巻き込まれた村人はガチャで無双する?

黒田悠月

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「トイレー」
「オシッコなのです!」

 四時間ほど馬車は走って一つ目の休憩所に着いた。
 乗り合いや貸し切りの馬車が五台ほど連なって走っていたため、休憩所には他にもたくさんの馬車が止まっている。
 先に出ていたのだろう馬車も多い。

 フラウとクリスの二人は馬車が止まるなり休憩所に設けられたトイレに駆け込んで行った。
 ちなみにこの世界にあるトイレは木で仕切られた汲み取り式かただ深く穴が掘られただけのものだ。

(俺も行っておこうかな)

 そう思いながらカティは周りの様子を見て回った。

『ちょっとだけ高速のパーキングに似てるな』
(・・・確かに)

 止まっているのはバスや乗用車ではなく馬車だが、ずらりと並んでいる様や、いくつもの露店、御者や旅人が休むための小屋が建てられている様は日本の高速道路にあるパーキングエリアに似ている、
 ガソリンスタンドの代わりに馬や地竜を交換するための獣舎、傷んだ馬車の車輪等を修理するための納屋まである。

 リリスは一人さっさと露店を見て回っていた。
 なんとなくその姿を見守って、カティ自身もぶらぶら歩く。

 それに気づいたのは、偶然だった。
 リリスが露店でいかにも甘そうなパンケーキらしきものを買っているのを見て、それからフラウたちはそろそろ戻ってくるだろうかとトイレのある小屋に目をやって。
 その脇に座り込む黒髪の少女を見つけた。

(『珍しいな)』

(・・・ん?今、シンクロした?)
『ああ、だな』
(結構珍しいよね、この世界に黒髪)

 カティも黒髪といえば黒髪だが、かなり色は薄めで茶に近い。
 それと比べて少女の髪は漆黒とでもいうべき黒。
 俯いているので目の色はわからないが、顔立ちも日本人っぽいように見える。

『いや、髪色じゃなくて』
(へ?)
『日本人だから珍しいって』

「・・・日本人?」

 思わず声に出したら、その声が聞こえたのか少女が顔を上げた。

 黒い目にどちらかというと平坦な目鼻立ち。
 薄い唇。
 少し黄みのがかった肌の色。

 わりと西欧風の堀の深い顔立ちが多いこの世界には珍しい日本人らしい見た目。

「・・・おたく今、日本人って言うた?」

 少女はカティに駆け寄ってくると、早口で話しかけてきた。

「・・・え?えっと・・・」

 カティはどう答えるべきか迷った。

「なあ、今、日本人って言うたやんな?」

 なんで関西弁?
 いきなりのことな上に少女が関西弁で畳み掛けるように話しかけてくるので、カティは頭が回らない。
 ただただ「・・・え?え?」と後で考えると馬鹿みたいに狼狽えていた。

「日本人?でもこっちの人っぽい顔しとるけど、あ、たまーに転生者?もおるんやっけ?こんなとこで会うとかびっくりやわ!」
「・・・は、はあ」
「うち、片山桜16才の元女子高生、よろしく」
「あ、はい」

 少女ーー桜は「いやー、ホンマびっくりやわ」と一人でなにやら興奮気味にぶつぶつ言い続けていたが、ふと、腹の辺りを押さえて口をつぐんだ。

(・・・なに?)
『さあ?』

「なあ、同郷のよしみでちょっと頼みがあるんやけど・・・」

 と、うって変わって言いづらそうに小さな声で、

「なんか奢ってくれへんかな?財布落としてもうてもう一日なんも食べてへんねん」

「頼むわ!」と両手を合わせた桜に、カティは「へ?」とまた間抜けな声を上げた。
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