異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家

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第七章 魔法王国の動乱

魔術協会員登録へ

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 食事会が終わると、酒の勢いが乗ったフラワーとジェイクに決闘を申し込まれた。
 迎賓館の裏庭へ移動する。夜の肌寒さに上着を着て来るんだったと後悔する。外套はコース料理を食す前に仕様人に預けたきりだった。

「よーし、アーカムに勝ったほうがウィイリアスの杖をもらうぞー!」
「絶対負けないもんッ!」

 ジェイクとフラワーは紅い顔をして、陽気に杖をとりだす。

「優しくしてあげて」
「お任せください」

 ノザリスは仲間ふたりの珍行動に頭を悩ませている様子だ。
 決闘魔法陣はなかったので、俺は丁寧に《ウォーラ》で水を生成し、《ポーラー》で氷を生成、あわせて冬の夜にうれしい極寒の氷水をつくり2人へ浴びせた。

「うぎゃああああ!? し、死ぬゥウ!!?」
「えぇぇえええ!! やばいやばい死ぬ死ぬぅうう!」

 あまりの冷たさに発狂しかける二人。ノザリスは「ありがとう」と俺へ礼を述べると、呆れながらタオルを掛けてあげていた。
 酔っぱらいたちはタオルを羽織ったまま地面のうえで寝始める。水を掛ければ酔いが醒めるとおもったが、想像より重症だったな。

 俺は裏庭の隅のうえこみに腰かける。
 エフィーリアも隣に座って来た。

「困りものですわ」
「お酒を飲むとなんでもできる気になるってよく父様が言ってました」
「アディフランツですね。探しに行かれるのですか?」
「どうしてそのことを」
「私は王女ですよ。父様より昨晩、お話を伺いました。協会のことも」
「いますぐに探しにいくという訳じゃないです。状況が刻一刻と変わっていまして。たぶん捜索しにいくとは思います」

 ドレディヌスを出たあとは、しばらくはクルクマに滞在するつもりである。クルクマに用事がある。キサラギとかゲンゼとか。
 エヴァとアディは手紙でやりとりをしているらしく、お互いの状況は確認しているのだが、少し前からアディ側から手紙が来ていない。
 そのため、俺が安否の確認と俺の生存を知らせるため、探しにいくことになるかもしれない。連絡があればそれでよいのだが……どのみちクルクマにはしばらく待機する必要がある。

「王女殿下、申し訳ありません。ウィザードの称号をいただき名誉を与えてくださったのに、その厚意に応えることができず」
「ふふ、気になさらないでください。元よりアーカムはどこか別の世界の人みたいな浮世離れした物を感じていましたわ。その素晴らしい魔術の業も、なんというか、雰囲気? もです。だから、狩人協会という舞台はこそあなたにはピッタリです」

 エフィーリア王女は大きくため息をついて星空を見上げる。

「死から生きて戻った大魔術師さまを迎えられればどれほどよかったか。伝説にも逸話にもすでに事欠かないという波乱万丈ぶりも英雄にふさわしいと言いますのに」
「どれだけおだてても無駄ですよ、王女殿下」
「ふふ、そうですね。あっ、そうですわ、一つ提案がありますわ」
「提案ですか」
「アーカムは魔術協会をご存じでしょう?」
「当然ですとも」

 アーケストレス魔術王国に本部を置くすべての魔術の総本山。
 魔術世界における法則であり、秩序であり、権威そのものだ。
 
「アーカムは魔術協会に登録はしているのですか?」
「そういえば、なんだかんだ登録する機会を逃してました。あんまり必要性を感じてないのもありますけど」
「魔術協会は冒険者ギルドに次ぐ世界屈指の組織力をもっていますわ。旅をするのならアーカムの助けになることも多いはずです。てっきり登録しているものと思っていましたが……だとすれば尚のことわたくしも役に立てるというものですわ」

 エフィーリアは言って得意げな笑みをうかべた。

 ──しばらく後

 俺はエフィーリアとともにドレディヌス魔術協会へ足を運んでいた。
 ジェイクとフラワーは酒が抜けていないらしく、部屋へ運んだきり出て来なかったという。ノザリスはふたりの御守だ。
 
 窓から明かりが漏れている。
 時刻は午後13時近く。まだ営業中なのだろうか。
 
 建物内に足を踏み入れると、まだちらほらと人影があった。
 入ってすぐはホールになっており、右へいっても左へいってもズラッと並んだ机と椅子が視界に映る。古びた本の香りもあいまって、図書館のような印象を受けた。
 知識の集積場としての側面も持つ協会では、出版された魔導書や発表された魔術研究などが閲覧可能であったりする。もっとも支部ごとに置かれている書籍や論文は数も種類も質もまったく異なる。
 印刷技術が未熟ゆえに、偉大な魔術師が遺した画期的な書物でさえ、王都などのおおきな都市の魔術協会にいかなければ読めない。それに金がわりとかかるしね。
 また逆も然り、田舎にあるこんな辺鄙な魔術協会でも、もしかしたらお宝のような価値をもつ本が置いてある可能性はある。
 なので知識の集積場とはいえ、図書館のような蔵書の仕方を期待してはたいてい肩透かしを食らうのがオチだ。俺は協会員ではないが、いろいろな地域でたびたび立ち寄っていたのでわかる。旅の先を急いでいたので、せいぜい各々の町の滞在期間中に2~4本の書籍に軽く目を通す程度ではあるが。
 ちなみに言うとアディの仕事はこういう場所に研究論文を置くことである。価値があればたくさん部数が出る。小説や漫画の人気とシステムは似ているかもしれない。

 受付には気だるげな顔の老人がいた。

「失礼、協会員の登録を行えますでしょうか」
「今日の受付はもうおしまいですよ。明日出直してください。あと1時間で閉館ですので、用があるならお早めにどうぞ」
 
 言いながら老人は顔をあげる。
 エフィーリアはそれまで目深に被っていたフードをゆっくり外す。
 老人の乾いた唇が開き、黄色い瞳は見開かれる。

「無理を言っているのはわかっていますわ。ですが、彼は先を急いでいまして」
「え、王女殿下……!?」
「どうか騒ぎ立てないようお願いいたしますわ」
「え、ええ、それは、もちろん! えっと、あの、館長をお呼びします!」

 老人はごく慌てた様子で頭を深くさげ、奥へさがっていった。
 ほどなくして奥から紺色に金の刺繡がはいった豪奢なローブの婆がやってきた。
 
「王女殿下、いきなりお越しになられるとは驚かせるのはおやめください。心臓に悪うございます」
「失礼、マダム・シャーリィ、ですがなるべく急ぎの用があるのですわ」

『エフィーリアの知り合いのようだな』

 時々ぼそっとつぶやく直観。

「こんな夜更けにいったいどのような御用でしょうか、殿下」
「彼をご存じ?」
「失礼ですが、存じ上げません」
「彼がアーカム・アルドレアよ」

 エフィーリアが紹介してくれたので、あわせてぺこりとお辞儀し「初めまして」と挨拶をする。
 マダム・シャーリィと呼ばれた婆は、ひどく驚いた様子であった。

「では、このぼうやが氷の賢者だと噂される……、っ、いえ、失礼をいたしました、なんというご無礼を」

 ぼうやの部分かな。
 自分より4周以上年上婆さんにかしこまられるのはやりにくい。
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