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108・集まった者たち
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試験の結果が発表された日の放課後。私は職員室に訪れていた。
そこには既に他の生徒達が集まっていて、私が最後の一人だったようだ。先生は誰もいないようで、なんとか間に合ったみたい。
少し前まで落ち込んでいたジュールを慰めていたから仕方がないよね。
「やあ、遅かったね」
妖精族のウォルカがひらひらと飛んで私の近くで上品な態度で挨拶をしてきた。相変わらず気安い感じが話しやすい。彼自身は普通の平民なんだけれど、そういう事を感じさせない気軽さで接してくれる。
「少しジュールと話してたの。あの子、行きたがってたからね」
「ああ、君の契約スライムだね。よほど好かれてるんだろうね」
くすくすと笑った後、ひらひらと集まった人達のところに戻っていった。
リュネーやレイアといった見知った顔がいる中、初めて見る顔の子が二人いた。
一人は私よりも身長が高くて、日に焼けたように浅黒い肌をしているドワーフ族の男の子。
もう一人は同じくらいの身長で、白い髪に二本の角。透き通るような肌に蒼い目が印象的な鬼人族の女の子だ。
私が視線を向けた瞬間、女の子の方がこっちに歩み寄ってきて、丁寧に挨拶してきた。
「初めまして。僕は雪風。雪風・桜咲です。お目に掛かれて光栄です。エールティア殿下」
「ええ、初めまして。これからよろしくね」
女の子なのに『僕』なんて珍しい。それがこんな儚そうな少女ともあれば尚更だ。
「あんたがエールティア様か。俺は、フォルス・イーディアス。いずれこの世界に新しい風を吹かせる男だ!」
腰に手を当てて、胸を逸らして誇らしげに語るフォルスは、無邪気そうにも思えた。
「新しい風?」
「ああ。今、魔導車の他にも色んな技術が成長してる。総じて機械と呼ばれてるそれらは、今後どんどん伸びていくだろう。俺はそれの最先端を走って、新しいものをどんどん作っていくって事さ!」
今の時代。ドワーフ族は剣や盾だけじゃなくて、より精密な物を作っている。その中でも最先端を行く……と言ったら、生半可な努力じゃなし得ない事だろう。
それを目を輝かせて語る彼の姿は、どこか眩しく見える。
「素敵な夢を持ってるのね」
「ああ! 俺の生涯を掛けて成し遂げて見せる夢だ!」
力強い笑みを浮かべるフォルスは、その小麦色の肌が相まって、肉体労働が好きそうな子供にしか見えない。それなのに、学力も備わってるのだから不思議だ。
「応援させてもらうわ。何か困った事があったら屋敷に来なさい。貴方の信念が絶えていないのであれば、微力かも知れないけれど、助けになってあげるから」
夢に向かって走り続ける人は好きだ。私には決して辿り着けない輝きを持っているから。
フォルスとの会話をそこそこに、リュネーとレイアの二人と話をしていると、私達の担任のベルーザ先生が入ってきた。
「待たせたようだな。全員揃っているか?」
「はい。全員集まりました」
ベルーザ先生の問いに雪風が答えた。
「よし、それではまず……魔王祭の見学に選ばれた事におめでとうと伝えておこう。これは、お前達が次世代の魔王祭を担う者達だと認められた証でもある。しっかりとその戦いを学び、他国の者達と触れ合って欲しい」
しっかりと一人一人の顔を見て話すベルーザ先生だけど、どこか仰々しく感じる。それだけ力を入れるように上の人から指示でもされたのかな? と勘繰ってしまうほどだ。
「まずパトオラの5の日に獣人族の国・ガンドルグへと向かう。予定的には予選の最終戦から見る事が出来るだろう」
「最初から見ないのですか?」
「学園の強さを見るのだから、予選落ちするような選手はあまり気にかけなくていい……というのが学園の方針だ。セントラル地方でないのは、こちらも準備がある都合になる」
「だけど、先生は長くて二か月って言ってなかった?」
「あくまで最長の話だ。順調にいけば、一か月で終わる。……が、その地域の代行戦争という側面もある以上、予想だにしないアクシデントやトラブルが起こる可能性も考慮しなければならない、という訳だ」
だから長くて二か月、という事か。実際、過去にそういう事例があったという事なんだろう。
「その後、パトオラの10の日にセントラルにあるエンドラル学園に向かう予定だ」
その言葉に、私を含めた全員が驚いた。エンドラル学園というと、竜人族の国・ドラグニカにある有名な学園だ。魔王祭でも最強の一角を担っていると言っても言い過ぎじゃない。そんな場所に行く事になるのだから、期待感が一気に膨らんでいくのも仕方がない。
「良いか? これはあくまで授業の一環だ。リシュファス学園の生徒として恥ずかしくの無い行動をするように」
「「「「「はい(です/っす)」」」」」
なぜか私に念押しするかのように視線を向けてるけれど、私はいつでも恥ずかしくない行動を取っているつもりだ。絡んでくる相手が悪い。
「よし、話は以上だ。この事はなるべく早く親に伝えるように」
ようやくベルーザ先生の話が終わって、私達は職員室から解放された。魔王祭に行ける日が楽しみだけれど……またジュールが寂しがるんだろうなぁ……。
そこには既に他の生徒達が集まっていて、私が最後の一人だったようだ。先生は誰もいないようで、なんとか間に合ったみたい。
少し前まで落ち込んでいたジュールを慰めていたから仕方がないよね。
「やあ、遅かったね」
妖精族のウォルカがひらひらと飛んで私の近くで上品な態度で挨拶をしてきた。相変わらず気安い感じが話しやすい。彼自身は普通の平民なんだけれど、そういう事を感じさせない気軽さで接してくれる。
「少しジュールと話してたの。あの子、行きたがってたからね」
「ああ、君の契約スライムだね。よほど好かれてるんだろうね」
くすくすと笑った後、ひらひらと集まった人達のところに戻っていった。
リュネーやレイアといった見知った顔がいる中、初めて見る顔の子が二人いた。
一人は私よりも身長が高くて、日に焼けたように浅黒い肌をしているドワーフ族の男の子。
もう一人は同じくらいの身長で、白い髪に二本の角。透き通るような肌に蒼い目が印象的な鬼人族の女の子だ。
私が視線を向けた瞬間、女の子の方がこっちに歩み寄ってきて、丁寧に挨拶してきた。
「初めまして。僕は雪風。雪風・桜咲です。お目に掛かれて光栄です。エールティア殿下」
「ええ、初めまして。これからよろしくね」
女の子なのに『僕』なんて珍しい。それがこんな儚そうな少女ともあれば尚更だ。
「あんたがエールティア様か。俺は、フォルス・イーディアス。いずれこの世界に新しい風を吹かせる男だ!」
腰に手を当てて、胸を逸らして誇らしげに語るフォルスは、無邪気そうにも思えた。
「新しい風?」
「ああ。今、魔導車の他にも色んな技術が成長してる。総じて機械と呼ばれてるそれらは、今後どんどん伸びていくだろう。俺はそれの最先端を走って、新しいものをどんどん作っていくって事さ!」
今の時代。ドワーフ族は剣や盾だけじゃなくて、より精密な物を作っている。その中でも最先端を行く……と言ったら、生半可な努力じゃなし得ない事だろう。
それを目を輝かせて語る彼の姿は、どこか眩しく見える。
「素敵な夢を持ってるのね」
「ああ! 俺の生涯を掛けて成し遂げて見せる夢だ!」
力強い笑みを浮かべるフォルスは、その小麦色の肌が相まって、肉体労働が好きそうな子供にしか見えない。それなのに、学力も備わってるのだから不思議だ。
「応援させてもらうわ。何か困った事があったら屋敷に来なさい。貴方の信念が絶えていないのであれば、微力かも知れないけれど、助けになってあげるから」
夢に向かって走り続ける人は好きだ。私には決して辿り着けない輝きを持っているから。
フォルスとの会話をそこそこに、リュネーとレイアの二人と話をしていると、私達の担任のベルーザ先生が入ってきた。
「待たせたようだな。全員揃っているか?」
「はい。全員集まりました」
ベルーザ先生の問いに雪風が答えた。
「よし、それではまず……魔王祭の見学に選ばれた事におめでとうと伝えておこう。これは、お前達が次世代の魔王祭を担う者達だと認められた証でもある。しっかりとその戦いを学び、他国の者達と触れ合って欲しい」
しっかりと一人一人の顔を見て話すベルーザ先生だけど、どこか仰々しく感じる。それだけ力を入れるように上の人から指示でもされたのかな? と勘繰ってしまうほどだ。
「まずパトオラの5の日に獣人族の国・ガンドルグへと向かう。予定的には予選の最終戦から見る事が出来るだろう」
「最初から見ないのですか?」
「学園の強さを見るのだから、予選落ちするような選手はあまり気にかけなくていい……というのが学園の方針だ。セントラル地方でないのは、こちらも準備がある都合になる」
「だけど、先生は長くて二か月って言ってなかった?」
「あくまで最長の話だ。順調にいけば、一か月で終わる。……が、その地域の代行戦争という側面もある以上、予想だにしないアクシデントやトラブルが起こる可能性も考慮しなければならない、という訳だ」
だから長くて二か月、という事か。実際、過去にそういう事例があったという事なんだろう。
「その後、パトオラの10の日にセントラルにあるエンドラル学園に向かう予定だ」
その言葉に、私を含めた全員が驚いた。エンドラル学園というと、竜人族の国・ドラグニカにある有名な学園だ。魔王祭でも最強の一角を担っていると言っても言い過ぎじゃない。そんな場所に行く事になるのだから、期待感が一気に膨らんでいくのも仕方がない。
「良いか? これはあくまで授業の一環だ。リシュファス学園の生徒として恥ずかしくの無い行動をするように」
「「「「「はい(です/っす)」」」」」
なぜか私に念押しするかのように視線を向けてるけれど、私はいつでも恥ずかしくない行動を取っているつもりだ。絡んでくる相手が悪い。
「よし、話は以上だ。この事はなるべく早く親に伝えるように」
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