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プロローグ
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「おまえももう向こうでは成人になったし、そろそろあっちで一人立ちでもしてみるか?」
ある日の夕飯の席で、唐突に父がそう言った。
「……は?」
私はいきなり何言い出すんだか、と目を丸くする。
向こう、というのはたぶん、父がその昔、まだ今の私と同じ高校生の頃に召喚されてのちに英雄となった 異世界、アサラルートのことだろう。
私、笠原紬(かさはらつむぎ)の父親、笠原相太(かさはらそうた)はラノベによくある異世界召喚をリアルに体験した人だ。
高校一年生ーー15才になって半年ほどが経った夏休みのある夜に、父はアサラルートを管理する女神サハーラスラによってアサラルートに召喚されて紆余曲折の後、英雄となった。
表向きには他の種族の国を侵略し、世界に戦乱を撒き散らす魔族の王ーー魔王を倒すため。
人族の国の一つであるガディーア公国が行った勇者召喚に巻き込まれて異世界へと渡った一般人。
裏では女神からチートをもらい世界最強になった神の使徒。
ま、ありがちってなもんですよね。
ただちょっとプラスされてるのが魔王は実は邪神に憑依されていたってことで、父がしたのは魔王を助けて邪神を倒したってとこ。
これもそこそこあるけどね。
わが親ながらよくもテンプレな異世界もの展開送ってるものです。
で、助けた魔王と恋に落ちる、と。
その後二人は父の故郷、日本に戻って私が生まれた。
魔王は死んだことにして、今は魔王の弟ーー私の叔父が即位して各種族の国とは休戦協定を設けている。
魔王と当時の四天王の首(全部偽物だけど)と引き換えにして。
ちなみに父が倒した邪神、実は女神サハーラスラにこっぴどく振られた腹いせで邪神と化し女神の管理する世界をメチャクチャにしようとした、という笑えない上に迷惑すぎな裏事情がありました。
「いきなり何?」
私は口の中に残っていたかやくご飯を飲み込んでから、テーブルの反対側でご飯を食べている父に尋ねる。
確かにアサラルートの人族の国では大抵17才が成人だったはずだけど。
(一人立ちたって私、まだ高校生なんですけど)
ここはアサラルートではなく日本である。
日本の成人は20才なんだよ?
しかも17才の誕生会に言い出すならともかくすでに結構な日にちが経ってるし。
「やー、そういや紬ももう17だったなぁ、とか思ってな。そろそろ先々どっちで生活するかも決めないとだろ?」
なんか野菜炒めのピーマン箸で避けながら言ってますが、ね?
「いや、どっちでも何も向こうで生活するつもりとかまったくないから。私は普通にこっちで大学行って就職して結婚するから」
生まれてからずっとこっちだし。
夏休みとかに何度か遊びに行ったことがあるくらい。
ファンタジーな魔法と剣の世界はたまにだったらいいけど、移住(?)するには私はこっちの世界に慣れすぎている。
テレビもゲームもネットもコンビニもないとか。
うん。ムリ!
「あっちも慣れたらいいもんだぞ?」
「や、別に慣れなくて良し!」
ってかいい大人がピーマン避けてんじゃねーよ。
あ、そういやご飯もあんまり美味しくないんだよねー。あっち。
日本の食文化、偉大です。
「パパったら、ちゃんとピーマン食べて」
やーい、言われてやんの。
あ、言ったのは母です。
元魔王。
黒目黒髪の美人。
日本人にしては顔立ちがちょっと違うのでご近所にはハーフということにしている。
父も母も本当は不老不死で見た目10代後半なんだけど、外では魔法で40代後半に見せている。
(……私ってこの母親の子供なんだけどなあ)
オヤジが平々凡々だからか、私もごく普通にチョッピリ毛が生えた程度の容姿だ。
(ま、町歩くたびに芸能事務所のスカウトに囲まれるのはゴメンだし?ブサイクってわけではないからいいんだけど?)
けどねえ。
もうちょっと母親似でも良かったかなーとか思う乙女心なのですよ。
「う、うん。食べるよ、ちゃんと」
や。まだ避けてんじゃん。
「子供かっ!」
「失礼な!ちゃんと大人ですぅー! 大人だから多少好き嫌いしても成長に影響しないからいいんですぅ!そんなこという娘は異世界に無理矢理転移させちゃうぞっ♪」
「……なっ?」
はっ、と私は自分の足下に出来上がった魔方陣に気付いた。
まさか、まさか、まさかっ!
「ちょっと!ちょっ……私、明日も学校だって!」
「大丈夫!身代わり用意しとくから!ちゃあんと卒業させとくから!」
「はあ?そういう問題じゃないっての!」
そんな会話を繰り広げている間にも魔方陣はどんどん完成されていき、白い光を放ち始め……。
私はとっさに空いた左手でテーブルの済みに置いたスマホをガシッと掴む。
ほぼ同時にピカ一ッっと眩い白光が私を包み込む。
(目ぇ閉じんの忘れてた~!)
スマホ取るのに気を取られて私の両目はバッチリ全開だ。
(ぎゃあああぁぁ!目が!目がぁ!)
痛い!焼ける!
(クソオヤジ!娘を失明させる気かっ!?)
母親の遺伝か、父のチートを少しばかり譲り受けたのか、私の身体の特性として致命傷でもない限りほんの数秒で治癒しちゃうんだけどね。
失明だって1分もかからず全快します。
だからって痛みはしっかりあるんだよね!
どうせなら傷自体負わないような身体が良かった!!
そうして私は光に包まれて、目が快復した頃には一応見覚えはある、だけどさっきまでいた家のリビングとは明らかに違う建物の中にいた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
紬がいなくなった笠原家のリビングでは。
「あらん、パパってば強引ねえ」
「いんだよ別に。だって俺はこの家の主だからね☆我が家の法律は俺が作るっ!」
「フフ、はいはい。パパピーマン食べましょうね」
「……約束は守った。後はアイツ次第だな」
「はいはい。シリアス顔して話反らさないでね。はい、あーん♪」
「……むぐ。苦い。しばらくは二人きり。邪魔者はいない!紬が戻ってくるまでに二人目でも作っちゃおうか?」
ニヒヒ、とやらしい顔でにぎにぎと両手を動かす相太。
「いやんパパったら!もちろんOKよ♪」
「ヨッシャアー!んじゃさっそくベッドへGoー!」
椅子を蹴りたてて立ち上がるとヒョイと小柄な嫁をお姫様ダッコで抱き上げる異世界の英雄であった。
その後の笠原家の二階、ベッドルームからは二日間に渡ってイヤらしい声と音が聞こえていたとかいないとか。(R18ではないので詳細はナシ!)
紬に弟か妹ができる日は近そうである。
ある日の夕飯の席で、唐突に父がそう言った。
「……は?」
私はいきなり何言い出すんだか、と目を丸くする。
向こう、というのはたぶん、父がその昔、まだ今の私と同じ高校生の頃に召喚されてのちに英雄となった 異世界、アサラルートのことだろう。
私、笠原紬(かさはらつむぎ)の父親、笠原相太(かさはらそうた)はラノベによくある異世界召喚をリアルに体験した人だ。
高校一年生ーー15才になって半年ほどが経った夏休みのある夜に、父はアサラルートを管理する女神サハーラスラによってアサラルートに召喚されて紆余曲折の後、英雄となった。
表向きには他の種族の国を侵略し、世界に戦乱を撒き散らす魔族の王ーー魔王を倒すため。
人族の国の一つであるガディーア公国が行った勇者召喚に巻き込まれて異世界へと渡った一般人。
裏では女神からチートをもらい世界最強になった神の使徒。
ま、ありがちってなもんですよね。
ただちょっとプラスされてるのが魔王は実は邪神に憑依されていたってことで、父がしたのは魔王を助けて邪神を倒したってとこ。
これもそこそこあるけどね。
わが親ながらよくもテンプレな異世界もの展開送ってるものです。
で、助けた魔王と恋に落ちる、と。
その後二人は父の故郷、日本に戻って私が生まれた。
魔王は死んだことにして、今は魔王の弟ーー私の叔父が即位して各種族の国とは休戦協定を設けている。
魔王と当時の四天王の首(全部偽物だけど)と引き換えにして。
ちなみに父が倒した邪神、実は女神サハーラスラにこっぴどく振られた腹いせで邪神と化し女神の管理する世界をメチャクチャにしようとした、という笑えない上に迷惑すぎな裏事情がありました。
「いきなり何?」
私は口の中に残っていたかやくご飯を飲み込んでから、テーブルの反対側でご飯を食べている父に尋ねる。
確かにアサラルートの人族の国では大抵17才が成人だったはずだけど。
(一人立ちたって私、まだ高校生なんですけど)
ここはアサラルートではなく日本である。
日本の成人は20才なんだよ?
しかも17才の誕生会に言い出すならともかくすでに結構な日にちが経ってるし。
「やー、そういや紬ももう17だったなぁ、とか思ってな。そろそろ先々どっちで生活するかも決めないとだろ?」
なんか野菜炒めのピーマン箸で避けながら言ってますが、ね?
「いや、どっちでも何も向こうで生活するつもりとかまったくないから。私は普通にこっちで大学行って就職して結婚するから」
生まれてからずっとこっちだし。
夏休みとかに何度か遊びに行ったことがあるくらい。
ファンタジーな魔法と剣の世界はたまにだったらいいけど、移住(?)するには私はこっちの世界に慣れすぎている。
テレビもゲームもネットもコンビニもないとか。
うん。ムリ!
「あっちも慣れたらいいもんだぞ?」
「や、別に慣れなくて良し!」
ってかいい大人がピーマン避けてんじゃねーよ。
あ、そういやご飯もあんまり美味しくないんだよねー。あっち。
日本の食文化、偉大です。
「パパったら、ちゃんとピーマン食べて」
やーい、言われてやんの。
あ、言ったのは母です。
元魔王。
黒目黒髪の美人。
日本人にしては顔立ちがちょっと違うのでご近所にはハーフということにしている。
父も母も本当は不老不死で見た目10代後半なんだけど、外では魔法で40代後半に見せている。
(……私ってこの母親の子供なんだけどなあ)
オヤジが平々凡々だからか、私もごく普通にチョッピリ毛が生えた程度の容姿だ。
(ま、町歩くたびに芸能事務所のスカウトに囲まれるのはゴメンだし?ブサイクってわけではないからいいんだけど?)
けどねえ。
もうちょっと母親似でも良かったかなーとか思う乙女心なのですよ。
「う、うん。食べるよ、ちゃんと」
や。まだ避けてんじゃん。
「子供かっ!」
「失礼な!ちゃんと大人ですぅー! 大人だから多少好き嫌いしても成長に影響しないからいいんですぅ!そんなこという娘は異世界に無理矢理転移させちゃうぞっ♪」
「……なっ?」
はっ、と私は自分の足下に出来上がった魔方陣に気付いた。
まさか、まさか、まさかっ!
「ちょっと!ちょっ……私、明日も学校だって!」
「大丈夫!身代わり用意しとくから!ちゃあんと卒業させとくから!」
「はあ?そういう問題じゃないっての!」
そんな会話を繰り広げている間にも魔方陣はどんどん完成されていき、白い光を放ち始め……。
私はとっさに空いた左手でテーブルの済みに置いたスマホをガシッと掴む。
ほぼ同時にピカ一ッっと眩い白光が私を包み込む。
(目ぇ閉じんの忘れてた~!)
スマホ取るのに気を取られて私の両目はバッチリ全開だ。
(ぎゃあああぁぁ!目が!目がぁ!)
痛い!焼ける!
(クソオヤジ!娘を失明させる気かっ!?)
母親の遺伝か、父のチートを少しばかり譲り受けたのか、私の身体の特性として致命傷でもない限りほんの数秒で治癒しちゃうんだけどね。
失明だって1分もかからず全快します。
だからって痛みはしっかりあるんだよね!
どうせなら傷自体負わないような身体が良かった!!
そうして私は光に包まれて、目が快復した頃には一応見覚えはある、だけどさっきまでいた家のリビングとは明らかに違う建物の中にいた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
紬がいなくなった笠原家のリビングでは。
「あらん、パパってば強引ねえ」
「いんだよ別に。だって俺はこの家の主だからね☆我が家の法律は俺が作るっ!」
「フフ、はいはい。パパピーマン食べましょうね」
「……約束は守った。後はアイツ次第だな」
「はいはい。シリアス顔して話反らさないでね。はい、あーん♪」
「……むぐ。苦い。しばらくは二人きり。邪魔者はいない!紬が戻ってくるまでに二人目でも作っちゃおうか?」
ニヒヒ、とやらしい顔でにぎにぎと両手を動かす相太。
「いやんパパったら!もちろんOKよ♪」
「ヨッシャアー!んじゃさっそくベッドへGoー!」
椅子を蹴りたてて立ち上がるとヒョイと小柄な嫁をお姫様ダッコで抱き上げる異世界の英雄であった。
その後の笠原家の二階、ベッドルームからは二日間に渡ってイヤらしい声と音が聞こえていたとかいないとか。(R18ではないので詳細はナシ!)
紬に弟か妹ができる日は近そうである。
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