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やっぱり王都にしましょう

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 秘密結社からの使者:エージェントGの言葉を受けた俺たちは、旅の計画に関する会議開いていた。

 ここはエスタの町からすこし離れた長閑な平原だ。
 小岩のうえに芽吹さんと並んで座り、かたわらに冒険資金、残された時間、ここまでに手に入れた手がかりを並べる。
 
「一応、もろもろ装備や馬を揃えましたが、手元には10万マニー残されていますね」

 芽吹さんは木につながれている2頭の黒い馬を見やる。
 ちなみに俺の名前はブラックキングにした。

「ほかにも査定に出せていない24階層の魔力クリスタルが何点かあるので、わりと資金には余裕がありますね」

 旅の資金は次の町に着いて、そのまま冒険を続けられる程度にはある。
 つまり、地図で確認するかぎりでは王都までこのまま向かえるというわけだ。

 残された時間は360日。
 アルフォベータの言葉に従うなら、王都にむかって王に会い、勇者として大悪魔とやらに戦いを挑むべきだろう。

「でも、あのエージェントGの言葉も気になりますね。ね、加納さん」
「そうでしょうか。俺には怪しい人物にしか見えませんでしたよ。彼の言葉と、俺たちを導いてくれたミスター・ゴッドやアルフォベータ王を並べるなら、間違いなく後者を信頼するべきでしょう」
「珍しくマトモですね、加納さん。マッサージでダンジョン壊したり、人を昇天させたりした人の言葉とは思えません」

 と言うわけで、俺たちは王都へ進路をきった。
 エージェントGの言葉はいったん無視だ。

「おお! な、なんじゃこの練度の魔力クリスタルはぁあああ!?」

 途中の町にダンジョンがあった。
 当然、ダンジョンハウスもあったので、俺と芽吹さんはそこへ立ち寄って、輝く魔力クリスタルを査定に出した。

 小さな虹の魔力クリスタル×7個
  20,000×7=140,000

 合計 140,000マニー

 破格だった。
 虹色に輝くちいさな魔力クリスタルは、大きな魔力クリスタルの10倍の値段がついたのだ。
 俺たちはさらに、中くらいのサイズの虹色のクリスタルも持っていたが、そちらは買い取ってはもらえなかった。
 ここのダンジョンハウスでは情報がなかったので、適正価格をつけられないことが理由であった。もっと大きな町へおもむいたら、そこで売りに出そう。

 とはいえ、小金持ちになったので、これでしばらくはお金に困ることはないだろう。

 異世界のちょっと変わった風景を楽しみながら、ブラックキングの背に揺られること7日間、俺と芽吹さんは王都に到着した。

 高さ30mはありそうな、堅牢な城壁に囲まれた城砦であった。
 砦の向こう側、遥か先、背景の一つとなるほどに霞む雲のなかに巨大な城の影が見えた。

 凄まじい規模の都市であった。

「凄いですね、加納さん! 流石は世界で最も栄える国の首都ですね!」

 わくわくを抑えられないらしい芽吹さん。
 並んで都市へ入ろうとする。
 外敵からの侵略に備えて作られた10mほどの水堀にかけられた橋をわたり、いざ外壁へ。

「止まれぇい! 貴様ら何者だ!」
「ただのマッサージ師ですが」
「嘘をつくなぁあ!」

 いきなり門を守る兵士に止められてしまった。
 大声を出すものだから、控室からわらわらと兵士の仲間たちまで集まってきてしまう。
 皆、手に槍をもっており、橋のうえで完全に行く手を塞がれてしまった。
 大変な騒ぎに発展してしまった。

「なぜ止めるんですか。ジェスター王国は来訪者にこのようなことを毎回しているんですか。あなたがマッサージ師だったら廃業への20分コースですよ」
「戯言をぬかすな! 貴様のような風貌の男がまともな訳がないだろう!」

 ビシッと指差される。
 俺を自分を用顧みた。

 身長195cm、体重は少し増えて109kg。
 パツパツのシャツに黒のコートを羽織い、サングラスかけ、開けた胸元には銀のネックレスをチラつかせ、イケてるブラックキングを乗りまわして、美少女はべらせる陽気なパリピスタイル。

「どこか怪しいですか?」
「加納さん、ここは異世界なんですよ。時代性を考えてもうちょっと自覚したほうがいいです」
「見た目だけでも止めるところだが、さらにこちらには根拠がある!」
「根拠?」
「見よ、これは対象の魔力をもとに、その者の脅威を図るアーティファクトだ!」

 コンパスみたいなアーティファクトだった。
 番兵は説明してくれた。
 このタイプの計機を複数使うことで、町への通行人が悪いことを考えていないか、荷物の中に危険物が混ざってないか、人間に化けたモンスターじゃないか、などを手軽にチェックしてるらしい。

 兵士が俺たちに見せてきた計機は、そのどれもがグルグル回り続けており、異常な動きをしていた。壊れているようだ。

「こんな動きは初めてだ! 貴様らは人間に化けた邪悪で危険で恐ろしいモンスターであるに違いない!」
「いえ、本当にただのマッサージ師ですよ」
「ならばそっちの娘はなんだと言う!」
「彼女は100年に1人の殺し屋ですね」
「なんで言っちゃうんですかね、加納さん」
「ええい! 語るに落ちたな! お前たちこいつらを捕まえろっ!」
 
 こうして俺たちは王都ジェスターに足を踏み入れることすら叶わず牢屋にぶち込まれた。
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