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暗闇に満ちる息遣いと唸り声。
それは姿が見えないからこそよりカティに緊張感をもたらした。
次第に近づいてくる足音は軽く、闇に潜む魔物がそれほど重く大きいものではないのだろうことを教えてくれるが、魔物の強さや脅威は決してサイズだけではない。
小さくても毒を持つものもいるし、強靭な顎や爪を持つものもいる。先のゴキブリのように一体では何てことのないものでも群れることで甚大な脅威をもたらすものもある。
まして聞こえてくる足音や気配はゴキブリサイズのそれではなく、少なくとも大型犬程度の体躯を持つ何かであることを示していた。
『見えないってのはヤバイな』
(せめて出口がわかれば・・・)
逃げる方向がわかればカマイタチで牽制しつつ突破することもできるかも知れないが、辺りは暗く出口と言えるものがあるかもわからない。
『よし、新しい魔法を試してみるか?』
(魔法?もう作ったのか)
『まあ、急ごしらえだからどのくらい役に立つか微妙なんだけどな』
(なんでもいいよ!とりあえず現状がなんとかなるなら)
ジリジリと魔物たちは近づいてきていて、暗闇の中にはいくつかの赤い光が浮かび上がっている。
一対ずつのその光は意思を持ってカティを伺っている。
すぐさま襲ってこないのは警戒しているのだろう。
だがカティが少しでも動けばきっと一気に襲いかかる。
もしくは一体でも焦れて動けば。
危うい状況だと、カティは焦っていた。
『わかった。キーはもうまんま「ファイア」で、それ言いながら腕を振り払うようにしてくれ。とりあえずそれである程度明かりは確保できるはずだ。上手くいけば牽制もできる。ただし、相手を刺激もするからな』
とにかく先ずは逃げ道を見つけること。
逃げ道を見つけたらファイアとカマイタチを併用して発動し続けながら魔物の中を走り抜けること。
倒すことよりもとにかく逃げることを最優先という佑樹の指示にカティは震える足を叱咤してぎゅっと下腹に力を込めた。
「『ファイア!』」
唱えて腕を振り払うように薙ぐ。
すると50センチ程の高さの炎の波がカティの周り1メートル四方に地面から吹き上がる。
螺旋状にぐるりと展開した炎の波は吹き上がった順にすぐ消えてゆき、3周と少ししたところで完全に消えた。
足先を焼かれた魔物がギャンっ!と鳴いて跳びずさる。
「扉が二つ?」
炎に照らされた部屋の左右、それぞれに大きいもの、小さいもの、二つの扉が見えた。
左の大きいものは鉄の両開きの扉。
右の小さいものはそれを二回り程小さくした木製の扉。
カティは迷わず右側に向かって走り出す。
町でいくつか聞いたダンジョンの噂を思い出したからだ。
最下層、ダンジョンボスと呼ばれる魔物がいるフロアの前には必ず巨大な扉があると。
カティが動くと周りの魔物たち、炎に照らされて浮き上がった姿はカティでも知っていた魔物。以前一度だけ狩りに出た山の中で遭遇したことのある、大型犬に似た四つ足の魔物も唸り声を上げて跳びかかってきた。
ーツインウルフ。
二つの頭を持つ獣型の魔物だ。
鋭い牙と爪を持つ、深い森のなかや山に生息する魔物。
村の大人が五人、ツインウルフは小型のものが一体。その状況で大人が二人殺され一人も腕をなくす大怪我を負った。
それが確認できただけでも五体。
「『切り裂け!』」
目前に迫った二体をカマイタチで撃退する。
頭の一つを深く切り裂かれた一体が悲鳴を上げて地に落ちた。
前足を傷つけられながらも襲ってくるもう一体を身体を捻り避けつつ右手に持ったナイフの柄で打ち付ける。
「『ファイア!』」
地に落ちて呻く魔物たちの脇を走り抜けながら炎で追撃を牽制する。
何度も繰り返し、やみくもに走り抜ける。
扉にたどり着く頃にはカティの身体はあちこち傷だらけだった。
それでも細かい切り傷程度ですんでいるのは魔法のおかげか。
魔法のない以前のカティならたどり着く前に殺されていただろう。
「っ!」
扉にたどり着いたことが油断を呼んだのか、開こうと伸ばした腕にツインウルフの牙が食い込む。
横ざまに跳びかかってきた一体は一方の頭でカティの腕を噛み、もう一方で首に噛みつこうと首を伸ばした。
「あああ・・・!」
身体で扉を押し開けながら、手にしたナイフを必死に魔物の頭に打ち付けた。
何度も、何度もナイフの刃でツインウルフの頭が穿ち、力の抜けた体躯を腕の肉が抉られるのに構わず引き剥がす。
転がるように開いた扉の中に入り、カマイタチで追ってくるのを牽制し、背で扉を閉める。
腕の痛みに顔をしかめながら目を上げたカティは、その場に絶望を見た。
それは姿が見えないからこそよりカティに緊張感をもたらした。
次第に近づいてくる足音は軽く、闇に潜む魔物がそれほど重く大きいものではないのだろうことを教えてくれるが、魔物の強さや脅威は決してサイズだけではない。
小さくても毒を持つものもいるし、強靭な顎や爪を持つものもいる。先のゴキブリのように一体では何てことのないものでも群れることで甚大な脅威をもたらすものもある。
まして聞こえてくる足音や気配はゴキブリサイズのそれではなく、少なくとも大型犬程度の体躯を持つ何かであることを示していた。
『見えないってのはヤバイな』
(せめて出口がわかれば・・・)
逃げる方向がわかればカマイタチで牽制しつつ突破することもできるかも知れないが、辺りは暗く出口と言えるものがあるかもわからない。
『よし、新しい魔法を試してみるか?』
(魔法?もう作ったのか)
『まあ、急ごしらえだからどのくらい役に立つか微妙なんだけどな』
(なんでもいいよ!とりあえず現状がなんとかなるなら)
ジリジリと魔物たちは近づいてきていて、暗闇の中にはいくつかの赤い光が浮かび上がっている。
一対ずつのその光は意思を持ってカティを伺っている。
すぐさま襲ってこないのは警戒しているのだろう。
だがカティが少しでも動けばきっと一気に襲いかかる。
もしくは一体でも焦れて動けば。
危うい状況だと、カティは焦っていた。
『わかった。キーはもうまんま「ファイア」で、それ言いながら腕を振り払うようにしてくれ。とりあえずそれである程度明かりは確保できるはずだ。上手くいけば牽制もできる。ただし、相手を刺激もするからな』
とにかく先ずは逃げ道を見つけること。
逃げ道を見つけたらファイアとカマイタチを併用して発動し続けながら魔物の中を走り抜けること。
倒すことよりもとにかく逃げることを最優先という佑樹の指示にカティは震える足を叱咤してぎゅっと下腹に力を込めた。
「『ファイア!』」
唱えて腕を振り払うように薙ぐ。
すると50センチ程の高さの炎の波がカティの周り1メートル四方に地面から吹き上がる。
螺旋状にぐるりと展開した炎の波は吹き上がった順にすぐ消えてゆき、3周と少ししたところで完全に消えた。
足先を焼かれた魔物がギャンっ!と鳴いて跳びずさる。
「扉が二つ?」
炎に照らされた部屋の左右、それぞれに大きいもの、小さいもの、二つの扉が見えた。
左の大きいものは鉄の両開きの扉。
右の小さいものはそれを二回り程小さくした木製の扉。
カティは迷わず右側に向かって走り出す。
町でいくつか聞いたダンジョンの噂を思い出したからだ。
最下層、ダンジョンボスと呼ばれる魔物がいるフロアの前には必ず巨大な扉があると。
カティが動くと周りの魔物たち、炎に照らされて浮き上がった姿はカティでも知っていた魔物。以前一度だけ狩りに出た山の中で遭遇したことのある、大型犬に似た四つ足の魔物も唸り声を上げて跳びかかってきた。
ーツインウルフ。
二つの頭を持つ獣型の魔物だ。
鋭い牙と爪を持つ、深い森のなかや山に生息する魔物。
村の大人が五人、ツインウルフは小型のものが一体。その状況で大人が二人殺され一人も腕をなくす大怪我を負った。
それが確認できただけでも五体。
「『切り裂け!』」
目前に迫った二体をカマイタチで撃退する。
頭の一つを深く切り裂かれた一体が悲鳴を上げて地に落ちた。
前足を傷つけられながらも襲ってくるもう一体を身体を捻り避けつつ右手に持ったナイフの柄で打ち付ける。
「『ファイア!』」
地に落ちて呻く魔物たちの脇を走り抜けながら炎で追撃を牽制する。
何度も繰り返し、やみくもに走り抜ける。
扉にたどり着く頃にはカティの身体はあちこち傷だらけだった。
それでも細かい切り傷程度ですんでいるのは魔法のおかげか。
魔法のない以前のカティならたどり着く前に殺されていただろう。
「っ!」
扉にたどり着いたことが油断を呼んだのか、開こうと伸ばした腕にツインウルフの牙が食い込む。
横ざまに跳びかかってきた一体は一方の頭でカティの腕を噛み、もう一方で首に噛みつこうと首を伸ばした。
「あああ・・・!」
身体で扉を押し開けながら、手にしたナイフを必死に魔物の頭に打ち付けた。
何度も、何度もナイフの刃でツインウルフの頭が穿ち、力の抜けた体躯を腕の肉が抉られるのに構わず引き剥がす。
転がるように開いた扉の中に入り、カマイタチで追ってくるのを牽制し、背で扉を閉める。
腕の痛みに顔をしかめながら目を上げたカティは、その場に絶望を見た。
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