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冒険者だろうか、酔っ払いらしい赤ら顔の二人組が前から歩いてくるのを、カティは身体を縮めて大袈裟な動作で避けた。
「・・・いい加減落ち着きなさいよ」
「う、ん」
呆れ顔のリリスにそう返しつつも、その顔はキョロキョロと落ち着きなく辺りを見回している。
(・・・道行く人が皆かっぱらいに見える)
金貨一万と六千枚。
『呪いのティアラ』の売却代金である。
正確には大金貨八百枚と金貨が八千枚。
二つの皮の袋に分けられて係員から渡されたまま、カティの懐に入っている。
オークションの帰り、貸衣装家に寄って服は着替えている。
いつも通りの黒のインナーにマント。
皮の袋はマントの下に持った鞄の中に入っているのだが。
「そんなに心配ならアイテムボックスに入れればいいじゃない」
「・・・それだ!」
カティは何故今まで気付かなかったのかと、自分を責めた。
(そうだよ!アイテムボックスに入れておけば良かったんじゃないか!)
『・・・てか、今ごろ気づくか?』
「・・・かっぱらいくらい撃退出来るでしょうに」
「いや、それはちょっと・・・」
確かにカティの現在のステータスならたとえ強盗に襲われても普通に撃退出来るはずだ。
たぶん。
「なんかまだ実感がないっていうか・・・」
魔物相手ならそれなりに動ける自信もついたが、人相手となると正直どうなるのかわからない。
もともとただの村人であり、どちらかというとボコられるイメージしか自分ではわかない。
はあ、と情けない自分にため息を付いて、マントの中でこっそりと鞄からアイテムボックスに袋を入れ換えた。
「だいたいこんな大金持ち歩くことってなかったからな」
小声で呟く。
ギルドで大金貨を受け取った時も動揺したが、その十数倍である。もはや挙動不審に陥っても仕方がないではないか。
「あるところにはあるんだなあ」
お金って。
今夜のオークションだけでいったいどれだけの金貨が動いたのだろうか。
カティはティアラが出て来た後をあまり覚えていない。
あまりにびっくりしすぎて。
だが、あの後もとんでもない額の出品が続いていたはずだ。
カティが出した『呪いのティアラ』はどこかの貴族っぽい壮年の男性が競り落としていた。
呪われた品を買ったりして大丈夫なのかと思ったのだが、リリスが言うところによると「そういった品を集めるコレクターなら当然専属の呪術師くらい雇ってるでしょ」だそうだ。
「フラウたちにおみやげでも買っていきましょうか」
道に並ぶ露店を見ながらリリスが言うのに、カティは気を取り直して頷いた。
***************
フラウ、クリスside
「牛乳、ですか?」
「はいです」
カティ、リリスがオークションに向かった後の宿屋の食堂の一席で、少女たちはコップにたっぷりと入った飲み物を真剣な顔で凝視していた。
ごくり、とクリスが喉を鳴らす。
「これでクリスたちもボンキュッボンになれるのですか?」
「キュッボンはわからないのです。ですがボンっになるのは間違いないのです!」
ヒソヒソと囁きながら、フラウの目は食堂の中に何人かいる女性客、特に胸の大きな女性客をちらちら捉えていた。
「だからクーちゃんも飲むべきなのですよ」
「わかりました」
クリスは両手にコップを持つと一気にその中身、牛乳を飲み干した。
「毎日欠かさず飲むのです。そうしたらきょにゅーになれるのです!」
同じく牛乳を飲み干したフラウが言う。
「ご主人様は喜ぶでしょうか」
「もちろんなのです。ご主人様かきょにゅー好きなのは間違いないのです」
「頑張ります」
「はい、頑張るのです」
少女たちはお互いに頷きあって店員のお姉さんを手をあげて呼んだ。
「お姉さん!」
「お姉さん!」
「「牛乳おかわり下さい」なのです!」
「・・・いい加減落ち着きなさいよ」
「う、ん」
呆れ顔のリリスにそう返しつつも、その顔はキョロキョロと落ち着きなく辺りを見回している。
(・・・道行く人が皆かっぱらいに見える)
金貨一万と六千枚。
『呪いのティアラ』の売却代金である。
正確には大金貨八百枚と金貨が八千枚。
二つの皮の袋に分けられて係員から渡されたまま、カティの懐に入っている。
オークションの帰り、貸衣装家に寄って服は着替えている。
いつも通りの黒のインナーにマント。
皮の袋はマントの下に持った鞄の中に入っているのだが。
「そんなに心配ならアイテムボックスに入れればいいじゃない」
「・・・それだ!」
カティは何故今まで気付かなかったのかと、自分を責めた。
(そうだよ!アイテムボックスに入れておけば良かったんじゃないか!)
『・・・てか、今ごろ気づくか?』
「・・・かっぱらいくらい撃退出来るでしょうに」
「いや、それはちょっと・・・」
確かにカティの現在のステータスならたとえ強盗に襲われても普通に撃退出来るはずだ。
たぶん。
「なんかまだ実感がないっていうか・・・」
魔物相手ならそれなりに動ける自信もついたが、人相手となると正直どうなるのかわからない。
もともとただの村人であり、どちらかというとボコられるイメージしか自分ではわかない。
はあ、と情けない自分にため息を付いて、マントの中でこっそりと鞄からアイテムボックスに袋を入れ換えた。
「だいたいこんな大金持ち歩くことってなかったからな」
小声で呟く。
ギルドで大金貨を受け取った時も動揺したが、その十数倍である。もはや挙動不審に陥っても仕方がないではないか。
「あるところにはあるんだなあ」
お金って。
今夜のオークションだけでいったいどれだけの金貨が動いたのだろうか。
カティはティアラが出て来た後をあまり覚えていない。
あまりにびっくりしすぎて。
だが、あの後もとんでもない額の出品が続いていたはずだ。
カティが出した『呪いのティアラ』はどこかの貴族っぽい壮年の男性が競り落としていた。
呪われた品を買ったりして大丈夫なのかと思ったのだが、リリスが言うところによると「そういった品を集めるコレクターなら当然専属の呪術師くらい雇ってるでしょ」だそうだ。
「フラウたちにおみやげでも買っていきましょうか」
道に並ぶ露店を見ながらリリスが言うのに、カティは気を取り直して頷いた。
***************
フラウ、クリスside
「牛乳、ですか?」
「はいです」
カティ、リリスがオークションに向かった後の宿屋の食堂の一席で、少女たちはコップにたっぷりと入った飲み物を真剣な顔で凝視していた。
ごくり、とクリスが喉を鳴らす。
「これでクリスたちもボンキュッボンになれるのですか?」
「キュッボンはわからないのです。ですがボンっになるのは間違いないのです!」
ヒソヒソと囁きながら、フラウの目は食堂の中に何人かいる女性客、特に胸の大きな女性客をちらちら捉えていた。
「だからクーちゃんも飲むべきなのですよ」
「わかりました」
クリスは両手にコップを持つと一気にその中身、牛乳を飲み干した。
「毎日欠かさず飲むのです。そうしたらきょにゅーになれるのです!」
同じく牛乳を飲み干したフラウが言う。
「ご主人様は喜ぶでしょうか」
「もちろんなのです。ご主人様かきょにゅー好きなのは間違いないのです」
「頑張ります」
「はい、頑張るのです」
少女たちはお互いに頷きあって店員のお姉さんを手をあげて呼んだ。
「お姉さん!」
「お姉さん!」
「「牛乳おかわり下さい」なのです!」
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