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531・攻略終了(ファリスside)
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ルォーグの言った通りに二日やってきたベルンとシャニルが送ってくれた人材はかなり多かった。食料も多めに持たせられており、これから続々と人が集まってくる事になったらしい。
丘にはちょっとした町が作られる事になったらしく、ダークエルフ族の被害に遭った難民達がそのまま移民としてここに住み着く事になったのだとか。その際に捕虜として扱っているダークエルフ族に対しての暴行などは一切認めず、振るった場合は罪に問われることを記載した念書に同意した者だけとなっており、すぐさまどうにかなることはなかったのも良い点だろう。
「それで、この文書が送られてきたってわけね」
ひらひらと使者が持ってきた書状を揺らしていたファリスは相変わらずの退屈さを見せていた。あまり興味なさげにしている彼女とは対照的に使者の猫人族は悲しげに顔を伏せていた。
「何が書かれていたんですか?」
使者が来てからずっと隣にいたルォーグはその書状の中身が気になっているようで、中々話さないファリスに我慢が効かずに尋ねてしまう。適当に弄んでいたそれをぴっと彼の方に差し出した彼女はどこかうわの空のようにも思える。
訝しむように受け取ったルォーグは、その中身を見て絶句した。それはこの国の第一王女であるリュネーの救出を嘆願する内容だったからだ。
ダークエルフ族は拠点を次々と放棄し、一切に王城へと交戦を仕掛けてきたらしい。最初は均衡が取れていたが、ダークエルフ族の得体の知れない兵器の数々に徐々に押し負けてしまい、最終的に防衛戦を強いられる事になった。大敗を喫した際に他の兵士達の傷を癒していたリュネーが捕まり、囚われの身になってしまった。その際に出来た包囲網の僅かな穴を潜り抜けてようやく戦況がこちらにも伝わったらしく、どうにかリュネーを救出できないだろうか? というのが主な内容だった。
「一国の王女が何故前線に出ていたのですかね」
「……半分魔人族の血が混ざっていることを好ましく思っていない者は多かれ少なかれ存在しますにゃ。それらを封殺するには王族が自ら剣を取るか、杖を取って兵士達を癒し最前線を支えるしかありませんでしたのにゃ」
ここでも純血派が暗躍していたせいなのだが、それは今のファリスには関係なかった。問題なのはダークエルフ族が一ヶ所に集結していること。それが真実なのかどうかだ。
「事実を確認したいんだけど、拠点を放棄している事は誰か調べたの?」
「はいですにゃ。少なくともファリス様が攻略していた場所以外はこちらで調べましたにゃ。全て見たわけではないですが、そのほとんどが廃墟になっていたり、重要そうなものは全て持っていくか焼き払われるかしておりますにゃ。地下への道は全て瓦礫に埋もれていて、侵入することも出来ませんのにゃ」
使者の言葉によどみがなかった事から、真実なのだと認識したファリスは、困った顔をしていた。今まで見せたことのない表情にルォーグは驚いたが、それだけ彼女にも困難な任務なのだろうと気を引き締めていた。その一方、不安になったのはこれを持ってきた使者の方だった。
「や、やはり難しいですかにゃ?」
「……向こうがどう対応してくるかによるかな。攻めて不利になった瞬間殺される可能性だって十分あるし、具体的な位置がわからないから魔導もあまり広範囲に放つ事は出来ない。正直合流までの生き死には保証出来ないかな」
逆に言えば彼女と合流しさえすれば命は保証する。そんな言い方だが、使者の顔が曇り空から晴れる事はなかった。
「無茶な願いであることは王も重々承知しております。例えリュネー様が死んでいたとしてもそれは仕方のない事だと申しておりました」
悲痛な表情を浮かべる兵士は、王様がどれだけの覚悟でその言葉を伝えるように命令したのかわかる程鬼気迫っていた。その姿にルォーグは心を打たれ、なんとかリュネーを助けなければ……と思ったのだが、一方のファリスにはあまり響かなかったようだ。気だるげな表情のまま、それなら仕方ないか。ダメでもいいならとりあえずやってみよう……そんな感じで気持ちが固まっているようだった。
「わかった。どこまで出来るかわからないから絶対とは言わないけれど、やれるだけやってあげる」
「……! ありがとうございますにゃ! リュネー様が無事だったなら、きっと王様を始めとした王族の方々、それとご学友として懇意にされていたエールティア様もお喜びになられますにゃ!」
「……エール、ティア様? そのリュネー……様とお友達だったと?」
兵士の言葉に思わず目をかっと開いて兵士が僅かに引くほどのテンションの変わりようを見せたファリスは、辛うじてリュネーに敬称を付ける事を思い出していた。ここで大っぴらに呼び捨てでもすれば、エールティアのメンツに泥を塗る事になっていただろう。
「は、はい。リュネー様は元々ティリアースの学園に通っていた御方ですにゃ。そこでエールティア様とお知り合いになり、初めてのお友達になられたと聞き及んでおりますにゃ」
瞬間――ファリスは心が跳ね上がった。まさかここにエールティアの知り合いがいるとも思わなかったが、それ以前に『初めてのお友達』というワードに強く惹かれたのである。もちろんリュネーの事は相変わらず興味すら湧いていないが、もし『初めてのお友達』をファリスが助ける事が出来たら? それは当然エールティア本人への好感度アップに繋がるはずだ。もしかしたらご褒美も手に入るかもしれない。そんな邪な気持ちと共に、彼女は必ずその王女様を助ける――そんな決意を強く抱いたのだった。
丘にはちょっとした町が作られる事になったらしく、ダークエルフ族の被害に遭った難民達がそのまま移民としてここに住み着く事になったのだとか。その際に捕虜として扱っているダークエルフ族に対しての暴行などは一切認めず、振るった場合は罪に問われることを記載した念書に同意した者だけとなっており、すぐさまどうにかなることはなかったのも良い点だろう。
「それで、この文書が送られてきたってわけね」
ひらひらと使者が持ってきた書状を揺らしていたファリスは相変わらずの退屈さを見せていた。あまり興味なさげにしている彼女とは対照的に使者の猫人族は悲しげに顔を伏せていた。
「何が書かれていたんですか?」
使者が来てからずっと隣にいたルォーグはその書状の中身が気になっているようで、中々話さないファリスに我慢が効かずに尋ねてしまう。適当に弄んでいたそれをぴっと彼の方に差し出した彼女はどこかうわの空のようにも思える。
訝しむように受け取ったルォーグは、その中身を見て絶句した。それはこの国の第一王女であるリュネーの救出を嘆願する内容だったからだ。
ダークエルフ族は拠点を次々と放棄し、一切に王城へと交戦を仕掛けてきたらしい。最初は均衡が取れていたが、ダークエルフ族の得体の知れない兵器の数々に徐々に押し負けてしまい、最終的に防衛戦を強いられる事になった。大敗を喫した際に他の兵士達の傷を癒していたリュネーが捕まり、囚われの身になってしまった。その際に出来た包囲網の僅かな穴を潜り抜けてようやく戦況がこちらにも伝わったらしく、どうにかリュネーを救出できないだろうか? というのが主な内容だった。
「一国の王女が何故前線に出ていたのですかね」
「……半分魔人族の血が混ざっていることを好ましく思っていない者は多かれ少なかれ存在しますにゃ。それらを封殺するには王族が自ら剣を取るか、杖を取って兵士達を癒し最前線を支えるしかありませんでしたのにゃ」
ここでも純血派が暗躍していたせいなのだが、それは今のファリスには関係なかった。問題なのはダークエルフ族が一ヶ所に集結していること。それが真実なのかどうかだ。
「事実を確認したいんだけど、拠点を放棄している事は誰か調べたの?」
「はいですにゃ。少なくともファリス様が攻略していた場所以外はこちらで調べましたにゃ。全て見たわけではないですが、そのほとんどが廃墟になっていたり、重要そうなものは全て持っていくか焼き払われるかしておりますにゃ。地下への道は全て瓦礫に埋もれていて、侵入することも出来ませんのにゃ」
使者の言葉によどみがなかった事から、真実なのだと認識したファリスは、困った顔をしていた。今まで見せたことのない表情にルォーグは驚いたが、それだけ彼女にも困難な任務なのだろうと気を引き締めていた。その一方、不安になったのはこれを持ってきた使者の方だった。
「や、やはり難しいですかにゃ?」
「……向こうがどう対応してくるかによるかな。攻めて不利になった瞬間殺される可能性だって十分あるし、具体的な位置がわからないから魔導もあまり広範囲に放つ事は出来ない。正直合流までの生き死には保証出来ないかな」
逆に言えば彼女と合流しさえすれば命は保証する。そんな言い方だが、使者の顔が曇り空から晴れる事はなかった。
「無茶な願いであることは王も重々承知しております。例えリュネー様が死んでいたとしてもそれは仕方のない事だと申しておりました」
悲痛な表情を浮かべる兵士は、王様がどれだけの覚悟でその言葉を伝えるように命令したのかわかる程鬼気迫っていた。その姿にルォーグは心を打たれ、なんとかリュネーを助けなければ……と思ったのだが、一方のファリスにはあまり響かなかったようだ。気だるげな表情のまま、それなら仕方ないか。ダメでもいいならとりあえずやってみよう……そんな感じで気持ちが固まっているようだった。
「わかった。どこまで出来るかわからないから絶対とは言わないけれど、やれるだけやってあげる」
「……! ありがとうございますにゃ! リュネー様が無事だったなら、きっと王様を始めとした王族の方々、それとご学友として懇意にされていたエールティア様もお喜びになられますにゃ!」
「……エール、ティア様? そのリュネー……様とお友達だったと?」
兵士の言葉に思わず目をかっと開いて兵士が僅かに引くほどのテンションの変わりようを見せたファリスは、辛うじてリュネーに敬称を付ける事を思い出していた。ここで大っぴらに呼び捨てでもすれば、エールティアのメンツに泥を塗る事になっていただろう。
「は、はい。リュネー様は元々ティリアースの学園に通っていた御方ですにゃ。そこでエールティア様とお知り合いになり、初めてのお友達になられたと聞き及んでおりますにゃ」
瞬間――ファリスは心が跳ね上がった。まさかここにエールティアの知り合いがいるとも思わなかったが、それ以前に『初めてのお友達』というワードに強く惹かれたのである。もちろんリュネーの事は相変わらず興味すら湧いていないが、もし『初めてのお友達』をファリスが助ける事が出来たら? それは当然エールティア本人への好感度アップに繋がるはずだ。もしかしたらご褒美も手に入るかもしれない。そんな邪な気持ちと共に、彼女は必ずその王女様を助ける――そんな決意を強く抱いたのだった。
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