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第十二節 人の国・裏の世界 セイル編
第220幕 覚悟の力
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近づいてきたヘルガは俺の顔を見下ろしながら不思議そうにしていた。
「もう動けないはずなのに、よく私にそんな目を向けていられるわね」
「へえ、どんな目をしてるんだ? 教えてくれよ」
大方、怯えているような顔をしてるとでも思ったのだろう。
俺にまだ戦う気力がある事が不思議で仕方ないらしい。
「……わかってるの? その体じゃ、もう満足に動く事すら出来ないのよ?」
ヘルガは視線を俺の腕や足に向けて状態を確かめている。
腕は千切れそうなほど撃ち抜かれ、足の方もさぞかし見通しが良くなっているだろう。
今も血が流れて痛かったり寒かったりするくらいだ。
早めに止血しないと間違いなく死ぬ……。
そんな状態で、なんでこの男は笑っていられるのか? そんな風に思っている事だろう。
――当たり前だ。俺が望んでいるのは今この距離なのだから。
遠距離ではヘルガには勝てない。
『命』で作り出した三匹の獣たちも……元々俺との連携攻撃を中心にしてくれている。
個々の能力は……他の勇者をあまり知らないからなんとも言えないが、大体ルーシーぐらいなら倒せる程度だろう。
ヘルガの相手をするには足りない。
もっと強烈で確かな個体……この三体を合計して上回ることが出来る程の強さを持っていて、かつ小さな存在でなくてはならない。
『命』『水』『龍』で生み出した龍は大きすぎて確実にスパルナを巻き込む。
そんな事をしてもこっちにはなんの得もない。
――だったら……作ってやる。
『再』『生』『身体』の三つの起動式を構築して展開し、即発動する。
ヘルガは再び俺が自爆するんじゃないかと警戒して離れているけど、別に余裕がないわけじゃない。
腕や足――全身の重傷が瞬く間に完治して、さらに『風』『刃』の魔方陣をて発動しながら近くにオチていたグラムレーヴァを手に取る。
「……っ!?」
いきなり俺の傷が癒えて攻撃に移ったことに驚いたヘルガだったけど、頭の切り替えが早かったのだろう。
即座に魔方陣を展開して遠くに移動しようとしていた。
「悪いが、逃がすわけにはいかない!」
今ヘルガから離れてしまったら、俺はまた同じような――いや、それ以上に危険なことをしなければならないだろう。
これが完全に好機なんだ……!
身体強化の魔方陣を今の自分の限界を超えるように重ねて展開していく。
全身の血が沸騰するかのように熱い。自分の意志とは関係なく、暴れだしそうになる。
ヘルガが次々に魔方陣を展開していき、自分は遠くの方で姿を表そうとしている。
それを見つけた俺の方は冷静に……しかし熱を宿したかのように一気に駆け抜ける。
視力を強化する魔方陣を発動させて次々に撃ち放たれる銃撃の数々をかいくぐり、俺はヘルガの元へと走り抜ける。
わざわざここで視力を強化したのには理由がある。
いくら身体を強化しても目で感じるものは変わらない。
兄貴のように普通の状態でも戦いによって研ぎ澄まされた感覚と鍛え上げられた動体視力は俺にはない。
それを補うための術がこれというわけだ。
「早い……!?」
「遅い!」
いくら銃による攻撃が驚異的な速度で放たれる死を内包したものであろうとも、今の限界まで強化した俺にはっきりとどう飛んでくるか見える。
弾速も俺が避けられる程度に感じられるし、これならば十分に戦える。
全身に強い負担を与えるこれはあまり使いたくなかった。
だが、ヘルガ相手に温存しようなんてことが間違っていた。
魔方陣を次々に展開していき、俺にたいして弾幕を張り続けるヘルガの表情は少しずつ強張っていくのがわかる。
今までいいようにしてきた相手が、今度は自分を翻弄しようとしているのだから当然だ。
だけど……それだけでは終わらせない。
接近しつつ、更に魔方陣の構築を始める。それは『生命』『炎』『魔人』の三つの起動式。
あくまで生み出すのは魔力生命体……『命』で生み出した魔力の獣と同じだ。
初めて作るものだからこそ左手で少しずつ作りながら、右手でグラムレーヴァを握りしめ、ヘルガに斬りかかっていく。
案の定ナイフで迎え撃って来るが、刃を合わせた瞬間にヘルガは俺の力に押し負けるようによろけて後ろに下がる。
「……どうして」
「はっ! 覚悟を決めた男の力……目に焼き付けろぉっ!」
ヘルガは苦々しい視線を俺に向け、自身に身体強化の魔方陣を重ねていくけど……ここに来てはっきりとわかったことがある。
彼女は俺より自分の身体に作用する魔方陣を使うのが下手だ。
ヘルガが魔方陣を十重ねられるとすれば、俺はそれをもっと簡単に重ねることが出来るだろう。
……その分、負担が強すぎるくらいだけど、俺には『生命』の魔方陣がある。
いくら身体が壊れそうになっても、魔力が続く限り治してみせる。
ヘルガが無数の魔方陣を操り、空間から無数の銃を呼び出して攻撃してくるのであれば……俺はこの身一つ。
生命を生み出し、死してなお生きる身体で食らいつく。
決して諦めない。必ずスパルナと共に地上に帰る。
思い知れよヘルガ。『生きる』覚悟をした者の本気を……!
「もう動けないはずなのに、よく私にそんな目を向けていられるわね」
「へえ、どんな目をしてるんだ? 教えてくれよ」
大方、怯えているような顔をしてるとでも思ったのだろう。
俺にまだ戦う気力がある事が不思議で仕方ないらしい。
「……わかってるの? その体じゃ、もう満足に動く事すら出来ないのよ?」
ヘルガは視線を俺の腕や足に向けて状態を確かめている。
腕は千切れそうなほど撃ち抜かれ、足の方もさぞかし見通しが良くなっているだろう。
今も血が流れて痛かったり寒かったりするくらいだ。
早めに止血しないと間違いなく死ぬ……。
そんな状態で、なんでこの男は笑っていられるのか? そんな風に思っている事だろう。
――当たり前だ。俺が望んでいるのは今この距離なのだから。
遠距離ではヘルガには勝てない。
『命』で作り出した三匹の獣たちも……元々俺との連携攻撃を中心にしてくれている。
個々の能力は……他の勇者をあまり知らないからなんとも言えないが、大体ルーシーぐらいなら倒せる程度だろう。
ヘルガの相手をするには足りない。
もっと強烈で確かな個体……この三体を合計して上回ることが出来る程の強さを持っていて、かつ小さな存在でなくてはならない。
『命』『水』『龍』で生み出した龍は大きすぎて確実にスパルナを巻き込む。
そんな事をしてもこっちにはなんの得もない。
――だったら……作ってやる。
『再』『生』『身体』の三つの起動式を構築して展開し、即発動する。
ヘルガは再び俺が自爆するんじゃないかと警戒して離れているけど、別に余裕がないわけじゃない。
腕や足――全身の重傷が瞬く間に完治して、さらに『風』『刃』の魔方陣をて発動しながら近くにオチていたグラムレーヴァを手に取る。
「……っ!?」
いきなり俺の傷が癒えて攻撃に移ったことに驚いたヘルガだったけど、頭の切り替えが早かったのだろう。
即座に魔方陣を展開して遠くに移動しようとしていた。
「悪いが、逃がすわけにはいかない!」
今ヘルガから離れてしまったら、俺はまた同じような――いや、それ以上に危険なことをしなければならないだろう。
これが完全に好機なんだ……!
身体強化の魔方陣を今の自分の限界を超えるように重ねて展開していく。
全身の血が沸騰するかのように熱い。自分の意志とは関係なく、暴れだしそうになる。
ヘルガが次々に魔方陣を展開していき、自分は遠くの方で姿を表そうとしている。
それを見つけた俺の方は冷静に……しかし熱を宿したかのように一気に駆け抜ける。
視力を強化する魔方陣を発動させて次々に撃ち放たれる銃撃の数々をかいくぐり、俺はヘルガの元へと走り抜ける。
わざわざここで視力を強化したのには理由がある。
いくら身体を強化しても目で感じるものは変わらない。
兄貴のように普通の状態でも戦いによって研ぎ澄まされた感覚と鍛え上げられた動体視力は俺にはない。
それを補うための術がこれというわけだ。
「早い……!?」
「遅い!」
いくら銃による攻撃が驚異的な速度で放たれる死を内包したものであろうとも、今の限界まで強化した俺にはっきりとどう飛んでくるか見える。
弾速も俺が避けられる程度に感じられるし、これならば十分に戦える。
全身に強い負担を与えるこれはあまり使いたくなかった。
だが、ヘルガ相手に温存しようなんてことが間違っていた。
魔方陣を次々に展開していき、俺にたいして弾幕を張り続けるヘルガの表情は少しずつ強張っていくのがわかる。
今までいいようにしてきた相手が、今度は自分を翻弄しようとしているのだから当然だ。
だけど……それだけでは終わらせない。
接近しつつ、更に魔方陣の構築を始める。それは『生命』『炎』『魔人』の三つの起動式。
あくまで生み出すのは魔力生命体……『命』で生み出した魔力の獣と同じだ。
初めて作るものだからこそ左手で少しずつ作りながら、右手でグラムレーヴァを握りしめ、ヘルガに斬りかかっていく。
案の定ナイフで迎え撃って来るが、刃を合わせた瞬間にヘルガは俺の力に押し負けるようによろけて後ろに下がる。
「……どうして」
「はっ! 覚悟を決めた男の力……目に焼き付けろぉっ!」
ヘルガは苦々しい視線を俺に向け、自身に身体強化の魔方陣を重ねていくけど……ここに来てはっきりとわかったことがある。
彼女は俺より自分の身体に作用する魔方陣を使うのが下手だ。
ヘルガが魔方陣を十重ねられるとすれば、俺はそれをもっと簡単に重ねることが出来るだろう。
……その分、負担が強すぎるくらいだけど、俺には『生命』の魔方陣がある。
いくら身体が壊れそうになっても、魔力が続く限り治してみせる。
ヘルガが無数の魔方陣を操り、空間から無数の銃を呼び出して攻撃してくるのであれば……俺はこの身一つ。
生命を生み出し、死してなお生きる身体で食らいつく。
決して諦めない。必ずスパルナと共に地上に帰る。
思い知れよヘルガ。『生きる』覚悟をした者の本気を……!
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