転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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100・成敗される者

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 襲い掛かってるから魔人族の男に対応するためにリザードマン族の男の手を離したんだけど、今度は逆に手を掴まれて、動きを制限されてしまった。

「どうですか? これでも尚、私の心に聞くことが出来るとでも?」

 にやりと笑う彼の目には、私がどういう風に映っているのだろう? 少なくとも、彼が考えていそうな危機には全く陥っていない。
 だって、ナイフを持ってる男の動きは……かなり遅いんだもの。

 この程度の動きで私を仕留めようなんて、道化もいいところだ。突進してきた魔人族の男をなんとかする前に、身体をリザードマン族の男の真横に移動させて、足払いをかけてやる。そのまま体勢を崩した男に向かって、腹を強く殴って動きを封じる。
 一人を無効化にしている間に迫ってきている魔人族の男に向かって身体を滑り込ませて、突き出されたナイフを避けると同時に顎に掌底を喰らわせて、動きが止まった男の顔面に拳を振るって地面送りにしてあげた。

「す、すごいにゃ……」

 ぽつりと野次馬の一人が呟いているけれど、まだ殺気がこっちに向けられている。後ろから放たれたボウガンの矢を握って防いだ私は、それを適当なところに投げ捨てて、魔導を発動させる。

 ――イメージは攻撃してきた者に真っ直ぐ飛んでいく矢。反撃の狼煙。

「『リコイルアロー』!」

 放たれた魔導は、私に殺気を向けて攻撃仕掛けてきた者に飛んでいく。確証を持って断言出来るのは、私が自身の魔導に絶対的な自信をもっているからだ。

「ぎゃあああっ! くそ、このっ!」

 肩を射貫かれた様子で、短剣を手に突撃してきたゴブリン族の小柄な男が襲い掛かってくる。

「残念だけど、それじゃ永遠に届かないわね」

 いくら逆上したからって言っても、あまりにもお粗末な攻撃の仕方だ。かわして、短剣を持った手を叩き落して、驚愕の表情を浮かべたゴブリン族の男の手を引っ張って、地面に転ばしてやる。
 その上で止めのかかと落としを食らわせてやり、男の意識を完全に刈り取る。

「ふう……これで全部かしら」
「ティアちゃん、大丈夫にゃ?」
「ええ。二人とも、怪我はない?」
「大丈夫ですみゃ」

 とことこと駆け寄ってくるニンシャを受け止めて、心配そうに歩み寄ってきたリュネーには笑顔で返しておく。

「それより警備隊の人は――」
「おまわりさーん、こっちですにゃー」

 どうやら誰かが通報してくれたみたいで、鎧とは違う軽装の服を着た猫人族が大勢押し寄せて来ていた。

「エールティア姫様、リュネー姫様、ニンシャ姫様! 皆様ご無事ですかにゃ?」
「ええ。ありがとうだにゃ。私達を襲ってきた不埒な輩の連行、よろしくお願いしますにゃ」
「はいですにゃ! しっかり連れて行きますにゃ!」

 隊長らしき猫人族が『びしっ』と敬礼をしている間に、気を失ってる暗殺者三人を拘束した下っ端は、さっさと三人を連れて行ってしまった。
 それを見届けた隊長は、下っ端の後ろを付いて行くように歩いて去ってしまった。

「嵐のように去っていったわね……」
「流石シルケット警備隊。動きが早いのにゃー」
「優秀なのにゃねー」

 野次馬のみんなも、騒動が収まったと同時に興味を無くしたようにばらばらと散っていってしまった。ある意味、団体行動がとれてるのかもしれない。

「助けてもらってごめんにゃ。ティアちゃん」
「リュネーには、一番守らなきゃいけないものがあるでしょう?」
「……そうだにゃ。ありがとうにゃ」

 リュネーがニンシャの頭を撫でると、ニンシャは嬉しそうに目を細めて大人しく撫でられていた。
 羨ましい光景を目にした私は……しばらく彼女達を眺めた後、いったんリセットするように両手を叩いて鳴らす。

「さ、フルトパンを買って、散策の続きでもしましょうか。まだまだ……時間はあるしね」
「はいですみゃ!」

 私の提案に元気よく手をあげて返事をしたニンシャは、さっきの怖さは引っ込んでしまったようだ。

「……ティアちゃん、さっきのあの人達……」

 ただ、リュネーは思うところがあったのか、不安そうに彼らが連行されていった方向を見つめていた。
 彼女が心配する気持ちはわかる。いくら街中って言っても、シルケットの王都であるシェイシルで、王族を狙うなんて正気じゃない。こういう時は、大抵どこかの貴族が絡んでいるのだけど……生憎、こちらの貴族事情は知らないから、よくわからないけれど。

「大丈夫。何かあっても、私が二人とも守るから。だから、リュネーも楽しみなさい」

 彼らの狙いは間違いなく私の方だ。最初はニンシャを狙ってきたけれど、すぐに私に狙いを変えてきたし、他の敵は全員が私に向かってきていた。

 本当なら私から離れた方が良いのかもしれないけれど、ここで……万が一にでも彼女達を人質に捕られてしまったら……きっとその人達を殺してしまう。手加減出来る気がまるでしない。

 別に誰かを殺める事に何かを感じる事はないけれど、情報源を潰すような真似はしたくない。だから彼女達は私の側において守る事にした。

 それに……やりすぎて二人に嫌われたくないしね。
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