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45・スライム族の長老
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建物の中に入ると、どこか澄んだ……清らかな空気の匂いがした。相当古い建物なのだから、埃っぽいのかと思ったけれど、そんな事は全然なくて、むしろ居心地がいいくらい。
「これはこれは……ようこそいらっしゃいました」
そんな家の中で私達を出迎えてくれたのは、他のスライム族の方とは少し違う赤いスライム。声の質もどっちかというと女性っぽい。
「スーラ。約束通り、娘を連れてきた」
「初めまして。エールティア・リシュファスと申します」
「これはどうも丁寧に。私はスーラ。このスラファムで長老をやっております」
ぺこりと下げられた頭(?)に丁寧な言葉遣い。流石長老を名乗ってるだけあるなぁ、と少し感心するように見ていると、くすくすと笑われてしまった。
「そんなに私が珍しいですか?」
「え、えっと……気に障ったのならごめんなさい」
「気にしてませんよ。私もこの国の未来を担う御方の姿を見る事が出来て、本当に良かったです」
「そんな大げさな……」
あまりにも過剰評価してきたスーラの言葉に呆れるように返したけれど、本人は……いや、お父様も。かなりの大真面目に私の事を見ていた。顔だけは笑って冗談だと言ってくれてるような雰囲気を出してるけれど、視線だけは全然誤魔化せてない。
「ははは、それだけお前に期待しているという訳だ。なんたって私の自慢の娘だからな」
「お父様……」
あまりのべた褒めに少し恥ずかしくなってきたけど、スーラが咳払いをして現実に引き戻してくれた。
「それでは……そろそろ本題に移りましょう。【契約】を行うスライムはこちらで選んでおります。後は儀式を執り行うだけ……ですが、準備は出来ておりますか?」
「ええ」
具体的に何を準備すればいいのかはわからない。お父様に何が必要なのか聞いたら『とりあえず心構えだけはしておきなさい』って言われただけだしね。
「問題ない。着替えの方もしっかりと用意している」
なんで着替えが必要なのか知らないけれど、きっと何かあるんだろうと思って黙っておくことにした。余計な手間を取らせるよりは、早く【契約】を行う子と会いたいって気持ちの方が強かったしね。
「わかりました。それでは……ララスン! 待ち焦がれてた相手がいらっしゃったよ!」
二階辺りの方を向いて呼びかけたスーラの大声が響き渡るけれど、誰かがやってくるような感じはしなかった。それからじっと待っていると、二階の方から音を立てて降りてくる気配があった。
「お、おまたせ……しましたぁ……」
現れたのは澄んだ青色のスライム。ララスンって呼ばれたこの子は、ちょっとおどおどとした様子で私達を見ていた。
「早くおいで。緊張してるのはわかりますけど、貴方がいなければ始まらないのですから」
「わ、わわ、わかってますよぅ……」
結構柔らかいフォルムをしてるのに、肝心のララスンはガチガチに緊張してた。
ぴょんぴょんと器用に階段を降りてきて、私の前にやってきたララスンはスーラやアルスラがやってたように人で言えば頭を下げる……という表現がしっくり来るかもしれない仕草を見せてくれた。
「は、はじめましてぇ……ラ、ララ、スン……ですぅ」
きょろきょろとしてるその姿が、なんだか可愛らしく感じる。小動物を見てるみたい。
「はじめまして。エールティアよ。よろしくね」
「は、はいぃ!」
びくっとしてる姿も可愛いけれど、これじゃあ話が進みにくいと思ったのか、スーラがララスンの前にやってきて、触手みたいなのを伸ばしてきた。
「では御三方。こちらにどうぞ。魔法陣のある部屋に案内致します」
そのまま飛び跳ねながら奥にある部屋に向かって進んでいくスーラについて行くように、私達も部屋の中に入っていく。
部屋の奥にはまた場所。そこは私達がいた部屋よりも古い感じがして、床にはスーラが言っていた魔法陣が描かれている。
「これは……」
「古代から脈々と受け継がれているスライム族との【契約】を行う魔法陣でございます。初代魔王様も、ここで自らの伴侶となるスライムと【契約】したと言われております」
「という事は、男のスライムを?」
スーラはゆっくりと首を振るような仕草をしてきた。違う――という事は必然的に女のスライムって事になるけど……まさかね。
「基本的にスライム族には性別がない。【契約】した時に精神がどちらかに寄っているかで体型が決まるが、どちらになろうともある程度変化することが可能だ。あー、つまり――」
「女体のスライム族でも孕ませることが出来るというわけです」
お父様がどう言おうか悩んでいたのを、スーラはばっさりと切り捨ててしまった。いや……私も理解は出来たんだけど、こうはっきり言われると戸惑いが強いっていうか……。
「ど、どうしましたかぁ……?」
ここでララスンも気にしてないって事は、スライム族にとって大した事じゃないんだろう。
「スライム族は【契約】していないとそういう観念が薄いからな……」
お父様は苦笑いしてるけれど、それがわかってるならわざわざ言わないで欲しかった。こんな知識を教えてもらっても、複雑な気分にしかならない。
「これはこれは……ようこそいらっしゃいました」
そんな家の中で私達を出迎えてくれたのは、他のスライム族の方とは少し違う赤いスライム。声の質もどっちかというと女性っぽい。
「スーラ。約束通り、娘を連れてきた」
「初めまして。エールティア・リシュファスと申します」
「これはどうも丁寧に。私はスーラ。このスラファムで長老をやっております」
ぺこりと下げられた頭(?)に丁寧な言葉遣い。流石長老を名乗ってるだけあるなぁ、と少し感心するように見ていると、くすくすと笑われてしまった。
「そんなに私が珍しいですか?」
「え、えっと……気に障ったのならごめんなさい」
「気にしてませんよ。私もこの国の未来を担う御方の姿を見る事が出来て、本当に良かったです」
「そんな大げさな……」
あまりにも過剰評価してきたスーラの言葉に呆れるように返したけれど、本人は……いや、お父様も。かなりの大真面目に私の事を見ていた。顔だけは笑って冗談だと言ってくれてるような雰囲気を出してるけれど、視線だけは全然誤魔化せてない。
「ははは、それだけお前に期待しているという訳だ。なんたって私の自慢の娘だからな」
「お父様……」
あまりのべた褒めに少し恥ずかしくなってきたけど、スーラが咳払いをして現実に引き戻してくれた。
「それでは……そろそろ本題に移りましょう。【契約】を行うスライムはこちらで選んでおります。後は儀式を執り行うだけ……ですが、準備は出来ておりますか?」
「ええ」
具体的に何を準備すればいいのかはわからない。お父様に何が必要なのか聞いたら『とりあえず心構えだけはしておきなさい』って言われただけだしね。
「問題ない。着替えの方もしっかりと用意している」
なんで着替えが必要なのか知らないけれど、きっと何かあるんだろうと思って黙っておくことにした。余計な手間を取らせるよりは、早く【契約】を行う子と会いたいって気持ちの方が強かったしね。
「わかりました。それでは……ララスン! 待ち焦がれてた相手がいらっしゃったよ!」
二階辺りの方を向いて呼びかけたスーラの大声が響き渡るけれど、誰かがやってくるような感じはしなかった。それからじっと待っていると、二階の方から音を立てて降りてくる気配があった。
「お、おまたせ……しましたぁ……」
現れたのは澄んだ青色のスライム。ララスンって呼ばれたこの子は、ちょっとおどおどとした様子で私達を見ていた。
「早くおいで。緊張してるのはわかりますけど、貴方がいなければ始まらないのですから」
「わ、わわ、わかってますよぅ……」
結構柔らかいフォルムをしてるのに、肝心のララスンはガチガチに緊張してた。
ぴょんぴょんと器用に階段を降りてきて、私の前にやってきたララスンはスーラやアルスラがやってたように人で言えば頭を下げる……という表現がしっくり来るかもしれない仕草を見せてくれた。
「は、はじめましてぇ……ラ、ララ、スン……ですぅ」
きょろきょろとしてるその姿が、なんだか可愛らしく感じる。小動物を見てるみたい。
「はじめまして。エールティアよ。よろしくね」
「は、はいぃ!」
びくっとしてる姿も可愛いけれど、これじゃあ話が進みにくいと思ったのか、スーラがララスンの前にやってきて、触手みたいなのを伸ばしてきた。
「では御三方。こちらにどうぞ。魔法陣のある部屋に案内致します」
そのまま飛び跳ねながら奥にある部屋に向かって進んでいくスーラについて行くように、私達も部屋の中に入っていく。
部屋の奥にはまた場所。そこは私達がいた部屋よりも古い感じがして、床にはスーラが言っていた魔法陣が描かれている。
「これは……」
「古代から脈々と受け継がれているスライム族との【契約】を行う魔法陣でございます。初代魔王様も、ここで自らの伴侶となるスライムと【契約】したと言われております」
「という事は、男のスライムを?」
スーラはゆっくりと首を振るような仕草をしてきた。違う――という事は必然的に女のスライムって事になるけど……まさかね。
「基本的にスライム族には性別がない。【契約】した時に精神がどちらかに寄っているかで体型が決まるが、どちらになろうともある程度変化することが可能だ。あー、つまり――」
「女体のスライム族でも孕ませることが出来るというわけです」
お父様がどう言おうか悩んでいたのを、スーラはばっさりと切り捨ててしまった。いや……私も理解は出来たんだけど、こうはっきり言われると戸惑いが強いっていうか……。
「ど、どうしましたかぁ……?」
ここでララスンも気にしてないって事は、スライム族にとって大した事じゃないんだろう。
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お父様は苦笑いしてるけれど、それがわかってるならわざわざ言わないで欲しかった。こんな知識を教えてもらっても、複雑な気分にしかならない。
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