転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

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381・隠された秘密

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 最初はどうなるかと思ったけれど、ヒューマはきちんと私達を中に案内してくれた。
 汚いところかもと思っていたけれど、実際は小綺麗にされていて、きちんと清掃が行き届いているようだった。

「……なんだ、思ったより綺麗だな」

 同じ感想を抱いていたらしいアイビグがぽつりと呟いていた。
 本棚が多いけれど、ほとんど埃の匂いはしないし、本も虫干しがされているようだ。

「それは僕が一生懸命掃除していますからね。資料や本を読むか、掃除をするかぐらいしかありませんでしたからね」

 ふふふ、と楽しそうに笑うけれど、そんなに爽やかな笑みを浮かべる場面じゃないと思うのだけれど……まあいいか。

 適当に本を選んで読んでみる。
 中身は大した事は書かれてなくて、どこにでもありそうな内容のものだった。
 次に手に取った本も同じで、観光から魔導。武器や剣術など多種多様の本があるけど、そのどれもがダークエルフ族の事に関してではなかった。

「何ですかね。これ……」

 ジュールの方もあまり成果がなかったようで、顔をしかめていた。それはアイビグとスゥも外れみたいだった。

「それもそうでしょう。本当に大事なものは隠すものですよ」

 そんな当たり前でしょうみたいな態度を取らないでもらいたい。というか、知ってるなら最初から言って欲しいものだ。

「だったらどれが大事なものなんだ?」
「ここにはありませんよ。ここをこうすれば……」

 奥の本棚の下から二番目の右から四番目の本を傾けると――

「ティア様! 本棚が!」

 ジュールが大声を上げて、奥の本棚が動くのを見ていた。まさかこんな仕掛けがここにあるなんてね。つまり、この部屋自体も怪しいものはないとアピールするための場所だったというわけだ。

「本を虫干ししている時に見つけたのですよ」
「? 管理人なのに知らなかったのか?」
「管理人と言っても彼らに押し付けられただけですからね。僕も色々と苦労しているのですよ」

 やれやれと言いたげに両手を広げて頭を左右に振るけれど、それはどっちかというと私達の方だ。
 紳士的な人かと思ったけれど、どうやら彼は隠し事を打ち明けて他人を驚かせることに楽しみを感じているようだ。

「で、ここの奥には何が?」
「恐らく貴女が欲している情報があると思います。彼らの滑稽な憎悪がね」

 ダークエルフ族が次に何をしようとするのか手がかりを求めに来ただけなんだけど、それがどう『滑稽な憎悪』とやらに繋がるのだろうか?

「俺達はあいつらの次の目的地を知りたくてここに来たんだぞ? そんなもの、今は関係ないだろう」

 憤る――というより疑問が心の奥底から湧いて出るような顔をして、アイビグはヒューマを見ていた。

「彼らの行動原理は全てそこから来ていますからね。彼らの歴史、思想……そして今まで行ってきた事の全てを知れば、貴方がたにも理解出来るはずです。次に彼らが何を狙い、何を成し遂げようとするのかを」

 その奥底には理知的な輝きが宿っている。そこには強さ以上のものが秘められていて、私が今まで出会った誰よりも違って見える。
 それは多分、彼がほとんど戦いを知らないのも関係しているだろう。訓練を積んでいるのはわかる。ダークエルフ族の施設にいたのだから、それくらい出来て当然だろう。だけどそれだけだ。何度も実戦を経験して得られる強さが彼にはない。
 似たような経験は他の複製体と出会った時に感じたけれど……彼と違って好戦的だった。内に何を秘めているのかはわからないけれど……あまり出会った事のないタイプで、好感が持てる。
 多少悪戯好きな面も捉えようによたら魅力的だしね。

「さ、それでは行きましょう。彼らの目的を知りたいのでしょう?」

 にやりと楽しそうに笑みを浮かべるヒューマは背中で私達の様子を窺っているクーロを連れて奥へと向かおうとしていた。そういえばなんでクーロがいるのだろう? 管理人なら一人で良いはずだ。

「貴方がここの管理人なのはわかった。だけど……それならクーロはなぜここに?」
「彼女は彼らのいう事をあまり聞いてくれません。隷属の腕輪で何も考えられない操り人形になりそうなところを僕が助けたのです」
「だけどそう簡単に助けれるものでしょうか? そんな単純な人達には思えませんが……」

 確かにヒューマの説明には疑問が残る。他の複製体――ライニーやローラン達は過酷ないじめに耐え抜いたと聞いていた。それなのにクーロがそれを免れたなんておかしな話だ。

「それは多分……元になった人物の関係性が関わってくるだろう」

 私の疑問に答えてくれたのはヒューマではなくてアイビグだった。

「関係性?」
「例えば俺とスゥみたいなもんだ。まるで運命でも感じるかのように惹かれ合う。それは元になった人物と何か関係があるって話だ。詳しい事は知らないけどな」
「その通りです。彼女は僕の言う事はよく聞いてくれる。僕の下でなら、この子は彼らの期待に応えられる程の実力をもっていた。だから見逃されたのですよ」

 なるほど。それなら多少は納得できる。忠実なヒューマのいう事を聞くのなら、実質ダークエルフ族の指示を聞いているのと同じだ。だから彼と一組にされているのだろう。

「この子があんな操り人形になるのは我慢できませんでした。だから……本当に良かったです」

 慈しむ目で頭を撫でるヒューマの姿には嘘偽りない。真にクーロを想っての行動なのだろう。
 それだけでも彼がどんな人物かわかるような気がした。少なくとも警戒心を剥き出しにして接する必要はないくらいにはね。

「さ、そんな事より……早く行きましょう。貴女達もそうのんびりしてはいられないのでしょう?」

 ふふっ、と楽しそうに笑う彼は再び奥へと向かう。その足取りはどこか軽かった。
 ……彼の言う通り、のんびりしている場合じゃない。私達は手がかりを求めてきたのだから。
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