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36 本当の名前

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「皆さんお騒がせしました。本当に色々すみませんでした」

「心配かけて悪かった。誤解がとけた。色々すみません」

 二人でダイニングに戻り皆に謝った。ミランちゃんは、とびきりの笑顔。兄上様は、やれやれといった顔だった。

「もう、心配したんだから、ディランは、もう少ししっかりしないとね」

「ゼロ、すまんな。ディランはまぁ何と言うか」

「はっきり言おう。ディランはモテないし、色恋は苦手分野だから大目に見てやってくれ」

「はい。もう大丈夫です。これから先もすれ違うことがあるかもしれないけれど、俺も逃げずにちゃんと話し合うことにする。ディランさんのこと好きだから」

「俺もゼロが好きだ。もう絶対別れない」

 ボタンの掛け違いと同じでほんと少しのことで崩れてしまうことがあると学んだ。もう諦めたくない。本当に好きな人に出会えたのだから。


「やれやれ、私も好きな人欲しいなぁ」



 
 ディランさんと仲直りが出来てから、初めてのデートは順調にいった。つい最近だが、深いキスもするようになった。ゆっくりと仲を深めていく感じがディランさんらしい。でも、そろそろ次の段階にいっても良い頃だと思っている。ここは、経験者の俺が誘った方が良いのかそれともディランさんのリードを待つべきか悩むところだ。

「ゼロ?どうした?」

「えっ、あっ、うん。ディランさんともう少し仲良くなりたいと言うか深い仲になりたいなぁと」

 ゆっくりとディランさんを見ると顔が赤くなっていた。でも、嫌そうではない。なら少し押してもいいのか?

「ゼロ、俺も思っていた。ヘタレですまん。ゼロに触れてもいいか?」

「うん。あっ、その前に、知っておいて欲しいと言うかお願いがあるんだけどね、俺の名前は、星野 零。レイって呼んで欲しい」

「名前いいのか?真名は、とても大切だと聞いたが。結婚する相手にしかと。これは、プロポーズなのか?」

「ごめん。真名の話は作り話。昔は、そういうこともあったらしいけどね。レイって向こうの言葉でゼロと同じ意味なんだ。でも、レイってゼロ地点だから無限大にこれから広がるって意味らしくて名前付けてくれたんだけどね。俺、ひねくれているから何もないゼロって名乗っていたんだよね。でも、俺、こっちに来て、みんなにお世話になって色々なことあって、可能性って無限かもって思えるようになったんだ。だから、ディランさんにはレイって呼んでもらいたい。ダメかな?」

「ダメじゃない。プロポーズじゃないのはちょっと残念な気もするが、プロポーズは俺からしたいしな。レイって名前も素敵だ」

「ありがとう。ごめんね、なんかこれからって時に話して」

「そんなことない。レイ。本当の名前で呼べることが嬉しい」
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