転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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 無事に別荘に辿り着いた私達は、早速リティアの町を散策する事にした。どうせルスピラの最後が近づくと、社交場で面倒な事ばかりする事になるのだ。その前にこれくらい、別に構わないだろう。

「ティア様、いつもの服じゃダメですか?」
「当たり前じゃない。それに、学生服ぐらい着なれているでしょう?」
「それは……そうですけど」

 不満そうに私に抗議しているジュールは、いつものメイド服ではなくて、学園に通う時に着ている服を身に纏っていた。
 ちなみに私の方も同じだ。だって、ジュールは自分の服といえばメイド服しか持ってないのだもの。
 何着も服を持っているのに、まともな服はほとんどない。メイド服以外には学生服とぐらいなものかな。ちょっと信じられないけれど、それが事実だ。

 流石にメイド服だと面倒な誤解を受けそうだから、今回は二人とも学生服で行く事にした。正直、休みに突入しているのにこの服を着るのもどうかと思ったけれど……私一人が私服だったらジュールが浮いてしまう。それに一応学生なのだから、普通に使っていても問題ないだろう。

 それに……この方がかえって地味に映るかもしれない。今日は待たせていたジュールとお出かけする日だし、あまり人に騒がれたくなかった。

「それより、早く行きましょう。あまり時間もないんだしね」
「はい!」

 ――

 お父様に館の外に行く事を告げた私とジュールは、なんとか二人で町に繰り出す事に成功した。
 何度か護衛をつける事を勧められたけれど、それでは意味がないと断ったりしたから、それなりに時間が掛かったけれどね。

「すごいですねー。前に行った狼人族の国より、ずっと人が多いです!」
「サウエス地方――いいえ、この世界では最大の国だからね。それも当然でしょう」

 世界の中央都市リティアの名は伊達ではない。色んな人種が行き交っていたんだけど……私やジュールも一般人に紛れる程じゃなかったみたいだ。

「ティア様。結構見られてますね」
「……やっぱり、私がリシュファスの者だと知ってる人が多いからかしらね」

 ここには毎年訪れるし、その時は散策に出る事もある。館の中でじっとしているのは私の性に合わない。必然的に私を知ってる人達も増えていた。
 声を掛けてこないところを見ると、遠目で見るだけの人しかいないようだけれど……今は少しだけ、ジュールと落ち着いて散策をしたかった。普段、あまり話せない分、彼女と一緒に過ごす時間を大切にしたかった。

「ちょっと急ぐけど、大丈夫」
「わかりました」

 ジュールに断って、早足で歩く私は、視線から逃れるように奥の方に進んでいく。
 普段自分が来たことの無い場所まで歩いて、誰もいなくなったのを確認して、ようやく一息ついた。

「はぁ……ごめんね。あんまりゆっくり出来なくて」
「いいえ、ティア様と一緒にいられるだけで、私は嬉しいですから!」

 そう言ってくれるのは嬉しいけれど、このままじゃ、何の為にジュールとの時間を作ったからわからない。どうしようかと思案していると――

「ティア様。私は見られてても構いませんよ。別に悪い事をしている訳じゃないですし、むしろ……みんなが認めてくれるなら、その方が嬉しいです」

 少し照れるように笑っている彼女の笑顔を見ていると、他人の視線を気にしていた私が馬鹿みたいだ。これなら、何も気にせずに一緒にお店に行ったり、食事をしたりすれば良かった。

「……それじゃ、さっきの通りに戻る? お昼も少し過ぎたし、食事でもして気を取り直しましょう」
「はい! 行きましょう!」

 どうやら気負いすぎたのは私の方だったらしく、ちょっと恥ずかしい気持ちになった。
 ジュールと一緒に来た道を戻って、それなりに人とすれ違い出してからの事だ。ちょうど道に広がるように歩く幼い集団を見つけた。私よりも小さな男の子が二人と、女の子が三人といった感じだ。魔人族と狐人族の集まりみたいで、狐人族の方は時折耳がぴくぴく動いていた。

「可愛いですねぇ」

 みんなで笑いながらこっちに向かって歩いてきている子供達の姿を見て和んでいるジュールは、そっと道を空けるように端に移動した。私の方もそれに倣って道の端に寄って、彼らの邪魔をしないようにした。

 なるほど。ジュールの言う通り、可愛らしいものだ。どこか微笑ましい集団が横を通り過ぎるのを――

「……稚拙ね」

 ――待っていようかと思ったけれど、向こうから先に仕掛けてきたのでは仕方ない。私は飛んできた針を上体を逸らして回避した。大方毒でも塗ってあって、少しでも触れたら不味い事になるような代物なのだろう。

 ……そもそも私に毒なんて意味がないんだけれど、そんなことをわざわざ彼らに教えてあげるつもりもない。
 物騒な代物を飛ばしてきた方向を見ると、女の子が体勢を低くして、両手にナイフを握り締めている。それにも何か濡れているような跡がついていて、見るからに毒物を塗ってあった。

「ティア様!!」

 叫ぶジュールを他所に、迫りくる刃が刺さる前に持っている手を強く叩いてはたき落とし、もう一つは足で残った手を蹴り、弾き飛ばす。二つの武器を失った女の子は、苦痛に顔を歪めながら身を引く。

 こんなものだろうが、まだ終わっていない。私のところに向かっていた五人全員が……こちらに放たれた刺客なのだから。
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