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661・遺跡を追いかけて
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ダークエルフ族の町を駆け抜ける。さっきまでは隠れて凌いでいたけれど、今はそんな時間も惜しい。今もあの遺跡は浮上を続けている。急がないと――
「お前ら! 止まれ!」
立ち塞がる警備隊のような格好をしている男が一人。異種族が走っているのを見て異常さでも感じたのだろうけど、付き合っている余裕はない。
「どきなさい! 【バインドソーン】!!」
殺すには忍びない。そういった理由から攻撃ではなく捕縛する道を選んだ。でもそれは完全に悪手となる。一人を転がしたら無事な誰かが警備兵を呼んで、見守っていた者が武器を取る。普通では考えられない事も彼らは容易く行うということだ。
「ちっ、どけ!」
大剣を垂直に構えて斬らないように振り回して次々と兵士を薙ぎ倒すヒューからは苛立ちが読み取れる。雪風は明らかに町民と思われるダークエルフ族の攻撃をどう捌こうかと思案していたし、ジュールは焦りを浮かべていた。
「このっ……」
「怪しい奴らめ。大人しくしろ!」
ちらりと視線が私に集中する。このままでは間に合わない。それを三人とも訴えかけてくれた。……もう少しやれていたらまた違った未来が見えただろう。こうなったら私も決断すべきだ。
「これ以上邪魔をするなら誰であろうと排除します! 死にたくなければ――」
一瞬言葉を区切る。間をためて可能な限り声を低くする。
「――今すぐそこをどきなさい」
しんと静まり返る彼らにも、こちらがどれほど本気なのか伝わったのだろう。しかしそれも一瞬のこと。
「脅すつもりか? 劣等種族風情が!!」
「生意気な奴め。殺してやる!」
結局破談で幕を閉ざした。だけどそのおかげで私の家臣達には動き出すきっかけを与えられた。
まず最初に動いたのはジュールだった。
「【サイクロンスクイーズ】!」
兵士達の足元に竜巻が発生して彼らをもみくちゃにしていく。その間にも雪風は武器を持っている者達を斬り捨て、ヒューが横一閃で何人もの敵を排除する。
「くそっ、こいつら……!」
「【プロトンサンダー】!!」
ある程度ばらけたと同時に道を開く為に魔導で眼前の障害を破壊する。ここまでしなければ彼らは退くことはない。そう判断したのだ……けれど、それは過ちだとすぐに気づいてしまった。
今まで鬱屈とした生活を送ってきた彼らにとって同胞を殺された事実は自分達の行動に更に火を付ける結果になってしまったのだ。
「よくもやってくれたな!! 【ランサーズファイア】!」
誰かが放った魔導をきっかけに戦いは更に激化する。
恐れもせずにいくら倒されてもこちらを妨害してくる存在なんて厄介なだけだ。最初に放たれた数本の炎の槍が降り注ぐ魔導の後に続くように様々な属性の槍を――というか本当にこの世界の人達は槍が好きだなとつくづく感じる。多分最も簡単にイメージしやすいのだろう。投げ槍とかも存在するし、実際に他の人のを見るとより攻撃的だし理解しやすいのだろう。……それでもこうも多様な種族がいる世界でここまで同じイメージの魔導が出回っているというのもすごいのかもね。
だけど安価に考えられた魔導如きで私達をなんとか出来ると思っているのなら大きな間違いだ。
「その程度の魔導で……! 【ガシングフレア】!」
私達を中心に周囲に毒の霧が広がる。
「な、なんだこれは!」
「げほっ、か、からだが……!」
効果範囲外になる私達を恨めしそうに毒の中で身体を動かせずにむせ込む彼らに更に爆発が襲い掛かる。
「行くわよ!」
次々と起こる爆発に巻き込まれているダークエルフ族を尻目に私達も駆け出す。彼らの悲鳴が聞こえていく中、振り切るように進んでいくとまた前に敵が現れる。
「しつこい奴らだな……!」
舌打ちをしながら魔導を放つヒューと一緒に先陣を切った雪風。その後ろに私。更に後続のジュールが追手に魔導を放って阻む。数が多い時は二人が左右にばらけ、私が【プロトンサンダー】で道を拓きながら進んでいくと、なんとか地上へと続く階段まで辿り着いた。
「あと少し……! 一気に駆け抜けましょう!」
再び長い階段を上る事になった苦行を考えるとうんざりもするけれど、今はそんな事を言っている訳にはいかない。どうせ登らないといけなかったわけだしね。
それでもゆっくり下った時と違い、急いで駆け上がる階段は予想以上にしんどいもので、黙々と少しずつ速くなっていく呼吸と足音だけが響いて行く中、既に懐かしく感じる地上の光が見えてきて――
――
人工的な光よりも暖かみのある光が私達を照らし出して、今が丁度朝と昼の中間あたりだと教えてくれる。だけどそれ以上に存在を主張するものがあった。
「……ちっ、間に合わなかったか」
毒づいたヒューの言う通り、空には地下で見るよりも大きな物体が浮遊していた。
呆然と見上げる私達には一体どんな原理で動いているのかはわからないけれど、一つだけ確かな事がある。
ワイバーンや停泊所がある町が近くにない以上、今あそこに乗り込む手段はないということだ。
「お前ら! 止まれ!」
立ち塞がる警備隊のような格好をしている男が一人。異種族が走っているのを見て異常さでも感じたのだろうけど、付き合っている余裕はない。
「どきなさい! 【バインドソーン】!!」
殺すには忍びない。そういった理由から攻撃ではなく捕縛する道を選んだ。でもそれは完全に悪手となる。一人を転がしたら無事な誰かが警備兵を呼んで、見守っていた者が武器を取る。普通では考えられない事も彼らは容易く行うということだ。
「ちっ、どけ!」
大剣を垂直に構えて斬らないように振り回して次々と兵士を薙ぎ倒すヒューからは苛立ちが読み取れる。雪風は明らかに町民と思われるダークエルフ族の攻撃をどう捌こうかと思案していたし、ジュールは焦りを浮かべていた。
「このっ……」
「怪しい奴らめ。大人しくしろ!」
ちらりと視線が私に集中する。このままでは間に合わない。それを三人とも訴えかけてくれた。……もう少しやれていたらまた違った未来が見えただろう。こうなったら私も決断すべきだ。
「これ以上邪魔をするなら誰であろうと排除します! 死にたくなければ――」
一瞬言葉を区切る。間をためて可能な限り声を低くする。
「――今すぐそこをどきなさい」
しんと静まり返る彼らにも、こちらがどれほど本気なのか伝わったのだろう。しかしそれも一瞬のこと。
「脅すつもりか? 劣等種族風情が!!」
「生意気な奴め。殺してやる!」
結局破談で幕を閉ざした。だけどそのおかげで私の家臣達には動き出すきっかけを与えられた。
まず最初に動いたのはジュールだった。
「【サイクロンスクイーズ】!」
兵士達の足元に竜巻が発生して彼らをもみくちゃにしていく。その間にも雪風は武器を持っている者達を斬り捨て、ヒューが横一閃で何人もの敵を排除する。
「くそっ、こいつら……!」
「【プロトンサンダー】!!」
ある程度ばらけたと同時に道を開く為に魔導で眼前の障害を破壊する。ここまでしなければ彼らは退くことはない。そう判断したのだ……けれど、それは過ちだとすぐに気づいてしまった。
今まで鬱屈とした生活を送ってきた彼らにとって同胞を殺された事実は自分達の行動に更に火を付ける結果になってしまったのだ。
「よくもやってくれたな!! 【ランサーズファイア】!」
誰かが放った魔導をきっかけに戦いは更に激化する。
恐れもせずにいくら倒されてもこちらを妨害してくる存在なんて厄介なだけだ。最初に放たれた数本の炎の槍が降り注ぐ魔導の後に続くように様々な属性の槍を――というか本当にこの世界の人達は槍が好きだなとつくづく感じる。多分最も簡単にイメージしやすいのだろう。投げ槍とかも存在するし、実際に他の人のを見るとより攻撃的だし理解しやすいのだろう。……それでもこうも多様な種族がいる世界でここまで同じイメージの魔導が出回っているというのもすごいのかもね。
だけど安価に考えられた魔導如きで私達をなんとか出来ると思っているのなら大きな間違いだ。
「その程度の魔導で……! 【ガシングフレア】!」
私達を中心に周囲に毒の霧が広がる。
「な、なんだこれは!」
「げほっ、か、からだが……!」
効果範囲外になる私達を恨めしそうに毒の中で身体を動かせずにむせ込む彼らに更に爆発が襲い掛かる。
「行くわよ!」
次々と起こる爆発に巻き込まれているダークエルフ族を尻目に私達も駆け出す。彼らの悲鳴が聞こえていく中、振り切るように進んでいくとまた前に敵が現れる。
「しつこい奴らだな……!」
舌打ちをしながら魔導を放つヒューと一緒に先陣を切った雪風。その後ろに私。更に後続のジュールが追手に魔導を放って阻む。数が多い時は二人が左右にばらけ、私が【プロトンサンダー】で道を拓きながら進んでいくと、なんとか地上へと続く階段まで辿り着いた。
「あと少し……! 一気に駆け抜けましょう!」
再び長い階段を上る事になった苦行を考えるとうんざりもするけれど、今はそんな事を言っている訳にはいかない。どうせ登らないといけなかったわけだしね。
それでもゆっくり下った時と違い、急いで駆け上がる階段は予想以上にしんどいもので、黙々と少しずつ速くなっていく呼吸と足音だけが響いて行く中、既に懐かしく感じる地上の光が見えてきて――
――
人工的な光よりも暖かみのある光が私達を照らし出して、今が丁度朝と昼の中間あたりだと教えてくれる。だけどそれ以上に存在を主張するものがあった。
「……ちっ、間に合わなかったか」
毒づいたヒューの言う通り、空には地下で見るよりも大きな物体が浮遊していた。
呆然と見上げる私達には一体どんな原理で動いているのかはわからないけれど、一つだけ確かな事がある。
ワイバーンや停泊所がある町が近くにない以上、今あそこに乗り込む手段はないということだ。
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