87 / 87
87
しおりを挟む
片山桜side ???
そこは倉庫というか、工場だった。
長方形の広い部屋。
いや、広いはずの部屋、と、いうべきか。
もしくはもとは広かった部屋。
床いっぱいに置かれた機材やがらくたの山をすべて退ければ。
桜はここを研究室、と呼んでいるし、周りの人間にもそう呼ばせている。
桜は床に直接座り込み、目の前のデカブツに無骨な工具で幾つもの部品を嵌めてみてはまた取り外して違う部品を試している。
デカブツは人によってはロボットというし人によってはメイルというし人によってはアーマーというし人によってはパワードスーツというしオートマタという人もいるが、オートマターー自動人形というのは違うと思う。
何故ならこれは基本自動では動かないから。
だからロボットというのとも違う。
桜の元の世界、桜のいた日本では機動兵器、もしくはパワーアーマーと呼ばれていた。
ただ桜に言わせれば目の前のコレはパワーアーマーではなくそれに似せて作られたオモチャでしかない。
本物のパワーアーマーは一つ。
桜がこの世界に召還された時に装備していた『紅蓮』だけである。
桜がいた日本はこの世界でいう魔力、フォトンエネルギーによって動く機動兵器パワーアーマーを纏いひたすら戦争をする世界だった。
魔物という存在はなく、人と人が争い続ける世界。
救いは桜がいた日本とは似て非なる日本、そこから来た人たちが言っていたような核兵器などの大量破壊兵器がなかったことか。
多少威力があるとはいえ、せいぜい町を一つ二つ壊す程度。
星そのものを破壊するだけの力はなかった。
もしも桜がいた地球にそのようなものが存在したなら、桜がいた星は桜が生まれるよりも前にとっくに滅亡していたと思う。
桜は日本帝国陸軍西部機動部隊の隊員だった。
いつものようにパワーアーマーを纏って、いつものように戦争をしていた。
場所は中国南部、相手はどこだったか。
東アジアかヨーロッパか、あまりにも多くの国やテロリスト、レジスタンスなどと代わる代わる戦争しているからわからなくなってしまった。
桜がわかっているのは敵は誰であれなんであれ命令されれば殲滅する。それだけである。
あの時、味方は劣勢だった。
負け戦である。
敗戦は濃厚で、だけれども撤退命令は出されなかった。
周りを敵部隊に包囲され、じりじりと削られていく戦力。
桜は必死に走って、ひたすらライフルを打ち続けていた。
走って走って走って。
打って打って打って。
砂煙の向こうに敵兵のパワーアーマーが見えた。
自分に向けられた高出力の兵器も。
眩しい光と熱に飲み込まれて、死んだと思っていた時。
「ようこそ、勇者様」
そう言われて知らす閉じていた目を開けると、これまでとは違う別の世界に桜は呼ばれていた。
「桜ちゃん!帰って来たんだったら教えてくれたらいいのに!」
音をたてて研究室のドアが乱暴に開かれる。
入ってきたのは桜と同じ勇者と呼ばれている人間の一人。
17才の高校生、だったらしい。
桜とは別の日本から召還させてきた少女。
木ノ下みのり。
みのりがいた日本は平和で戦争のない国だったらしい。
初めて会ってすぐに親しげに話しかけてきたのにはびっくりした。
「ああ、ごめんごめん。ついこっちが気になってもうて・・・」
「桜ちゃん研究熱心だもんねぇ」
みのりは桜の隣にストンと腰を下ろすと、手に持っていた紙袋を「はい」と桜に寄越した。
「カツサンドだよ!お肉はオーク肉だけどね」
「あんがとさん!ちょうど腹減ってきたとこやわ」
礼を言って、さっそくかぶり付く。
「そういや、ペルージで日本人と会うたで」
「日本人?どこの?」
日本人と一口に言っても、幾つもの違う日本がある。
それを知っているみのりはそう聞いてきた。
「めっちゃ良い人でご飯奢ってくれてん。やからみのりと同じとちゃうかな?」
「ホント?いいなー!あたしも会いたかった!」
「多分また会えると思う。そんな気がする。恩も返さなあかんしな!」
「桜ちゃんの勘は良く当たるもんね!」
ふふ、と笑うみのりの頭を軽く撫でて、桜は自分も笑った。
「それまでみのりのことはウチが守ったるさかい。楽しみにしときや」
「うん。よろしくお願いします」
クスクスとそれぞれ別の日本から来た少女たちはそう言って笑い手をつなぎあった。
そこは倉庫というか、工場だった。
長方形の広い部屋。
いや、広いはずの部屋、と、いうべきか。
もしくはもとは広かった部屋。
床いっぱいに置かれた機材やがらくたの山をすべて退ければ。
桜はここを研究室、と呼んでいるし、周りの人間にもそう呼ばせている。
桜は床に直接座り込み、目の前のデカブツに無骨な工具で幾つもの部品を嵌めてみてはまた取り外して違う部品を試している。
デカブツは人によってはロボットというし人によってはメイルというし人によってはアーマーというし人によってはパワードスーツというしオートマタという人もいるが、オートマターー自動人形というのは違うと思う。
何故ならこれは基本自動では動かないから。
だからロボットというのとも違う。
桜の元の世界、桜のいた日本では機動兵器、もしくはパワーアーマーと呼ばれていた。
ただ桜に言わせれば目の前のコレはパワーアーマーではなくそれに似せて作られたオモチャでしかない。
本物のパワーアーマーは一つ。
桜がこの世界に召還された時に装備していた『紅蓮』だけである。
桜がいた日本はこの世界でいう魔力、フォトンエネルギーによって動く機動兵器パワーアーマーを纏いひたすら戦争をする世界だった。
魔物という存在はなく、人と人が争い続ける世界。
救いは桜がいた日本とは似て非なる日本、そこから来た人たちが言っていたような核兵器などの大量破壊兵器がなかったことか。
多少威力があるとはいえ、せいぜい町を一つ二つ壊す程度。
星そのものを破壊するだけの力はなかった。
もしも桜がいた地球にそのようなものが存在したなら、桜がいた星は桜が生まれるよりも前にとっくに滅亡していたと思う。
桜は日本帝国陸軍西部機動部隊の隊員だった。
いつものようにパワーアーマーを纏って、いつものように戦争をしていた。
場所は中国南部、相手はどこだったか。
東アジアかヨーロッパか、あまりにも多くの国やテロリスト、レジスタンスなどと代わる代わる戦争しているからわからなくなってしまった。
桜がわかっているのは敵は誰であれなんであれ命令されれば殲滅する。それだけである。
あの時、味方は劣勢だった。
負け戦である。
敗戦は濃厚で、だけれども撤退命令は出されなかった。
周りを敵部隊に包囲され、じりじりと削られていく戦力。
桜は必死に走って、ひたすらライフルを打ち続けていた。
走って走って走って。
打って打って打って。
砂煙の向こうに敵兵のパワーアーマーが見えた。
自分に向けられた高出力の兵器も。
眩しい光と熱に飲み込まれて、死んだと思っていた時。
「ようこそ、勇者様」
そう言われて知らす閉じていた目を開けると、これまでとは違う別の世界に桜は呼ばれていた。
「桜ちゃん!帰って来たんだったら教えてくれたらいいのに!」
音をたてて研究室のドアが乱暴に開かれる。
入ってきたのは桜と同じ勇者と呼ばれている人間の一人。
17才の高校生、だったらしい。
桜とは別の日本から召還させてきた少女。
木ノ下みのり。
みのりがいた日本は平和で戦争のない国だったらしい。
初めて会ってすぐに親しげに話しかけてきたのにはびっくりした。
「ああ、ごめんごめん。ついこっちが気になってもうて・・・」
「桜ちゃん研究熱心だもんねぇ」
みのりは桜の隣にストンと腰を下ろすと、手に持っていた紙袋を「はい」と桜に寄越した。
「カツサンドだよ!お肉はオーク肉だけどね」
「あんがとさん!ちょうど腹減ってきたとこやわ」
礼を言って、さっそくかぶり付く。
「そういや、ペルージで日本人と会うたで」
「日本人?どこの?」
日本人と一口に言っても、幾つもの違う日本がある。
それを知っているみのりはそう聞いてきた。
「めっちゃ良い人でご飯奢ってくれてん。やからみのりと同じとちゃうかな?」
「ホント?いいなー!あたしも会いたかった!」
「多分また会えると思う。そんな気がする。恩も返さなあかんしな!」
「桜ちゃんの勘は良く当たるもんね!」
ふふ、と笑うみのりの頭を軽く撫でて、桜は自分も笑った。
「それまでみのりのことはウチが守ったるさかい。楽しみにしときや」
「うん。よろしくお願いします」
クスクスとそれぞれ別の日本から来た少女たちはそう言って笑い手をつなぎあった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(7件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
これから先どうなるのかドキドキする。続き早く読みたいのですが……。
退会済ユーザのコメントです
私はリリスとオンリーが良いな。
(気にしないでください)
これからも頑張ってください。
返事が遅くなってすみません(;>_<;)
ありがとうございます!
ご心配なく。作者にハーレム書ききる自信もカティにハーレム作る甲斐性もないので、たぶんないです。でも幼女は好きなのでもしかしたら増やしてしまうかも……。
そこは大目に見てやって下さい( ̄~ ̄;)