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124・始まる道のり

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 カイゼルとルディルの決闘を見届けた私達は、お父様達へのお土産も手に入れて、無事にティリアースに戻る事が出来た。
 色々と得られるものもあったし、ジュールも喜んでくれた。ちょっと余計な事を思い出して、憂鬱にもなったりしたけれど、まあ……行って良かったと思える程には楽しめたかな。

 帰ったその日にお父様にはワイン。お母様には無難にガルアルムで売られているお守りを贈った。二人ともすごく喜んでくれた。

 次の日には、学園でリュネーとレイアの二人にお土産を渡した。流石に食べ物を持ち込むわけにもいかなかったから、二人には形の違うネックレスを渡した。どうも他の場所でも手に入りそうなもので、私としては納得いかなかったんだけど……ガルアルムの特産物と言えば、レッカー牛ぐらいしかない。
 繁殖力が高くて、身体も大きい。狼人族から見たら、食べられない部位が存在しない、最高の家畜なのだとか。大量料理が正義なあの国では、人気になって当然な動物だろう。

 それ以外には『必殺・餓狼王』とかラベルが張られているお酒くらいかな。
 他にも探したけれど、基本的に食べ物以外にはあまり力を入れてなかった。工芸品はドワーフ族や魔人族の店ばっかりだったしね。

 だから、ガルアルムでしか手に入らないお土産……とは言えなくて、あまり納得は出来なかった。それでも二人が喜んでくれたから、自分だけそういう顔をするわけにはいかなかった。

「ありがとう、ティアちゃん!」

 そう言われたら、私も自然と笑顔が零れてくるのだから、案外自分は単純なんだろうなと納得してしまった。
 少し不完全燃焼で終わったお土産だったけど、貰ってくれる人の気持ちの方が大事な事だし……今回のお土産は大成功と言えるだろう。

 ――

 そして時間は進み……ファオラの月が終わって、パトオラの5の日。試験発表の時に集まった上位五人と私は、職員室にやってきていた。
 それぞれがみんな興奮したような表情を浮かべる中、一人だけ遅れてきた教師がいた。

「よし、みんな揃っているな。今回の引率は僕がする。くれぐれも団体行動を乱さないように心掛けてくれ」

 ベルーザ先生は全く悪びれる様子もなく、いつも通りの表情をしている。

「先生、遅刻してきてその態度はちょっとどうかと思うんですけれど」
「僕は君達と違って忙しい。ワイバーン便の手配。向こうの宿の手配。一か月以上行われる魔王祭に向けて、君達が少しでも快適に過ごせるように頑張っている。だからあまり気安くそういう事は言わないように」

 妙に真剣味の篭った視線で私達を睨むのはいいけれど、そんなに大真面目に言い訳しなくてもいいと思う。

「先生。それで、出立はいつ頃になるのでしょうか?」
「……こほん。まず今からワイバーン便に乗って、当初の予定通りガンドルグに向かう。五日はそこに滞在する予定だが……なにか質問はあるか?」
「はーい。これって、学園的には出席扱いなんっすか?」
「……なんでこのタイミングで聞いて来たのかわからないが、勿論だ。これは学園の行事の一つだ。来年も行われる予定だし、これを欠席扱いにするのは流石に生徒に可哀想だろう」

 本当になんで今更な聞くんだろう? って質問にも律儀に応えてくれるベルーザ先生は、他に聞きたいことはないか? とでも言うかのように私達を見回してくる。ない事を確認した先生は頷いて、思い出したような顔をした。

「一つ言い忘れていたが、リュネーとエールティアへの発言は気を付けておけ。学園の中では立場は同じだが、流石に他国で王族を軽んじるような事を言ってしまったら、どんなところから批判を受けるかわからないからな」
「リュネーさんもですか?」
「彼女はシルケット王家の娘だ。当然だろう。……とはいえ、きっちり敬語を使って礼儀正しくしろとまでは言わない。ただ、微妙な立場にいるという事を……特にフォルスは覚えておくように」
「え? 俺っすか?」

 まさか自分に矛先が向くとは思わなかったのか、目をぱちぱちさせてフォルスは驚いていた。

「少なくとも、それを敬語だと思ってる生徒を心配しない先生はいない」

 ベルーザ先生は可哀想なものを見るような目でフォルスを見ていた。確かに『~っす』というのは敬語にはならない。

「そうね。『~です』って言った方がいいと思う」
「……そうか?」
「今更だねー」
「そもそも敬語じゃないですしね」

 同意を求めるように周りの見回しているけれど、同意してくれる人は誰もいなかった。

「フォルス殿。ですから以前も、そう申したではありせんか」
「……わかった。努力はする」

 諦めたような顔をしたフォルスだけど、これでよく上位成績者の中に入ったなぁ……と思う。

「よし、他に何か言いたい者はいないな? ……それじゃあ話はここまでだ。ワイバーン発着場に行くぞ」

 フォルスが妙に落ち込んだような顔をしていたけれど、それは彼の話し方が悪い。そういう事で一致した私達は、いよいよ魔王祭の予選に向けて、ワイバーン発着場に向かうのだった。
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