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434・予想外の来訪者
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ベアルとも別れを告げ、私達は適当な宿を抑えてくれていたレアディ達と合流し、しばらくここに滞在する事となった。
あまり移動しすぎても雪風と合流出来なくなってしまうからね。
一応宿の事は城の門番に伝えている。雪風が私達のことを探すとしたら、確実に向かう場所――ガンドルグの王城以外まずない。いくら雪風でも手当たり次第宿屋を探すような事はしないだろう。……そう、思う。
レアディ達は宿を抑えた後、早速飲みに行ったらしく、私達が戻ってきた時にはすっかり出来上がっていた。
こっちはある意味地獄のような時間を過ごしていたのに、彼らは真逆の時間を楽しんでいたのには、流石にいらっとした。
私が任せた以上、あまり文句は言えないから更に不満が募る。
そんなレアディ達からはこの国の実情を聞く事が出来た。他の町からやってきた若い男性は、人が多すぎて出稼ぎに来たのだとか。王都にはそういう若者が多くて、村や他の町では人口の多さに反して仕事の少なさが問題になっているらしい。
伝統的な行事などは後継者を数人単位で育てていて、漁業や農業等も採りすぎたり作り過ぎだりしても意味がない。必然的に溢れた者達は他の町に仕事を探し始めるという訳だ。
そしていくら王都でも、大量の出稼ぎ者に職を与え続ける事が出来るわけもなく、現在王都では大々的に移民者を募集しているのだとか。
テントや食料などをかき集めて備えているらしいし、この事からもガンドルグ王が新しい町を作る事に熱心になっている理由がわかる。
ティリアースの軍を引き留めたくて今思いついた訳でもなくて良かったけれど、そんなに丹念に準備している間にダークエルフ族が攻勢を仕掛けてきて、軍事拠点が見つかったというのだから可哀想に思うほどだ。
聞けば聞くほど頑張って国を治めているのが伝わってくる。というかガンドルグ王程の政治が私に出来るかどうか分からないほど頑張っているのには驚いた。
……まあ、私は守るより壊す方に力が寄っているから仕方のない事なのだけれど。
いずれはルティエル女王陛下の後を継ぐ可能性も十分にあるのだから、今回の件が一区切りついたら少しは国政についても勉強したほうがいいだろう。
レアディ達に一通り市政についての情報を聞いた後、食事を済ませた直後辺りから疲労感で身体が支配されていくのがわかった。やっぱり張り詰めていた精神が一気に緩んだせいだろう。出来ればこのままベッドの中に入って眠りたいのだけれど――ドアをノックする音が聞こえてきたからそうもいかない。この時間にレアディが来るわけもないし、ファリスとはついさっきまで一緒にいたから、ジュールか雪風のどちらかだろう……なんて考えながらドアを開くと、そこにはやっぱり雪風がいた。ついでに後ろには私達より小さくて幼い女の子がいて、何故かお父様も一緒にいる。
「え? お父様?」
あまりにも衝撃的な光景が視界に飛び込んできて、頭の中が真っ白になってしまったほどだ。
雪風は予想範囲内だったし、ヒューの大事にしている女の子を迎えに行ってたんだから、小さな子がいるのも頷ける。
だけどなんでお父様? 何が起こったの?
「エールティア、何をそんなに呆けている? 私がいる事がそんなに不思議か?」
当然だろう。まさかいるなんて誰が想像できるものか。
今まで生きてきた中で上位に入るほどの驚きを感じた程だ。
「……こ、こほん。雪風達はともかく、どうしてお父様が?」
「うむ。この二人を城門の方で見つけてな。話を聞くとお前のいる宿を門兵から聞き出した頃合いだったので共に向かう事となったのだ」
なるほど。だからこの三人になった……と。どんな偶然だと思ったくらいだ。
何とか心を落ち着かせて平静に戻ると、お父様が慈しむような視線を向けてきていた。なんだか、こんな視線を感じるのもとても久しぶりのような気がする。
「三人とも部屋に中へどうぞ。あまりもてなしは出来ませんが……」
とりあえず三人とも部屋の中に入れようと思ったのだけれど、雪風は慌てたように首を横に振って一歩後ろに下がる。
「どうしたの?」
「僕達はまた後でで大丈夫ですよ。今はリシュファス公爵様とお二人で寛いでください」
どうやら雪風はお父様と二人きりにさせたいみたいだ。変に遠慮しないでもいいのに……と思ったけれど、せっかくの好意だから素直に甘える事にした。
「今回のところはこの子の挨拶だけ……ほら、ラミィ」
「……はじめ、まして。ラミィです」
雪風の背中から辛うじて顔を覗かせて、その辿々しい言葉遣いがなんとも可愛い。思わず頭を撫でてしまった。
「私はエールティア・リシュファスよ。よろしくね」
「……! う、うん!」
少し人見知りしているせいか、照れるように笑うその姿はまた可愛い。なるほど、ヒューが守ってあげたくなる気持ちもわかる。
「雪風。ヒューは今ファリスと一緒だから、そっちに行きなさい。部屋はわかる?」
「はい。教えてもらったので問題ありません。それでは、エールティア様もどうかごゆっくり……」
雪風は本当に帰還と紹介の挨拶に来ただけで、そのまま行ってしまった。
部屋に残されたのは私とお父様。二人きりだけだった。
あまり移動しすぎても雪風と合流出来なくなってしまうからね。
一応宿の事は城の門番に伝えている。雪風が私達のことを探すとしたら、確実に向かう場所――ガンドルグの王城以外まずない。いくら雪風でも手当たり次第宿屋を探すような事はしないだろう。……そう、思う。
レアディ達は宿を抑えた後、早速飲みに行ったらしく、私達が戻ってきた時にはすっかり出来上がっていた。
こっちはある意味地獄のような時間を過ごしていたのに、彼らは真逆の時間を楽しんでいたのには、流石にいらっとした。
私が任せた以上、あまり文句は言えないから更に不満が募る。
そんなレアディ達からはこの国の実情を聞く事が出来た。他の町からやってきた若い男性は、人が多すぎて出稼ぎに来たのだとか。王都にはそういう若者が多くて、村や他の町では人口の多さに反して仕事の少なさが問題になっているらしい。
伝統的な行事などは後継者を数人単位で育てていて、漁業や農業等も採りすぎたり作り過ぎだりしても意味がない。必然的に溢れた者達は他の町に仕事を探し始めるという訳だ。
そしていくら王都でも、大量の出稼ぎ者に職を与え続ける事が出来るわけもなく、現在王都では大々的に移民者を募集しているのだとか。
テントや食料などをかき集めて備えているらしいし、この事からもガンドルグ王が新しい町を作る事に熱心になっている理由がわかる。
ティリアースの軍を引き留めたくて今思いついた訳でもなくて良かったけれど、そんなに丹念に準備している間にダークエルフ族が攻勢を仕掛けてきて、軍事拠点が見つかったというのだから可哀想に思うほどだ。
聞けば聞くほど頑張って国を治めているのが伝わってくる。というかガンドルグ王程の政治が私に出来るかどうか分からないほど頑張っているのには驚いた。
……まあ、私は守るより壊す方に力が寄っているから仕方のない事なのだけれど。
いずれはルティエル女王陛下の後を継ぐ可能性も十分にあるのだから、今回の件が一区切りついたら少しは国政についても勉強したほうがいいだろう。
レアディ達に一通り市政についての情報を聞いた後、食事を済ませた直後辺りから疲労感で身体が支配されていくのがわかった。やっぱり張り詰めていた精神が一気に緩んだせいだろう。出来ればこのままベッドの中に入って眠りたいのだけれど――ドアをノックする音が聞こえてきたからそうもいかない。この時間にレアディが来るわけもないし、ファリスとはついさっきまで一緒にいたから、ジュールか雪風のどちらかだろう……なんて考えながらドアを開くと、そこにはやっぱり雪風がいた。ついでに後ろには私達より小さくて幼い女の子がいて、何故かお父様も一緒にいる。
「え? お父様?」
あまりにも衝撃的な光景が視界に飛び込んできて、頭の中が真っ白になってしまったほどだ。
雪風は予想範囲内だったし、ヒューの大事にしている女の子を迎えに行ってたんだから、小さな子がいるのも頷ける。
だけどなんでお父様? 何が起こったの?
「エールティア、何をそんなに呆けている? 私がいる事がそんなに不思議か?」
当然だろう。まさかいるなんて誰が想像できるものか。
今まで生きてきた中で上位に入るほどの驚きを感じた程だ。
「……こ、こほん。雪風達はともかく、どうしてお父様が?」
「うむ。この二人を城門の方で見つけてな。話を聞くとお前のいる宿を門兵から聞き出した頃合いだったので共に向かう事となったのだ」
なるほど。だからこの三人になった……と。どんな偶然だと思ったくらいだ。
何とか心を落ち着かせて平静に戻ると、お父様が慈しむような視線を向けてきていた。なんだか、こんな視線を感じるのもとても久しぶりのような気がする。
「三人とも部屋に中へどうぞ。あまりもてなしは出来ませんが……」
とりあえず三人とも部屋の中に入れようと思ったのだけれど、雪風は慌てたように首を横に振って一歩後ろに下がる。
「どうしたの?」
「僕達はまた後でで大丈夫ですよ。今はリシュファス公爵様とお二人で寛いでください」
どうやら雪風はお父様と二人きりにさせたいみたいだ。変に遠慮しないでもいいのに……と思ったけれど、せっかくの好意だから素直に甘える事にした。
「今回のところはこの子の挨拶だけ……ほら、ラミィ」
「……はじめ、まして。ラミィです」
雪風の背中から辛うじて顔を覗かせて、その辿々しい言葉遣いがなんとも可愛い。思わず頭を撫でてしまった。
「私はエールティア・リシュファスよ。よろしくね」
「……! う、うん!」
少し人見知りしているせいか、照れるように笑うその姿はまた可愛い。なるほど、ヒューが守ってあげたくなる気持ちもわかる。
「雪風。ヒューは今ファリスと一緒だから、そっちに行きなさい。部屋はわかる?」
「はい。教えてもらったので問題ありません。それでは、エールティア様もどうかごゆっくり……」
雪風は本当に帰還と紹介の挨拶に来ただけで、そのまま行ってしまった。
部屋に残されたのは私とお父様。二人きりだけだった。
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