転生姫様の最強学園ライフ! 〜異世界魔王のやりなおし〜

灰色キャット

文字の大きさ
659 / 676

659・ダークエルフ族の戦い

しおりを挟む
「流石聖黒族。中々やるではないか」

 はっはっはっ、と笑っている姿に苛立ちを覚える。再び魔導を発動しようと思ったけれど、またさっきと同じように防がれても嫌だから様子を窺う事にした。

「……エールティアって名前があるのだけど」
「それはどうも。せっかく名乗ってもらったのだからこちらも手向けとして教えてやろう。我が名はジフ。ジフ・イエロアの名を心に刻んで死ぬがいい」

 ダークエルフ族の長(だと思う)ジフは傲慢な名乗りを上げると片手を天に掲げるように振り上げる。

「【フォール】」

 ジフの魔導が発動して私の頭上から瓦礫がれきが次々と降り注いでくる。避け続けながら何となく違和感が膨れていく。
 最初の檻を落とす【プリズン】や壁を出現させる【ウォール】に今の【フォール】と名付けられた瓦礫がれきを生み出す魔導。どれも物理的な攻撃が中心だ。そういう魔導がない訳でもないけど……どうにも引っかかる。

「……それ、本当に魔導?」
「ふふ、さあてな。【カノン】!」

 再び放たれた光線を避けず、真っ向から【プロトンサンダー】で応戦する。まだジュールが檻に囚われている。避けたら確実に彼女は消し炭になってしまう。それだけは――

「絶対にさせない!」

 ジフの【カノン】を相殺させて包まれた煙の中、彼を仕留める為に駆け出す。抜き放ったのは猫人族の剣。彼らと信頼関係を構築した者のみが扱えるらしい剣を構え、最速の一撃を繰り出すべく駆ける。

「ふん、【ウォール】!」

 私の前に大きな壁が立ち塞がり、来るものを拒むように存在感を見せる。もしこの剣の能力が本物なら……きっとどんな障害も切り捨てる事ができる。例え、分厚い壁でも!

「はあああああ!!」

 迷う事なく繰り出した一閃は明らかに剣身よりも厚い壁をいとも容易く切り裂いた。ずり落ちるように崩れる壁の先には呆然としているジフの姿。

「【ガシングフレア】!」

 そのまま切り付けても避けられると想定して広範囲に毒ガスをばら撒き、それを着火剤として爆発を引き起こす。次々と火の手が上がり、ジフの周囲にいた幹部達も飲み込んでいく。

「ちっ……【カノン】!」

 それを焼き払うために更なる攻撃に転じた光線が三度襲いかかってくる。懲りない男だと思いながら先程と同じように【プロトンサンダー】で迎撃しようとすると――

「【ライティングロッド】!」


 ジフが新しく発動した魔導によって作り出された小さい塔のようなものに私の魔導は吸い寄せられて軌道が逸れる。結果、【カノン】の大部分が相殺される事なく私に向かってきた。

「ティア様!!」

 後ろからジュールの声が聞こえる。
 ――全く。何をそんなに悲しげな声を上げているんだか。たかだか一つの方法が潰されただけなのに。

「安心していなさい。この程度……防げずにティリアースの次期女王と認められる訳ないでしょう!」

 猫剣を構えて真っ向から【カノン】に対峙する。魔導が駄目なら剣で。単純な思考だけど、今の私にはうってつけの一手だ。

「馬鹿め! 人造命具でもないただの剣で防げるような代物ではないんだよ!」

 嘲笑する声が聞こえてくる。攻撃の音でこんなにも煩いのに、よく聞こえるものだと自分の耳に呆れながら、向かってくる光線に合わせて猫剣を振り下ろす。

 ばちばちと音を立ててぶつかりあう刃と光。少しずつ私の体は押されていって、ずりずりと後退していく。

「く、ぅ、ぅぅぅぅ……!」

 並の剣では既に砕けているだろう衝撃を、猫剣は揺らぐ事なく受け止めている。どれだけ私は猫人族に信頼されているのだろう? そんな疑問すら湧いてくる程に力を発揮してくれている。

 なんとか攻防を繰り広げ、【カノン】を凌ぎ切った私は驚愕の表情を浮かべているジフの姿を捉えた。

「【フィジカルブースト】!!」

 また逃すわけにはいかない。身体能力を跳ね上げてくれる魔導によって一気に距離を詰める。呆然としていたジフは私が近付いていることに苛立つような顔をしてなにかをしようと動く……けど、それはあまりにも遅い!

 ――ザンッ!

 たとえ何が来ようと気にしない。一直線に獲物を仕留める為に剣を振るい、ジフの身体を切り裂く。

「……これで終わりね」

 長だと思われる彼を仕留めた。それはつまりダークエルフ族との戦いは一つの終幕を迎えたということだ。様々な感情が内側から溢れ出そうになる。それを堪えていると――

「それは……どうかな?」

 確実に仕留めたと思っていたジフから声が上がった。苦痛に満ちた声ではあるものの、普通に話してくることに疑問を覚えた私は改めて彼に向き直る。完全に横に真っ二つになった彼はケタケタと嬉しそうに笑い出した。

「はは、まだだ。この私がこの程度で死ぬと思うなよ」

 ジフは黒く染まり、光の粒のようなものがそこから漏れ出る。まるで彼の存在が偽物である事を教えてくれているように徐々に消え失せ……最後には完全に消え失せてしまった。あとには死体すら残らず、私と戦った。その記憶が残るのみだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...