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612・必殺の一撃

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 兵士達を巻き込まないように遠くを攻撃する事に決めた私はイメージ的に遠くを飛ばせるように魔導を発動させる。

「【ルインミーティア】!!」

 選んだのは空から隕石を飛来させる魔導。敵の最前線は狙わず、後続を狙った形で次々と隕石が降り注いでいく。地面に衝突していく事に地面が抉れ、兵士達が吹き飛んでいく。見ていても悲鳴が聞こえてくるようだけど、戦いを挑んできた彼らが悪い。せっかくだ。思う存分飛んでもらおうじゃないか。

 最前線に注目してみると、こちらの兵士は一瞬驚いたがより勢いづいて攻勢を仕掛ける。対して敵の兵士達は突然背後の仲間が総崩れになった影響で怯えの色が浮かんでいた。中にはより覚悟を決めた顔をした者もいたが、そんなものは少数だ。

「ちっ、面倒な奴がいるな」

 勇猛果敢な人は突撃を仕掛けてくる。しかしそれは届かない。何の動揺もなく駆けていたヒューの大剣により一撃で斬り伏せられていた。

「あめぇんだよ!」

 縦に振り下ろす一撃後、身体を回転させてそのまま振り回して更に襲い掛かってきた兵士を仕留める。

「【ブラックインパルス】!」

 横薙ぎの隙を突くように二人の兵士が襲い掛かってくるけれど、ヒューの黒い衝撃波を放つ魔導に吹き飛ばされ、今度はそこに狙いを付けた雪風に斬り伏せられてしまった。

「おー……」

 結構鮮やかに連携を取ってくれる。私は個の強さが目立つからこういう事は苦手だ。相手だって合わせ辛いだろうし、中々自分では出来ないだけに素直に感嘆の声が漏れた。

 肝心のジュールは何をしているのかと思うと、遠くから魔導を用いた戦いを行っているようだ。

「【コールドフレア】!」

 魔王祭の時にみせた冷たい炎が敵兵を燃やしていく。喰らっている相手の反応から推察しているだけだけど、燃えているのに寒そうにしているのがなんとも印象的だ。以前は中くらいの大きさのを一つしか出せていなかったけれど、今は一気に五つ発動させている。これは魔力の使い方もそうだけど、イメージがより具体的に固まっているのだろう。ファリスと訓練した成果が出ているみたいだ。

 後は私なんだけど……。

「……やっぱり避けられているみたい」

 私の付近には全く敵が来ない。こうやってじっくりと観察する程度には無防備なんだけど、それでも敵は周辺に近寄ってすら来ない。私の周りだけぽっかりと穴が開いているようですらある。
 ……まあ、彼らも私の強さを知っているからなのだろう。向かっても向かわなくても死ぬ。どうせ死ぬなら道連れに出来る可能性がある一般兵を狙いたい。そんな気持ちが湧いていても仕方がない。

 ……邪魔されないならこっちも好き放題させてもらうけどね。

「【ルインミーティア】!!」

 更に後方に魔導を発動。敵がちりのように舞い上がる様は何とも言えない哀れさを誘う。後ろの兵士達が吹き飛ばされているのを承知で敵兵は私を野放しにしているのだから。

 なんとも味気ない事を続けていると、集団の中でワイバーンを駆る者達が現れた……のだけど、様子が変んだ。なんというか動きがぎくしゃくしている。いくら男爵領の者と言えどワイバーンに乗る訓練くらいは行っているはずだ。そうでなければそもそも乗せる選択肢すら存在しないのだから。

「……何あれ?」

 なんとも言えない動きをするそれを眺めていても何も来ない。が、ワイバーン(?)の方からは動きがあった。何か鋭い光が私に向かって放たれ、それが幾つもこっちに向かって来ていた。

「【カラフル・リフレクション】!」

 魔導を跳ね返す薄い膜を展開させる。これで何らかの魔導であれば彼らに反射され呆気なく終わるだろう……。そう思ったのだけど――

「なっ……」

 私の【カラフル・リフレクション】をすり抜けて次々と地面に着弾し、爆発する。

「【フィジカルガード】!」

 とっさに身体を防御する魔道を展開させ、衝撃に備える。爆風で吹き飛ばされ、肌や髪が焼けているだろうな……などと思える程度には広がる痛みが襲いかかってきた。身体が転がり、あちこちを痛めるも、【フィジカルガード】のお陰で大した痛みは感じていない。多分見た目の方が少し酷い事になっている程度だ。

 起き上がった私は更に追撃を仕掛けてくるワイバーン(?)を見据え、手をかざす。

「【プロトンサンダー】!!」

 ばちばちと手に雷が収束し、一瞬大きく膨らむ。すぐさま小石のような大きさまで縮小した刹那。極太の雷の光線が上空の敵に向かって襲いかかる。避けようとするけれど、そんなふらふらの動きで私から逃げられると思わないでもらいたい。

 ゆっくりと横に逸れた敵を追いかけるように動かすと【プロトンサンダー】も同じように動いていく。先ほどよりも動きがおかしなワイバーン(?)は呆気なくそれに追いつかれ無造作に飲み込まれていく。魔導が収まると同時に上空は綺麗な青を見せてくれた。
 シミひとつない青に満足するように下に視線を下ろすと今度は大きな竜の姿をしたゴーレムが動き出していた。
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