転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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145・魔王祭本選

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『最初の試合はー……あー、これはすっごい見物だよ!』
『一回戦目の選手、入場しろ』

 きゃあきゃあ騒いでいるシューリアの事を無視して魔王祭を進行していくガルドラは、結構大物なのかもしれない。あんな風に横でうるさくしている子が隣にいるのに、あんなに堂々としているんだもの。

『まず一人目はー……アルフくんです!』
「アルフ……!」

 レイアが反応しているけれど……まさか最初の試合がいきなりアルフの試合なんてね。

『対する相手は……ノースト地方から来たサザリンくん!』
『サザリン・アンデルソンか』

「……誰?」
「サザリン・アンデルソン――ノースト地方にある魔人族の国ヒュリザド出身のリザードマン族だな。曲刀と小盾を使って堅実な戦い方をする生徒だな」

 私の呟きを拾ったかのようにベルーザ先生が説明してくれるけれど、なんで他国の生徒の事まで知ってるんだろう?

「先生、随分と詳しいんだな」
「当たり前だ。魔王祭に出場する生徒の情報は、事前に本になって販売されてある。これにな」

 にやりと笑った先生が持っているのは『魔王祭徹底分析! ~本選出場者名簿~』って題名の本だった。統一硬貨で1500セクって表記があるそれなりに厚い本だ。
 大国でしか使えない統一硬貨以外にも、ほぼ全ての国で使える銀貨や銀貨なんかも使えるようになってるみたいだ。

「魔王祭を見に来ているやつは大概これを持っている。貴族なんかも喜んで金を落とすくらいの出来栄えだ。なにせ、誰よりも早く知りたい場合を除いたら、確実に安価で手に入るんだからな。ある意味画期的だ」

 若干自慢するように言ってるけれど、それならもっと早く教えて欲しいものだ。そうしたら、私も買えたのに。
 おかげで急に知ってしまったレイアが少し不機嫌そうになってしまった。

『エンドラル学園の希望の星とアルメダ学園の実力者の対決ですよー! ガルちゃん、どう見ますか!?』
『強い者が勝つ。それだけだ』
『……はい! 何の面白味もないコメントありがとうございました! それじゃ、対戦者の入場も済んだので、はじめちゃって下さい!』
『両者、死力を尽くせ! 結界起動!』

 ガルドラが格好つけるように宣言したと同時に結界が周囲を覆い尽くして――

『決闘……開始!』

 開始と同時に二人が激突した。
 蒼い鱗のリザードマン族――サザリンは盾を構えつつ曲刀による激しい斬撃を放つ。それに応戦するように、アルフは剣で凌いでいく。

「す、すごい……!」
「これが魔王祭で戦う人達……」

 感激しているような声が聞こえるけれど、確かに予選とは比べ物にならない程の戦いだ。
 サザリンの斬撃は左に薙いだかと思えば、返す刃が襲い掛かる。アルフの反撃にも冷静に小盾で防いで、剣が引くと同時に斬撃を繰り出す。

 今まで見てきた中でもかなりの手練れだと見て取れるくらい、サザリンは強い。だけど――

「この戦い、アルフ皇子の勝利は動きませんね」
「……なんで? まだ始まったばかりなのに」

 不満そうなレイアは、まるでアルフに負けて欲しいみたいだけれど……それはありえない。サザリンはかなり必死に攻撃しているけれど、アルフはかなり余裕を見せている。
 それに――

『どうした? その程度かよ!』
『ははっ、その言葉、そのまま返してあげるよ』

 ――思考している間にあの板から声が聞こえて、思わずそっちの方に視線が移ってしまった。そこには下で繰り広げられている戦いが映されていて、さっきの声に合わせてアルフが喋っているのがわかる。

「なるほど。戦場の声も届けてくれるのね。これなら、確かに後ろの方でも見ることが出来るわね」

 感心しながら改めて見てみると、アルフはサザリンを挑発しているようだけど、サザリンの方は全くそれに応じていない。
 冷静な判断力はアルフ以上というわけだ。

『なら、これでどうだ? 【アクセルブースト】【プラズマラッシュ】――』

 片手ずつに魔導を発動させたけれど、何をやりたいんだろう? サザリンが警戒して距離を取っているから、無駄な事じゃないんだろうけど……。

 にやりと笑ったアルフが両手を合わせて、魔導も一緒に……? 確か、あれは――

『混ざれ――【マテリアルレールガン】!!』

 アルフの剣がバチバチと響く雷を纏って……彼は何の躊躇ためらいもなくサザリンに向けて投げた。
 それは鋭い閃光の矢のように鋭くサザリンに向かって、恐ろしい速さで飛んでいく。

『【シールド・オブ・ラウンズ】!』

 その凄まじい攻撃に一歩も引かず、サザリンは小盾を構えて防御の体勢を取ったんだけど……それは悪手だ。冷静に見たら、並大抵の魔導で防げる代物じゃない。一瞬で良いから加速を得られる魔導を使って、強引に避けるのが最もリスクの少ない方法だ。これを判断するには、かなり経験を積まないといけないだろう。

 案の定、使い込まれていた小盾は砕け散って、【マテリアル・レールガン】に串刺しに――される寸前に剣が砕けてなくなってしまう。
 それを見て舌打ちをしたアルフは【アクセルブースト】を使ってサザリンに一気に接近して、至近距離から【プラズマラッシュ】を叩きこんで、動けなくなったサザリンの曲刀を強引に奪って止めを差してしまった。

『試合終了。勝者、アルフ・ジェンド』
『ガルちゃん……もう少し、元気よく行こう?』
『それは無理な相談だな。我はこれで我なのだから』
『もー、しょうがないなぁ……なら、ガルちゃんの代わりに、このあたしが! いっぱい元気振りまいちゃいまぁす!』

 アルフが勝利したのに、このなんとも締まらない感じは何なんだろう。
 これから終わるたびにこんな茶番を見せられるのかと思うと、ちょっとうんざりするけれど……まあ仕方ない。何事も経験と言うやつだろう。
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