未明

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 恋なんて、あんなに辛いもの二度としないはずだったのに、



 中学一年生のころ、隣の席の女の子が

 ある文字を黄色の食券に書いて見せてきた。

 『恋』

 綺麗な字で『恋』と書かれた食券には

 上半分と下半分のところで折り目が入っていた。

 彼女はその『恋』を広げてみせると

 『恋』は形を変えた。

 上半分と下半分に分かれた『恋』は

 『久』と『能』が足され

 『変態』という文字になった。



 なぜなのかはわからないのだが、

 今でもこの時のことは覚えていて、

 貰ったその食券を大切に保管している。

 そのとき彼女は才能の持ち主なんだと実感した。

 羨ましく思う。




 中学二年生、失恋を経験した。

 そのショックで

 私は、人を好きにならなければ

 嫌いになる悲しみもない

 人を好きにならなければ

 嫌われたときに傷付かないと

 自分の壁の中に歪んだ恋愛観を築き上げてしまった。



 この恋愛観が

 私の中で三年ものあいだ

 猛威を振るい続けるなど、このときは知る由もなかった。



 落ちるは一瞬、

 患うのは一生。

 まさにその通りなのかもしれない。

 この病には、治療薬などは存在しない。

 単純な構造ではないからだ。

 単純に見えて、難解に絡まっていて

 解こうと近づけば、あっという間に絡まる。



 なぜ、視界に入るだけで心臓は大きい音を立てるのか

 なぜ、LINEの返信を待ち遠しく感じてしまうのか

 なぜ、このやり取りがずっと続いてほしいと願ってしまうのか

 なぜ、目で追ってしまうのか

 なぜ、話しかけてほしいと思うのか

 なぜ、こんなにも話しかけることの出来ない自分が憎いのか



 この気持ちを何という言葉で、表せばよいのか。





 ああ、私も相当な重症らしい。



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