけないこととか……。
と考えていたけど、肝心のラグナスは俺があんまり真剣な表情で見ていたせいか……苦笑しながら頭を左右に振った。
「もうすぐ昇級試験が始まるからだよ。
そうなったら訓練学校から出て、外で指定された魔物を退治することになる。
その間の足取りは掴みにくいから、試験が終わるまでは学校にいないと考えたほうが良い」
「……そうなのか」
不味いな。
ついつい悪い方に考えすぎてしまっている。
なまじ、夢の中であの少年に言われたことが頭の中に残ってるからかも知れない。
だけどそれなら仕方がない。
兄貴と会えるその時まで、身体を鍛えながら自身の心を本格的に鍛え直すことにしよう……。
それこそが……真の強さを得ることなのだと信じて――。
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