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587・信じた者が報われる(オルドside)
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戦いは加速していく。オルドはワーゼルと共に怪物と互角のやり取りを繰り広げていた。
……いや、実際の話既にそれは過去形になり、今は徐々に押されていた。
「くそっ、ここまで……!」
悪態を吐いたワーゼルは目の前に舞い降りた悪魔の拳をやっとの思いで防ぐ。
「――っ」
まっすぐ放たれた拳が剣身にぶつかったと同時に身体を沈めた怪物は上に突き抜ける一撃に切り替えた結果。彼の身体は軽く浮いてしまう。一瞬の隙だったが、それを見逃すようであれば怪物とは言いにくい。くるりと身体を一転させ、上半身は既に地面近く。振り下ろされたかかと落としがワーゼルの後頭部に叩きこまれる。
「がっ……!」
それと同時になんの脈絡もなしにかざされた手から光線系の魔導が発動するのを確認する。
――死。脳裏にちらついたそれを打ち消してくれたのはオルドだった。
「お前の相手はこっちだぁ!!」
割って入る形で拳が怪物の顔面を捉えた。思いっきり振り抜いたそれのおかげで怪物の体勢はずれ、ワーゼルの顔を撃ち抜こうとしていた魔導はどこか明後日の方向へと放たれる。それでも攻撃をやめなかった辺りに執念を感じるが、ワーゼルは視界が揺れ、ふらふらになりながら立っている状態。未だに意識がはっきりとしていなかった。
「大丈夫か?」
「は……はい。隊長……」
攻撃された事を認識した怪物が爪を振るい、その間にオルドが避けてワーゼルの安否を気にしているが、彼は頭を振って改めて怪物に向き直った。
「がああああああああぁぁぁぁっっ!!」
大きな声で咆哮したと同時に周囲に音の波と表現してもいいような波が広がる。それにあたると同時にオルドもワーゼルも身体が傷つき吹き飛ばされるのだが、自重が大きいオルドはさほど飛ばず、数歩後ろに下がった程度で留まった。
「【アースハンマー】!!」
土で出来た大きな槌が姿を表し、怪物に向かって振り下ろされる。避ける事もないというかのように佇み、吠えるだけの怪物に向かってワーゼルはにやりと笑みを浮かべるが、怪物の周りに植物の蔓が幾つも伸びてきてぐるぐると絡まり、大きな盾として作り出された。
土槌を受け止めた植物の盾は役割を果たしたと同時に黒くなって萎れていく。それと同時に飛び出した怪物はついでに蔓で作った槍を複数飛ばし、オルド達の動きを牽制する。
「【ボムズフレア】!」
ワーゼルの発動した魔導が周囲に散らばり、蔓の槍が近くを通りすぎた時に起爆させ、一気に燃やしてしまう。その間にオルドが距離を詰め、持っていた槌を力強く握り締める。
「【パワードクラッシュ】!!」
オルドの魔導が槌に宿り、一気に振り下ろされる。鱗に覆われた腕でそれを防がれるが、怪物の腕は激しい衝撃に襲われ、鱗が砕ける。流石の怪物であっても痛みに堪えきれず悲鳴を上げて負傷した腕を抑える。その隙を逃さないオルドではなかった。
再び【パワードクラッシュ】を発動させて槌を叩きつける。攻撃による圧潰は斬撃などと違って潰された場所の痛みは強く持続する。鋭さではなく鈍さを軸にしている為、多少の装甲などオルドにとっては無意味に等しい。今までに体験した事のない痛みに反応が鈍っていたが、それでもそれは怪物だった。既に逃れられないのならと口内に魔力を溜め、即座に放ち迎撃を行う。槌と光線が激しくぶつかり合い、結果的に相殺されてしまう。
「ちっ……」
呆然としていたところの一撃だっただけにダメージを与える事が出来なかった事を悔やんでいたオルドに対し、怪物は爪を振るい、三つの風の刃を生み出した。ただの爪撃と勘違いしていたオルドは避けたところを捉えられ、内二つは上手く槌の柄で受け止める事が出来たが、最後の一つは深々と肩を切り裂いた。
「ぐっ、くっ……!!」
くぐもった声を上げたオルドは後ろに数歩下がり、ワーゼルと共に怪物と睨み合いになる。
僅かな攻防だったが、状況は相変わらずやや不利。むしろワーゼルとオルドは単体では怪物に立ち向かえず、二人でなんとか――という形で戦っていた。それを嘲笑うように蹂躙を終えたもう一人の怪物が合流する。
「隊長……!」
「……わかっている」
ワーゼルの絶望的な声を冷静に受け止めるオルドは得物を強く握り締める。ただでさえ戦っていた強敵が二人に増えたのだ。ワーゼルが絶望するのも理解していた。しかし諦めが悪いのがオルドである。
「おおおぉぉぉぉっっ!!」
強い雄叫びと共に突撃する。もはや玉砕覚悟の特攻。たとえこの場で命を散らしても確実に一人は葬るといった覚悟の強さを感じる瞳で怪物達と全力で向き合った――直後。
「おおおお……お、な?」
「な、なにが?」
突然上半身がずり落ちた怪物達に唖然とした表情を浮かべる二人。途中までは完全に終わった……という雰囲気を出していたのにそれが一転。呆気ない幕引きにむしろどうしていいかわからない状態だった。
「……何ぽかんとしているの?」
そんな彼らの背後から呆れた声が聞こえてくる。ちょっと気だるげであまりやる気のない声。つい最近まで聞いていたのにまるで随分と離れていたかのようにすら錯覚する。
「……ファリス様!」
そこには五人の怪物達を制圧し、自軍の前線を立て直すべく現れたファリスが颯爽とした様子で立っていた。
……いや、実際の話既にそれは過去形になり、今は徐々に押されていた。
「くそっ、ここまで……!」
悪態を吐いたワーゼルは目の前に舞い降りた悪魔の拳をやっとの思いで防ぐ。
「――っ」
まっすぐ放たれた拳が剣身にぶつかったと同時に身体を沈めた怪物は上に突き抜ける一撃に切り替えた結果。彼の身体は軽く浮いてしまう。一瞬の隙だったが、それを見逃すようであれば怪物とは言いにくい。くるりと身体を一転させ、上半身は既に地面近く。振り下ろされたかかと落としがワーゼルの後頭部に叩きこまれる。
「がっ……!」
それと同時になんの脈絡もなしにかざされた手から光線系の魔導が発動するのを確認する。
――死。脳裏にちらついたそれを打ち消してくれたのはオルドだった。
「お前の相手はこっちだぁ!!」
割って入る形で拳が怪物の顔面を捉えた。思いっきり振り抜いたそれのおかげで怪物の体勢はずれ、ワーゼルの顔を撃ち抜こうとしていた魔導はどこか明後日の方向へと放たれる。それでも攻撃をやめなかった辺りに執念を感じるが、ワーゼルは視界が揺れ、ふらふらになりながら立っている状態。未だに意識がはっきりとしていなかった。
「大丈夫か?」
「は……はい。隊長……」
攻撃された事を認識した怪物が爪を振るい、その間にオルドが避けてワーゼルの安否を気にしているが、彼は頭を振って改めて怪物に向き直った。
「がああああああああぁぁぁぁっっ!!」
大きな声で咆哮したと同時に周囲に音の波と表現してもいいような波が広がる。それにあたると同時にオルドもワーゼルも身体が傷つき吹き飛ばされるのだが、自重が大きいオルドはさほど飛ばず、数歩後ろに下がった程度で留まった。
「【アースハンマー】!!」
土で出来た大きな槌が姿を表し、怪物に向かって振り下ろされる。避ける事もないというかのように佇み、吠えるだけの怪物に向かってワーゼルはにやりと笑みを浮かべるが、怪物の周りに植物の蔓が幾つも伸びてきてぐるぐると絡まり、大きな盾として作り出された。
土槌を受け止めた植物の盾は役割を果たしたと同時に黒くなって萎れていく。それと同時に飛び出した怪物はついでに蔓で作った槍を複数飛ばし、オルド達の動きを牽制する。
「【ボムズフレア】!」
ワーゼルの発動した魔導が周囲に散らばり、蔓の槍が近くを通りすぎた時に起爆させ、一気に燃やしてしまう。その間にオルドが距離を詰め、持っていた槌を力強く握り締める。
「【パワードクラッシュ】!!」
オルドの魔導が槌に宿り、一気に振り下ろされる。鱗に覆われた腕でそれを防がれるが、怪物の腕は激しい衝撃に襲われ、鱗が砕ける。流石の怪物であっても痛みに堪えきれず悲鳴を上げて負傷した腕を抑える。その隙を逃さないオルドではなかった。
再び【パワードクラッシュ】を発動させて槌を叩きつける。攻撃による圧潰は斬撃などと違って潰された場所の痛みは強く持続する。鋭さではなく鈍さを軸にしている為、多少の装甲などオルドにとっては無意味に等しい。今までに体験した事のない痛みに反応が鈍っていたが、それでもそれは怪物だった。既に逃れられないのならと口内に魔力を溜め、即座に放ち迎撃を行う。槌と光線が激しくぶつかり合い、結果的に相殺されてしまう。
「ちっ……」
呆然としていたところの一撃だっただけにダメージを与える事が出来なかった事を悔やんでいたオルドに対し、怪物は爪を振るい、三つの風の刃を生み出した。ただの爪撃と勘違いしていたオルドは避けたところを捉えられ、内二つは上手く槌の柄で受け止める事が出来たが、最後の一つは深々と肩を切り裂いた。
「ぐっ、くっ……!!」
くぐもった声を上げたオルドは後ろに数歩下がり、ワーゼルと共に怪物と睨み合いになる。
僅かな攻防だったが、状況は相変わらずやや不利。むしろワーゼルとオルドは単体では怪物に立ち向かえず、二人でなんとか――という形で戦っていた。それを嘲笑うように蹂躙を終えたもう一人の怪物が合流する。
「隊長……!」
「……わかっている」
ワーゼルの絶望的な声を冷静に受け止めるオルドは得物を強く握り締める。ただでさえ戦っていた強敵が二人に増えたのだ。ワーゼルが絶望するのも理解していた。しかし諦めが悪いのがオルドである。
「おおおぉぉぉぉっっ!!」
強い雄叫びと共に突撃する。もはや玉砕覚悟の特攻。たとえこの場で命を散らしても確実に一人は葬るといった覚悟の強さを感じる瞳で怪物達と全力で向き合った――直後。
「おおおお……お、な?」
「な、なにが?」
突然上半身がずり落ちた怪物達に唖然とした表情を浮かべる二人。途中までは完全に終わった……という雰囲気を出していたのにそれが一転。呆気ない幕引きにむしろどうしていいかわからない状態だった。
「……何ぽかんとしているの?」
そんな彼らの背後から呆れた声が聞こえてくる。ちょっと気だるげであまりやる気のない声。つい最近まで聞いていたのにまるで随分と離れていたかのようにすら錯覚する。
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