転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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377・北西の国へ

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 北の地域の西。リザードマン族の国――ヒューザードに降り立った私達は、今まで行った国とはまた違った景色に驚いた。雪はマデロームよりも少ないけれど、あまり変わらない雪景色が広がっていた。
 他の国で見かけるリザードマン族は緑色だったりするけれど、ここのリザードマン族は大体白色だ。まるで雪に溶け込むような色合いだ。赤い目は目立つけれどね。

「ここが……ね」

 ワイバーン発着場はあまり賑わっていなくて、少し寂しい感じもするくらいだ。小国に位置付けられていて、流通の本流ではない事も原因の一つだろう。

「いつ見てもあんまり人がいないな」
「そうね。一応国のはずなのに……」
「ここはワイバーン発着場の為だけに作られた町みたいなもんだからな。王都は離れたところにある。宿場町も隣町にあるから、大体そっちに流れ込んでいるんだよ。普通はワイバーンから降りたらさっさと移動するからな」

 なるほど。隣に町があるからここは寂れているわけか。そういえばラントルオの鳥車も多いし、町というより中継地点って感じだ。

「町の位置なら知ってるから早く行こう。遅くなると質の悪い宿しか残らないぞ」
「……足元見て値段吊り上げる」

 そんな悪徳商人がいるなんて治安が悪いのか? とも思ったけれど、その方がダークエルフ族も隠れやすいのかもしれない。

「そんな場所にティア様を泊まらせる訳にはいきません! 早く行きましょう!」
「わかってるから、ちょっと待って……」

 アイビグ達の会話に敏感に反応したジュールが、私の手を引っ張って急いで行こうとしている。
 全く……わかったから、もう少し落ち着いてほしいものだ。

「アイビグ! ほら、貴方も来なさい!」
「……わかったよ」

 ため息を漏らしているけれど、きちんと付いてきてくれているようだ。
 というか……彼らの方が前に行かないとおかしい気がするんだけど……これじゃあ私達が案内しているみたいだ。

 ――

 アイビグ達に先頭を譲り、案内してもらった私達が辿り着いた宿場町は、ワイバーン発着場があった町とは違ってそれなりに活気に溢れていた。
 様々な種族が行き来していて、ここは通過点だと教えてくれているようだ。

「おお、人がいっぱいいますね」
「でも、やっぱりリザードマン族はみんな白色なのね」

 他の地域にいるような色合いのリザードマン族は全く見られない。

「ここのリザードマン族はみんな寒さに強くて暑さに弱い。それこそセントラルの春でも若干参る程度にはな」
「普通と逆って事?」
「そういう事だ。ここら辺で中央でも暮らしているようなリザードマン族を見たら、並大抵ではない努力をしている事になるな」

 寒暖の違いで動きが鈍るのは生物の運命と言っても良い。だけどリザードマン族はそれを極端に受けていて、寒いとまともに動くことが出来なくなってしまう。私達なら防寒具を着ればある程度和らぐけれど……リザードマン族はそうはいかない。だからこれだけ多く生活している姿を見るのは新鮮味を感じる。

「ほら、さっさと行こうぜ。今ならまだ良い宿空いてると思うからさ」
「へえ……おすすめがあるの?」
「一応、な」

 それは意外だった。ここの近くに拠点があるなら、わざわざ宿に泊まる必要なんてない。それなのになんでおすすめの宿があるのか興味が湧いてきた。
 別に多少質素でも問題ないけれど、ぼったくられるのは御免だ。本当に知識があるのなら、ここはアイビグに任せる方が良いだろう。

「それじゃあ、案内してくれる?」
「わかった。こっちだ」

 スゥを肩に乗せたまま指で示しながら先行するアイビグに付いて行こうとすると、いつの間にかジュールは私の隣を歩いていた。

「……あの方達は信用出来るのですか?」
「さあね。でも、今は信じるしかないでしょう」

 出会ったばかりであまり信頼できないのはわかる。特にジュールは彼らとはほとんど接点がない。話した事すらマデロームを出る前に王都の入り口で出会ったばかりだろう。まだまだ初対面の域を抜け出していないのだから、彼らを警戒する気持ちはよくわかる。

 だけど、私達は彼らの案内ありきでこの町にいる。なら、多少なりとも信用しないといけない。

「心配?」
「当たり前です! あんな誰ともわからない人達を信じられるわけありません!!」
「そう大声出さないの。まずは信じてみる。そこから始めないとね」

 重要な戦いでの信頼とはまた違う。たかだか宿を選ぶくらいの事で裏切られるならその程度の関係しか築けないって訳だ。彼らが自信満々に紹介した宿が例え貧相でも、それはそれで楽しめるだろうしね。

「ジュール。もう少し人を信じなさい。些細な事で嘘を吐く人なら『それまで』なんだから。信じてもあまり痛くないなら、その方が良いでしょう」
「……そう、ですね」

 私の言葉に多少納得してくれたジュールは、それから何も言わずに私と一緒にアイビグの後ろを付いて行った。

 ――ちなみに、たどり着いた宿はいたって普通。宿の主人が気さくな方で、料理もそこそこ美味しいという場所だった。確かに、結構良いところだとは思うけれど……ずば抜けて良いとか悪いとかはなくて、彼らしさとはどういうことなのかを表していた。
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